35話 復讐の準備 その2
ランキング上位に入る人達は私の作品のコツコツ溜まったポイントを1日で稼げると考えると、すごく羨ましく思う。
2日め、早朝。昨日のデュークの帰還祝いで皆潰れるまで飲み明かした為、床に、机に、二日酔いの酔っ払い達がへたり込んでいた。
「うぇぇ………まだ吐きそうです………」
「起き上がる気力も出ないぜ………」
「私の帰還祝いとはいえ、いくらなんでも呑みすぎたな………頭が痛い………」
「全く、あんな辛い思いはもうこりごりだ。しばらく酒は見たくないな。ところで、昨日私に頼みがあると言っていたな。何だ?大方、勇者への復讐のためのものだろうが。」
「酒に強いのですね………そういえば、セネカルト様は本当に良いのですか?」
「何がだ?」
「私が勇者に復讐を果たそうとしていることです。奴も国民、あなたにとっては本来守るべきものである筈。」
「何だ、その事か。私は別に構わんぞ。奴は国、いや、世界の癌に成りかねん。………いや、もう既になっているとも言えるな。」
「皆は知らないと思うが、奴は陛下がよる年波に勝てず痴呆を患ってしまわれたのを良いことに、この国を自分の都合の良いように改悪しようとしているのだ。」
「そうまでくれば、もう奴を守る理由はどこにも無い。私達は陛下のお気に入りである勇者に手を出せば処罰があるし、何よりまず奴に勝てる存在が私以外いない。私は簡単に決闘を仕掛けられる立場でもなく、正直、デューク殿が決闘を申し込んでくれて、これでようやく奴を始末できると喜んだくらいだ。」
「はぁ………そんなことが………」
「陛下を操り人形に………!?そんな、何で誰も止めなかったんですか………!?」
「違うでしょう、ゼロ。止めなかったのではなく、止められなかったのですよ。」
「確かに。王を諌めようとすれば勇者に口出しされる。どちらの言葉を聞き入れるかは分かりきっている。勇者を倒そうとしてもそもそも奴に勝てる者が王宮にいるとは思えないし、先に手を出せば自分が捕縛の対象にされる。」
「勇者のくせに、こすっからい手を使いやがってよぉ!あんなのただの卑怯者だ!」
「そうだな。話がずれた。セネカルト様、私の頼みを聞き入れていただけるのでしょうか?」
「私にできるものであるなら聞き入れよう。」
「有難うございます。では、セネカルト様の記憶を見せて貰ってもよろしいでしょうか?」
「………………私の記憶?」
こうしてセネカルトの記憶から必要な情報を得て、その後二日間、デュークは何処かへ旅立って行った。
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5日目、夜。
「あ、お帰りなさい、先輩!」
「ただいま。勇者への復讐の準備は整った。これで後は明日、奴を倒すだけだ。」
「セネカルト様が舞台を用意してくれたんだろ?どんなとこでやるんだよ?」
「普段は定期的に騎士達の訓練の成果を見せるのに使われている闘技場です。広く、多くの客を収容でき、奴の最期を周知させるには十分な場所ですね。」
「へぇ〜、そんなとこでやるのか。観客入れるんだな。」
「はい。まぁ、入る者の目的は勇者に無謀にも勝負を挑んだ愚か者が、無様にやられるところを見たいという理由が大半でしょうね。」
「実際は逆になるのに………まぁ、先輩の力をを知らない人はそう思うんでしょうね。」
「というかさ、あの卑怯者のことだ、舞台に細工して自分に都合の良い場所にしたりする事くらいやるんじゃねぇか?」
「確かに………!大丈夫なんですか?」
「あぁ、それに関しては何も心配していませんよ。」
皆の不安をよそに、デュークは何も心配してはいなかった。信頼できる仲間がいるからだ。
「そういえば、アリシア様はまだ目を覚まさないんですか?フェルトちゃんはもう目を覚まして元気に遊び回ってるのに………」
フェルトはもう既に魔法の効果が切れて騎士の宿舎で母が起きるまでずっと元気に暮らしている。
デュークから聞いた話では2人を眠らせたあの魔法は特に目を覚まさなくなる効果などなかった筈だ。ならば、なぜ?
「『あれ』には効果の対象に既に掛かっている魔法効果を打ち消す力があります。まぁ、本来そっちがメインの効果なんですが。もう既に洗脳は解けているのは確認しています、なら、アリシアにはまだ別の魔法が掛かっていて、それが未だに解除されていない………と考えられます。」
「そんな………まだ勇者の呪縛から逃れられて無いって事ですか………!?」
「何重にもがんじがらめか………どこまでも卑怯な奴だぜ………」
「………考えていても仕方ありません。勇者によるモノなら、奴を倒せば解放される筈です。明日には眼を覚ますでしょう。」
「………だな。」
「もう遅いし、俺たちは帰るぜ。明日はお前の復讐、見届けてやるからよ!」
「はい、ではまた明日。闘技場で会いましょう。」
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5日目、深夜。
皆が帰り1人静まり返ったギルドの中でデュークはアリシアに左腕を奪われてから今までの事を回想していた。
様々な苦難があった。
裏切られ、踏み躙られ、血反吐を吐いて何度も死ぬような思いをした。
だが、それらを乗り越えて終世から帰還してからは皆が迎えてくれた。忘れかけていた人の情の暖かさにもう一度触れることができた。
故郷のアグレシオン領に戻った時には、屋敷にいた使用人達から、たまたま来ていたアリシアの両親から、そして父からの歓迎があった。皆、自分の無事を喜んでくれていた。
伸びた髪のことや低くなった声のこととか、初の終世からの帰還者だとか、色んなことを聞かれた。そんなたわいのない会話の中で父の言った
『強くなったな。』
という言葉が本当に嬉しかった。昔のどんなに頑張っても伸びなかった頃の努力が漸く報われた様な気がした。
「ついに、明日か。」
『黄昏ノ太刀』を取り出して鍔を目にあて、闘技場の方を見つめる。事前の不正がない様、騎士達が近辺を厳重に守っている。
「………漸く、終わるのだな。」
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同時刻、闘技場の近くである3人が暗躍しようとしていた。
「アーノルド様が負けるなどあり得ませんが、万全を期して起きたいのです。分かっていますね?今のうちに細工をして、あの舞台をアーノルド様の都合の良い様に改造するのです!」
「素晴らしいアイデアですわ!グレイスさんなら侵入さえ出来ればその様な細工など簡単にできてしまいますからね!」
「ん。凄い。けど、どうやって侵入する?警備が厳しい。」
「確かに、一流の隠密であるコナーさんにはあそこへの侵入など造作もない事でしょうが、私達はどうすれば?」
「何のために私達が揃ったと?役割分担のためでしょう!シャルロッテが結界を貼り、私達の行動を悟られない様にしてからコナーが侵入、そこに私が光魔法を使って転移して細工をする!どうですか、完璧でしょう!?」
「確かに………!これなら確実にアーノルド様のお役に立てますね!」
「ん。良い作戦。なら、早速実行したほうがいい。」
「そうですね、では「ほう、なかなか面白そうな話をしているじゃないか。私も混ぜてもらってもいいかな?」
「なっ!?」
「どうして………!?」
「ん。バレた。しかも相手………セネカルト。」
「何のための警備が分かっていない様だな。お前達ならいつかこうして来ると思っていた。決闘の邪魔はさせん。ここでひっ捕らえてやろう。嫌ならおとなしく引き下がり、明日また来るといい。」
「………口を封じましょう。ここには誰も来ていませんよね?」
「そうですね。私達の話を聞いている者はいませんでしたね。」
「ん。誰もいない。」
「ははは、そうかそうか。では、お前達を捕えるとしよう。神妙に縄につけ。………『静寂の世界』」
こうして、かつて勇者の下で共に過ごした4人の、誰にも気づかれぬ戦いが始まった。
アリシアのステータス
lv.99
体力:(165423)
魔力:(148879)
攻撃力:(179023)
防御力:(169875)
速力:(175481)
精神力:(25963)
≪スキル≫
「火属性魔法lv.10」「剣皇lv.10」「呪い耐性lv.7」
「神の加護」
≪称号≫
「剣に愛されし者」「不貞の輩」「気付かない」
「蒼炎の剣聖」
だいたいこんな感じ。




