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おじいちゃんの告白 その1

 おじいちゃんの告白 その1


 「ピッ・ピッ」電子音が響く病院のICUの一室に呼吸器を付けた老人とその孫の少年がいた。

「儂はもう長くない。」

「お祖父ちゃん、そんなこと言うなよ。」

「それでな、儂の昔話を聞いてくれないかの。」

孫の言うことは全く聞かず、老人特有の自分の言いたい事だけ言うスキルを発動させる老人。


「お祖父ちゃん、昔はいろいろな事に巻き込まれてな、異世界に行ってたことがあるんじゃよ。」

いよいよ祖父の様子が危ないと、ナースコールに手を伸ばす孫を必死で止める。本当に死んじゃいそうな状況で必死とは、これ如何に…と思いつつナースコールから手を放す。今際の際に、何が悲しくて祖父の厨二病とか黒歴史を聞かされるのか。いろんな意味で目頭が熱くなる。


「最初に行った異世界は、そりゃもうファンタジーな世界じゃった。モンスターはおるし、魔法もあったんじゃよ。でな、異世界に行く前に創造していた魔法とかノートに書き溜めて設定がその世界では生かされておってな、そりゃもうチート状態じゃったわい。」

家に帰ったら、他の家族に見つからないようそのノートを処分してあげよう。それが一番の供養になると決心する孫。


「でな、いろいろ有って魔神を倒したんじゃよ。」

物凄い省略をする祖父に若干の苛立ちを覚える孫。なんだその設定の甘さは。桃太郎や一寸法師の昔話はもちろん、評価0のネット小説でももうちょっと捻るだろうと。


「結構簡単に倒せるもんじゃよ。閉鎖空間に転移させて同時存在を封じた上で、因果律を書き換えて不滅設定を無効化して実体化させて、後は殴り倒すだけじゃった。」

孫の表情から説明不足を感じてフォローする祖父。言葉では簡単だと言いつつ、俺スゲーだろってドヤ顔の祖父がウザったかった。


「魔神を倒した後、とある王国に呼ばれてな、貴族になれとか姫を嫁にとか言われたんじゃがな、姫の容姿が…ちょっと…好みでなかったのでの断ったんじゃ。」

偉いぞ祖父。女性の容姿についての表現に地雷を踏まなかった。正直は美徳ではないと思う。ちょっと筋違いに祖父を褒める。口には出さないが。


「でな、なんか気に障ったのか暗殺者が出てくるわ、風呂に入ってる最中に広域殲滅魔法撃ち込まれるわ、トイレ中に熱爆核滅魔法撃ち込まれるわ、寝ようと思ってベッドに入ろうとすると何故か真っ裸のマッチョなおっさんがそのベッドから出てきたりしてな。特におっさんの件は腹に据えかねてな、王国の宝物庫の中の物を元素変換して全部を納豆にしてやったり、王族には15歳から薄毛になり頭頂から禿げる呪いを掛けたり、王城内部には永久にローションが床に湧き出す呪いを掛けてやったわい。」

わが祖父ながら実に恐ろしい事をする。怒りのポイントがおっさんというのはズレている気もするが。


「ばれて城内で大量の追手が来た時には流石の儂も恐ろしかったな。ローションで髪がワカメみたいに張り付いたオッサン騎士達が四つん這いで迫ってくるんじゃ。」

某呪いのビデオっぽい絵面だな。自分はビデオテープ自体見たことないけど。


「その後、日本に帰って来ることが出来ての、今では良い思い出じゃわい。」

禿げの呪いが掛けられた王族は現在進行形で恨んでると思う。


「これが異世界にいた証拠じゃ」

乳白色の親指大の石を自分の手に握らせる。これが異世界の…作り話とは理解しつつ、なんとなく緊張して石を見つめる。


「あ、すまん。それ一昨年取った儂の胆石じゃ。大きくて立派だから取っといたんじゃ。」

無言で手にした胆石を窓の外に投げ捨て、除菌ティッシュで手を拭く。超念入りに拭く。


「こっちじゃ、こっち。」

今度は直に手に取らず、ティッシュの上に置かせる。寄木細工模様のべ○リットがそこにあった。


「ル○シャンのべへ○ットと言うらしい。これを握って”バ○ス”と唱えると…」


「アウトー!!」

自分は無意識に叫んでいた。


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