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第009話 「廃人、ドラゴンを撃墜する」

日間ジャンル6位まで上がりました、感謝です。

総合日間も73位。

 ネロとルーナがオーミと話をしている頃、【魔導工都市ロウェラート(Lowellat)】近郊の大空を駆けるように、1機の戦闘機が飛んでいた。

 高速で飛び回り、ロウェラートを離れたりまた帰ってきたりして、何かを探している様子である。


「……見つけた」


 戦闘機が獰猛な笑い声を上げながら、兵装であるミサイルを数十発打ち尽くす。

 ターゲットになったのは雲の切れ間から現れた1匹のドラゴンであった。


 ドラゴンのアルゴリズムが、敵意を向けてきた戦闘機に気づき敵対体勢になる頃には既に遅い。

 1発残らずミサイルはドラゴンの頭に直撃し、そのまま爆発。


 頭を無くし、一瞬で絶命した「それ(ドラゴン)」は、緑色の二重らせんを空に向かって射出し、肉体は霧散する。

 


 最終的に残ったのは、落下してゆく幾らかのドロップアイテムであった。


「こんなもんか。あっけねえな」


 アイテムを回収し終わり、戦闘機は呟く。そして弾薬がもれなくカラになっているのを見て、地上に降下していく。


 地上に着く直前、変形して無骨な機械人形になったアバターは、大して強くなかったなと余裕顔であった。

 そう、テンパレである。


 無骨とは言えど、人間形態と戦闘機形態に明らかな無理があるのはゲーム故か。

 それとも、オーミの追加した武装が複雑すぎるからか。


 上空にのみ現れると噂の、レアモンスター狩りは弾薬と燃料以外の消耗なしに成功してしまったテンパレは、こちらにスイーッとよってきたアバターに声をかける。

 ドロップアイテムの価値は、脳筋の彼にはわからない。


「なあ、ルクス」

「はい?」

「こんなの落としたんだが、なにこれ?」


 結晶体に翼が生えた固形物型アバターは、テンパレが見せた剣らしきものを見て、アバターにない目を見開いた。

 ルクスは、それは「けん」ではないが、「けん」ではあることを伝える。

 テンパレは「なにこれ食えんの?」と的はずれな質問をしてくる。これだから脳筋は、とルクスは手のように動かせる翼で自分の体を覆い、頭を抱えているような仕草を見せた。


「それ、次のイベントで使わないとボス部屋行けないやつです」

「あー、そなの? それにしてはデカくね?」


 テンパレは「鍵」を持って振り回してみる。ルクスは、その姿を見て確かに大きすぎると判断出来ることに気がついた。

 同時に、機械人形が持てばかなりさまになる。


 いやぁかっこいいなぁ、と羨望の意も込めてルクスがプカプカ浮いていると、飽きたのか鍵を仕舞ったテンパレが彼を見つめる。

 それは、彼の固形型アバターではなくプレイヤー自身を見透かしているようにも見え、ルクスはどうしたのだろうと見を固くした。


「あのさ、ルクス」

「はい」

「……今回のイベント、俺達がイベントボスを倒しゃあいんだよな?」

「そうですね。倒すのは僕達ですよ」


 ルクスは翼で、サムズアップを表現した。


 イベントボスを倒した後、誰がどれだけダメージを与えたのか。誰がトドメを指し、誰がどれだけボスの攻撃を耐えたのか、全てスコアとして公開される。

 今回、ネロが掲げた目標はそのランキングTOP5に食い込むことであった。


 そうすれば、否応なしに目立つことが出来る。テンパレは、今のところここロウェラートに到達した、自分たち以外の【極精】を見たことがない。

 だからこそ、目立つのだ。目立てば注目があつまるから、それを良しとしない団体はPvP(たいじんせん)を申し込んでくることだろう。

 そうすれば、あとは簡単だ。消化するように相手を倒してしまえばいい。


 正直、テンパレとしては自分の兵装をモンスター狩りではなく、対人戦用にカスタマイズしているフシがある。


「5年か、長かったぜ……蒼汰そうた


 昔を思い出すように、ルクスの本名を言ってしまったことを当の本人は何一つ気づいていなかった。

 ルクスも、頷く。


「そうですね、天晴あまはる





---




「なるほど。確かに、その着想はいいな」

「でしょう?」


 ふふん、と無い胸を張る『Luena(ルーナ)』を相変わらず微妙な顔で見つめながら、オーミはメモ帳に彼女の意見を書き写す。

 彼女が欲しがったものは、正確には武器ではない。

 自分の敏捷力を底上げするための装置である。


 ルーナは言わば、間接攻撃特化のキャラであった。

  【猛毒】【スタン】【スロー】【挑発】【拘束】【魅了】【麻痺】などなど、このゲームにおけるプレイヤーがスキルや武装によって再現可能な状態異常というものを全て扱うことが出来る。


 敏捷力を武器に戦場を駆け回り、敵を撹乱して味方が攻撃しやすくする、というのが彼女の主な役割あである。

 彼女の種族は【闇極精(エータレイヴン)】。それだけが持つ特殊スキルは説明すれば「状態異常を受けた数に比例して、範囲内の敵へ一定のダメージを与える」という凶悪極まりないものだ。


 ――代わりに、直接ダメージを出す手段が特殊スキル意外にない、という【極精】らしい極端さも併せ持つが。


「あまりルーナにとっては面白くないかもしれないが、例えばスラスターを山ほど体にくっつければ単純に敏捷力は底上げできる」

「……コンパクトなのがいい。それだと他の装備部分も圧迫される」

「知ってる」


 ある意味では、「当たらなければ――」の精神なのであろう、とオーミは目の前の少女を見つめた。

 

「まあ、ルーなのはネロと同じ感じにするかな」

「ん?」

「指輪扱いとかにすれば、多めにつけられるだろ?」


 こくり、とルーナ。


「ねえ」

「どうした?」

「オーミは、イベントに参加しないの?」


 どこかの誰かと同じ質問をした少女に対して、苦笑しながらオーミはしないよと答えた。


「なんで?」

「自分ために武器を作ればいいのに、って思う」

「あー」


 正直、オーミにはその考えがなかった。

 自分のためにスキルレベルを上げたわけではないからである。1番の顧客はアルトで、その次がネロたちだ。彼らを高みへ導くのが自分の武器達であると信じて疑わなかったオーミは、自分用の武器を作ったことがない。


「フルアーマーオーミで、宣伝をしたらイケルと思うけど」


 少女の、ある意味自分勝手な意見に、オーミは頭をなやませるしかなかった。


次回更新は今日です。

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