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終世の復讐者  作者: 桐花・覇
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15話 騎士の追憶その2

偶数が飛んでいる理由

3話(通常なら2話)を投稿した時に間違えたから。特に問題はないはずなのでそのままにしている。

「………来たか、招かれざる客よ。我が部下達はどうした?この部屋までの道は彼等が守護していたはずだが。」

「わかりきったことを聞くなよ。勿論全員、始末して来たさ。後はお前だけだ、覚悟は出来てるか?魔王軍幹部、『バールバッツ=エルツィン』!」

「ははは、もう既に俺の素性は割れているか。いいだろう。かかって来い!我が全力をもって貴様等を始末し、部下達の霊前にその首を備えてやろう!」


『魔族』バールバッツ=エルツィンは吠え、それと同時にその身体が膨張する。服が破れて筋肉が露わになり、隠れていた12枚の真紅の翼が存在を大いに主張する。裸になった上半身に焔がまとわりつく。

 その姿はまさに、神話の存在、獄炎の魔人。神に仇なす存在であるはずなのに、白き焔を纏う姿はむしろ神々しさすら感じられる。


「………!」

「すごい………」

「魔族ごときには不相応な姿と力だ。神を騙った事を恥じ、そして死ね!」


 所属柄、神の存在が近い『僧侶』、『聖騎士』、『勇者』の3人がそれぞれの反応を示す。

『僧侶』は感嘆の声を漏らし、

『聖騎士』は魔族の纏う神々しい気に臨戦態勢を整え、

『勇者』は怒り、批判した。


「神を騙る、か。この姿は我が身の到達した武の極致。言うなれば魔族の究極点。そこに神を持ってくるなどおこがましいにもほどがあるわ!」

「ぬかせ、その罪、死を以って償え!」

究極身体(ウルティマ・)強化魔法(ハイライズ)!」


『賢者』の付与魔法の詠唱を皮切りに、戦いの幕が開かれた。


『勇者』アーノルドが突っ込み、魔を討ち祓う聖剣をバールバッツに振りかざす。それに『剣聖』アリシアと『聖騎士』セネカルトが続く。三者の渾身の一撃が焔の身体を叩くが、セネカルトの剣は溶かされ、アーノルドの聖剣は受け止められ、マトモに通ったのはアリシアの剣のみとなった。



 だが、

「ははは!ぬるい、ぬるいわぁ!」

「かったいわね!デタラメな奴!」

「武器をなくしたな、これで貴様は戦力外だな!『剣聖』よ!」

「そうですか、なら、こんなのはどうでしょうか!?」

「くそ、面倒な奴よ!」


 アリシアの剣も筋肉の鎧に阻まれ、急所を斬る前に刃は止まり、へし折られる。バールバッツはすかさずダメ押しの一撃を放とうとしたが、そこに割り込んで『賢者』グレイスが放った魔法「究極氷(ウルティマ・)属性魔法(ブリザード)」に阻まれ、アリシアを逃してしまった。


「ありがとう、グレイス。悪いんだけど、ついでに創造魔法で何か剣を作ってもらえないかしら?」

「アリシアさんの愛刀よりだいぶランクは落ちますが。それでもよろしいので?」

「いいわ。またあそこに戻れればなんでもね。」

「分かりました。では……………どうぞ。」

「ありがとう。恩にきるわ。」


 作ってもらった剣に自らの焔を纏わせ一度自分たちから距離をとったバールバッツに再度特攻する。自分が全力を出せばこの城は溶けて無くなってしまうかもしれないが、まぁ『僧侶』が結界でも貼って守ってくれているだろう。遠慮する必要は、無い。

 魔力で自分の体を浮かし、焔の推進力を持ってバールバッツにおそるべき速度で肉迫する。

 振りかざした剣を掌で受け止める。襲いくる拳を剣で受け止める。バールバッツが距離を取る。アリシアが追う。全てにおいてバールバッツが優っている。なのに、後手に回る。回ってしまう。



(デュークが、他の仲間の冒険者達が、私達と共に頑張ってくれている。なら、只でさえ私達より冒険者達の方が平和に貢献してるとか言われているんだ、ここで私が頑張らなければ彼等に対して顔向けできなくなってしまうわ!)


 アリシアの想いに「神の加護」は応える。

「神の加護」は次第にその力を増大させていく。押されていた鍔迫り合いで押し返し、高速の飛行をそれを超えた速度で追い、バールバッツの、魔族の強さを支える真紅の翼を次々に斬り落として行く。今この場のアリシアの強さは、『勇者』アーノルドすら凌駕しているだろう。それ程までに圧倒的だった。



(この女、強い!まさか、この短い間にレベルアップしていると言うのか!?あり得ん!これほどの成長、何者かの介入があるとしか………!!!まさか!?)

「神よ!我々魔族をかのような僻地へ追いやっただけでは飽き足らず、まだ邪魔をするか!何故だ!?我らが一体いつおまえたちの不都合を起こした!?」


 バールバッツの号哭が王宮に響く。その隙を突き、『勇者』が、『剣聖』が、その筋肉の鎧を斬り裂く。初めてマトモなダメージが通った。


「がは……………っ!」

「黙って聞いてりゃわけのわからないことを言いやがって。貴様らは「悪」だ!悪は滅びる、当然の事だ!」

「ふざけるなぁ!!!」

「ぐっ!?」


 体に突き刺さった聖剣を放置したままバールバッツがアーノルドを殴り飛ばす。床に激突し、地面を砕き鮮血を散らす。それでも諦めず、手を伸ばして魔力弾を撃ち込む。バールバッツ()()()()、アリシアに。



「これで君にも聖剣が使えるようになった!さぁとどめを刺せ!アリシア!」


 アリシアの両手には今、勇者の魔力が纏わり付いている。これなら、腕だけでも勇者として認識される。勇者の専用武器、聖剣を使えるようになる。バールバッツの身体に刺さったままの聖剣を引き抜き、振りかぶる。


「人間の未来の為、死になさい!」

「ふざけるなぁ!なぜ貴様らの為に我らが犠牲にならなければならない!?いつもいつもいつも!虐げられて!未来を手に入れようとすることの、何が悪いと言うのだ!?」


 焔を纏い、腕を振り上げ、アリシアの息の根を止めんと全力の一撃を放つ。至近距離で、避けられるはずがなかった。絶対に当たるはずだった。


「がぁ……………っ!?」

「やらせはせん。戦っているのはおまえたちだけでは無いのだぞ。私達を忘れてもらっては困るな。」

「もう観念しなさい、バケモノ。」

「きさまらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

「おっと、動かれては困る。」

「これで、トドメよ!」


 渾身の拳はセネカルトの盾に阻まれ、グレイスの「究極雷(ウルティマ・)属性魔法(サンダー)」をくらい、コナーの金縛りで動きを封じられ、アリシアの聖剣の一撃で地に堕ちる。もはや動くこともできていない。


「僕達の………かちだ………!」


 勇者が叫ぶ。こうして、戦いは終わった。だが、




「まだだ……………!!!!せめて、貴様だけでも共に、冥府へと行こうではないか…………!」

「なあっ………………!?離しなさいよ!この!この!」

「アリシア!早く離れろ!」

「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 今更結界を張ったところで遅いわぁ!!!」



 バールバッツ=エルツィンの最後の足掻き、自らに残る全ての力を用いた自爆攻撃。その焔は、『僧侶』シャルロッテの結界すら簡単に突き破り、王城を灰燼と変えた。爆発は止み、そこにもうバールバッツの姿は無い。今度こそ、戦いは終わった。



用語解説

No.1「終世」

この世で終わりを迎えたものが辿り着く地と言われている。「終わり」の中には死だけでは無く人生への悲観や終末論の支持、ギャンブルなどによる身の破滅なども含まれる。

引き摺り込まれた者は「いきなりその場からいなくなった」ように消えるため、周りからは神隠し扱いされる。

今まで終世に引き摺り込まれて戻ってこれたという例は無い。

「奈落」「深淵」「地獄」「黄昏」「根源」

の五つの世界で構成されて、それぞれの世界に一つ、「終世剣」がある。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 翼を切り落としているのにマトモなダメージが無かったのですか? 感覚的には手足が切り落とされた様な物でしょう? それとも蛸や烏賊みたいに多少手足が無くても平気みたいな感じですか?
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