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終世の復讐者  作者: 桐花・覇
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7話 止まる者、歩む者、駆ける者。

「先輩に用だなんて………勇者様、あなたは一体、なんの用事があるのですか………?先輩にまた、酷いことを…!?」

「何、心配性だなぁ。そんな大した用事ではないよ。たまたまこの辺りを通りかかったから、ついでに終わらして置こうと思ってね。」


 もうギルドは閉館する時間が近づいており、普段はカウンターでたむろしている冒険者達も自らの家や他の酒場などに散ってしまっている。以前勇者の側近の女達がデュークに危害を加えている事実があるので職員達はみんな警戒態勢になっていた。今回は勇者一人で取り巻きはいないが、それでも安心はできない。


「やぁデューク。久しぶり。今日はね、君とアリシアのことについて決着をつけに来たんだよ。…?おーいデューク?何か言ったらどうなんだーい?」

「決着ですって………!?まさか、決闘でも行うつもりですか!?」

「そう、そのつもりだよ。決闘は神世の時代最高神アストロ様の名に基づいて行われる神聖なもの。その結果は絶対に尊重されなくてはならない。デュークが勝てば僕の権力と武力をもってしても、その結果を覆すことは難しくなる。…さっきから黙ってるけどちゃんと聞いているのかい?君が僕に勝つことができれば、君はアリシアを取り戻せるんだ。うじうじとみじめったらしい君にとっては、そんなに悪い条件じゃないと思うんだけどね?」


 一方的な発言を終えると、勇者アーノルドがいきなり椅子に腰掛けていたデュークを掴み上げ、腹にパンチを加えた。


「がっ………………!!!!?????」

「おいおい、何ぼーっとしてるんだよ?合図なんかなくたって、もう決闘は始まってるんだぜ?ほら、いい加減シャキッとしろ、よ!!!」


 もう一度、腹に勇者の拳が突き刺さる。勇者の特権、神より与えられし最強の装備で強化された拳は容易くデュークの肋骨をへし折った。痛みでデュークの体がくの字に曲がり、地面にうずくまる。


「げほっ!げぇ…」

「弱いな。全く、アリシアも可哀想に。僕と出会わなければこんな弱い奴と結ばれないといけなかったなんて。」


(くそ…俺たちでは助けることもできねぇ………!!なんで…なんで、黙って見てることしかできねぇんだよ………!!!動けよ、俺…!)

(どうして!あんな奴に………!!!神様は何故、あんな最低の奴にあなた様の持つ最高の力を与えたのですか………!?)


 ギルド職員は皆、勇者を恨んだ。足がすくんで動けない自身を呪った。なんの意味もないとは分かっていた。でも、それしか出来なかった。そして、そんな恨みを全く意にも介さず、勇者はデュークを痛めつけていく。


「ほら、もう諦めな。」

「………!」


 アーノルドの渾身の蹴りがデュークの顔面、左目を捉える。ぬちゅり、と何かの潰れる音、ビキィ!と何かにヒビが入る音が鳴る。そのまま振り切られた足はデュークを吹き飛ばし、建物の壁に叩きつけた。背中に受けた強い衝撃で思いっきり血を吐く。誰がどう見ても重態だ。声すら出せていない。


「これで決まったな。僕の勝ちだ。けど安心しなよ、デューク。君の分まで、アリシアは絶対に僕が幸せにして見せるからさ!」

「「「「「………………………!!!!!」」」」」


 こうして、一人の男を嬲り尽くして勇者はギルドを悠々と出て行った。残った者は一人を除いて皆、勇者への怒りに震えていた。足の震えも止み、すぐにデュークの治癒に取り掛かった。




 ーーーーー




 ギルドを出た勇者アーノルドは、愛する妻が待っている我が家に帰るため道を歩いていた。その足取りはとても軽く、一人の男を嬲って来たことなど全く気にしてもいないようだった。

 そんなアーノルドの前に一人の女性がやって来た。疲労困憊のようで肩で息をしている。その顔には勇者に対する怒りと、焦りが見て取れる。


「拘束しておいたはずだけど。どうやって抜け出したんだい?セネカルト。」


 アーノルドの問いを女は無視して言う。


「ハァ………ハァ………!貴様は何故………そんなにも平気で正道を違えることができるのだ…!?貴様には勇者の自覚がないのか…!!?」

「何を言っているんだい、セネカルト。僕はただ、世界を共に救った仲間共に暮らしたかっただけ。彼がそれを邪魔したから僕は全力で抗った。ただ、それだけのことじゃないか。」

「………そうか。なら、もういい。」

「え?」


 それだけ言うとセネカルトは魔力を全身に纏い身体能力を強化して、踏み込む。そのままアーノルドを思いっきり殴り飛ばした。全力の拳がアーノルドの頬にジャストミート。6〜7メートル程、吹き飛ばした。ありったけの侮蔑を込めた顔でアーノルドを見降ろした。その後、彼に聞こえるくらいの声量で呟き、その場を走り去る。


「これで貴様とは縁を切る。もう二度と、私の前に姿を見せるな。」



(くそ…!私が奴を無理矢理にでも止めらことができていたら、こんな事にはならなかったはずなのに……!!このセネカルト、一生の不覚…!!!)


 アーノルドがデュークを始末しに行くと言った時、セネカルトは猛反対した。だが、アーノルドは聞き耳を持たず、『賢者』に彼女を拘束させ、そのまま出て行ってしまった。

 帰路についているということは、もう事は起きてしまったのだろう。事前に阻止できなかったのならば、せめて、被害を最小限にとどめなければならない。正騎士として、国民を守らなければならない。


 急げ、一刻も早く。セネカルトは走った。勇者の横暴の犠牲者をこれ以上増やさない為に。騎士の務めを果たす為に。



ギルドに登録している正規の冒険者はA級を超えるとランキングが設定されるようになります。Aランクは300人以上、Sランクは14人います。勇者アーノルドはSランクのランキング1位です。

ランク昇級することで各ランクの最下位に、自分より上のランクの冒険者に決闘を挑んだり、上が引退したり、ギルドから活躍を認められることでランキングを上げることができます。

勇者パーティは冒険者ギルドの協力を得るため冒険者となっています。全員Sランクです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 勇者も無能すぎです セネカルトも仲間が洗脳されて目の色が変わっているのにも気付けない無教養 もし戦争になって仲間が洗脳を受けて情報を盗んだらどうするのか?もしかしたら騎士団も無能の集ま…
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