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第025話 「廃人、旧友と再会する」

長らく更新できず申し訳ありませんでした。

 その音は、【B(ビー)-nova(ノヴァ)】が明らかに無理をしている音そのものであった。

 ゲームの中でありながら、オーミがそう設計したとおり全ての駆動に無理をさせ、【B(ビー)-nova(ノヴァ)】に仕込まれた最大威力のビーム砲を発動させる。

 

 その威力は、相手がイベントボスだろうがなんだろうが関係なく、一撃で全てを消し去る暴力の塊である。簡単に言えば、よく言われる「壊れ武器(オーバーウェポン)」の一種であった。

 アバターの職業レベルや、材料の条件さえ整ってしまえばどんなアイテムだろうと作れる。上限のない一つの例として、彼の作ったものはこのゲームの上限なしを証明する一つとなっている。


 もっとも、それを知る人はかなり少ないわけではあるが。

 

「……撃つよ」


 フィオネは、味方だけに聞こえる声でそう呟くと、【欠けた虹】のメンバーが射線にいないことを確認するなり引き金を引いた。

 途端、【B(ビー)-nova(ノヴァ)】は原型を留めないほど複雑に変形を開始し。みるみるうちに巨大な砲台へ変貌する。

 質量保存の法則を完全に無視したような形であるが、【雷極精(ヘクスリアニクス)】のような無理のある変形ではなく、あくまでもギュウギュウに固めた折り紙を広げるような変形方法であった。

 巨大な砲台はますます駆動音を酷く鳴らし、放射。【B(ビー)-nova(ノヴァ)】から放たれたそれは、焔の奔流と称するに相応しい、幾度も押し寄せる津波とも感じ取れた。


 【宵闇騎士団】の面々がみた――アバター爆散直前の光景は、視界全体を覆うような紅いそれである。

 まずは危険信号のアラート。フィオネのスキル発動が宣言された直後に、アバターの体力を全損かねないほどの「何か」が近づいてきた証拠だ。


 その次に、本体。アラートはあくまでも警告であり、ある程度このゲームに慣れたプレイヤーはアラートが画面いっぱいに広がりつつあるのを認めて、なんとかしてその場を離れようとする。

 ――が、間に合うはずもなく。





 超極太のビームが、チャージを完了して発射される。




ーーー



「……おー、やってる」


 職人オーミは、自分の工房で設計をしながらイベントの映像を眺めていた。

 ちょうど今、自分の作った装備達が大暴れしている最中である。フィオネが【B(ビー)-nova(ノヴァ)】をぶっ放した瞬間、画面が真紅に染まったのを見て、満足げな顔をする彼。

 自分が作った武器が活躍しているのを見るのは、どうも一つの快感であった。


「終わったかな」


 ボスがあっけなく撃墜され、スコアボードのトップに【欠けた虹】のメンバーの名前が連なるのを眺めながら、オーミは満足げに笑いながら席を立つ。

 ネロたちにお祝いのメールでもして、ゲーム内祝勝会の用意でもするか――と考えながらも、次のメンバーの武器をどうするかも考えて、工房を行ったり来たりした。


 そんな時、工房を覗いてきた一人のプレイヤーがいた。

 受付のインターホンを鳴らすこと無く、直接やってきた【狼人族ワーウルフ】の男は。狼というよりもむしろ犬に近い感覚でオーミの場所までそろそろと歩いてくると、照れたように「お久しぶり」と口を開く。


 オーミは、そんな彼に驚いたような顔で返事をした。彼には目の前に居る精悍なアバターに見覚えがある。

 

「……引退したんじゃなかったのか?」

「戻ってきた――といえば良いのかな。今度のアップデートで【狼人族ワーウルフ】が大幅強化、上位種族が解放されるって聞いてね」


 彼は、簡単に言えばアルトや【欠けた虹】のようにオーミの常連客の一人であった。

 最古参ではないにしろ、十年続く【Mythology-of-Legacy-Online】の中では充分に長い経験のあるプレイヤーの一人である。


「学業は?」

「無事に卒業しました! まあ、この後は働きながらこの世界で戦うだけ!」


 というわけで。と金を積み始めた男に職人は若干引き始める。


「僕に合った武器を作って欲しいんだ」

「……ほう」


 オーミは桁が8を超え始めた金額を即刻拒否しながら、アルト達が自由に使ってくれと残していった材料の一覧に目を通しつつ、答える。


「復帰祝いとするから、金はいらないよ。どんな武器が欲しい?」



これからは毎週更新できるように努めます。

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