001:キング・オブ・ナイト-The King of night-
Dear.どこかにいる君へ
この小説を読むに当たって、注意してほしいことがある・・・・
それは、この本は事実であり、事実ではなとということ。
最後まで読んだ者だけが、その答えがわかるはず・・・・
そして、この本に書いてあることを忘れないでくれ・・
時が来る、その日まで・・・
守り続けてくれ、この星を・・・
そして、どこかにいる君の全てを語ったことをすまないと思っている。
君の記憶を・・・すまない。
by.クローウ
そこはある研究所の近くでの出来事だった・・・・
ー研究所敷地内ー
奴は俺がいいと言っているのにまだ粘っている。
「助けてやると言ってるんだ!お前はそのせいで今まで苦しんだんだろ?楽にしてやるよ。」
でも、まだ俺にはやらなきゃいけないことがあるような気がしてならない。
「いいって言ってんだろ!」
俺は反論した。
…この力さえ手に入れなければ、こんなことに…こんな戦いに巻き込まれることはなかったのに…
・・・4年前・・・
周りには人がうじゃうじゃ歩いている。
そんな中俺は一人、レンガ造りの建物の壁によりかかっていた。
「まだかよ・・・」
俺は友達じゃないけど、そいつが俺のことを友達と思ってる奴を待っている。
変なこといってると思う奴がいると思けど、わかる奴にはわかるはずだよ。
たぶんな…
だが、それにしても遅すぎる!
俺は奴と映画を一緒に見る約束をしてしまった。
何の映画かは来てからのお楽しみとの事らしい。
でも所詮奴が見るもんだろ。
しょぼい映画に決まっている。
わかりきったことだ!
でも、ホントに俺としたことがうかつだった。
俺はあまり人と変わりたくない。
関わっていても無意味なだけだ。
遠くの人ごみの中から俺を呼ぶ声が聞こえた。
「シ〜〜ン!どこだ〜〜〜!?」
こんな街中で俺の名前を叫び、探すのはあいつしかいない。
俺が待ってる奴。
自己紹介を忘れてたけど、俺は漸芽 信、普通の高校2年生。
名前は…親が物好きで、苗字を改名したらしい。
それはそうと俺は、いつもこの世界がつまらない…
腐りきっていると思っている。
だからこの世界にはうんざりしていたんだ。
人間も対象外ではない…
そう思い始めたのは、高校生になってからのことだったかな。
多分、世の中のことをたくさん知ったから…知りすぎたからだと俺は思っている。
だけど高校生になってから、いいことがひとつだけあった。
悪夢にうなされないこと。
中学生から高校生になるまでの間、何故か悪夢に悩まされていた。
そんな年で悪夢見てうなされていたなんて人に言ったら恥ずかしいけどな。
でもまあ、終わったことだからいいんだ。
それでいいんだよな…
そんなことを考えてる間に見つかってしまった。
「ここ…に…いたのかよ……探した…ぜ…・・・」
走ってきたらしい。
息を切らしながら喋ってる。
「遅いぞ翔太!お前が約束してきたんだから、時間は守れよ!
…っで、何の映画を見るんだよ?」
翔太はニコニコと満面の笑みを浮かべていた。
なんだか嫌な予感がしてきたぞ…
「それは、見てからのお楽しみ!早く行こうぜ、開演の時間だ。」
俺達は急いで映画館の中に入った。
既に劇場は暗くなっており、俺達は…というより翔太がドアを大きな音を立てて開けたから、みんなの視線が一気に集まった。
その後俺達は、静かに空いてる席を探すと、ゆっくり腰を下ろした。
翔太は、さっき買ったポップコーンと炭酸飲料水を飲食し始めた。
それにしても、俺の分はなしかよ…
そんな中、映画は始まった。
最初は他の最新映画の予告から始まった。
問題はその後だ。
俺の予感は的中していた。
最悪だ、俺にとっては本当の最悪の映画だった。
俺は1時間黙って映画を観ようと頑張った。
翔太は横でうるさくポップコーンを食べ、炭酸飲料水をがぶがぶと飲んでいる。
たまに大きなゲップを、こっちを向いてしてくる。
だんだん見るのがめんどくさくなってきた俺に、とうとう睡魔が襲ってきた。
約2時間30分後、やっと映画は終わった。
翔太はさらなる満面の笑みだ。
俺は…笑うことさえできない。
「翔太…俺達いくつだと思ってんだよ!キング・オブ・ナイトって、アニメだろ!
俺たち高校生がそんなの見て、恥ずかしいと思わねえのかよ!」
俺らが見ていたのはキング・オブ・ナイトの劇場版だった。
キング・オブ・ナイトというのは、今、全世界で大人気のアニメのこと。
噂では簡単に視聴率が40%を超えるらしい。
ストーリはこうだ、主人公の住む世界では、キング・オブ・ナイトっていう、なんていうのか、
実際にそこにいるような体感ゲームがプレイできるゲームがあるんだけど、それが主人公の世界で流行っていて、
ある時、ある組織によって、アナザーワールドに連れてこられて、元の世界に戻るために、冒険するアニメなんだけど、
……まあ…ストーリーなんてこのぐらいで別にいいだろ?
話すのは苦手なんだよ…
そして、今の俺はそこまで、それが好きではなかった。
そのキング・オブ・ナイトが…
昔は好きだったんだけど、今じゃ何もかもがつまらない。
というより体が受け付けない。
全てを拒むように…
それに最近は知りたくもないのに翔太がキング・オブ・ナイトの情報を無理矢理教えてくるから、
見なくなった今でも、今の現状やストーリは詳しい俺。
考えてたらなんだか悲しくなってきた…
「…だから、一人じゃなく2人で来たんだろ。
でも、やることがなくなったから帰っていいぞ!
今日はありがとな!じゃあな!」
翔太はそう言うと、人ごみの中に消えていった。
まるでソニックのように。
全く、俺の大切な時間と金が奪われてしまった。
1人の馬鹿により。
俺は一人寂しく家に帰ることにした。
絶対明日は体がだるくなるな…
あいつの相手は疲れるよ…
今思えば、こんなくだらない日常が、いつまでも続けばいいと思っていた。




