ひたすらに俺が駄弁るだけのプロローグ。
専門学校に通っていた頃に、課題提出のために書いた作品です。
短いですが、最後までお付き合いいただけたら幸いです。
俺が宗教的非科学的それから神頼み的な『祈る』という行為を止めたのは、確か中学に上がってからだった覚えがある。それと同時に、俺が二次元的現実逃避的さらには美少女萌えー的なオタク文化へと足を踏み入れたのも、やはり中学に上がって間もなくだった頃の話と記憶している。
しかしながら人間の(特に俺の)記憶なんて曖昧な上、こんな需要の欠片すらないエピソードをただひたすら駄弁っていたとしてもなんの面白みはないと俺自身保障が利くわけだが、まぁせっかくだし失礼続きをば。
義務教育の波に乗って小学生という脇役を六年もの間演じてきた俺が思っていたことはと言えば、それはもう純粋に祈れば全てが思惑通りにいくという、神有りきの机上の空論であった。
いくら子供心にそれからさも当然のように物理法則を無視した類概念的な思考を抱くのはやはり畏怖そのものであり、その結果捻くれた性格を持つどこから見ても哀れな高校生へと変心してしまったわけなのだが――ともあれ、俺がいかに直接の世界平和を祈りに祈っても各国の紛争地帯は増加の兆しを見せつける一方で、それはもう俺がエコロジーを気に掛けたお祈りを熱心にしたところで地球温暖化は毎年活発化し続けやがるし、父の仕事柄、数年の間隔で続く引っ越しに終止符をと天を仰いでも、やはり結果は収束しどう足掻いても転校を余儀なくされるのだった。
そんなことを繰り返しているうちに、祈るだけじゃなにも変わらないという既成事実、言わば現実を俺は身を以て体験し、遅ればせながらも、俺は自らが行動を起こせばいいというこれまた単純明快な一つの結論へと至った。というわけで、遅かれ早かれ俺は有言実行試みることにしたのだが、一体何が間違っていたのだろう。悪い方向にばかり道筋がずれているような気がしてならない。
そしてもはや慣れたものではあったがまたしても父の転勤の話が持ち上がり、さして抵抗することなく俺はそれを柔順にも従い――根本的解決には直結しない今にして思えばおかしな話ではあるが――アクションを起こしたのはその転校先でのことだ。
かれこれ三度目となる転校。
前回前々回と続いた自己紹介の際には挨拶、名前、転校理由とあくまで無難な紹介をした俺だったが、甘いな。今回ばかりは一味も、さらには二味も異なった。
マンネリ打開――言ってしまえばその括りに含まれる中坊の俺が考え付いた方法とは、それはまさしく厨二病の真似事をすることだった。右腕に包帯をぐるぐる巻きにして左手を優しく添えてやりそして決め台詞「忠告しておいてやるから机に突っ伏して寝てる奴も耳の穴かっぽじってよく聞けよ。お前ら、俺に近付くんじゃねえぞ。この右腕……曼荼羅がいつ覚醒を起こすかわかんねえんだからなァ!」と、こんな厨二病全開のキチガイなことを言って退けた。そしたら皆似通った反応を示して、眉をしかめたり苦笑をしたりと、逆かもしれないが、俺からしてみればそれがとても滑稽に思えた。これでいい、そうこれでよかった。なんだかとても晴れ晴れとした気分だった。
そんな俺の思惑通り、誰も話し掛けようとする奴は見受けられなかった。だがそれこそが俺にとっての大成功、その事柄、俺の決め事ともいえる当初の目的、それは友人を作らないことにあったからだ。
理由は至極単純に、別れがこの上なく辛くなる、ただそれだけのこと。
そのためだけに、俺はあんな自演がましい厨二病を、人生を棒に振るが如く演じて見せたのだ。体験したことのない奴には到底理解できないだろうが、誰かと接点を持ち必要以上に親しんでしまうのがどうしようもなく辛かった。小学生時代に俺が身を以て得たことである。そうならない方法を誰にも相談することなく一人模索し続けた結果がこれ、自らが厨二病を演じ頭のイカれた野郎に思わせることってわけだ。中学三年に上がってすぐ引っ越した時もそうだ。
転校初日――「俺の中には、喜・怒・哀・楽の四つの人格が眠っている。怪我ぁしたくなかったら、俺と関わらないこった」とか発言してやり、十分なキチガイアピールをしたのち、俺は中学卒業を迎えるまでボッチライフを送ってやった。まぁ当然これには障害も付き物で、微々たるものだがイジメの対象に選別されたり、はたまた精神を病んでいるんじゃないかと人格を疑われたこともあった。それがきっかけで一時期親との折り合いも悪くなったが、一応それなりには察してくれたようで、今では良好な関係を築いている。
これが『祈る』ことを止め捻くれた形で行動を起こした俺の体裁だ。
俺だってこの方法が正しいとは思っちゃいない。僅かな付き合いになるかもしれないが、積極的になって友達を作り、友人達との関係を築いて友情を育んでいく。そんな王道を迎え入れることだって実際選択肢にはあったが、拒んだのは希薄な俺自身。
その反動も相俟って、二次元の世界へと逃げ込んで架空の友人、それから顔の見えない相手との繋がりを築いて現状十分に満足し――月日の流れはとても早いもので、ついには高校生まで上り詰めていた。
流れ流されて生きる日々にとても謳歌など見受けられなかったが、今回は比較的早い転勤、入学して僅か一ヶ月足らずで俺は苦労して進学した高校を離れ――そして今現在に至る訳だ。
無事に転校先である私立緑川高校へと転学を果たし――あとになって寮のある高校に入っておけばよかったと後悔し――頭としての顛末はこれで終わりだな。ここから先は俺ですら未知のステージともいえる。
とりあえずまぁ、この物語はこんな俺、緒方珊瑚の孤軍奮闘を綴った、なんの変哲もありゃしない日常の一ページである――
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