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終世の復讐者  作者: 桐花・覇
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5話 来訪。

久しぶりの投稿。

「デューク殿………そんな傷で、あんな仕打ちを受けて、あなたはなぜまだ勇者達に協力しようとするのですか………?あなたにはそんなことをする義理はもうないはずですが………」


 宰相がとても申し訳なさそうな声でデュークに語りかける。自分が勇者達を招いたせいでこんな事態が起きてしまったということをとても後悔しているのだろう。『聖騎士』セネカルトが治癒を施していなかったらそのまま出血多量でデュークは死んでいたからだ。だが、


「彼らが負けたらそこで世界はおしまいですから………僕も協力しないと………」

「いや………そんな腕にされた上、恋人にも裏切られて!どうして、どうしてそこまで自分を痛めつけるのですか!?はっきり言って、私には………理解できません………」


 自分の信頼を裏切り左腕と男の尊厳を奪ったもの達になぜそこまで協力的になれるのかと、宰相は聞く。


「アリシアだって少しの間離れてたから気の迷いを起こしたのかもしれませんし………魔王を倒して戻って来たらきっとまた戻って来て………」

「そんなことがあるわけがないでしょう!!!アリシア殿の瞳を見ましたか!?あの紫の瞳は洗脳魔法にかけられているものの証!あれを解かない限り、アリシア殿は一生あなたの元には戻ってこないのですぞ!!!」

「宰相様………お願いします………!」


 とても小さい、消え入るような、今にも溢れ出そうな涙を押さえつけているかのような声で、言う。


「お願いします…………この事を、今は、今はこの事を考えたくないんです………」

「デューク殿………」


 彼が勇者達を助ける理由は、まだ自分の身に起きたことを受け入れられていないからなのだろう。



ーーーーーーーーーー



 そして、あの事件から3ヶ月が立ち、魔王は討伐された。デュークは帰って来た勇者達のパレードを見物していたが、勇者に寄り添うアリシアを見て耐えられなくなり、パレードから逃げるようにいなくなってしまった。勇者達の蔑みの目線と嘲笑を浴びていることにも気付かずに。


 それからさらに2週間。パレードの興奮もある程度は冷め、ギルドは通常営業に戻っていた。仕事に励む職員の中にはデュークの姿もあった。


「なぁ、デュークさんてさ、随分と印象変わったよな………なんというか、ミスも増えたし、仕事も遅くなったし、読んでも返事してくれなくなったし、その、ずいぶん禿げたと………」

「言うな、世界を守るために協力して一緒に戦った相手に恩を仇で返された挙句、残った左腕まで失ったんだからな………俺たちなんかには、計り知れない程のショックを受けたんだろ………」


 今のデュークはお世辞にも若者らしい、とは言い難い風貌になっていた。顔からは活気が消え、抜け毛で頭皮が目立つようになり、残った髪も白く変色していた。今は座っているからわからないが、足元もおぼつかなくなっている。まるで鍛錬を怠ったせいで介護が必要になった老人のようだった。


「な、なぁ、デューク。これでも飲んで元気出せよ。言いたいことぶちまければ少しは心も………その、晴れるかもしれんからな………」


 冒険者達がデュークに酒を進める。彼らなりに、デュークのことを気遣っているのだろう。


「ありがとうございます………けど、まだ仕事が残ってて。終わってからいただきます。」

「いいって。今のお前には気休めが必要だ。支部長だって許してくれるさ………」


 それでもまだ渋っていたが、支部長から休憩しろと命令され早めの休憩をもらったので、デュークも折れた。ギルドにたむろしていた冒険者達から酒を受け取り、口に含む。冒険者の愛飲している度数の高い酒だったからか、あまり酒に強くはないデュークはすぐに酔ってきた。


「………正直、最初の頃はなんで自分がこんな目にあっているのか全然理解できていませんでした。」


 酒のお陰か、今まで内に溜め込んでいて聞かせてくれなかった本音を喋るようになった。


「自分は戦力にはなれないけど、それでも世界のために、アリシアの為に、自分にできることをしようと。足りない頭を働かせて、自分なりに魔王討伐のために働きました。」「けど、その結果、自分が得たものはこの傷だけでした。もともと裏方なので名声などは期待できませんでしたが、せめて、アリシアから労いの言葉の1つでもあれば、僕は良かったんです。」


「みなさん、僕は、頑張ったでしょう?お偉方に頭を下げ、地べたを舐めて、本来避けられるべき賄賂だって使いました。まだ安全確保の済んでいない道を通って、常に勇者達が迅速に動けるように気を払って動きました。」


「けど、この頑張りの対価がこれです。アリシアは居なくなり、左腕を失い、何も得ることなく、むしろ失ってこの仕事は終わりました……………」


 だんだんと、言葉が震えてくる。こぼれ落ちる涙が机を濡らす。それでも独白は続く。動悸を止めるため自身の体を抱きしめながら。


「彼らの為に、身を粉にして働いたのに………その結果が、これです………。こんなんじゃ、こんなことになったんじゃ、僕の頑張りは………僕が彼らのために尽くして費やした時間は、一体、なんのためにあったんですか………?」


 ついに大声で泣きだした。誰も、止められるものはいない。ただ、勇者達を恨み、奴らの犠牲となったデュークを、哀れむことしかできなかった。



 ーーーーーーーーーー


夕暮れ。ギルドに一人の客がやって来た。


「なんだ、ずいぶんと静かなところだなぁ。ギルドってのはもっと賑やかでうるさい者だと思ってたけど。どうしてこんな活気がないんですか?」

「勇者………様………?何故あんた…あなたがここに………?どうして、ここへ………?」

「ちょっと、デュークに用があってね。彼はまだいるかい?いるなら出してくれ。」



土属性:地震を起こしたりできる。使いこなせれば強いが、そこまで至るものは少ない。

火属性:威力に優れている。攻撃魔法が多く汎用性は高くない。

水属性:水という広く扱えるものを操る為汎用性が高い。威力は高くない為攻撃に使うには工夫がいる。

風属性:制御難、低威力、高燃費の三重苦揃ったハズレ。レベル次第でそれなりにはなるが、やっぱりダメ。

光属性:扱えるのは神の加護を受けたものの中でも、さらに選ばれし者のみ。使える物は「聖人」とされる。

闇属性:異端の証。使えるだけで非人間扱いされ、抹殺の対象となる。この力を持って生まれたことは風属性持ち以上の不幸。勿論、実際それだけでは人の価値は測れないが。


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[気になる点] 悲壮感を出す為に主人公がただの馬鹿になってます 洗脳がかかっているのが分かっているのに何もしないお偉方も無能集団にしか見えない
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