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終世の復讐者  作者: 桐花・覇
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2話 フェルトの旅立ち

今回から偶数にします。

「ん〜〜〜、まだ刃が曇ってる………もっとちゃんと磨かないと!」


 私はフェルト=ハルトマン、12歳。今は自分の部屋で愛刀を磨いている。

 明日、私は13歳の誕生日を迎える。それと同時に国を出て外へと旅立つのだ。今、刀の手入れをしているのはその為の準備なのだ。

 荷物は整理したし、周りにはお別れの挨拶も済ませた。なぜかホッとしたような顔をする人もいたけど、あれは何だったんだろう?

 まぁいいや。どーせこれからしばらく会わないかもしれないんだから。


 手ぬぐいで愛刀を磨く手を止めて刃の仕上がりを確認する。ランプの灯りを綺麗に反射して鈍く光っている。刃こぼれも無い。


「………よし、良い出来!これなら心配ない!」


 これはママから貰った大事な剣なんだから、こうしてちゃんとお手入れしないと失礼だよね!おばぁちゃんの次はママが王様になるんだから!

 私はパパとママが結婚する前に産まれちゃったから王様にはなれないけど、外を旅して王国には無いいろんな良いところを持ち帰ってママを手助けするの!

 お家はパパの次は弟が継ぐし、私は安心して旅立てるね!


 コンコンコン


「ん?」

「フェルト、入るぞ。」


 誰かが扉をノックしたと思ったら、パパが入ってきた。もう30歳過ぎてるのにとっても若く見える、白髪がとっても長いかっこいい人だ。

 名前はデューク=ハルトマン=アグレシオン。長い名前。

 けど、どうしたんだろ?こんな夜中に。


「パパ、どうしたの?何かあった?」

「………フェルト、お前は本当にそれで良いのか?こんな追い出し同然で家を出ることになって、本当にこんなことを認められるのか?」


 そう、この旅は年長でありながら家督を継げない私生児である自分を追い出す為のものであると理解していた。無論、旅に出ないという選択肢も勿論あった。


 けど、


「何言ってるの、パパ。追い出されるってのは側から見たらの話でしょ。私は自分で家を出ることを選んだんだから!家を継ぐ事はできなくても家の為に働く事はできるんだから!」


 フェルトは私生児の自分が家の為に出来る事を考えた上で、こうして出ることを決めたのだ。他人にとやかく言われるような筋合いは無い。


「明日のためにママには沢山お勉強教えて貰ったし、パパからは剣術を沢山教えて貰ったよ!パパもママもこれまで沢山私に愛情を注いでくれたんだから、これから会えなくなっても私は寂しく無いよ!」

「フェルト………」


 パパ、なんだか悲しそうな顔してる。私がいなくなるから寂しいのかな?もう、仕方ないなぁ。子供は独り立ちするものなのに。


「それに、私は覚えてるよ。小さい頃私は家の跡継ぎになれないってパパとママに聞かされた時のこと。パパ、覚えてる?私はこう言ったよ。『2人みたいなかっこいい人になれるなら別に良い』って。これは私がかっこいい大人になる為の試練なんだよ!なら、行かない理由なんて無いでしょ!」

「………」

「あれ?どしたのパパ?」


 どうしたんだろ?パパ、今すっごく難しい顔してるよ?


「いや、なんでもないさ。明日は早い、もう寝なさい。………フェルト、お前は母さんを恨んでいないのか?」

「え?ママを?なんで?」


 フェルトには一瞬、質問の意味がわからなかった。


「あぁ、ママがパパを裏切ったから結婚できなくなって私が私生児になっちゃった事?それなら何にも怒ってないよ!たしかに法律上は弟達より不遇だけど、実際どこでも不利になった事はないし、みんな優しくしてくれたよ!………たまに変な目で見てくる人はいたけど。」

「………」

「それに、ママも反省してるから今も沢山お仕事してるんでしょ?もしそうじゃなかったら王様になろうなんて図々しい考え、起こさなかったと思うよ!」


「だから私はママを恨んでないよ!ていうか、ママがいないと私は生まれることもできなかったんだから恨むなんて筋違いだよ!」


「パパはママを許したんでしょ?ママも信用の回復の為に沢山働いてるでしょ?なのになんで今更そんなことを聞いたの?」

「………そうだな。変な話をしてすまなかった。それじゃあ私は戻る。しっかり休むんだぞ。」

「はーい。それじゃあパパ、おやすみなさい!」


 こうして問答は終わり、私はベッドに入り就寝した。最後の自分のベッドでの睡眠はなんだか格別に気持ちよかった。




 ーーーーーーーーーー




「………ついにあの子ともお別れか。11年、長いようで短い期間だったな。」


 深夜、誰も居ない部屋でデュークは1人、お茶を飲みながらひとりごちていた。

 明日にはフェルトが独り立ちする。寂しいとは思っていないが、なんだかなんとも言えぬ思いはある。自分の本当の子ではないといえ、独り立ちするまで育てれば案外愛情というのは芽生えるようだ。


「まぁ、私がしたのは剣の稽古だけだがな………」


 そう、実際育てていくうちに愛情が芽生えたと言えるほどデュークはフェルトに関わったわけではないのだ。

 昔デュークが言った、『自分で産んだ子なら責任持って最後まで育てろ』という言葉をアリシアは実践した。デュークとしてはフェルトが独り立ちするのはもう少し先かと思っていたのだが。


 目を閉じてお茶を口に含み、アリシアと和解してから今までのことを思い返す。



 ターレスの死によって嫡子であったデュークはターレスの持っていた土地と爵位を継ぐことになった。勇者を殺したことで国王に降爵されそうになったりしたが、なんとか伯爵位に留まることができた。


 セネカルトの撮っていた映像が国民に公開されたことで闇使いに対して実の家族ですらあれ程醜悪になれるのかと同情され、闇属性使いの権利回復が訴えられるようになったのも追い風となった。


 その後国王が病に倒れそのまま亡くなり、アリシアの母が王位を継いだ。当然だがアリシアに対する批判は強く、彼女が王位に就くのはまだ難しかった。その為、アリシアが国内外からの信用を取り戻すまでは元王女であるアリシアの母が王位に就くことになったのだ。


 アリシアと結婚し、子供もできた。男の子が2人。式は挙げなかった。フェルトとも一緒に暮らすようになった。あの子は結局、本当の父である勇者のことを知らずに育った。今でも覚えている。お前は私生児だから家を継ぐ事はできないんだと伝えた時のことを。

 あの子はショックを受けてはいたが、すぐに『それでもふーちゃんはぱぱとままのこだもん!』と言い、立ち直ったのだった。メンタルはとても強い子だ。


 物心ついてからは冒険者になっていろんな世界を見て回りたいと言い出し、その為に強くなりたいとデュークに稽古を求めてきた。やはり血筋か、飲み込みも早く異常なまでの速さでフェルトは強くなった。ステータスならもう奈落を超えたばかりの頃の自分よりも上だ。

 使う魔法が同じ風属性であること、教えたらすぐにマスターするのでデュークも稽古をつけるのが楽しくなってきていた。そして、遂にデュークから見ても一流と呼べるほどの剣士になった。


「………なんだ、結局私は甘いんじゃないか。」


 そもそも、アリシアに育てさせるのなら剣の稽古もアリシアがつければよかったのだ。なのに、わざわざデュークがやった。それは、デュークはフェルトをきちんと家族として見ていたからなのだろう。


 やっぱり自分は甘い奴だと再認識し、自嘲して笑った。笑みの先に、窓から満月が覗いていた。




ーーーーーーーーーー




そして、次の日の朝。


「剣良し!荷物良し!ギルドカード良し!体調良し!それじゃあ行ってきます!お手紙沢山書くからちゃんと読んでね!」

「あぁ。行ってらっしゃい。盗賊と生水に気を付けるんたぞ。」

「………元気でね、フェルト。」

「お姉様、どうか息災で!」

「帰りを楽しみに待っています!」


髪を紙紐で束ね、背中に鞄と剣を背負い、フェルトは元気に王国を去って行った。各国を回り、悪魔大陸に昇ってその先にあるという新天地へ。何年かかるかも分からない、終わりの見えぬ旅に出て行った。


「………行ってしまったな。」

「もう、見えなくなっちゃった。相変わらずお転婆ねぇ。」

「僕、お姉さまに負けないようにもっと頑張ります!」

「僕も、より精進して家の為に尽くします!」


「………さて、仕事をしなきゃ。あの子が帰ってきた時、まだ信頼を取り戻せていなかったら大変だから。」

「そうだな。私も仕事に戻るか。お前達も稽古と勉強を怠るなよ?」

「「はーーーい!」」



偶数話でやること


洗脳されてた人たちの末路

その他名ありのキャラのその後

アリシアの最期

デュークのその後

勇者の過去

神への制裁


少なくともこれはやる。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 貴族に継承に付いて作者は勉強した方が良い アリシアは図々しい性格も+された 周りも何故止めないのか分からない 独り立ちするまで育てれば案外愛情というのは芽生えるようだ。 「まぁ、私が…
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