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僕は、スナイパー。  作者: 大和 武
8/10

          第 8 話  初めての休暇。

 話しは、少し戻り、隆一は、心身と共に疲れきっていた、其れは、初めて


人間を撃ったためで有る。


 しかも、相手は反社会組織の人間なのだ、狙撃した場所から離れ、今は、


タクシーの座席に身を沈めている、タクシーは繁華街の手前で停まり、隆一


は、大きなバックを二個も持ち、再び、タクシーに乗り、ホテルへと向かっ


たので有る。


 ホテルに着き、部屋に入ると、あの二日間の疲れが一度に出てきている


が、今は、風呂に入る事が先決だった、着ていた服や下着はクリーニングに


出す事はできない、狙撃の瞬間、服や自身には発火した火薬の匂いが着いて


いるはずだ。


 タクシーの運転手は気付かなかったで有ろう、だが、ホテルのフロントは


気付いているかも知れない。


 隆一は言い訳も考えていた、昨日、この地方の有る場所でダイナマイトを


使った仕事が有る事は知られて要る、隆一は、その現場で作業を行なってい


たんだと説明する積もりだ。


 それでも、あの事件以来、警察もライフル銃を撃った人間を探している。


 特に、タクシー会社には火薬の匂いがした人物が乗ったならば、警察に通


報する様にと指示が出されていた。


 だが、今のところ、このホテルにも警察が来る様な気配も無い。


 隆一は、念入りに自身を洗い、暫く考えていた、つい、数時間前には一人


の人間をライフル銃で撃った、何故、ライフル銃を使ったのか、今でも、其


れはわからない。


 数十分後、風呂場を出ると急に腹が減ってきた、考えて見ると、あの場所


に居た半日以上からホテルに戻ってくるまでは何も食べていなかった。


 隆一は、身支度を整え、ホテルを出て繁華街へ出ると、町行く人達の話し


声が聞えて来る。

 

 「ねぇ~、見た~、だって、あの組長の耳から血が出てたのを。」


 「勿論、見たわよ、でも、本当に何処から撃ったのかしら、私、映画のシ


ーンを見ている様だったわよ。」


 「でも、テレビがあんな瞬間を映すなんて、初めて見たから、私、今でも


胸がドキドキしてるのよ。」


 「私もよ、だって、日本じゃ~、拳銃なんて持てないでしょう。」


 二人の女性の会話だが、隆一は、聞き流し、近くの中華料理店に入り、ビ


ールと数品を注文したが、この中華料理店での話題は謎の人物、山の神の話


で持ち切りで有る。


 テレビのゲストもだが、店内の客達もみんな、好きな様に話をして要る。


 正か、山の神が、店内で食事をして要るとは、隆一は、二本のビールを飲


んだが疲れなのか急に酔いが回ってきたので、食事を終え、タクシーに乗り


ホテルへと向かったので有る。


 隆一は、あの日から二日間も眠っていた。


 だが、眠りが足らないのか、ふと、携帯を見ると、木田からの着信があっ


たが全く気付かなかった、それ程、隆一は、心身とも本当に疲れていたので


有る。


 普段の時ならば携帯が鳴れば起きるはずなのに、だが、木田の聞きたい事


はわかっていると思ったが、木田にはまだ報告はして無かったので有る。


 だが、報告が無かったとしても、テレビで中継されているとおりなので、


今更、何も報告の必要も無いと思っていた。


 「もしもし、隆一です。」


 と、隆一は、眠たい目をこすりながら木田に電話を入れたので有る。


 「やぁ~、隆一君、大変、ご苦労様でしたね、其れにしても、隆一君の腕


前には本当に驚きましたよ。」


 と、木田は、隆一が、初めての任務を達成した事に労を労ったので有る。


 「長官、あれでよかったんですか。」


 と、隆一が反対に聞いたので有る。


 「勿論ですよ、其れにしても、あの山の神って、ネーミング、大変素晴ら


しいですね、私は、本当に驚きましたよ、でも、何故、山の神って付けたん


ですか。」


 隆一も、最初から、山の神を名乗る積もりは無かった。


 「長官、日本は、殆どが山でしょう、でも、僕は、初めから山の神を名乗


る積もりは無かったんです。


 最初は、特別捜査官を名乗る積もりだったんですけど、突然、頭が閃いた


んです。」


 「それでは、閃きで、山の神を名乗ったと。」


 「ええ、その通りですよ、でも、結果的には良かったと思っています。


 あれが、普通に特別捜査官って名乗っても、世間では気にも留めませんか


らね。」


 木田もわかったので有る。


 確かに、特別捜査官と名乗れば、誰もが、一目置くだろう。


 だが、相手が役人だと知れば、少々の脅かしでは何も変化は起きなかった


だろうと考えられるので有る。


 其れが、実態のわからない、山の神を名乗る事で、この先、いったい、何


が起きるのだと少しは不安を抱かせるには良かったので有る。


 「私も、テレビを見ておりましたがね、この警察庁の中でも、大変な騒ぎ


になっていましたよ。」


 と、言うのだが、隆一は、そんな大騒ぎになっているとは知らなかったの


で有る。


 「そんなに大騒ぎするほどでも無かった様に思うんですが。」


 隆一が、今回の任務は人を殺す事では無いと、彼らを壊滅させる事が最大


の目的だと解釈したので有る。


 「隆一君、私の指令を素晴らしい解釈をされ、其れを見事に解決していた


だいたと、私は、思っておりますよ。」


 木田も、法治国家では、例え、其れが極悪人であったとしても、その人物


を殺す事は許されないのだと、確かに、何の罪も無い身内を殺された家族に


すれば、その犯人を殺したいと、誰もが考える。


 木田は、極悪人を殺す事よりも、刑務所と言う安全な私設に入れて保護す


るより、極悪人が地獄だと思われる様な天罰を与えたいと以前から考えてい


たので有る。


 「長官、愛子は元気ですか。」


 隆一は、愛子が何をして要るのか気になっていたのだ。


 「はい、勿論、大変お元気ですよ、何時も隆一君の身体を心配しています


から。」


 「そうですか、其れは良かったです。


 其れで、僕は、次に何をすれば。」


 隆一は、直ぐに次の指令が有るものと思っていたが。


 「隆一君には申し訳無いのですが、暫くは現地に滞在して頂きたいので


す。」


 「じゃ~、僕は、このホテルにですか。」


 隆一は、別の場所に移動するものと思ったので有る。


 「ええ、あの事件の後、直ぐに調査車両が移動したとわかれば、警察や役


所の者達も不審に思いますからね。」


 「はい、わかりましたが、何日間くらい、此処に居れば良いんですか。」


 ホテルに長期間も滞在するなど考えもしなかった隆一だったが。


 「隆一君が考えた作戦なんですがね、私も以前から考えていた事が有りま


してね。」


 隆一は、木田が何を話すのか聞きたかったので有る。


 「長官が以前から考えていた事とは一体、どんな事なんですか。」


 だが、木田は、隆一が、何故、彼らを殺さなかったのかを知りたかったの


で有る。


 「隆一君、その前に聞きたいのですがね、何故、あの組長を殺さなかった


のか、その理由が知りたいのですよ、隆一君の腕前であれば、組長の頭に撃


ち込む事は簡単に出来たと思って要るんですが。」


 「長官、僕も、其れは、狙っていましたが、その前に、人質になっている


女性や全国にテレビ中継されている事を考えたんですよ、だって、日本中に


組長の頭から脳ミソが飛び散るのを見せられると思いますか、此処は日本な


んですよ、人質の女性を助けるだけならば、簡単に頭を撃つ事は出来ました


がね、僕は、後々の事を考えたんです。」


 やはり、そうだったのかと、木田は感心した。


 隆一も最初は頭に狙いを絞っていた、だが、現場には、多くの市民や報道


関係者が見ている、其れに、テレビで全国中継されているので有る。


 隆一の言う様に人質の命を助けるだけであれば頭を撃ち抜く事で終わる


が、その様子の一部始終を全国に中継されている。


 組長に脳ミソが飛び散る様子を一般市民に見せる事などできないと考える


のが当然の話しで有る。


 「それでは、あの組長達を刑務所に送るだけで終わりだと。」


 「長官、僕も色々と考えましたよ、問題はあの大量に投棄された土砂を含


めた産業廃棄物ですよね。」


 木田も同じ事を考えていたので有る。


 「隆一君は、産業廃棄物の処理までを考えていたのですか。」


 「確かに、僕が考える必要は無いと思うんですよ、でもねぇ~、じゃ~、


一体、誰があの大量に投棄された産業廃棄物を処理するんですか。」


 木田も、処理にどれ程の金額が必要なのかわからないと思った。


 「隆一君は、その地下金庫の保管されている金塊や宝石類をどう処分すれ


ば良いと考えて要るんですか。」


 「僕は、あの山を元通りにさせる為の費用にと考えて要るんです。


 施設や機材なども必要だと思いますが、一度でも、国家や自治体の収入と


なれば、後で面倒な手続きが必要になるでしょう、だから、最初から、あの


現金や金塊は処理場の建設費用や人件費に使用するんですよ。」


 隆一は、色々と考えたと言ったのだが、長期間、投棄された大量の土砂や


産業廃棄物の処理までは考えて要るとは、木田も驚いている。


 「じゃ~、隆一君は、此れから先も産業廃棄物がしっかりと処理される様


にと考えて要るのですか。」


 「はい、日本と言う国は山河も美しく、その美しい山河を後々の人達にも


残せる様にと考えただけですが。」


 「そうですか、其れは立派な考えですね、でも、其れは役所の仕事だと思


いますが。」


 「長官、この国の役所に任せたんじゃ~、何時まで経っても前に進みませ


んよ。」


 「えっ、じゃ~、山の神が先頭になって事業を行なうのですか。」


 「いいえ、僕は、何も出来ませんが、既に、山の神の名前で各役所にメー


ルを送って有りますよ。」


 隆一にその様な時間が有ったのか、隆一は、膨大なメールを送ったに違い


無いと。


 「隆一君は、何時、その様な作業を行なったんですか。」


 「僕は、長官から資料を送っていただいた時から考えていたんです。


 役所の人達もあの事件を見ていると思いますから、のんびりとは出来ない


と、少し脅しを掛けていますので。」


 「じゃ~、役所も必死になるのですね。」


 「ええ、僕は、其れを期待しているんですよ、だって、何時、何処で、山


の神が見ているのかわからないと言う恐怖が有りますので、役人達もわかっ


ていると思いますよ。」


 確かに、隆一の言う通りかも知れない、山の神がどの様な形で役人達は仕


掛けて来るのかわからないと思わせるだけでも十分なので有る。


 「隆一君、私も、警察本部に此れからどの様に対処するのか聞いて見ます


よ。」


 木田も、例え極悪人だとしてもテレビなどマスコミの目前で殺すよりも処


理施設の現場で働かせる方法を考えて要るので有る。

 

 其れにしても、隆一と言う男は、今までとは全くタイプ違うスナイパーで


有る。


 今までのスナイパーは命令を受けた仕事だけを実行し、次の指令を待つだ


けが任務だが、木田は、隆一が、この先、困難な指令を受けても、必ずや実


行出来ると、それだけでは無い、任務によっては後々の事も考える、今まで


に無いスナイパーだと改めて思ったので有る。


 隆一は、単なるスナイパーと言うロボットでは無い、後々の事まで考え行


動するスナイパーだと、その時、ドアをノックする音がした。


 「長官、誰か来ましたので、お話は後日にでも。」


 其れは、木田が愛子を行かせたので有る。


 「わかりました、じゃ~。」


 と、木田は電話を切った。


 隆一は、正かと思いドアを開けると。


 「隆一さ~ん。」


 と、突然、愛子が飛び込んで来たので有る。


 「愛子。」


 と、言った時には、愛子は、隆一に抱きついていた。


 隆一は、ドアを閉めるが、愛子は離れず、そのまま、ベッドに入ったので


有る。


 数時間後、愛子は。


 「ねぇ~、隆一さん、何処も怪我は無かったの、身体は大丈夫なの。」


 と、次々と愛子は聞くが。


 「いや、僕は、なんとも無いよ、ほら、身体だって、ねっ、なんとも無い


よ。」


 愛子は、隆一の全身を触って確かめているのだ。


 「ねぇ~、隆一さん、このホテルを出ましょう、別のホテルに。」


 隆一も助かったと、このホテルに、後、数日間も滞在する事に苦痛を感じ


ていたので有る。


 「有難う、僕も、こんなホテルに何日間も居ると頭の中が変になるよ。」


 「じゃ~、早く出ましょうよ。」


 その後、二人は、荷物をまとめ、ホテルの出たが、一瞬、隆一は、何故、


此処に愛子が居るんだと。


 「愛子、このホテルの事は。」


 愛子は、木田から聞いていたが、それとは別に。


 「木田さんからよ、でもね、本当の理由はね。」


 隆一は、次の指令かと思ったので有る。


 「木田さんか、じゃ~、次の指令が。」


 愛子は、首を振り。


 「そうじゃ~無いのよ、その話しはね。」


 愛子はタクシーを止め、二人が乗り込むと、愛子は、別のホテル名を伝え


たので有る。


 「えっ、愛子、じゃ~、そのホテルに。」


 愛子は頷き。


 「そうなのよ、私はね、昨日から泊まっているのよ。」


 隆一は、木田の気遣いだと思ったので有る。


 「愛子、木田さんの手配なのか。」


 「うん、そうよ。」


 二人を乗せたタクシーは10分ほどでホテルに着いた。


 そのホテルは市内でも高級なホテルの部類に入って要る。


 手続きを終え、部屋に入ると、愛子は飛びつきキスをし、二人は、そのま


まベッドに崩れ、愛子は狂った様に隆一を求めるので有る。


 隆一も、疲れも忘れ獣に変身し、愛子は、何度も昇天し、その後、数時間


は死んだ様に動かなかったので有る。


 二人が目を覚ましたのは夕方近くで有った。


 「ねぇ~、隆一さん、起きてるの。」


 隆一は、まだ夢を見ているのか。


 「ねぇ~、隆一さんって。」


 「う~ん。」


 やっと、目を覚ましたので有る。


 「ねぇ~、隆一さん、お腹はすいてないの。」


 「うん、少しだけど、ところで、今、何時。」


 と、隆一が時計を見ると6時前だった。


 「もう、こんな時間なのか。」


 「隆一さん、疲れてない。」


 「僕は大丈夫だよ、愛子は。」


 愛子の目は嬉しさの余りなのか、まだ潤んでいる。


 「うう~ん、私は平気よ、だって。」


 と、愛子の表情は輝いた様に隆一には見えるので有る。


 「愛子、シャワーを浴びてから、食事に行こうか。」


 「うん。」


 愛子は、それでもベッドから出る気は無かったが。


 「僕が先に行ってるよ。」


 「私も直ぐに行くわ。」


 隆一は、ベッドを離れ、風呂場に行った、愛子は、隆一の下着と服を用意


した時に隆一が風呂場から出てきたので有る。


 「もう、終わったの、早いのねぇ~。」


 「愛子も、早くシャワーを。」


 「うん、直ぐに終わるから、隆一さん、下着と服は出して有るからね。」


 「うん、わかったよ、有難う。」


 隆一は服を着て、ソファーに座り煙草に火を着けた。


 愛子は、暫く上がってこなかったが、隆一は、何かを考えて要る。


 やがて、愛子のシャワーも終わり。


 「ねぇ~、隆一さん。」


 隆一は、考え事に集中しているためなのか、愛子の呼び掛けにも気が付か


なかった。


 「ねぇ~、隆一さんってば。」


 と、耳元で囁いたので有る。


 「うん、あっ、愛子か。」


 隆一は、少し驚いた。


 「隆一さん、何か、真剣な顔付きだけど、如何したのよ。」


 「うん、少し考え事をしてたんだ。」


 「隆一さん、煙草の灰が。」


 隆一は慌てて、火を消した。


 愛子は、隆一が、今、考えて要ることを知りたいのだが。


 「ねぇ~、隆一さん、食事に行きましょうよ。」


 「うん。」


 と、隆一の返事は気のない返事なので、愛子は、隆一が相当深刻な問題を


抱えていると思ったが、今、其れを聞く前に食事をする必要があった。


 隆一も愛子もお昼の食事を取ってから、今の時間まで何も口に入れて無か


った。


 隆一は、エレベーターの中でも無言だったが、レストランに着くと。


 「愛子、今夜の食事は何を。」


 「うん、私は、隆一さんに合わせるわよ。」


 愛子は、何時もの様に隆一に任せたので有る。


 「じゃ~、ステーキでも、それと、ワインも。」


 何時もの隆一とは少し違う、何時もならば、メニューを見てから決めるの


に。


 「私も、同じでいいわよ。」


 二人が席に着くと、ウエイターが来たので、隆一は、ステーキとワインを


二人分を注文した。


 「ねぇ~、隆一さん、何かあったの、何時もの隆一さんじゃない様に思う


のよ。」


 「その話しは、後でするよ、其れよりも、木田さんから他に何か聞いて無


いか。」


 やはり、何時もの隆一では無い、何かが今までの隆一を変えてしまったの


か。


 「木田さんはね、暫くのんびりと過ごして下さいって、それだけなよ。」


 「えっ、暫くのんびりと、でも、何時までか言って無かったのか。」


 隆一は、しきりに何かを聞きたいような口ぶりで有る。


 「木田さんもそれ以上、何も言わなかったわよ。」


 愛子は、何故、隆一がそんなに急ぐのか理由がわからない。


 「じゃ~、一週間か10日間くらいの時間は有るんだね。」


 「私も、其れくらいの時間は有ると思うの。」


 愛子は、隆一の表情を見ると、先程までとは違い、少し安心したような顔


付きになっていたので有る。


 その時。


 「お待たせ致しました。」


 ウエイターが食事を運んできたので有る。


 二人はワインで乾杯し、隆一は、さっきまでの顔付きではなく、ステーキ


の一切れ口に入れ。


 「うん、この肉柔らくて美味しいよ。」


 愛子も、口に入れ。


 「本当ね。」


 と、少し安心したので有る。


 「愛子、明日の朝頼みが有るんだ。」


 「えっ、一体、如何したの、何時もの隆一さんじゃないわよ。」


 「僕のバックの中に服が入ってるんだ、其れをクリーニングして欲しいん


だ。」


 「な~んだ、そんな事だったの。」


 愛子は、射撃の時に使った服に火薬が着いている事に、隆一が、心配して


要るのだと思った。


 「でも、ホテルのクリーニングに出すとまずい事になると思うんだ。」


 「隆一さん、私が、この近くに有るコインランドリーに行って洗えば済む


事でしょう。」


 愛子は、簡単に考えて要るのか、隆一が考えて要る事は別の問題だとは、


この時には知る事も無かったので有る。


 「隆一さん、私もわかるわよ、ホテルに出す事は出来ないもの。」


 「うん、そうなんだ、出来れば。」


 「隆一さん、2回は洗うわよ、何も心配ないわよ、下着も入って要る


の。」


 「うん、そうなんだ、だって、僕は初めてだったから。」


 愛子は、あの時、隆一が着ていた全てをクリーニングするつもりでいた。


 隆一は、済まなさそうな顔になっていたが。


 「ねぇ~、隆一さん、私は、隆一さんの妻なの、隆一さんのためだった


ら、どんな事でもするわよ。」


 愛子は、本当に嬉しかった、


 だが、あの時、隆一が、どんな気持ちで、トリガーを引いたのか、其れ


は、本人しかわからないので有る。


 その後の二人は、何時もの様に食事と会話は弾み、2時間後部屋に戻って


行ったので有る。


 部屋に戻ると、愛子は、早速バックの中から、隆一の服を取り出し、ホテ


ル周辺の地図を調べ始めた。


 「有ったわよ、隆一さん、このホテルの近くにコインランドリーが。」


 「うん、じゃ、頼むよ。」


 と、隆一は、ソファに座り煙草に火を着けたので有る。


 数分後、愛子が、コーヒーを入れてきた、其れをテーブルに置くと、隆一


のそばに座り、一口飲み。


 「ねぇ~、隆一さん、明日からなんだけど。」


 愛子は、明日からのんびりと休みを取る様にと考えていたのだが、隆一の


顔付きが変わったので有る。


 「うん、それなんだけど、今度の休暇なんだけどね、愛子、僕の自由にさ


せて欲しいんだ。」


 「えっ、隆一さん、一体、如何したのよ、何かあったの。」


 正か、隆一が、一人で、何処かにでも行くつもりではないかと思うのだ。


 「愛子、僕はね、今回の任務で木田さんからは、あの社長と組長達を撲滅


させる様にと、指示を受けたんだ。」


 「私も、聞いて要るわよ、でも、あれで、社長達もだけど、組は撲滅した


と思うのよ、其れで、この任務は終了したのよ。」


 愛子の属する組織では、個人的な行動は禁止されている。


 隆一も、その事は知って要るはずだと、愛子は思っていたが。


 「うん、確かに、あの組織は撲滅したと思うんだ、だけど、僕はね、別の


事を考えてたんだ。」


 「別の事って。」


 「うん、其れはね、あの社長の会社が運んだ大量の産業廃棄物の事なん


だ。」


 「えっ、だって、あれは行政の仕事なんでしょう。」


 隆一は、一体、何を考えて要るのだ、愛子は理解出来なかった。


 「其れは、僕もわかってるんだ、だけど、日本の行政って、何時もの事だ


けど、始まるまで、早くて数年、いや、時には、数十年も掛かるんだ、僕


は、あの山に捨てられた土砂や廃棄物を早く処理したいと思ってるんだ。」


 「隆一さん、そんなの無理よ、だって、日本じゃ~、行政が行なうにして


も、企業が行なうにしても法律が有るのよ、其れに。」


 愛子は、それ以上言えなかった。


 愛子も理解はして要るが、この問題を隆一が解決出来るとは思えないと。


 「うん、僕も、其れくらいの事はわかってるいよ、だけどね、あの屋敷の


地下で発見された5百億円や百キロもの金塊、其れに、数千個も有る宝石類


を市が預かると言うのがどうも理解出来ないんだ。」


 「だって、あのお金や金塊は脱税したんでしょう、当然、市などに入る物


なのよ。」


 「うん、其れはわかってるよ、じゃ~、あの山に投棄された物はどうなる


んだ、役所の事だ、直ぐに処分する様な事にはならないと思うんだ。」


 隆一も、理解はしているが。


 「ねぇ~、隆一さんは、何故、其処まで拘るの、後は役所の仕事だと思う


のよ。」


 「僕はね、あの山が、物凄くかわいそうに思えてならないんだ、あいつら


の為にだよ、あの美しい山が、無残な姿になっているんだ。」


 隆一は、早く処理の方向性を出したかったので有る。


 「隆一さんが、何かを考えて要るとは思っていたけど、正かと思ったわ


よ、じゃ~、聞くけど、隆一さんは、何か方法を考えたのよ。」


 「うん、其れで、愛子にも見て欲しいんだ。」


 と、隆一は、パソコンの画面を見せた、その画面には、市長や役所の幹部


達に対し、直ぐに取り掛かれと、各種の方法が書き込まれている。


 其れは、全て、山の神からの命令と言う文言が書かれていた。


 その数日後に市議会の会議が始まり、議題は、山に大量に不法投棄された


産業廃棄物の処理に付いてで有る。


 あの事件以来、市役所の対応が一般市民から注目が集まる中での会議で有


った。


 「市議会議員の皆さんもご存知の通り、数日前に、我が市始まって以来の


大事件が起きました。


 私は、その事件よりも、市民の注目は建設会社社長の自宅地下に大金庫と


言いますか、その中に、現金で5百億円、金の延べ板が百キロと、その他、


未使用の宝石類が数千点が保管されておりました。


 この現金や金塊は脱税した物をわかっておりますが、問題は、これ等全て


が国に返還と言う名目で持って行かれると言う事なのです。」


 その時、議場もだが、一般の傍聴席から異論が出たので有る。


 其れにもまして、議員達からは。


 「市長、何故、国庫に収めるんだ、其れは、我が市の税収では無いか。」


 市長も当然だと思って要るのだが。


 「私も、十分、理解しておりますが、先日の事件以来、国からは、早急に


国庫に収める様にと言われております。」


 傍聴席からも。


 「市長、我が市の財政が赤字なんだよ、其れは、市長も知って要るんだ


ぞ、赤字の補填も出来るじゃないか。」


 市長を初め、役所の返答に対し、議員からも、一般傍聴席からも大反対の


声が続出したので有る。


 隆一と愛子は、その模様をテレビ中継で見ていた。


 この議題に関して市民からも国庫に収める事に対し、大反対が起きたのも


当然で有る。


 其れは、数日間にも及び、議会は、一時中断した。


 その頃、木田は、総理と話し合っていた。


 木田は、現金5百億と百キロの金塊、それに、数千個の宝石類の処分を保


留にし、一時的に金融機関に預ける事を提案し、総理も承諾し、直ぐ、各方


面に対し、指示を出したので有る。


 議会は中断したが、市長は知事との話し合いに向かったので有る。


 其れは、知事と市長の密談と言っても過言では無かった、知事には、総理


からの指示を受け、今後の方策を検討する必要に迫られていたので有る。


 そして、数日後の事で有る、山の神から、知事と市長に対し、指令が出た


ので有る。


 「我は、山の神で有る、知事と市長は、何時までつまらぬ議論をしておる


のだ、その方達は、何のために知事や市長に就任したのだ、選挙の時は、市


民の為などと言って置きながら、何を考えておるのじゃ、美しい山も市民の


財産なるぞ、市民の為にも、早急に処理に入るのじゃ、その方達に任せてお


けば、いつまで経っても前には進まぬ、山の神が今から申し述べる事をよ~


く聞くのじゃ。


 その方達の市ではなく、少し離れた場所に広大な用地が有る。」


 知事は、その用地に大規模なテーマパークを建設する予定だった。


「山の神殿、あの用地は大規模なテーマパークの建設予定地ですが。」


 「知事、山の神も、其れは知っておる、じゃがな、テーマパークとあの美


しい山々を取り戻す事とどちらが大事なのじゃ、市民は、テーマパークより


も、美しい山々を取り戻す事に賛成するであろう。」


 「ですが、既に建設の方向で民間会社とは契約の段階に入っておりますの


で。」


 知事は、財政を立て直す事を選挙の公約にしていたので有る。


 「それは、以前の話じゃ、そち達は、5百億もの金をその建設資金に当て


るつもりで有ろう、だが、テーマパークが完成したとしても、最初の数年間


は黒字じゃが、その後は赤字に落ちるぞ、其れよりも、あの市とその方の


県、更にじゃ隣県をも含め、あの山々を元通りにする事の方が大切だと思う


が、どうじゃ。」


 「山の神殿、ですが、山に投棄された大量の産業廃棄物を一時的に保管す


る場所が必要かと思いますが。」


 山の神は、思い切った方法を指示を出した。


 「知事よ、その様な事は簡単では無いか、テーマパークの建設予定地を一


時的な保管場所とするのじゃ。」


 知事も市長も大変な驚きなのだ、一時的とは言え、産業廃棄物の中に何が


含まれているのかわからないので有る。


 建設予定地付近には緑豊かな土地なのに、その様なところに一時的にして


も、大量の産業廃棄物を保管すると言う事は、緑豊かな自然を破壊する事に


なるのだ。


 「ですが、山の神殿、あの建設予定地の周辺は緑豊かな場所です。


 其処に、何が含まれて要るのかわからない産業廃棄物を一時的だとしても


保管すれば、自然破壊につながると思いますが。」


 「その方達に知恵は無いのか、山の神は、何も、今の状態で保管せよとは


申しておらぬわ、地中に浸透せぬ方法を考えるのじゃ、その方達の頭では、


何の解決策も出ぬわ、民間に頼むのじゃ、民間人の頭は、そち達よりも柔軟


性に長けておるわ。」


 だが、問題が解決したのでは無い、其れは、処理施設が必要になる。


 知事も市長も市内に処理施設を建設出来る場所がないとわかっていた。


 だが、建設会社の社長宅の敷地は広大だった。


 「山の神殿、確かにテーマパーク建設予定地に一時保管場所として使用出


来たとしましても、では、その産業廃棄物を処理する施設は、一体、何処に


建設すれば良いのでしょうか、私達の市には適当な場所が有りませんが。」


 「うん、何を言っておるのじゃ、あの建設会社の社長宅は何処に有るのじ


ゃ、あの社長宅の周辺には住宅も無く、そち達から見れば、人が住む様な場


所では無いと思える様な土地に住宅が有るのじゃ、その敷地は広大で有る


ぞ。」


 「では、山の神殿は、あの場所に処理施設を建設せよと思うされるのでし


ょうか。」


 「その通りじゃ、そちもやっと理解出来た様じゃな、実に簡単では無い


か。」


 「ですが、山の神殿、あの土地は、社長個人の所有物ですので、簡単には


行かないのですが。」


 「そなた達の考えなど初めからわかっておるわ、じゃがな、奴らは、社会


的にはな、二度とあの社長宅に戻してはならぬのじゃ。」


 「えっ、でも、その様な事は、私達が決める事など出来ませんが、我が国


は法治国家なのですから。」


 「このたわけが、一般市民のために有るのか、では、聞くぞ、あの美しい


山々に人間社会にとっては毒と言っても過言では無い物を捨てても良いと法


律には明記して有るのか、そうでは有るまい、法律と言う物は弱い立場の人


間には、最後の砦なのじゃ。


 あの広い敷地であれば十分であろう、その敷地を有効活用してこそ、知事


や市長と言う者で有るぞ、幸いな事に、今、有る地方でこの様な簡単に処分


出来ない物質を試験的に無害な物質にする施設が稼動する事になっておる


わ、その企業に問い合わせれば、その企業も全面的に支援するで有ろう。


 山の神が考えたのじゃ、反対はさせぬ、今からでも各部署から人材を集


め、早急に取り掛かれ、山の神は、これで、次の神に引き継ぐが、次の神は


火の神じゃ、火の神は、山の神の様にのんびり屋では無い、火の神は短気じ


ゃからな、早く行動に移せよ、では。」


 山の神は、一方的に切ったので有る。


 「市長、大変な事に成りましたよ、われわれの行動も全て、あの山の神に


筒抜けでは、なんとも、仕方が有りませんよ。」


 知事は、腕組みし、考え込むのだが、最後とも言うべきなのか、山の神か


らで有る。


 「それと、申し遅れたが、現金や金塊と宝石類の移送はテレビで公開せ


よ、その様にすれば、襲われる事も有るまいからの~。」


 最後の言葉だったが。


 「知事、あれだけの大金ですよ、簡単に移送をテレビで公開せよと言われ


ましても。」


 「なぁ~、市長、我々の考え方を変えてはどうだろうか、確かに、あの大


金を狙う者も居るだろうが、多くのマスコミや市民の目前で犯行に及ぶ事は


困難では無いだろうか、それと、先程、言われたテーマパークの建設予定も


正式な契約はまだなんですよ、山の神が言う様に社長宅の敷地は広大です


よ、その敷地に処理施設を建設したところで、市民からの反対は無いと思い


ますよ。」


 知事は、山の神が指示した内容を実行すると言ったので有る。


 山の神が言う様に山の自然を取り戻す事が先決だと思ったので有る。


 「知事、わかりましたよ、私も、出来る限りの事をしますので、最後の提


案なんですが、我が市に有る銀行は全て支店です。


 県には、数店の本店が有りますので、その銀行に保管させる様に、知事か


ら要請して頂きたいのですが。」


 「其れは、勿論、私が直接出向き、話しをしますので、心配は有りません


よ。」


 「そうですか、有難う御座います。」


 要約、知事も市長も安堵の笑みを浮かべたので有る。


 「ねぇ~、隆一さん、大変な騒ぎになるわよ。」


 隆一は、あえて、今回の事件を大騒ぎに持って行ったので有る。


 「愛子、僕は、別に大騒ぎになってもいいと思ってるんだ、だって、日本


中が注目するって事は、今まで、極悪人が極悪非道な犯罪は、数日か、それ


とも、数ヶ月もすれば、世間の話題にもならないんだよ、その極悪人は数年


もすれば、何事も無かった様に一般社会に復帰して行くんだ。


 あの組長だって同じなんだ、僕はね、警察でも無いんだよ、警察の立場で


は裁く事の出来ない悪党を、僕が、代わりに執行しただけなんだ、だから、


あの時、刑務所に行くよりも辛い生活が待って要ると、山の神が言ったんだ


よ。」


 隆一の豹変ぶりには、愛子も驚きの域を越え、なんとも言えない表情にな


ったので有る。


 其れは、隆一と言う男性は、今までに無いタイプのスナイパーだった、極


悪人を殺す事は簡単だが、それよりも、社長達の様な極悪人達が此れから先


の長い人生を刑務所以上の過酷な道を進まなければならないので有る。


 そして、山の神からの通信が終わった数日後に、市内で昼食中の市長に通


信が有った。


 「オレは、火の神で有るぞ、先日、山の神より引継ぎを受けた、オレは、


山の神の様に優しくは無い、山はどっしりと構えているが、火は、一度つく


と周りの全てを燃え尽くすまで、収まる事は無い、火の神は短気だ、山の神


から受けた指示を何時まで待たせる積もりなのだ、此れからは、火の神が、


お前達の行動を見る。


 オレは、火の神だ、山の神の様に優しくは無い、直ぐ、実行に移せ、それ


が出来なければ、お前達の中から犠牲者が出る事を覚悟するのだ。」


 火の神から一方的な通信で有った。


 市長は、驚きと言うよりも、今、直ぐに行動を開始しなければ大変な事に


なると判断し、各部局の担当者に指示を出したので有る。


 各部局では、既に、各方面に対し手配済みだったが、改めて確認作業に入


ったので有る。


 その頃、テーマパーク建設予定地では、数百台の重機が稼動している。


 それとは別に社長宅では、数十台もの現金輸送車が待機しているのだ。


 周辺には、数百人規模の警察官が警戒に当たっている。


 其れは、現金だけも5百億円も有り、更に、金の延べ棒が百キロと未使用


の宝石類が数千点、これを各銀行本店に輸送するのだが、この模様はテレビ


で中継され、付近一帯には数千人もの一般市民が見守っている。


 現実は、市民から見る事の出来ないのが現金だが、現金輸送車の動きと警


察車両の動きに群集となった市民からは大きなどよめきが何度も起きるので


有る。


 その様子を隆一も愛子もテレビで見ている。


 「隆一さんの計画通りに進んで要るようね。」


 「うん。」


 隆一の返事はそれだけだった。


 「隆一さん、この後は如何するの。」


 「この後って。」


 「この先、処理施設が完成するまで見ているの。」


 愛子の質問は最もなのだ、木田からは暫くの間のんびりと過ごす様にと言


われたが、隆一は、のんびりどころか、この数日間、知事と市長に対し、真


剣に指示を出している。


 山の神は去ったのだから隆一の任務は終了したと言っても良いのだ。


 だが、隆一は、山の神から次は火の神に交代させ、処理施設の完成まで見


届ける積もりなのだろうか。


 「愛子、僕が、何を考えて要るかわかるか。」


 愛子は、隆一が突然何を言い出すのかと思った。


 「今の隆一さんが、何を考えて要るのか、私は、わからないのよ。」


 隆一は、頷き。


 「愛子が以前言った話を覚えているか。」


 「えっ。」


 愛子は驚いた、以前、隆一に何を話したのか覚えて無かったので有る。


 「愛子、以前、君の先祖が持っていた土地が汚染された土砂のために。」


 愛子は思い出した、其れは、隆一に最初の頃に話した内容で有る。


 だが、その話しと、今回の事件がどの様な関係が有るのかと思ったのだ。


 「でも、隆一さん、あの話と、今回の事件と一体、何の関係が有るの。」


 「うん、確かに直接の関係は無いよ、でもね、あの山に大量投棄された産


業廃棄物が周りの自然破壊と川の水質を変えているんだ。」


 隆一は、今回の作戦前に山に出向き、投棄された付近の川を調査したいた


のだ。


 「愛子、僕はね、事前に調査したんだ、大量に投棄された土砂の中には、


正体不明の物質も含まれて要るんだよ、山の近くには川が流れている、その


上流と下流の水質を調べた結果、之は、早急に対策を取らねば大変な事態に


成ると判断したんだ。」


 「じゃ~、川の上流と下流では水質はどうなってるの。」


 愛子も少しは理解を始めたのだろう、と、隆一は思い。


 「うん、上流はね、素晴らしいほど綺麗な水なんだ。」


 愛子は、あの組長と行った川魚料理店を思い出した。


 確かに、隆一の言う通りで、川の上流に行くと豊かな自然と、美しい渓流


と美味しい魚料理を。


 「私も思い出したわ、隆一さんの言う通りよ、川の上流は素晴らしいとこ


ろよ、川魚の料理も本当に美味しいのよ。」


 「うん、其れがね、少し下流に行くと、数十種類の劇薬と数種類の毒物が


発見されたんだよ。」


 「えっ、其れは本当なの。」


 愛子の驚き方は普通では無かった、正か、其処まで汚染が進んで要るとは


思わなかったので有る。


 「其れに、この市内を流れる川には、魚介類の生息は確認出来ないんだ


よ。」


 市内を流れる川は見た目には綺麗で有る、だが、隆一の言う様に魚介類の


生息が皆無と言う事になれば話は別で有る。


 「僕は、何箇所かの喫茶店で話を聞いたんだよ、勿論、その時の僕は国の


役人で水質検査を専門とする捜査官だとバッチも見せての話しなんだ。」


 隆一は、事前に特別捜査官だと名乗り調査を行なっていたので有る。


 「其れで、どうだったの。」


 愛子も知りたくなってきたのだと。


 「うん、市民からは何度も市に対し、川の上流に有る土砂の捨て場を何と


かして欲しいと陳情したと言うんだが、市の役人の説明ではね、あの一帯の


んだって。」


 隆一は真剣な顔で話しをするので有る。


 「そうなのねぇ~、日本じゃ、法律で守られているんだもの。」


 「愛子、法律を守る事は大切な事だよ、だけどね、その法律を悪用する人


間は何時の時代にでも居るんだ、だけど、数百年前だったらね、今、有る様


な化学物質は無かったと思うんだ、殆どが自然な物だからね、時間の経過と


ともに減少するんだけど、現在の化学物質は人間が作り出した物質だから自


然界に戻る事は無いんだ。」


 「其れは、私も、ジョアンナの説明で理解出来たわ、でもね、隆一さん、


之は任務じゃ無いと思うの、だって。」


 愛子も、隆一の気持ちはわかっている、だが、愛子の言う様に、之は、行


政の仕事なのだ、隆一が、其処まで首を突っ込む必要な無いと。


 「愛子、僕もわかってるんだ、でもね、僕は別の考えも有るんだ。」


 「えっ、別の考えもって。」


 「うん、其れはね、僕が名乗っている山の神や火の神って言う正体不明の


人物なんだけど、僕は、此れから任務に役立つと思ったんだ。」


 愛子は、少しわかり掛けてきたので有る。


 「隆一さんは、次からの任務に就いても考えていたの。」


 「うん、そうなんだ、次がどんな指令なのか、僕は知らないけど、日本の


神話に出て来る、八百万の神を使う様に考えて要るんだ。」


 「えっ、隆一さん、八百万の神って、日本の神話に出てくるの。」


 「うん、そうだよ、でも、僕が使った、山の神や火の神が本当はどんな神


なのかは知らないんだ、でも、テレビで全国に中継された事で、例えば、次


の指令でも、僕は、山の神だ、火の神だと名乗る事で、解決が早まる事も考


えたんだ。」


 だが、隆一は、他の事も頭の中にあったが。


 「隆一さん、でもよ、隆一さんが名乗る山の神を別人が悪用する事も考え


られるんじゃ無いの。」


 愛子の考えは当然なのだ、何時の世の中でも、自らの利益になると思え


ば、人間と言う動物は良い悪いの関係なしに利用してきたので有る。


 隆一が名乗る山の神は遅かれ早かれ悪用する人物が出てくるであろう事は


予測出来る。


 「僕も、何れ、山の神や火の神を名乗り、悪事を働く者達が出て来ると思


ってるよ、でもね、愛子、僕はね、最高のスタッフが居るんだよ、其れに世


界に一台しかない特殊なパソコンもね。」


 隆一は、愛子が側に居る事で、此れからの任務も続けて行けると思った。


 特に、隆一が使用するパソコンだ、外見は普通だが、中身が全くと言って


も良いほど特殊なパソコンなのだ。


 「隆一さん、此れからも、私に出来る事があれば何でもするわよ。」


 「僕はね、本当は愛子が側に居るだけで十分なんだ、だから、僕は、何も


心配してないんだ。」


 「じゃ~、此れからは、何をするの。」


 「うん、今は、あの産業廃棄物の処理方法を提案し、其れを実行させるだ


けなんだよ、あの知事も市長も山の神が見方だと知って、此れからは大胆に


進める事が出来るんだと思ってるはずだ、僕はね、其れが目的なんだよ。」


 「じゃ~、隆一さんは、最後まで見届ける必要も無いのね。」


 「当たり前だよ、だって、あの工事、一体、何年掛かると思うんだ、木田


さんには説明するけれど、僕は、有る程度の目安がつけば其れでいいんだ


よ。」


 愛子は案新した、隆一が、そのまま、工事の事までも指示するのかと、其


れが気掛かりだった、隆一が言う様に目安がつく事で、次の任務に入れると


言うもので有る。


 隆一は、少し疲れている様子で。


 「愛子、食事に行こうか。」


 「うん、そうね、私もなんだかお腹が減ってきたわ。」


 「何か美味しいものでも。」


 「そうね、私は、久し振りに御寿司が食べたいの。」


 「じゃ~、行こうか。」


 二人は、ホテルを出て街を歩いた、愛子は、隆一に声を掛け、一年以上が


経つ、大学時代もだが、あの工場に勤めている時とは、今は、全くの別人の


様で有る。


 今まで、数十人のスナイパーを見たが、これほど、変化した男性は居なか


ったのだ。


 「愛子、寿司屋が有ったよ。」


 その寿司屋は大通りを離れ裏地に入った小さな寿司屋で有る。


 「いらっしゃいませ。」


 寿司屋の店員だろうか、柔らかいがはっきりと通る声だった。


 その店は小さいが、客は多く、隆一と愛子は一番奥に座った。


 「旦那、何します。」


 主人らしき男性で有る。


 「じゃ~、まずはビールを、それと、僕は、お造りを適当に、愛子は。」


 「私は。」


 愛子は、数種類を注文したのだ。


 「へい、お持ちどう様です。」


 ビールが出され、二人はビールを飲んだが、隣の客達は、会社の同僚達な


のか、何か議論の最中で有る。


 「課長、先日から、ニュースによく出る、山の神って名乗る人物ですが


ね。」


 「いや~、あの人物のお陰と言うか、山の神のお陰で、我々も此れから忙


しくなるぞ。」


 どうやら、彼らも、山の神の恩恵を受けて要るらしいと、隆一も愛子も思


ったのだ。


 「愛子。」


 隆一が耳元で何やら言ったので、愛子は頷き、暫く会話を聞く事に。


 「だけど、あの市長も大変だね、山の神からは、次々と指示を出される


し、其れが、全部放送されているんだからね。」


 「でも、あの時、一体、何が起きたんでしょうかね、自分もテレビを見て


いましたが、突然、組長の頭の右側から血が噴出したんですから。」


 「うん、私も見たよ、だけど、警官が撃ったとは誰も思って無いよ、日本


の警官では、とても、無理だと思うからね。」


 「課長、ひょっとして、スナイパーじゃないですかね。」


 「スナイパーって、映画なんかに出てくる。」


 「でもね、一体、何処に居たんですかね、スナイパーは。」


 この客達の側にいる隆一がスナイパーだとは知る事も無いので有る。


 警察も辺り一帯を捜したのだが、どこにも人影は無かった。


 「でも、課長、私は、良かったと思ってるんですよ。」


 「えっ、何が良かったんだ。」


 「課長も私も、この町で生まれ育ったんですよ、あの建設会社のために、


どれだけの人達が苦しめられたと思います。


 其れに、あの川だって、私の子供の頃は、あの川で水遊びが出来たんです


よ。」


 「そうだなぁ~、私も覚えているよ。」


 やはり、隆一の思ったとおりで有る。


 「愛子、わかってくれたか。」


 愛子は頷き。


 「隆一さん、よくわかったわ、私も協力するわね、だけど、一つ気になっ


た事が有るんだけど。」


 「何でもいいよ、言って欲しいんだ。」


 「隆一さんは、山を元の姿に戻ってと言ったけど、市長の話の中でテーマ


パーク建設予定地に産業廃棄物の仮保管場所にするって言ったわよ、でも、


あの土の中には毒物も含まれて要るんでしょう、それに、本格的な場所が完


成すれば、また、その場所に移し変えるのでしょう、だけど、あの場所に一


時的とは言え保管するって事になれば数年間は保管するのよね。」


 「うん、そのつもりなんだけど、其れが。」


 隆一は、毒物が外部に出ないと考えていたので有る。


 「でもね、テーマパークといえばよ、幼い子供達も行くのよ、どんな状態


で保管しても長期間になれば、外に出ると思うのよ。」


 「あっ、そうか、あの場所には子供達も多勢行くんだ、之は、大変な事に


なるぞ、何かいい方法は無いかなぁ~。」


 隆一は、少し慌てたのだが。


 「うん、そうだ、あの社長宅の敷地がどれ位有るのか調べてみようっ


と。」


 隆一は、早速パソコンで社長宅の敷地面積を調べた、すると。


 「愛子、有難う、僕は大変な間違いを犯すところだったよ。」


 安堵の表情を見せたので有る。


 その様な会話をする二人だが、近くの客は、話に夢中で二人の会話を全く


聞くそぶりも無かったので有る。


 隆一は、暫く考えて要る。


 「そうだ。」

 

 隆一は、早速に書き込むので有る。


 「我は、山の神で有る、市長は。」


 送ったので、市役所では、突然、山の神からメールで驚き、またも騒ぎが


起きたので有る。


 「はい、私ですが。」


 「市長か、以前、申したテーマパークはその後、どの様になっておるのじ


ゃ。」


 「はい、今、進行中ですが、何か。」


 「うん、実はな、我も調べたのだが、社長宅の敷地は何坪有るのじゃ。」


 「はい、あの土地は3万坪と調査でわかっておりますが。」


 「何だと、では、あの側に有る林は誰も物なのじゃ。」


 「はい、あの林も全て社長の所有物となっておりますが。」


 「うん、其れで、何坪になるのじゃ。」


 「少し待って下さい。」

 

 市長は言ったのだが。


 「市長、其れくらいの事も知らぬのか、あの土地は全部で5万坪じゃ、合


わせて8万坪有るのじゃ、其れで相談だがな、あの林に有る全ての木をテー


マパークに移植するのじゃ、そして、山の土砂を入れ替えたところから、再


び移植するのじゃ。」


 「では、あのテーマパークに土砂の搬入は。」


 「一先ず、中止と言う事で有る。」


 「山の神殿、有難う御座います。


 では、早速、県内の業者を総動員しまして、木の移植に入ります、それと


ですが、山の神様、私の判断なのですが、社長宅に深い穴を掘り、勿論、高


い壁は作りますが、其処に山から運んだ土砂の一次保管と処理設備を建設す


る様に進めております。」


 「ほぉ~、其れは、実に良い考えで有るぞ、之で、テーマパークも無事だ


って事だな。」


 「はい、有難う御座います。」


 隆一と、愛子はそれから、寿司屋を出、ホテルに戻ったので有る。


 市長にメールを送った、その翌日から工事は本格的に開始された。


 「愛子、君のお陰で大切な自然を破壊するところだったよ、本当に有難


う。」


 隆一は、素直に愛子に礼を言ったので有る。


 「私は、別に、隆一さんを責める気持ちは無かったのよ。」


 「うん、其れは十分承知して要るよ、でも、愛子が言ってくれたお陰で、


大きな失敗に繋がらなかったんだ、何も愛子から言われたからだとは思って


無いんだよ。」


 其れが、結果的には良い方向に行ったと思えるので有る。


 「其れで、隆一さん、今後の話なんだけど。」


 「う~ん、まぁ~、暫くはのんびりとしようと思ってるんだ。」


 「でも、山の神の仕事は終わったけど、火の神は、此れからも関わって行


くの。」


 「う~ん、其れが難しいんだ、何処まで介入するか、それとも、出来るの


か、其れが、はっきりとは言えないんだ。」


 その時だった、驚いた事に市長からメールが届いたので有る。


 「山の神殿、私は、市長ですが、此れからの事業に関してなのですが。」


 「其れは、全ての事業なのか。」


 「はい、私は、この事業と申しますか、処理と申しますか、山の神殿から


の提案と、私の考えました方法で行ないたいと考えておるのですが。」


 「其れは、市長、自らが考えたのか。」


 「はい、そのとおりです。」


 市長も、山の神の指示を受け、勿論、山の神の指示にも多くの問題は有る


が、市長は命掛けで行うと考えたので有る。


 「よし、わかったぞ、では、市長は、此れからは、命掛けで行うのじゃ


ぞ。」


 「はい、私も、市長に任期中は全力を注ぎます。」


 「何、其れは、任期が終われば、市長に責任は無いと申すのか。」


 「いいえ、その様な意味では御座いません。


 私が、次の選挙で当選するまでは、引き続き市長の役職に就けるとは断定


が出来ませんので。」


 市長は、任期中だけと言うのだが、それでは、次の市長も同じ仕事を引き


継ぐとは限らない。


 「市長は、何を寝ぼけた事を申しておるのじゃ、その仕事は市長でなけれ


ば出来ないので有るぞ、何が選挙じゃ、その方、選挙のために、その処理事


業を行なうのでは無いのじゃ、市民のためにも、その他の人達のためににも


行う大事な処理事業で有るぞ、その方が真剣に行なうのであれば、全ての市


民が理解するであろう、その為にはマスコミを利用する事じゃ、あえて、テ


レビで何時も放送すれば良いではないか、選挙の為の処理事業では無いと、


市民に理解させるのじゃ。」


 「山の神どの、よくわかりました、私は、処理施設が完成し、処理事業が


軌道に乗るまで市長を続けられなかったとしましても、この事業を最優先課


題として先頭に立って行く事に致します。」


 「うん、良くぞ申した、其れでこそ市長で有る。


 先程、申した内容は任せるぞ、此れからは大変だが、御主の考えた方法で


行なってよいぞ。」


 「はい、有難う御座います。


 それと、話しは変わりますが、山の神の後任には、火の神だとお聞きしま


したが。」


 「あ~、あの火の神か、我は山の神で有るが、火の神は、我、以上に短気


で有るぞ、我の数倍、いや、それ以上で有るぞ、山の神は、その場を動く事


は無いが、火の神は、一度、怒り出すとじゃ、どの神、いや、水の神以外は


別としてじゃ、多くの物を焼き尽くすほどの恐ろしい神で有るので、火の神


を決して怒らせるような事はせぬ事じゃ、それとじゃがなっ、火の神には全


ての内容は伝えて有るからの~。」


 「はい、私も承知しております。


 実は、我が市としましても、あの産業廃棄物の処理に関しても長年苦労を


しておりましたので、山の神殿のお陰を持ちまして、此れからは、正々堂々


と処理事業を行なえると、私を含め、市の幹部も喜んでおります。」


 「其れは、良かったの~、では、宜しく頼むぞ。」


 山の神と市長のメール交換は終わったので有る。


 その数日後から、本格的な工事に入って行ったので有る。


 隆一も愛子も、これで、心配は無くなったと思った。


 「ねぇ~、隆一さん、あの観測車の事なんだけど。」


 「うん、僕も、何時頃、移動させようかと考えて要るんだ。」


 「でも、余り、早く移動させるのも、何か変なのよねぇ~。」


 「そうなんだよ、僕は、今までの事は知らないけれど、早くても、一ヶ月


間は、あの状態にしておかないと、世間は、可笑しいと思うだろうから。」


 「じゃ~、一度、木田さんに聞けば。」


 「そうだなぁ~。」


 隆一は、木田に連絡を入れるので有る。


 「もしもし、吉村です。」


 「隆一君か、この度の任務、大変、ご苦労様でしたね、ついさっきなんだ


けど、総理からも連絡が入り、驚かれていたよ。」


 「えっ、何故ですか、僕は、皆さんが思われて要る様な事は何もしており


ませんが。」


 「いや、違うんだ、実はね、あの山間部の問題なんだが、歴代の知事も市


長も一番の頭痛の種だったんだよ。」


 「でも。」


 「隆一君が名乗った山の神ってね、実態を知って要るのはね、総理と私だ


けなんだよ、総理も笑っておられたよ、一体、何処から、山の神って名前を


考え出したんだってね。」


 「あの名前ですか、僕は、簡単に考えただけなんですよ、だって、問題の


場所は山間部でしょう、だから、山が泣いていると思って、山の神って名乗


った、ただ、それだけの話しですが。」


 「隆一君の発想には驚かされましたよ、其れに、事後処理にしても。」


 「長官、僕は、長官から指令に反したと言われても仕方有りません。」


 「いや、あれで、いいんですよ、此れからも、山の神の流儀で行なってい


ただいても宜しいですからね。」


 電話の向こうで木田が笑っている様でだった。


 「長官、実は、今日電話させて貰ったのは、別の要件なんです。」


 「ええ、何でも、言って下さいよ、君への援助は出来る限りの事はするか


らね。」


 「はい、有難う御座います。


 其れで、何ですが、あの観測車の事なんですが、何時まで、あの場所に置


いておけば良いのですか。」


 「まぁ~、そうですねぇ~、後、10日間くらいは今のままで宜しいです


よ。」


 「じゃ~、僕は、その間、何をすればいいんですか。」


 「隆一君、まぁ~、愛子さんと、暫くはのんびりと過ごして下さいよ、別


に、何日とは決めてはおりませんからね、一ヶ月でも宜しいですよ。」


 「えっ、そんなに長い間もですか、でも、次の指令も有ると思うんです


が。」


 隆一は、何故、それ程、長期間も休む必要が有るのかわからないのでだ。


 「隆一君、実はね、山の神の存在が、今、大変な注目を浴びているんです


よ。」


 「えっ、山の神がですか。」


 「そうなんですよ、警察庁の内部からも、山の神が、一体、何者なのか、


其れよりも、あのメールが何処から発信されているのか追求を始めているん


だがね。」


 「でも、長官は、何も心配無いって言われましたが。」


 「そうですよ、今も調査しているが、発信元を探し出す事は、殆ど、不可


能なんだ、それ程、あのパソコンに内臓されたソフトは素晴らしい物なんで


すよ。」


 「はい、其れは、僕も大変感謝をしておりますが。」


 「それでね、隆一君、私もね、暫く世間の動きを見たいと思って要るんで


すよ。」


 「長官、世間の動きって、どんな意味なんですか。」


 「あの事件以来、私も数人の人物に聞いたんだよ、するとね、山の神っ


て、実態がねわからないから、公安も其れにあやかろうって言うんだよ。」


 「でも、長官、他の人達が山の神を名乗る事に、僕は反対なんですよ。」


 「うん、そのとおりなんだ、私は、何も言ってないが、その内に、偽者が


現れる事も有ると思うんだよ。」


 「僕は、相手が誰であろうとも、山の神を名乗る事を許しませんよ、たと


え、其れが、警察の関係であってもですよ、断固反対します。」


 「隆一君、私は、その言葉を待っていたんだ、此れからも、山の神を名乗


っていいよ、私も、前面的に応援したいのだがね、私の立場上出来ないと思


うので、影から応援しますよ、それと、この話は、総理からも承諾を得てい


ますからね。」


 「本当なんですか、じゃ~、僕のやり方でいいんですね。」


 「勿論ですよ、だから、暫くはのんびりとして欲しいんですよ、私は、此


れから有る人物と会う事になっているんでね、済まないが、これで失礼する


よ。」


 木田は、一方的に電話を切った。

 

 「隆一さん、良かったわね、私も、木田さんの言う通りだと思うのよ、だ


って、あの事件以来、どのテレビを見ても、山の神が話題の中心なんだも


の。」


 「へ~、そんなに山の神が話題になっているのか、僕は、何にも知らなか


ったよ。」


 「だって、隆一さんたら、あの日から一日中、パソコンで知事や市長との


メールのやり取りでしょう。」


 隆一は、テレビの放送を見る事も出来なかったので有る。


 それ程、事後処理に対し、必死と言っても良いほど考え込んでいたので有


る。


 「市長や知事は連日テレビで処理問題について、専門家や市民から意見を


聞いて要るのよ。」


 「じゃ~、市長は、毎日、テレビで報告しているのか。」


 「だって、山の神の命令だもの、だから、他の番組よりも、市長を初め、


役所やその他、関係する事業内容について説明するのよ、其れに、一般市民


も大変な興味を持っているから、本当に物凄いのよ、其れにね、視聴率も大


変なんだって。」


 「へ~、そんな事って有るのか、僕は、初めて聞いたよ。」


 「其れが、特番の様に連日数時間も放送されているのよ。」


 愛子は、テレビのスイッチを入れたので有る。


 テレビの画面には、市長が各部署に対し、次々と指示を出す様子が映って


いるのだ。


 その場所は、市長室ではなく、会議室をオープンにして要る、その会議室


には、県内、市内を問わず、多くの業者も着て指示を受け、業者達も大急ぎ


で現場に向かう様子が映っている。


 テレビカメラも数台設置されているが、どの放送局も、市長や担当者に対しては質問


はせずに、カメラだけが動きをとっているのだ。


 各マスコミも暗黙の了解なのか、質問は一切せず、静かに見ていると言う


状況なのだ。


 「ねっ、隆一さん、凄いと思わない、私も、この市役者に何度か行った事


が有るんだけど、あの時以来、此処は、まるで戦場の様な忙しさなのよ。」


 「ふ~ん、でもね、僕は、役所って、之が本当の仕事だと思うんだ。


 今までは、市民の事など全く気にせずに、只、時間から時間まで、その場


所でのんびりと仕事をしていたと思うんだ。」


 「うん、そうよね、私も、実感としてわかるわよ、でも、今は、山の神か


らの指示と言うよりも、命令でしょう、其れに、今は、火の神って、彼らに


すればよ、山の神以上に恐ろしいと思っているのよ、だから、どの部署でも


本当の意味で真剣に仕事をしているわよ。」


 「へ~、そんなに変わったのか、僕は、今まで、役所って殆ど行った事が


無いからわからないんだよ。」


 隆一が、役所に行く事はないと言うのは本当かも知れない。


 だが、其れは、役所などの行く様な用事が無かったなのだろう、と、愛子


は思って要る。


 「隆一さん、私ねっ、あの市長の姿を見ていると、なんだか生き生きとし


ている様に思えるのよ、だって、今までは、何かを行いたいと思ってもね、


会議で反対の意見が有って、思う様な仕事が出来なかったと思うのよ。」


 「じゃ~、あの市長は、今度の処理事業は楽しくて仕方が無いと言うの


か。」


 「私は、その様に思うのよねっ、その様子が毎日数時間も放送されている


でしょう、あの市長は、今や時の人って事になるわね。」


 「じゃ~、他の都市からも注目されているんだ。」


 隆一は、やっと、肩の荷が下りた様な気がしたので有る。


 その現象は、地方都市にも広がって行き、その為、地方に存在する反社会


組織の者達にも及んできたので有る。


 何時、自分達の組織に対し、山の神と名乗る、実態の不明な人物からメー


ルが送られてくるのかわからず、地方の組織の中には、警察に解散届けを出


す組織まで現れたので有る。


 だが、警察は、解散したとは全く信じていないのだが、隆一が、撃った一


発の弾丸がその様な方向になったのだと。


 一方、木田は、新たな問題を抱えていた、その問題とは、今も昔も有る汚


職だ。


 昔の汚職と言えば現金だが、今の汚職は実に巧妙で簡単には摘発できない


ので有る。


 だが、東北地方の都市では大昔から大規模な汚職が行なわれて要ると噂が


流れている、だが、今も、どの様な方法で行なわれて要るのか、それがわか


らないので有る。


 今も、証拠らしき物も無く、果たして、その噂が本当なのか調査する必要


が有る。


 其れは、警察の面子にも関わる事なのだ。


 木田は、この汚職が行なわれて要ると言う噂を信じ調査を始めたが、相手


は数段も上を行くので調査は失敗に終わったので有る。


 之は、簡単には解決できないと考え、隆一に指令を出す事を考えた、だ


が、隆一には、長期間の休みを取らせる必要が有る。


 初めての任務で、隆一の神経は相当疲れていると考えていた。


 その頃、数人の人物が日本に向かう飛行機に乗っている。


 一方、隆一は愛子に連れられ、川魚の料理店に向かっていた。


 「愛子、一体、何処に行くんだ。」


 「其れはね、秘密なの。」


 と、愛子は微笑む、その料理店は、あの山間道路を上り、奥まったところ


に有り、一時間ほどで、タクシーで到着したが。


 「愛子、此処は。」


 「そうよ、此処の川魚の料理は本当に素晴らしいのよ、だって、あそこを


見て。」

 

 愛子が指差したところには、小さなと言っても良い池が有り、その池には


川魚が泳いでいる。


 「えっ、こんなところに料理店が。」


 「そうよ、あの池に魚が泳いでいるのよ。」


 愛子は、隆一を店内に連れて行くのだ。


 店内は殆ど満席に近く、二人は予約席と書いて有るテーブルに案内され。


 店の主人は、愛子の事を覚えていた。


 「お客さん、久し振りですね。」


 「あら、私の事を覚えていただいて。」


 「勿論ですよ、こんな美人を忘れる様じゃ~、私も引退させられますから


ね。」


 店主は笑うので有る。


 「じゃ~、ご主人にお任せするわね、あっ、そうだ、その前にビールお願


いね。」


 「はい、勿論で、特別に冷えたビールをですね。」


 店主は、何か嬉しそうな顔付きで有る。


 「ねぇ~、ご主人、何か嬉しい事でもあったの。」


 「奥さん、あっ、失礼、お嬢さん、私もね、実はテレビを見てたんです


よ。」


 隆一も愛子も直ぐにわかったが。


 「ご主人、私達は、此処の人間じゃ~無いのよ。」


 「そりゃ~、言葉使いでわかりますよ。」


 「私は、以前、ここの料理を頂いた事を主人に話したのよ。」


 「えっ、ご主人と言われますと、奥様でしたか、私が、もっと若ければね


ぇ~。」


 またも、店主は笑うので有る。


 「ねぇ~、ご主人、テレビで、何か放送されてるの。」


 「いや~ね、実を言いますとね。」


 「は~い、特別に冷えたビールです。」


 店員が、ビールを持ってきた。


 「隆一さん、じゃ~、乾杯。」


 と、二人は、ビールを飲み。


 「いや~、久し振りに、こんな冷えたビールを飲んだよ。」


 隆一は、もう一口飲んだので有る。


 「ねぇ~、ご主人、先程の話なんだけど。」


 愛子は、わかっているのだが、どうしても聞きたいので有る。


 「私は、地元の人間なんですがねぇ、奥さんも気づかれたと思いますが、


此処に来る途中に。」


 「あっ、あの土砂を捨てた場所の事なの。」


 「ええ、そうなんですよ、あんな物が出来るまでは下流にまで綺麗な水が


流れていたんですよ、ですから、あの場所を少し下ったところでは、年中、


魚を釣る人達が来られていましたのでね、下流には数十軒もの旅館があった


んですよ。」


 「へ~、そんな美しいところだったの、で、その旅館は。」


 「勿論、今は、全部無く成りましたよ、だって、年中、ダンプカーが土砂


や、何かわからない物を運んでくるんですよ、其れが元で次第に川も汚れ、


今では、魚どころか、何も無い川になってしまったんですよ。」


 愛子は、頷き。


 「大変だったのね。」


 「そうなんですよ、其れはね、あの建設会社と、その兄弟の責任なんです


よ。」


 この店主は、川魚の料理店を経営している、釣り人に収穫無ければ、店の


魚を分け、其れが、釣り人達の中で評判となり、川で釣りをせずとも、此処


の料理だけを目的に来る客も来る様になったので有る。


 「でも、ご主人が喜ぶ様な事であったの。」


 「大きな声じゃ~言えませんがね、山の神って、名乗る、謎の人物がね、


あいつらをやっつけてくれたんですよ、町の者はね、そりゃ~、大喜びなん


ですよ。」


 「でも、山に捨てられた土砂はそのままなんでしょう。」


 「いいえ、其れがね、違うんですよ、山の神の命令で、知事や、市長が


ね、先頭になって、あの土砂と処理する事になりましてね。」


 隆一は、何も聞かず、ビールを飲み、魚料理を食べているのだ。


 「愛子、本当に、この料理美味しいよ。」


 「隆一さん、私が、言ったとおりでしょう。」


 店主の顔はほころび。


 「旦那さん、私もね、これだけは自慢出来るんですよ、だって、私の息子


が育てた川魚ですからね、お客さんに喜んでいただければ、其れで、幸せな


んですよ、有難う、御座います。」


 店主は嬉しそうな顔で言ったので有る。


 「ねぇ~、隆一さん、あの土砂の処理だけど、簡単に終わるの。」


 「いや~、其れは無理だよ、あれだけ大量に捨てられたんだから、其れ


に、店のご主人が言う様に昔の川に戻すなんて、十年、いや、それ以上の年


月が掛かると思うよ。」


 「旦那さん、本当に元通りの川に成りますかねぇ~。」


 「其れは、出来ると思いますよ、だって、今、ご主人が言われましたよ


ね、市長が先頭になっていると。」


 「でも、市長も大変ですがねっ、でも、其れで良かったと、私は、思いま


すよ、だって、あいつらが隠していたお金で仕事が出来るんですからねぇ


~。」


 店主の顔は元気そのもので有る、店内の客も、川魚の料理に満足した様子


なのだ、二人が食事を終わった頃、迎えのタクシーが来た。


 「奥さん、また、来て下さいね。」


 店主は、手を振り、二人はタクシーに乗り、のんびりと風景を見ながら帰


って行くので有る。


 明くる朝、郵便が届いた。


 「其れは。」


 「うん、この航空券だと、ひよっとしたら、あのお城に行けるかも知れな


いぞ。」


 「えっ、本当なの。」


 愛子の目が輝いたので有る。


 「だって、見てご覧よ。」


 隆一は、到着予定の空港名を見せると。


 「「あっ、本当だわ、でも、何故、今頃に。」


 「うん、僕も、理由がわからないんだ、でも、久し振りにシュルツさん達


に会えると思うだけで、僕は嬉しいよ。」


 「そうね、私も、何か、急に気分がよくなってきたわ。」


 その頃、隆一の両親も元にも郵便が届いたので有る。


 「お父さん、大変よ、この封筒の中身を見てよ。」


 「え~、一体、何が入ってるんだ。」


 「それがね、二人の航空券なのよ、それも、外国行きなのよ。」


 二人は、何が、なんだかわからないので有る。


 「でも、お父さん、私、外国に行くと言ってもパスポートがないのよ。」


 「そりゃ~、オレだって無いよ。」


 「吉村さ~ん、書き留めで~す。」


 と、また、郵便が届いた。


 「お父さん、お父さん、大変よ。」


 「何だよ、また、何か届いたのか。」


 「今度はね、本当に大変なのよ、だって、お父さんと私のパスポート


が。」


 「えっ、そんな馬鹿な話しが有るか。」


 言ったが、其れはまさしく本物のパスポートで有る。


 「お父さん、何だか、気味が悪いよ。」


 「うん、オレもだ。」


 「お父さん、中に手紙が入って要るよ。」


 手紙を読んだのだ、其れは、木田からだった。


 読み終えると。


 「お父さん、どうしても来て欲しいんだって。」


 「うん、その様だな、オレは、明日、社長に言って休暇を貰う事にする


よ。」


 その頃、隆一が勤めていた会社の社長と工場長にも同じ様に航空券が届い


たので有る。


 「工場長は居るかね。」


 社長は、直ぐに工場長に連絡を入れたので有る。


 「社長、私です、今、電話をと思っておりましたところで。」


 「やはり、工場長にも届いたのか。」


 「はい、手紙には、木田長官が書かれたようです。」


 「その様だなぁ~、まぁ~、行く事になるだろうから。」


 「はい、わかりました、じゃ~、空港で。」


 社長と工場長も行く事になったので有る。


 3組は、別々の飛行機に乗り、最初に着いたのが、社長と工場長だった。


 社長と工場長、其れに、吉村夫妻は、何も知らされて無かったのだが、搭


乗し、空港を離陸して数時間経った頃に、有る国から機長に連絡が入り、こ


の二組の乗客は到着後、一般客とは別の出口から、そのまま、待機している


ヘリコプターに載せる様にと言われたので有る。


 其れは、普通では、考えられない様な出来事に社長も工場長も、其れに、


吉村夫妻も驚きの連続なのだ。


 二組はヘリに乗せられ城に向かったので有る。


 その数時間後、隆一と愛子も到着し、同じ様にヘリに乗ったので有る。


 「愛子、やはり、お城に行くんだ。」


 「そうね、でも、一体、何が有るのかしら。」


 「うん、僕も、訳がわからないよ。」


 その頃、先に到着した二組は、城で、服を着替えていた。


 「お父さん、この服は。」


 「うん、オレはね、多分、この地方の民族衣装だと思うんだ、でも、母さ


ん、本当によく似合うよ。」


 「お父さんだって、とっても素敵ですよ。」


 「だけど、一体、何が有るんだろうか。」


 その時だった。


 「支度が出来ましたら、お部屋に案内いたしますので。」


 シュミットだった、こんな時は、シュミットの出番なのだ。


 「お父さん、あの方の日本語、大変、上手よね。」


 「うん。」


 吉村夫妻は、2階の会議室に案内されるので有る。


 シュミットは、吉村夫妻の案内を終えると、今度は、社長と工場長も案内


したのだ。


 勿論、社長も工場長も民族衣装を着用している。


 二組が案内された会議室は、日本の会議室とは、全く違う造りなのだ、其


処には、既に、シュルトを初め、ジムや加藤、其れに、ジョアンナもアンナ


も静かに座っていた。


 「隆一君のご両親と、元の勤務先の社長と工場長、本日は、大変、お忙し


いと思いましたが、ご無理を承知で来ていただいたのは、特別な理由が有り


ますが、その説明は後程致しますので、少しお待ち下さい。」


 シュミットの言葉で両親も社長や工場長も頷くので有る。


 そして、シュルツは、シュミットに合図したので有る。


 「では、本日のスペシャルゲストの登場です。」


 シュミットの合図で、隆一と愛子が登場したので有る。


 隆一も愛子も着ている衣装は、この地方の結婚衣裳だったが、二人は、ま


だ、何も知らない。


 隆一と愛子が驚く前に、隆一の両親と社長も工場長も大変な驚き様で。


 「えっ、隆一じゃないか、一体、此処で。」


 その時、突然、ウエデングマーチが流れたので有る。


 「本日、只今より、隆一様と愛子様の結婚式を挙行致します。」


 シュミットの言葉で、愛子の目からは大粒の涙が頬を伝って行く。


 二人が席に着くと。


 「では、只今より、挙行致します。


 隆一様、愛子様、御立ち下さい。」


 二人が立つと、シュルツが前に行き、二人に宣言をさせ、其れが、終わる


と、指輪の交換だってが、その時、一人の女性が現れたので有る。


 「えっ、洋子。」


 愛子は思わず声を出したのだ、彼女が、日本から二人のために、指輪を持


ってきたので有る。


 洋子とは、現総理の娘で、愛子の姉の様に思う存在なのだ、その後、指輪


の交換も終わり、恒例のキスで有る、この城に居る誰もが、二人を祝福して


いるのだ。


 二人が席に着くと。


 「実は、この結婚式を依頼した人物ですが、ご両親や社長も工場長もご存


知だと思います。


 今から、その人物からのビデオレターをご覧頂きますので。」


 シュルツが合図すると、全員の前に大きな画面が下りてきたのだ。


 「愛ちゃん、本当におめでとう、愛ちゃん。」


 そうだ、愛子も両親が居なかったので有る。


 「あっ。」


 と、小さな声で愛子が言った、その女性の隣に、現在の総理がにこやかな


顔で座っている。


 「愛ちゃん、この家を覚えていると思うよ。」


 その家は、総理の官邸ではなく、総理個人の自宅なのだ、何時もの堅苦し


い姿でなく、普段着の総理だった。


 「愛ちゃんが、何時も遊んでいた時の家だよ、今日は、私は、総理じゃな


いんだ、君の親代わりとして、隆一君との結婚式を何とかして挙げたいと思


ってたんだ。」


 「そうよ、主人も、私も、愛ちゃんを本当の子供と思ってるの、それで


ね。」


 「其れは、僕から話すよ、実は、シュルツとは、長年の友人なんだ、隆一


君の、ご両親にも、社長と工場長にもね、何も説明しなかったのは、申し訳


ないと思っております、それで、シュルツに何とか、二人の結婚式を挙げさ


せたいと頼んだんだ、シュルツはね、愛ちゃんの其方の親代わりだと言う事


で、簡単に話しが纏まったんだ、他に話したいことは有るんだが、其れは、


洋子に持たせてので、後で見て欲しいんだ、隆一君、愛ちゃん、本当におめ


でとう、君達には、申し訳無いが、私の、今の立場上、本当はね、その場に


行きたいんだが、行けない事情を許して欲しい。」


 総理のメッセージは、一応、終わったのだが。


 「日本のお父さん、お母さん、私は、この城の城主で、シュルツと申しま


すが、実は、彼とは、長年の友人関係と言っても、直ぐには理解できないと


思いますが、社長さん、工場長さん、私を覚えておられますか。」


 「シュルツさん、私も、初めは直ぐに気が付かなかったんですが、貴方


は、今、初代の世界チャンピオンだとわかりました。」


 「やはりね、あの当時、社長さんは、日本チャンピオンでしたが、あの


後、今の総理との付き合いが始まったのです。


 隆一君の事も愛子の事も、私は、総理から聞いておりましたので、直ぐ


に、手配をしたのです、本当を言えば、隆一君のご両親には日本式が良かっ


たと思いました。でも、私は、別の意味で本当の結婚式を考えました。


 今、皆さんが着ておられます、衣装は、この国では、最高の結婚式の伝統


衣装なの普通の民族衣装では有りません。


 今は、王制では、有りませんが、昔の貴族の結婚衣裳なのです。


 私と、この城の関係者全員で決めましたので、ご両親には、お許しを願い


たいと思います。」


 その話を聞いていた隆一の母親は涙が止まらず、何度も、何度も、涙を拭


くのだ、隣の父親も同じだった。


 それ程、隆一も愛子も、この城では、みんなによくされていたと言う事な


のかも知れないと両親は思うのだ。


 「それと、今回の結婚式も大切なのですが、本当は、之からが本番です。


 皆さんも平服に着替えて頂き、広場に集まって下さい。


 この城がはじまって以来の行事が有りますので、でも、之は、私が考えた


のでは有りませんので、隆一君が、一年間、この城で生活をしましたので、


私達全員が、隆一君も愛子も、今では身内だと思って、全員が参加しますの


で、私も、実は、一体、何が起きるのか知りません。


 では、ご両親も社長、工場長さん達も、一度、部屋の戻って下さい。」


 シュルツが頭を下げたので有る。


 隆一の両親は、愛子に近づき。


 「隆一、だけど、よくもまぁ~、こんな美しい女性がお前の奥さんになる


なんて、とてもじゃ無いが信じられないね。」


 愛子は、涙が止まらないのだ。


 「お父様、お母様、初めてお目にかかります。


 私は、今、本当になんて言って良いのかわかりませんが、幸せです。


 正か、こんな事になるとは思っても見なかったので、私は、どの様な言葉


でお礼を言って良いかわかりません。


 私は、ご両親に申し上げます、私は、隆一さんを一生愛し続けます。


私は、何も知らない不束者ですが、何卒、宜しくお願いします。」


 愛子の涙を、母は、そっとハンカチで拭うので有る。


 「愛子さん、私達も事よりも、隆一の事を宜しくお願いします。


 隆一は、政府の仕事だと言っておりますが、愛子さんには、大変、ご迷惑


だとは思いますが、どうか、許して下さいね。」


 「はい、有難う、御座います。


 私の出来る事はなんでもしますので、それと、お母様、私に、隆一さんの


好きな料理を教えて頂きたいのですが。」


 母親はニコットして。


 「愛子さん、隆一に好き嫌いは無いの、だから、愛子さんの流儀でいいと


思うのよ、で、若しも、隆一が文句を言ったら、私に言って下さいよ。」


 優しく言ったので有る、その時。


 「お姉さん、本当におめでとう、父と母からのメッセージを渡すので時間


が有れば見てね。」


 「洋子ちゃん、本当に有難う。」


 「愛子、洋子さんって。」


 「総理のお嬢さんなのよ、私が、一歳年上だから、子供の頃から姉妹の様


にして育ったのよ。」


 「えっ、じゃ~、総理は。」


 「本当の事を言うとね、私の両親が早く亡くなったの、でもね、総理の家


とは隣同士でね、私の、日本の両親なのよ。」


 「そんな話とは知らなかったよ。」


 「だって、其れは、私個人の問題だもの。」


 「お姉さん、本当はね、両親がどうしても行きたいと言ったのよ、でも、昔


だったら何の事は無かったんだけど、今は、総理と言う立場でしょう、其れ


で、私が代理として出席したの。」


 「でも、洋子さん、シュルツさんとは。」


 「私の聞いた話しでは、大学時代、社長さん達を含め、世界中のアーチェ


リー仲間が集まって、本当の世界一を決めようって話になったんだって、日


本からは社長さんと工場長さんが、私の父は補欠だったの、其れでね、シュ


ルツさんが初代の世界一になったの、でも、社長さんも確か3位だって聞い


たんだけど、あの時、準備を手伝ったのが父だったのよ、其れで、父とシュ


ルツさんが知り合いになったと聞いたんだけど。」


 「じゃ~、総理が今日の結婚式を。」


 「うん、そうなのよ、だって、父もお姉さんに早く子供と言うよりも、父


はね、孫の顔が見たいと、何時も言ってるんだもの。」


 愛子は、涙が止まらないので有る。


 「お話中、誠に申し訳御座いませんが、着替えの方をお願いしたいと思い


ます。」


 シュミットは、早く着替えを済ませて欲しいと言ったのだ。


 「じゃ~、僕達も着替えに、父さんも母さんも早く着替えをね。」


 「うん、わかったけど、一体、何が起きるんだろうね。」


 母は、何が起きるのか知りたい気持ちもあったが。


 「まぁ~、何でもいいから、母さん、早く着替えに行こう。」


 「うん、そうだね。」


 と、隆一達も部屋に戻って行くので有る。


 4人は、30分ほどで着替えを終わり、城と農場の中程に有る、大きな広


場に集まったので有る。


 4人は、大変な驚きで、其れは、農場と牧場から殆どの仲間が集まってい


たのだ。


 「社長、一体、何が起きるんでしょうかね。」


 「私に、わかる訳がないじゃないか。」


 社長も工場長もまだ何が起きるのか知らないのだ。


 「お父さん、多勢の人達が集まってるけれど、一体、どうなるの。」


 「う~ん、僕にもわからないよ、だって、突然の結婚式だろう、でも、大


変な人数だね。」


 「そうよね、この人達全員がお城で働いているなんて。」


 「でも、みんな、隆一達の為に集まってくれたと思うだけで、本当に嬉し


いよ。」


 父親は、そっと、胸のポケットから、一枚の写真を取り出したので有る。


 「お父さん、其れは。」


 「うん、何か有ると思って、兄貴と姉さん、其れに、子供の頃の隆一と写


した写真なんだ。」


 「私もね、本当は持ってきたのよ。」


 「兄貴、姉さん、見てくれたか、隆一は、本当に素晴らしい結婚式を挙げ


てもらったんだよ、それも、日本の総理が秘密に進めていたんだ。」


 両親は、隆一の生みの親の写真を持参したので有る。


 「お兄さん、お姉さん、見ていただけましたか、世界一の結婚式でした


よ、それにね、愛子さんって言って、とっても、美人なのよ、どこか、お姉


さんに似ている様な気がするのよ。」


 その時、隆一と愛子も着替えを済ませて出てきたので有る。


 「では、今から、隆一様と愛子様の結婚をお祝いして、パーチィを始めま


~す。」


 何処かで聞いた声だった、其処に2頭の馬が引きつられてきたのだ。


 「あっ、あの馬は。」


 そうだ、隆一が、この城で生活していた頃に乗っていた馬だったのだ、も


う、一頭は、愛子が乗っていた馬だった、途中から二人に近づき、二人に顔


を寄せてきたので有る。


 両親と社長達の側には、解説するために加藤が居る。


 「お父さん、お母さん、あの二頭は、隆一君と愛子さんの愛馬なんです


よ。」


 「えっ、じゃ~、馬は、二人の事を覚えているの。」


 「勿論ですよ、この牧場では、全員、専用の馬がいるんですよ。」


 「お~い、隆一も愛子さんも早く乗るんだ、早く。」


 加藤が言ったので有る。


 その時、牧場の方から、数百頭の牛がゆっくりと来るのが解ったのだ、そ


の直ぐ側には、牧場のカウボーイが居た。


 「お父さん、あれって、本物のカウボーイなんですかね。」


 「わぁ~、物凄いよ、映画を見ている様だ。」


 「お父さんもお母さんも、社長さん、工場長さん、彼らは、本物のカウボ


ーイですよ。」


 「わぁ~、本当ですね、其れにしても、たくさんの牛ですね。」


 「お母さん、本当の話を言えば、この牧場に一体、何頭の牛がいるのか、


誰も知らないんですよ。」


 「えっ、そんなに多くいるんですか。」


 「はい、多分ですが、一万頭ではきかないと思いますよ、それとですが、


カウボーイも、本物ですが、腰の拳銃も馬の鞍に収めているライフル銃も全


てが本物なんです。」


 「えっ、本物なんですか、隆一から聞きましたが、この牧場には狼の大群


がいるって本当なんですか。」


 「ええ、勿論、本当ですよ。」


 「お父さん、私は、怖いですよ。」


 「うん、僕もだ。」


 側で、社長も工場長も、少しだが顔色が変わったので有る。


 「其れは、心配は有りませんよ、この城に近づく事は有りませんからね、


それに、カウボーイの全員は射撃の名手ですからね、その中でも、隆一君は


一番ですよ。」


 「えっ、そんな話、隆一から聞きましたけれど、狼を一発で仕留めてって


言うんですがね、私達は、今でも、本当なのかって思って要るんですよ。」


 「お父さん、お母さん、その話は本当なんですよ、あの時は、我々も本当


に驚いたんですから。」


 その時だった、牛も全部牧場に戻って行った頃、数十人のカウボーイが拳


銃を撃ち進んで来るので有る。


 「社長、我々は、映画の中に居る様な気分ですね。」


 「うん、私もだよ、だって、こんなの映画の中でしか見た事が無いからね


ぇ~。」


 「あっ、お父さん、隆一ですよ、其れに、愛子さんもよ。」


 「本当だ、兄貴見てるか、隆一は、本物のカウボーイだ、見事だよ。」


 その時、丁度、隆一と愛子は、両親の前に来たので有る、それと、同じ時


に5頭の馬が連れられてきたのだ。


 「ご両親と社長、工場長もどうぞ、洋子さんもですよ。」


 加藤は馬に乗って欲しいと言ったのだ。


 「えっ、私、其れは、無理ですよ、だって、今まで、馬に乗った事が無い


んだもの。」


 言うのだが。


 「母さん、心配ないよ、この馬は、牧場でも一番優しい馬なんだから。」


 「でも、怖いよ、だって、こんな大きな馬だもの。」


 確かに、馬は大きいのだが。


 「母さん、馬の目を見てよ、本当に綺麗な目をしてるから。」


 隆一は、母親に馬の目を見て欲しいと言ったのだ。


 「それにね、母さん、馬の首を撫でてよ、馬はね、嬉しそうな顔をするか


ら。」


 「本当かい、でもね。」


 言って、恐々、馬の首を撫でると、馬は、少し首を横に振り、うれしそう


に、縦に振るので有る。


 「わぁ~、本当だ、お父さん。」


 「うん、本当だ、じゃ~、乗って見るか。」


 「私達全員でサポートしますからね、大丈夫ですよ。」


 と、数十人のカウボーイが寄ってきたのだ、そのカウボーイは、馬の側に


来て、馬の首を優しく撫でるので有る。


 「本当に大丈夫ですよね。」


 母親は、心配性なのか、それでも、意を決したのか。


 「えい。」


 と、意気を付け、其れに合わせてカウボーイも手助けするので有る。


 「あ~ら、本当だ、お父さんも早く乗ったら、馬の背中に乗ると本当に高


いわよ。」


 母親は嬉しそうに声を上げたので有る。


 その後、父親も社長も工場長も洋子も乗り、暫く、広場を回るので有る。


 其れは、僅か、10分ほどだったが。


 「お父さん、馬って、本当に綺麗な目をしてるわねぇ~、私、今まで


は。」


 「うん、そうだよなぁ~、日本じゃ~、こんなに優しい馬の目を見る事も


無いからなぁ~。」


 其処え、隆一と愛子も着たので有る。


 「父さん、母さん、どうだった。」

 

 「うん、私、此れから乗馬を始めようかしらねぇ~。」


 と、言って笑い、本気とも取れる様な話をするので有る。


 「隆一君、このお城に、一年間も生活してたんだと、今、初めてわかった


よ。」


 その時で有る。


 「さぁ~、皆さん、此れから、大バーべキュウ大会をするわよ。」


 アンナと農場の人達が大量のソーセージと、肉や野菜を運んできたので有


る。


 「お父さん、之はね、今日の朝、出来たばかりのソーセージなんだって、


今からね、カウボーイの人達が牧場の見回りに時にするバーべキュウをする


んだって、さっき、ジムから聞いたんだよ。」


 「じゃ~、隆一が言ってた焚き火でソーセージをかい。」


 「うん、そのとおりだよ、社長も工場長も洋子さんも、このソーセージ


は、日本じゃ食べる事が出来ないんです。」


 「本当なのか、隆一君も、このソーセージが。」


 「そうなんですよ、このお城では、殆どが自給自足なんですよ、野菜は全


部無農薬ですからね。」


 隆一も、我が家に帰って着た様に嬉しそうな顔付きになっている。


 「さぁ~、みんな、食べていいわよ、今日は特別だからね。」


 アンナも一緒になって楽しそうで有る。


 「隆一さん、私、なんて言ったらいいかわからないの、だって、お父様も


お母様も来ていただいたでしょう、其れに、社長さんも工場長さんも、私


は、世界一幸せな女だと思うの。」


 「うん、でも、総理に感謝するよ、だって、僕は、愛子が総理と。」


 「隆一さん、私と洋子は姉妹なのよ。」


 側では、洋子も頷いている。


 「お姉さん、本当は両親も参加したいと思ってたのよ、だけど、父の立場


上。」


 「洋子、いいのよ、だって、私の育ての両親だもの、気持ちだけで十分な


のよ。」


 「隆一、愛子さんを泣かせる様な事があったら。」

 

 ジムが突然言ったので有る。


 「おい、隆一、オレ様とライフル銃の勝負だ。」


 一人のカウボーイがやってきたのだ、手にはライフル銃を持って要る。


 「辞めとけよ。」


 「何故なんだよ。」


 「だって、ジムが負けたんだぞ。」


 加藤は笑うので有る。


 「えっ、其れは本当なのか、ジム。」


 「うん、本当だよ、隆一の腕前には脱帽したよ。」


 「じゃ~、辞めた、その代わり、隆一の腕前を見せてもらいたいんだ。」


 このカウボーイも知って要るのだが、両親と社長、工場長に見せたいと、


ジムが計画したので有る。


 「でも、いいんですか。」


 「隆一、見せてやれよ。」


 他のカウボーイも見たいので有る。


 「じゃ~、何を撃てばいいんですか。」


 「お~い、誰か、一キロ先にコインを置いてくれよ。」


 「よし、わかった、じゃ~、僕が行くよ。」


 加藤が馬に乗って行くので有る。


 「隆一、本当に当たるんだろうね、私には、一キロ先なんて、何も見えな


いよ。」


 「お母さん、隆一はね、この牧場で最高のガンマンですよ、そうだ、アン


ナ、双眼鏡を持って来て欲しいんだ。」


 ジムは、普通の人間ならば、一キロ先のコインを見る事は出来ないと知っ


て要るのだ。


 「ジム、はい、全員の分を持ってきたわよ。」


 「じゃ~、これで、見てて下さいね、今、加藤が上げた手にコインが見え


ると思いますが。」


 「わぁ~、本当ですよ、お父さん、でも、あの人、自分の手に持ってます


よ、危ないですよ、お願いですから、辞めて下さい。」


 母親は言うのだが。


 「隆一、何時でもいいぞ、加藤が持ってるコインの中心だ。」


 「はい、わかりました。」


 隆一は、ライフル銃のスコープを覗き、1分、2分と経つが、まだ、撃つ気配が無い。


 側では、母親も洋子も耳を塞ぎ、目は閉じている、それから、数分後。


 「ぱ~ん。」


 乾いた音がしたので、母親は、加藤が心配なのだろう。


 「本当に大丈夫なんですか。」


 「勿論ですよ、だって、隆一は、一キロ先の狼を仕留めるんですから


ね。」


 その時だった、加藤が戻ってきたので有る。


 「ほら、ご覧よ、コインの中心に穴が。」


 「わぁ~、本当だ。」


 「だから、言ったでしょう、隆一は、この牧場では最高のガンマンだっ


て。」


 側で見ていた父親も社長も工場長も、そして、洋子も余りの衝撃に驚きの


声が上げる事が出来ないので有る。


 「さぁ~、さぁ~、みんな食べて飲んでよ、だって、今日は、世界一、い


や、宇宙一の結婚式なんだからさぁ~、私達も食べて飲むわよ。」


 その側で、シュルツは、二コ二コとしながら、ワインをゆっくりと飲んで


いる。


 「如何ですか、隆一君も、愛子もね、この城では来客じゃないのですよ、


仲間ですからね、みんなは本当に二人を祝福しているんですよ。」


 「工場長、我々も、本物の結婚式に参加出来た事には、総理に感謝しなき


ゃいかんよなぁ~。」


 「本当にですねぇ~、私も、人生の中で最高の結婚式だと思いました


よ。」


 「でもなぁ~、あいつが一番、この式に来たかったと思うんだよ。」


 その城の2階からシュミットがビデオカメラで撮影しているのだ、其れ


は、後日、総理に見せる為の物で有る。


 一人、一人の顔よりも全体を写しているのだ、其れは、何かの拍子で世間


に見られても心配せずに済む様にとの考えで有る


 「ねぇ~、隆一、私と踊らない。」


 アンナが声を掛けたので有る。


 「はい、僕でよければ。」


 二人は、ダンスを始めるので有る。


 「愛子、私と踊ってくれませんかね。」


 シュルツは愛子を誘ったので有る。


 「はい、お願いします。」


 愛子もシュルツと踊り始めるのだ、二人の踊りは数分続くが。


 「社長さん、私と踊って下さい。」


 ジョアンナが誘い。


 「私は、踊りが苦手なんですが。」


 「社長、私に言ってましたよね、昔は、よく踊りに行ってたって。」


 「わかりました、じゃ~、お願いしますね。」


 社長も踊りの仲間に入って行くので有る。


 其れを、見た、農場の若女性二人が、父親と工場長も連れ出したので有


る。


 「愛子、本当に良かったよ、隆一の両親も大変喜んでいると思うよ。」


 「ボス。」


 「愛子、今はボスじゃないんだよ、この城での愛子の父親なんだから


ね。」


 「はい、でも、今でも、夢を見ている様な気持ちなんです。


 だって、隆一さんと、本当に結婚式を挙げる事が出来たなんて。」


 「うん、私もね、彼から連絡を受けた時、少し迷ったんだよ、でも、これ


でよかったんだと、うん、これでね。」


 シュルツも、自分に言い聞かせているので有る。


 「でも、私、本当は心配なんです。」


 「一体、何を心配する事が有るんだ。」


 「隆一さんは、私の本当の姿を知らないんですもの。」


 「愛子、時にはね、人間は、墓場にまで秘密を持って行く事だって有るん


だ。


 愛子も、その覚悟はしたのでは無いのか。」


 「はい、そのとおりなんですが。」


 「じゃ~、最後まで、知られない様にする事だよ、わかったね。」


 「はい。」


 愛子が心配するのも無理は無かった、だが、今となっては遅いので有る。


 シュルツが言った様に墓場まで秘密を持って行こうと、今、改めて覚悟を


決めるので有る。


 この結婚披露パーチィは数時間も続き。


 「では、みんな、何時までも続けたい気持ちは、私も同じだがね、隆一の


ご両親は長旅で疲れておられると思う、其れに、みんなも続けたいだろう


が、明日の予定も有るので、今日は、これで終わりにしたいと思うが、どう


だろうか。」


 シュルツはタイミングを考えていたのだ。


 「シュルツさん、其れに、皆さん、本当に有難う御座います。


 隆一は、本当に幸せ者です、今頃、隆一の両親も天国で喜んでいます。


 此れからも、どうか、隆一と、美しい、愛子さんの事を宜しくお願いしま


す。」


 父親は、少し涙ぐんでいる、その横では、母親は涙が止まらず、何も言え


ないのだ、ただ、何度も、深々と頭を下げるばかりだった。


 「じゃ~、みんな、後の事は宜しく頼みましたよ。」


 シュルツは、何時もの様に言ったので有る。


 「ご両親も、さぞ、お疲れだと思いますが、之は、隆一と愛子のために行


なった、この城で最大の結婚式です。


 彼らは、明日の、何かを計画しているようなので、大変、お疲れでしょう


が、宜しく頼みますね、社長さんも工場長さんも、洋子さんもですよ、後の


事は、みんなに任せて中に入って下さい。」


 シュルツが先頭になり、5人を城の中へと案内して行くので有る。


 「シュミット、皆さんのお部屋の準備は。」


 「はい、全て整っております。


 では、私が、皆さんをご案内致しますので、どうぞ、此方へ。」


 シュミットは、5人を案内するのだ、シュルツが用意したのは、最上階


で、最高の部屋なのだ。


 その頃、隆一と愛子は、ジム達を話をしていたので有る。


 「隆一、見たよ。」


 「えっ、一体何を見たんですか。」


 「何を言ってるんだよ、あの狙撃だよ。」


 「えっ、だって、あれは日本国内の事件ですよ。」


 「何だって、日本国内の事件だから、外国では知らないとでも思って要る


のか、あの事件は、世界中で何度も放送されているんだよ、山の神とは、一


体、何者なんだと。」


 ジムは、隆一だと直ぐにわかったのだ、あの距離から、右耳を狙って撃て


るスナイパーは隆一だと。


 「隆一だと、直ぐにわかったよ、だって、あの距離だよ、隆一の事だか


ら、あのビルから撃ったと確信して要るんだ。」


 「じゃ~、みんなも知って要るんですか。」


 「勿論だよ、日本じゃ、あれだけの射撃が出来るのは、隆一だけだって


ね、だから、誰も驚かなかったよ。」


 側では、数人のカウボーイ達もうなずいているのだ。


 「でも、僕は、人を殺すなんて事は出来ないですよ。」


 「うん、勿論、わかってるよ。」


 加藤も納得しているのだ。


 「だけど、隆一が、山の神って名乗った事には驚いたよ、あの名前だけ


で、世界中の極悪人は、今頃、震えているんじゃないか、何時、自分が標的


になるかわからないってね。」


 「僕は、あの組長を生かして、どれだけの人間が苦しい思いをしたかを知


らせたかったんだですよ。」


 この後、数時間、隆一は、あの事件について話をしたので有る。


 両親と社長、工場長の4人は長旅の疲れと、結婚式、その後の盛大なパー


チィーとで疲れが出たのか、部屋に戻ると眠ってしまったので有る。


 だが、初めての外国で興奮していたのか、隆一の両親は、早く目が覚めた


ので有る。


 外は、太陽が西の其れに傾き、少しオレンジ色に染まり出したので有る。


 「お父さん、私、今でも信じられないのよ。」


 「母さん、実はね、オレもなんだ、だって、そうだろう、日本の総理が


だ、隆一と愛子さんのために、外国の、それも、こんな素晴らしいお城で結


婚式を挙げさせてくれたんだからねぇ~。」


 「隆一が言ってましたよね、今度は、日本政府の仕事なんだって、やっぱ


り、あれは本当だったんですねぇ~。」


 「うん、そうだなぁ~、でも、此処の人達は、本当に隆一と愛子さんを祝


福してくれたんだ、日本じゃ~、こんな型破りな結婚式なんて考えられない


からねぇ~。」


 「確かに、そうですよ、でも、良かったわ、これで、天国のお兄さん達も


喜んでくれると思いますよ。」


 その時、電話が鳴った。


 「はい、吉村ですが。」


 「シュミットで御座いますが、お目覚めでしょうか。」


 「はい、先程ですが。」


 「では、宜しければ、下の食堂で軽く食事でも、如何でしょうか。」


 「はい、私は、コーヒーが。」


 「はい、承知致しました、奥様も。」


 「はい、では、直ぐに。」


 「はい、お待ちしております。」


 シュミットは、4人の疲れを考え、トーストとコーヒーを用意していたの


で有る。


 両親が食堂に入ると、既に、社長も工場長も居たので有る。


 「お父さんも、お母さんも、今日は、本当に良かったですね、私も、工場


長も喜んでおります。」


 「社長さん、工場長さんも大変、お忙しいのに有難う御座いました。」


 両親は、改めて礼をいい、頭を下げるので有る。


 その時、隆一と愛子、其れに、洋子も入ってきたので有る


 「社長、工場長、本日は本当に有難う、御座いました。


 僕も愛子も、お二人には感謝しております。」


 隆一と愛子は、改めて、社長と工場長に頭を下げ、礼を言ったので有る。


 「はい、皆様、大変、お待たせいたしました。


 このトーストは、先程、焼き上がったばかりで御座います。


 それと、コーヒーで御座います。」


 シュミットとジョアンナが、全員の軽食を運んできたので有る。


「洋子さんも本当に有難う御座います、わざわざ、隆一達のために。」


 「いいえ、私も本当に嬉しいんです、お姉さんが羨ましいですよ。」


 「隆一様、愛子様、本日は、誠におめでとう御座います。


 お父様もお母様も、おめでとう御座います。


 お父様もお母様も、其れに、社長も工場長も大変お疲れとは思いますが、


私も、この様な盛大で楽しかったパーチィーは初めて御座います。


 このお城に滞在中はのんびりととして頂きたいと思っております。


 其れで、明日は、皆様全員に、私どものヘリコプターに乗って頂き、この


上空から牧場や牛の大群をご覧になって頂きたく思っておりますので、隆一


様は、社長様と工場長様と、ご両親は、愛子様と一緒と言う事で宜しゅう御


座いますか。」


 「はい、でも、私は、今まで、一度も乗った事が無いので。」


 「母さん、大丈夫だよ、此処のパイロットは、超一流だから、何も心配は


無いよ、シュミットさん、宜しくお願いします。」


 「では、明日は、別に早くからでは有りませんので、一応で御座います


が、お昼からとさせて頂きますが。」


 「シュミットさん、お任せしますので。」


 「はい、では、その様に手配させて頂きます。」


 シュミットは下がったので有る。


 「ねぇ~、愛子さん、なんで、隆一なんかと。」


 愛子の顔は少し赤く染まり。


 「はい、実は、隆一さんが大学に入られ、私達のアーチェーリー部に入ら


れて時に、私が、一目惚れしたんです。」


 「えっ、本当なの、愛子さんの様な美人がですよ。」


 母親は、それ以上言わなかったので有る。


 「母さん、僕も、愛子から聞いて一番驚いているんだよ、だって。」


 「ねぇ~、愛子さん、本当に隆一でよかったんですか。」


 今度は、父親も今でも信じる事が出来ないので有る。


 「私、お姉さんから聞いたんです、今年、入部した人に一目惚れしたっ


て。」


 「ええ、じゃ~、洋子さんも知ってたの、じゃ~、総理も。」


 「はい、私の両親も、お姉さんの事をとても心配しておりましたので、で


も、お姉さんから直接聞いたら、私は、どんな事があっても、隆一さんと、


結婚するんだって。」


 「こりゃ~、参ったね。」


 工場長は笑ったのだ。


 「では、あいつから、之は失礼、総理から連絡が入った時なんだが、愛子


さんが。」


 「はい、私が、直接、総理にお願いしたんです。


 私は、隆一さんで無ければ引き受けませんって。」


 「隆一、お前、今の話し、知ってたのか。」


 「父さん、今、初めて知ったよ、だって、あの時、工場長に呼ばれた時


も、何故、僕がと思ったんだよ、僕なんかよりも、もっと、成績に良い人達


が多勢居るのにって。」


 「お兄さん、此れから、そう呼ばせて頂きますね、だって、お姉さんの一


番大事な旦那様ですもの。」


 「いや~、参った、参ったなぁ~、総理のお嬢さんに、お兄さんなんて呼


ばれて。」


 「いいのよ、隆一さんって、私も、本当は呼びたいんですよ、でも、お兄


さんの方が、それでね、私の父が、わかったって、言う事になって社長さん


に連絡を入れたんです。」


 「隆一君は、こんな、美人に惚れられたんだ、どうだ。」


 社長はニンマリとして、隆一も顔を見たので有る。


 「本当はね、最初、何かの間違いじゃ無いかと思ったんですよ、だって、


僕は、あの時、愛子を見て、わぁ~、こんな美人の彼氏は、一体、どんな男


性だろうと。」


 「そりゃ~そうだ、私が、もう少し若けりゃなぁ~。」


 父親は真剣な顔で言ったので。


 「お父さんには、私が居るでしょう、駄目ですよ。」


 母親は、笑いながら言ったので、全員が大笑いしたので有る。


 「隆一、さっきの話しだけど、本当に、ヘリコプターは大丈夫なんだろう


ねっ。」


 まだ、母親は、心配なので有る。


 「母さん、本当に大丈夫だって。」


 「お母さん、この城のパイロットは全員がベテランなんですから、何も心


配有りませんよ、其れよりも、楽しみにして下さい。」


 「まぁ~、愛子さんが言うんだから、大丈夫だね。」


 またも、みんなが笑うので有る。


 そして、明くる日の昼食が終わり、暫くしてからで有る。


 「皆様、ご案内いたしますので。」


 シュミットが案内するので有る。


 「お父さん、一体、何処に行くんだろうねっ。」


 「うん、だけど、昨日の話しじゃ、この城の周辺を飛ぶって聞いたんだ


が。」

 

 両親も社長達も、城の周りだけを飛行するものだと思って要るのだ。


 そして、全員が乗り込み、2機のヘリコプターは上空へと。


 「わぁ~、何と、素晴らしい眺めなんだろうね、ねぇ~、愛子さん、この


お城の大きな事、私も、こんなに大きいとは思わなかったのよ。」


 「お母さん、それだけじゃないんですよ。」


 「何か。」


 「実はね、このお城の敷地なんですが、ヘリコプターが一日中飛んでも全


部を見れないほど大きいんです。」 


 「え~、そんなに大きいの、じゃ~、此処の人達も大変だね、だって、そ


んなに大きな敷地じゃ~、誰だって疲れちゃうよ。」


 「2号機より、ジムへ、どうぞ。」


 「ジムだ、2号機どうぞ、。」


 「ジム、森を出た丘に6百、いや、8百かな、大変な大群を発見した


よ。」


 「えっ、本当か、今日、その丘を巡回しようと思ってたんだが、中止にす


るよ。」


 突然、ヘリコプターの2号機のパイロットがジムに連絡を入れたので有


る。


 その2号機には、隆一が乗っている。


 「ジム、狼の大群だが、丘を下る様に思えるんだ。」


 「了解した、じゃ~、牛を移動させるから、2号機と3号機で大群をけん


制してくれないか。」


 「3号機、了解した。」


 2号機は狼の大群に向かって行くので有る。


 「愛子さん、狼の大群って、何処なの。」


 「お母さん、ほら、あの丘の上に。」


 「わぁ~。お父さん、あれは。」


 「お父さんもお母さんも、あれが、本物の狼なんですよ、あれだけの頭数


を見たのは初めてなんですよ。」


 「えっ、それじゃ~、一体、どうなるの、さっきの話しじゃ~、牛を移動


させるって言ってたけど、でも、まだ、大夫距離が有ると思うんだけど。」


 「いや~、あれくらいじゃ~、離れているとは言えない無いんですよ、狼


は、足が速いので、直ぐに追い着かれてしまうので。」


 「隆一、隆一は3号機だ。」


 「隆一です、3号機ですが。」


 「よし、わかった、ヘリにライフルが有るから、上空から撃ってくれ。」


 「はい、わかりました。」


 3号機は、狼の大群に接近して行くので有る。


 「社長、工場長、今から、狼を撃ちますが、驚かないで下さいね。」


 「うん、わかったよ。」


 と、社長は言ったが、正か、こんなところで隆一が狼に向かってライフル


銃を撃つとは考えもしなかったので有る。


 「隆一、準備出来次第、頼むぞ。」


 「はい、わかりました。」


 2号機は狼をけん制しているが、狼の群れは、ヘリコプターから撃たれた


事が無いのだろうか、逃げて行く様子も無かったのだ。


 その時、隆一のライフル銃から乾いた音が連続したので有る。


 「パン、パン。」


 それも、両親の目前で狼の大群に向かって撃つと数頭がその場に倒れたの


で有る。


 突然の事で、狼達は驚いていたのか、次々とヘリコプターとは反対方向に


向かって逃げ出したので有る。


 「愛子さん、今、本当に隆一が撃ったのかい。」


 「お母さん、本当ですよ、何時もは、パイロットだけなので、狼も逃げな


かったんですが、狼って、本当に賢い動物なんですよ。」


 「お父さん、隆一が。」


 「うん、見ていたよ、でも、まだ信じられなんいんだよ。」


 「隆一、有難う。」


 「いえ、いいんです、でも、暫くはヘリを見たら狼。」


 「うん、そう思うが、でもなぁ~。」


 「2号機と3号機はそのまま飛行を。」


 「2号機、了解した、3号機と、このまま、飛行を続ける、以上。」


 と、2機のヘリコプターは、何事も無かったかの様に別の場所に向かうの


で有る。


 「まぁ~。本当に驚いたよ、お父さん、私は、狼って、あんなに見たのは


初めてですよ。」


 「うん、オレもだよ、でも、愛子さん、なんで牧場に狼がいるんだ。」


 「この牧場なんですが、余りにも大きすぎて柵が作れないんですよ。」


 「えっ、そんなに大きいのかね。」


 「ええ、そうなんです、東西で百キロ以上も有りますので。」


 「えっ、百キロ以上だって、母さん、我が社の工場も大きいが、百キロ以


上とは、それじゃ~、全部を見回りする事は。」


 「お父さん、殆ど不可能なんですよ、此処のカウボーイになる条件の一つ


にライフル銃の射撃なんですよ、それも、百メートル先の的に全部命中させ


る事なんですよ。」


 「ねぇ~、愛子さん、何故、そんなに遠くの的に命中させなきゃならない


の。」


 「はい、此処の相手は狼なんです。


 それも、非常に賢い生き物で、この森にも数百頭は生息しているんです。


 カウボーイが狼を見た時には目前にいるんですよ、目の前に来た時にはカ


ウボーイの命は無いんです。


 でも、此処のカウボーイ全員が拳銃とライフル銃の扱い方は一番だと思い


ますよ。」


 「じゃ~、愛子さん、私達が映画で見る様な事は現実とは大違いだと言う


の。」


 「はい、私は、そう思っていますよ、映画は作れますが、此処では、毎日


が命懸けなんです。


 何時もヘリコプターと共同で狼退治をしていますが、相手は、賢い狼なの


で、同じカウボーイでも、ジムや加藤さんの匂いを嗅ぐと何処かに逃げて行


きますよ。」


 「へぇ~、そんなに、あの人達は凄いのか。」


 「はい、ジムが隆一さんに、この牧場に残って欲しいと言ったんですが、


隆一さんは日本での仕事が待っていますので。」


 「そうだったんだ、じゃ~、隆一も愛子さんも、我々と、一緒に日本に帰


るのかね。」


 「お父さん、お母さんには申し訳無いのですが、後、暫くは、この牧場に


残ると思いますので。」


 「そうか、じゃ~、愛子さん、此れからも、隆一も事は頼みましたよ。」


 「はい。」

 

 愛子は嬉しかった、隆一との結婚式を挙げてもらい、隆一の両親からも頼


むと言われ、感謝の言葉を忘れてしまうほど感激で有る。


 その後は、何事も無く数時間の遊覧飛行は終わり、夕方近く城のヘリポー


トに着陸したので有る。


 その夜の食事も豪華では無いが、この農場で収穫された野菜や果物、それ


と、城の堀で育てて要る魚と合わせた、日本では味わう事の出来ない食事に


両親も社長も工場長と洋子は大満足であった。


 そして、数日後、隆一と愛子を残して、両親達は日本え帰って行った。


 残った、隆一と愛子は、それからも1ヶ月ほど、この城に滞在し、その


間、日本での任務も忘れ、のんびりと過ごしたので有る。


 1ヵ月後の朝で有る。


 「隆一、愛子、君達二人で任務に就いて下さいね、我々は何時でも君達の


見方ですからね、後は、何事も急いで行く必要は有りません。


 総理のためににも、そして、日本の為にも、良い仕事を期待していますか


らね。」


 シュルツは、少しづつだが、隆一に話す内容を変えて行くので有る。


 「シュルツさん、本当に有難う御座いました。


 僕と、愛子は、此れから、日本に帰りますが、此れからも、僕が間違った


事をした時には注意して下さい。


 では、これで、失礼します。」


 と、隆一は、シュルツやシュミット達と握手をして帰国した。


 「なぁ~、ジム、隆一は、人を殺すのではなく、生かせて罪を償わせると


言う、今までとは全く違ったスナイパー本来の任務とは、別の方法を考え付


いた様だね。」


 「私も、隆一は、隆一の方法で行なえばいいと思いますよ。」


 「全く、そのとおりだよ、此れからは何度も、難しい問題が発生するだろ


うが、私は、側に愛子が居れば、何も心配は無いと思いますよ。」


 こうして、隆一と愛子は、日本へ帰国するのだが、第二、第三の指令がど


の様な厳しい指令なのか、其れは、誰にもわからないので有る。



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