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終世の復讐者  作者: 桐花・覇
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29話 再会

夏休みになったし、小説たくさん書けるぞ!

え………?8時間バイト………?週5日………?

 デュークに危ないところを助けられてから、ずっとフェルトはこんなことを考えていた。


(ままがぱぱはとーってもつよくて、かっこいいっていってた!このおじしゃんはいけめんしゃんだし、とってもつよかった!だからこのおじしゃんがふーちゃんのぱぱなんだ!)


 何というガバガバ理論。

 Q.E.Dを宣言するのもおこがましい程の杜撰で穴だらけの論理で、フェルトはデュークこそが自分の父親であると断定した。

 まぁ、会ったこともなく、声もロクに聞いたこともない父親を見つける事など幼児であるフェルトには難しい話である為、仕方ないとも言える。

 自分の推理が間違っているなど微塵も思わずに、父親を見つけたという満足感に浸っていた。

 自分の推理が間違っているなど微塵も思わずに。


 そして、デュークは言葉の真意を理解しかねていた。偶々襲われているところを助けた幼児が元婚約者と間男の娘であったという偶然と、その娘から発せられた爆弾発言。元々道中であの2人の間に産まれた子供はどうケリをつけようか考えていたところに、これである。


(もしやこれは、私の帰還を事前に察知した勇者共の罠………?もしこの予想が真実だとしたら………!

 クソ!勇者め、なんと卑劣な!)


 デュークもデュークで、的外れな深読みをしていた。



「ぱぱ、どーしたの?あたまいたいの?」

「ん………、いや、大丈夫だ。少し、考え事をしていただけだ。(もう断定されてるじゃないか………)」

「そーなの?じゃーふーちゃんがおまじないしてあげる!いたいのいたいのとんでけー!」


(………深読みのしすぎだな。この子が私を貶めようと考えているとは到底思えん。なら、勇者への復讐を果たす前に面倒ごとを片付けておくか。)


「フェルト、これからもう少し速度を上げる。負荷が強くなるから、しばらくの間眠っていなさい。」


闇への招待(ダーク・マインド)」を唱える。対象を深い睡眠状態とする闇属性魔法だ。フェルトは抵抗なく深い眠りについた。これで暫くはフェルトがあることで起こる面倒を減らすことができるだろう。

 眠ったことを確認して飛翔の速度を上げる。

 王都の空を駆ける。アリシアを探して。




 ーーーーーーーーーー




 デュークが空を駆け回っている頃、アリシアは偶然にもセネカルト率いる王国の騎士団と合流して共に屍鬼(グール)を殲滅していた。もっとも、お互いに不信感がありありなので、連携を取ることはなかったのだが。


「驚いたな。子供を産んだと聞いて、もうお前とともに戦う機会はないだろうと思っていたのだが。一体どういう風の吹き回しだ?アリシアよ。」

「あら、愚問ですわ、セネカルト様。私だって王族の端くれなのですから、国の危機に立ち向かうのは当然の事でしょう?」


 近くに来るたびに嫌味を言い合いながら敵を潰していく2人。口も手も止めずに片手間で屍鬼(グール)達を殲滅していく光景にセネカルトの部下の騎士達は引き気味になっている。

 そして対処していた全ての屍鬼(グール)を片付けてからまた舌戦が繰り広げられる。


「国王の孫ともあろう者が自分の本来の婚約者を差し置いて間男とくっつき、あまつさえ危害を加えて突き放すなど言語道断。お前の軽率なあの行動によって陛下が、お前の両親が、他にも様々な者達が迷惑を被っていることを知らんのか?」

「あら、確かにそれは由々しき事ですが、少なくとも今の貴方の自分の主君の一族に対する不敬と取れる態度は、礼儀を語るものとしては有るまじきことではないのですか?」


 その後もひとしきり言い合ったところで睨み合い、無言の戦いに突入する。仲のよかった2人が勇者によってその絆を引き裂かれ、今殺し合いにまで発展しようとしている。先程まで屍鬼(グール)に向けていた刃を相手に向けようとする。

 その時、


「な、なんだお前は!?何者だ!」

「どうした!?何かあったのか!?」

「この屍鬼(グール)達の親玉でも現れたのでしょうか?」


 2人が騎士の驚愕の声を聞いてその場に向かうとそこには幼い子供を右腕で抱き抱え、左手でボロ雑巾のようになった黒い翼の生えた男を持った長白髪の美丈夫がいた。腕に抱えた子供を一度確認して、左手で持っていた男を投げ捨ててから駆けつけてきた2人、そのうちのアリシアの方を向く。


「フェルト!?どうして貴方がフェルトを抱えているのよ!?答えなさい!貴方は一体何者なのよ!?」

「………全く、そう騒がしくされたらせっかく寝かせた子が起きてしまうだろう。あぁ、私が何者か、だったな。三年も経てば自分が切り捨てた相手のことなどすっかり忘れるか?」

「………!そう、貴方、デューク=アグレシオンなのね。いきなり出てきてどういうつもり!?私の娘を、フェルトを返しなさい!」

「会うなりいきなりそれか。騒ぎの元凶を始末して、放置されていた娘を助け出してやった人間に対して、まずは礼の1つでも言うべきじゃないか?」

「ふざけないで!私の娘を!返しなさい!『龍顎火焔(ドラゴニック・フレア)』!」


 聞く耳を持たず、デュークに襲いかかる。真紅色の火龍がデュークに向かって突進する。それを


烈風爆弾(ウィンド・ボム)


 いとも簡単に消しとばす。火龍の口に入った凝縮された風が内側から焔を霧散させた。


「お久しぶりです、セネカルト様。詳しい話は後でします。今はアリシアを止めることが先決ですので、そちらでこの子を保護してもらえませんでしょうか?」

「いや、それはいいのだが………」

「ではお願いします。今あいつは聞く耳を持っていません。このままでは無差別な攻撃でこの子にまで危害が及ぶかもしれませんので。」

「………分かった。後でちゃんと、何があるのか洗いざらい吐いてもらうからな。」


 セネカルトがデュークからフェルトを受け取り、その場を離れる。すかさずそこにアリシアの剣撃が飛んで来る。


「おっと。お前の相手は私だ。」

「邪魔をしないで!フェルトを返して!」

「聞く耳持たんか。なら仕方がない。しばらく大人しくしてもらうぞ。元々、お前は最後の予定だったんだ。」

「何を訳のわからないことを!」


 こうして、デュークとアリシア、かつてお互いを想いあっていた刃を交えることとなった。




キャラクター紹介

「フェルト=ハルトマン」

『勇者』アーノルドと『剣聖』アリシア=ハルトマンの娘。2歳。

産まれる前に父である勇者が魔族の残党狩りに旅立った為未だ父親の顔を知らない。お陰でデュークは父親だと勘違いされることになった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 自分の子供を抱いでいる相手に問答無用で魔法攻撃する母親 子供がどうなっても構わないのがよく分かる ちゃんと受け答えをしているのに昔負い目がある相手に対して犯人扱いの無能聖騎士
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