あの日に戻れるなら
「ねぇねぇ、よつ葉ちゃん」
「なぁに?」
「神様がね『一度だけ時間を戻してあげるよ』って言ったらどうする?」
担当の女の子に言われた質問。
季節感のないこの病室でベッド安静を言い渡されている女の子は、空想のお話を書くことが大好きでよくノートに書いていて、たまに読ませてくれる。そして感想を求められている。
「戻りたいなぁって思ったこともあるよ。でもね、きっとまた看護師さんのお勉強していると思うからこのままで大丈夫って言うかな?」
正直、この女の子のように小説に残したこともあったことを思い出す。自分の心が生み出した心の声に葛藤したよつ葉だった。きっとこの子も今、辛いんだろうなと思いお話を続ける。
「あたしはね、未来に連れていってってお願いするんだぁ」
いつものように瞳をキラキラ輝かせて話をしてくれる担当の女の子。
「退院して思いっきり走り回っている元気な未来に行くんだぁ」
「ふぅちゃんと、かけっこするんだもんね」
「そうだよ!!」
「頑張るんだもんね」
「負けないもん!」
それぞれ、心が弱っているときって、こういう発想をすることってあるんだなぁと思いました。よつ葉自身も同じように時間を戻してあげようか?って心の声に呟かれた。
担当の女の子とのお話は続く
「病気の無い国の王子様がね、真夜中に馬車で迎えに来てくれるんだよ」
「真夜中なの?」
「そうだよ! 看護師さんに見つかっちゃうもん」
そこは現実的なのね。
「でも、朝になったら見つかっちゃうよ?」
「王子様がね、お指をパチンしたらみんな忘れちゃうんだよ」
「王子様すごいね」
「そうだよ!」
瞳をキラキラ輝かせて、色々お話をしてくれる。
『病気の無い国へ行く』現実には無いことも知っているかもしれないけど、楽しそうに話してくれるお話に付き合う事しかできないけど、学生だからこそできることもあるのかも知れないと思い、笑顔で今日も夢の国のお話に花を咲かせる。
よつ葉も、あの日に戻れるなら……
そう思ったことを懐かしく思い出していた。