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終世の復讐者  作者: 桐花・覇
13/47

23話 もう一度あなたと

修行編。ちゃんと書くと2〜30話くらい余裕で使いそう。


頭の中に過去の記憶が蘇る。これが走馬灯というものなのだろうか。


『デュークはたくさんけんをふっててえらいね!わたしもがんばらなくちゃ!』


幼い頃の自分、その鍛錬の様子を見て同じく幼い頃のアリシアが言う。


『そんなにすごいことじゃないよ、おとうさんとかはぼくのさんばいのれんしゅうをしてるんだよ、ぼくなんてまだまだだよ。』

『けんそんしなくていいのに!おとーさまはおとーさま、デュークはデューク!でしょ!』

『あー、そっか、そーだよね、ぼくはぼく、だよね。気づかせてくれてありがとう、アリシア。』

『えへへ、どーいたしまして!』


ブルードラゴンに襲われる前の、記憶。


『その辺にしといたら?やり過ぎはむしろ良くないぞ?』

『ううん、わたしがデュークの分まで強くならないといけないんだから、やり過ぎなんてことはないの!』

『全く………人にはやり過ぎを咎めておきながら、自分には甘過ぎるんじゃないか?ま、いいや。疲れたらおいで、一緒に勉強しよう。』

『えー!?勉強なんてやだー!』

『文句言うんじゃない!勉強もできなきゃ、本当の強さは得られないぞ!』

『むー。分かったわよ!ちゃんとお勉強もするわよ!』

『ならいいや。終わったらちゃんと来いよ!』


右腕を失った後の記憶。


『ふふん、どーよデューク!私は遂に、ドラゴンすら屠れるようになったのよ!凄いでしょ!』


最初の依頼からアリシアはドラゴンを討伐してきた。これによって、アリシアはルーキーの筆頭として、若いながらも名を馳せるようになった。


『………ホワイトドラゴンか。最低位のドラゴンとはいえ、もう、こんな強さに………やっぱり、アリシアは天才だよ。僕なんかじゃこれから右腕が治ったって追いつけないや。』

『何言ってるの!これはデュークのためにつけた力よ!つまり、私の力はデュークの力でもあるのよ!』

『いや、その理屈はおかしい』

『と、に、か、く!もっと自分に自信を持って!左手一本しかなくたって、デュークは強いんだから!』

『ふふふ、ありがとう。やっぱり、アリシアと話してると、自分に自信が持てる気がするよ。』


アリシアが冒険者になった時の記憶。


『二人とも、どうか幸せに、な。デューク君、娘をどうか、………よろしくな。』

『はい、ありがとうございます。ハルトマン卿。大事な娘さんは絶対に幸せにしてみせますよ!』

『嬉しいこと、言ってくれるじゃない!大事にしてくれなきゃ、ダメなんだからね!』

『ははは、責任重大だな!デューク!』

『ホントだよ。もしも何かあったら国王陛下の機嫌を損ねてしまうからね。全く、なんでアリシアはあんな家柄が良いのか『ねぇ、デューク。』


父、ターレスと話をしていると、アリシアがその中に割り込んでくる。


『なんだい?』

『私のこと、愛してる?』

『勿論』


その証拠と言わんばかりにアリシアを抱き寄せ、キスをする。不意打ちを食らったかのようにアリシアが硬直する。


『これで、信じてもらえる?』

『………うん。ねぇ、デューク。私、今とっても幸せ!』


そう言って今度はアリシアの方からデュークにキスをする。互いの親族達が微笑ましく見守っている。


正式に婚約した時の記憶。



ーーーーーーーーーー



ここまで思い返して、ふと現実に戻る。黒竜のブレスで吹き飛んでいる体は、未だ地面に辿り着いていない。走馬灯というものは、とても早く過ぎ去っていくようだ。


(………結局、ここで、終わりかぁ。まぁ、頑張ったんじゃない、かな。あーあ、僕、もう、死んじゃうのかぁ………)


吹き飛ばされた時、『奈落ノ太刀』を手放してしまった。あれの再生能力が装備している間しか使われないことはここまでの戦いでもう分かっていた。今は装備されている状態ではない。なら、身体の再生がされないことは明白である。


(最後にいい思い出を見られたし、もう、いいかな………)


もう既に、デュークの心は生きることを諦めていた。目を閉じ、迫り来る「(それ)」を受け入れようとしていた。

しかし、身体は、生きることを諦めてはいなかった。再生に望みをかけ、共に吹き飛ばされた終世剣に向かって、無意識に右腕を伸ばしていた。そんな、無意識の執着は、デュークの脳にある思い出を蘇らせた。



ーーーーーーーーーー



『私ね、家ではずっと、花嫁修行をさせられてたの。くらいの高い家族や騎士のところの男に嫁ぐためにね。本当に、つまらないったらありゃしないわ。』

『………仮にも公爵の娘がそんな汚い言葉を使うのはどうかと思うけど?』

『もう、茶化さないでよ。………私、デュークと出会えたおかげでたくさんの仲間ができた。すっごく強くなれた。』


そこまで言うと、少しアリシアの顔が曇る。


『私は、あなたにたくさん迷惑をかけてしまったわ。

だから、償う。あなたが私を幸せにするって誓ってくれたように、私も、デュークを幸せにするって、誓うわ!』

『2人で幸せになる!約束よ!デューク!』

『……………あぁ。約束する。』



ーーーーーーーーーー



(……………そうだ、約束だ)

(約束ーーーーしたんだ!2人で幸せになるって!




ーーーーーなら、こんな所で、死ぬわけには、いかない!)


思考の加速が終わる。現実に引き戻される。背中から地面にぶつかり、3回バウンドしてようやく止まる。手には、『奈落ノ太刀』が握られている。

掴めた、命を繋ぐ光明を。


「約束も守れず、奪われ、コケにされーーーーー、そしてこんな惨めに終わってたまるか!僕は生きるぞ!死んでなどやるものか!生きて、帰って、成すべきことを成すまで、終わって、たまるかぁーーーーーーぁ!」


瞬間、デュークの体を包む黒い靄が真紅へとその色を変えていく。全身を包むそれは、瞬く間に傷を癒し、かつて失くしたモノ、左腕と左眼を、復活させた。


「ーーーーー!」


本来の人の身体のモノではない。触った感触は終世剣と同じ。けど、そんなことは瑣末なことである。

大事なのは、左腕が、左眼が、復活したことだ。

剣を左手に持ち替え、構える。向ける剣の切っ先にはあの黒竜がいる。


(ーーーーー大丈夫。見てないけど、わかる。僕は、勝てる。)



風を纏って、


「ウオァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」


吼える。その動きに合わせ、黒竜がブレスを吐く。黒き炎がデュークに迫る。このままではさっきと同じ結果にしかならない。どうすれば、いいのか。

ーーーーー答えは。



低位闇属性魔法(ダァァァァァァァァク)!!!」


瞬間、差し出された右手の平から漆黒の闇が放出された。闇が目の前に迫る黒炎を呑み込む。だが、それでも前進をやめず、炎は闇を掻き払ってもう一度デュークに迫る。


「もうーーーーー大丈夫!」


さっき放った一撃、「低位闇属性魔法(ダーク)」のお陰で黒炎はその脅威を大幅に縮めている。これなら、剣で弾ける。


「はぁぁぁぁぁぁ!!!」


炎を搔き消し、風をさらに強める。


究極風属性魔法(ウルティマ・ストーム)!」


吹き荒れる暴風のアシストで一瞬で黒竜の懐まで入り込む。跳ぶ。剣を、脳天へと振り下ろすーーー!




ーーーーーーーーーー




終わった。

頭部が2つに裂け事切れた黒竜の前で膝をつき、戦いの終わりを実感する。一息ついてから左義手(ひだりて)にに握られた剣にまた「スキャン」をかける。


(終世剣・覇『奈落ノ太刀』LV.53

≪スキル≫

「斬命」「自動修繕」)


名称が変わり、レベルが爆上がりし、スキルが減っている。一体このレベルとは何なのだろうか?数字は大きくなっているが特に変わった感じはしない。


「まぁ、考えててもしょうがないか」


終世剣について考えることを辞め、今度は左義手(ひだりて)振り自分を「スキャン」する。


(デューク=アグレシオン(LV.53)

≪ステータス≫

体力:B(7004)

魔力:A(13427)

攻撃力:C(5566)

防御力:C(4896)

速力:D(3210)

精神力:S(65963)

≪スキル≫

「再生」「風属性魔法LV.10」「闇属性魔法l.1」

「心撃LV.1」

≪称号≫

「もう一度あなたと」「何度でも」「限界突破」

「奈落の覇者」)


「…………ははは………!ふざけてやがる………!」


何だ、この高いステータスは。これまでどんな苦労をしても少ししか上がらなかったのに。今はまるで、別人のようなステータスだ。


「うん。努力が実ったということにしておこう。終世剣にステータスアップの効果はないわけだし。うん。」

「さて………行くか。」


立ち上がり、また歩き出す。終世を抜けるため。成すべきことを成すため。

復讐者となった男は、死の大地を歩く。



ーーーーーーーーーー



「…………やっと………終わった!」


終世「奈落」、脱出。

一体どれだけの時間をかけただろうか。奈落の淵を登り続け、ついに、登りきったのだ。だが、その先には「深淵」が待ち構えている。


アビスゴブリン

LV.81.56.54.53.58.57.56.55.51.53.52.50.49.59.61.54.58.50


アビスオーク

LV.80.61.60.58.55.52.53.54.57.50.56.60.51.59.58.54.52.58.57.60.42.43.


アビスウルフ

LV.75.43.48.57.42.41.40.50.58.59.52.49.50.46.61.63.54.50.58.57.48



「…………!」


なんて数だ。「深淵」の広い死の大地を埋め尽くすモンスターの数々。それが全てこっちを見据えている。


その大量の眼光に圧倒され、足が後退する。冷や汗が額に滲む。剣を構える。右手に刺さっていた剣を引き抜き、奴らに向ける。すると、天から一筋の光が降ってくる。

黒い閃光はデュークの目の前に落ち、その全容を晒す。それは、黒い大剣だった。デュークの背丈をも超える巨大な剣。『奈落ノ太刀』と同じように、使えと言わんばかりにその柄をデュークに向ける。

「スキャン」する。


(終世剣『深淵ノ太刀』

≪スキル≫

「絶対防御」「自動修繕」「斬鉄」

「見極めている」)


「…………






上等だ…………」


『奈落ノ太刀』を戻し、『深淵ノ太刀』を引き抜く。構え直し、臨戦態勢を取る。


「やってやろうじゃないか………!」


挑む。もう、二度と折れない。アリシアを、幸せを取り戻す。その為に復讐者は終世を駆ける。





解説

「魔法のランク」

大体LV.1〜3が無印(低位)、4〜6がハイ(中位)7〜9がギガノ(上位)10がウルティマ(究極)

となっております。(個人によって差があるため、簡単には括れない。)

これらの名がつくのはただ放出する場合のみ。応用的な使い方ではつかないことが多い。

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[気になる点] LVが上がりましたが魔王を倒す旅に出る前のアリシアよりLVが上なのに弱いですね [一言] 主人公が気持ち悪い 洗脳を解く努力もしなかったのに死にそうになったら取り戻そうとする 今までに…
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