41話 幽幻の剣
遂にブクマ100件に到達した。次は200件を目標にする。
デュークの放った風を防ぎ、突進して聖剣を突き立てる。それをデュークが『奈落ノ太刀』の刀身で防ぐ。衝撃で少し後ろに後ずさる。
「どうだ、僕の力は。君なんかでは一生かかってもたどり着けない境地だぞ?」
「何が境地だ。才能も、スキルも、装備も、全てが神からの授かり物。貰い物で固められた身で何故境地を語れる?」
「黙れ!なら、これを受けてみろ!その大それた口を聞けなくしてやる!」
そう言って放たれた基本剣術「星穿ち」。元々どんな鈍を使っても一撃で岩盤すら砕けるほどの威力の技に、聖剣の性能、勇者の持つ光の魔力と火の魔力、そして風の魔力が後押しする。
もはや究極剣術クラスの技となったそれはデュークの守りを砕き、そのまま本体を破壊する、と思われた。
「ほう。これが極地とやらか。お前のたどり着いた極地というのは随分と近場なのだな。」
デュークも刀を返す。
究極剣術『斬魔』。
神速の剣閃が聖剣を弾き二の太刀で勇者の体を斬り裂く。
「くぁぁ!?ぐっ、うぅぅぅ………ヒ、回復………!」
斬り裂かれた鎧の隙間から鮮血が見える。はみ出た肉が見え隠れする。そこに回復魔法の癒しの魔力が流れ込み、勇者の負った傷を癒していく。たちまち傷は治り、鎧すらも修復されていく。
「たどり着いた境地とやらが基本剣術止まりではとても剣士は名乗れんな。お前は巷では「聖剣士」とも呼ばれているそうだが、剣士を自他共に名乗るなら、まずはこれくらい使えるようにならんとな。」
デュークが究極剣術『抜山』を放つ。達人が使えばそびえ立つ小山すら抉ると言われる。そして、デュークはその達人である。そんな一撃がアーノルドに襲いかかる。何とか光魔法『法王の要塞』で防ぐが、上空に打ち上げられ、その余波で闘技場の地面が抉られ、小さなクレーターが出来た。
デュークがクレーターの外に飛び移り、打ち上げられたアーノルドが中心に着地する。再度、向かい合う。
「これは一体どうなっているのだ?セネカルトよ。何故アーノルド君があんなに劣勢になっているのだ?」
「経験の差でしょう。自力、才能では確実に勇者に部がありますが、彼は終世でそんな差を覆せるほどの経験を得ていますので。」
「何!?アレが………終世からの帰還者だと!?嘘だ、そんな人間がいるわけがない!」
「現にそこにいるのです、陛下。お気に入りがやられそうになっていて慌てられているのは分かりますが、起きた事は認めなければなりません。」
「ぐぬぬ………アーノルド君が負けるなどあってはならん!儂は祈るぞ!アストロ神よ、彼に終末の使徒を滅する力を与え給え!」
「ちょ………陛下!?」
突然の行いに唖然とするセネカルトら騎士団員を尻目に、王が膝をつき勇者の勝利を願い、神に祈る。観客席で最も目立つ位置ゆえ、他の観客達からも祈る姿が見える。
「おお、陛下が勇者様の勝利を願っておられる………
我々もそうすべきではないか!?」
「そうよ!陛下までもがそうするのよ!?この戦い、勇者様が勝つべきなのよ!」
「勇者様にはそもそも何も非がありません。奴が、デューク=アグレシオンが、起こした妬みの精神こそがこの決闘を生んだのです!みなさん!共に祈りましょう!勇者様に力を!」
「勇者!」「勇者!」「勇者!」「勇者!」「勇者!」「勇者!」「勇者!」「勇者!」「勇者!」
「あぁ……みんなが僕の勝利を願ってくれている………ならば答えなければなるまい!祈りよ、我が力となれ!」
祈る者達の力がアーノルドに吸収されていく。右手を振るい、『スキャン』を発動する。見えた勇者のステータス。数字が、どんどん上昇していく。最終的には
アーノルド
lv.99性別:男
≪ステータス≫
体力:S(135996)
魔力:S(164087)
攻撃力:S(151290)
防御力:S(145702)
速力:S(136958)
精神力:S(20009)
≪スキル≫
「火属性魔法lv.10」「水属性魔法lv.10」
「風属性魔法lv.10」「土属性魔法lv.10」
「光属性魔法lv.10」「剣王lv.10」「呪い耐性lv.10」「神の加護」
≪称号≫
「神を継ぐ者」「魔を滅す者」「男の敵」「女の敵」「剣に選ばれし者」
凄まじいステータスだ。装備も、素も、力が向上しているのだろう。
「さぁ、みんなの祈りの力を喰らえ!『大地を喰らう者』!!!」
闘技場の土が盛り上がり、足りない分が勇者の魔力から生成され、土の蛇が形作られる。大きく口を開け、襲いかかろうとする。それに対してデュークはといえば、奈落ノ太刀を上空に軽く振っただけ。
「もう諦めたのか!?ならば大地の蛇に食われて死ね!」
「………」
大地の蛇が咆哮をあげ、デュークに襲いかかる。上空から大きく開かれた口でデュークを噛み殺さんと急降下し、呑み込むーーーーーーーーーー!!!
ザクッ
「………え?」
「なるほど。これが祈りの力か。案外、大した事はないな。」
幽幻剣術『空斬』。
時元を斬り裂く、デュークの剣術と風属性魔法、さらに闇属性魔法との複合剣術。
事前に空間を斬っておき、時間差でやってきた土の蛇を斬る。デュークが終世での長い戦いの中で編み出した、オリジナルだ。
「『地獄ノ太刀』」
『奈落ノ太刀』をしまい、二本一対の短剣を取り出し、逆手で待つ。
「あっちも使いやすいのだがな。風を共に使うならこっちの方がいい。」
闇の力を共に使っている事はもちろん言わない。
「祈りの力とやらはそれで終いか?なら、ここからは嬲られるといい。」
「な、何を………!まだまだこんなものじゃないぞ!」
「そうかそうか。もっと痛めつけてやろう。」
笑顔でそう宣う。
ーーーーーーーーーー
「………………」
その頃、闘技場の上空に戦いを観察する者がいた。その姿は透明化していて見えないが、何か良からぬことを企んでいるのは明白だった。
魔法紹介
「スキャン」
自分と他人のステータスをわかりやすく可視化してくれる魔法。実は魔力が1でもあれば使える。




