第 7 話 山の神作戦。
愛子が記者クラブに着く頃、記者クラブは蜂の巣を突付いた様な大騒ぎに
なっているので有る。
「お~い、見たか、一体、何なんだ、あの山の神ってのは。」
「大体、あの山の神ってのは、家のかみさんの事だろう、まぁ~。要する
にだ、奥さんだって話しなんだろうよ、其れが、一体、何の意味で、山の神
って名乗ったんだよ~、其れに、えっ~と、あの建設会社は、一体、何をし
たんだよ。」
「じゃ~、君は、まだ全文を読んで無かったのか。」
「だって、あの時、本社から電話が、あっ、そうか。」
「じゃ~、お前のところもか、実は、オレのところからも連絡が入ったん
だよ。」
この様な話が記者クラブの中で始まったので有る。
記者クラブでこれだけの騒ぎだから、マスコミ各社の報道部では、この二
倍、いや、三倍もの騒ぎであった。
「お~い、地元のテレビ局はどんな報道をしてるんだ。」
「其れが、大変な騒ぎで、でも、一体、この山の神とは何者なんでしょう
かねぇ~。」
「バカかよ、オレが知ってる訳が有るかよ、それよりも、他のテレビ局の
動きは。」
「部長、他でも、大変な騒ぎになっているようです。」
隆一が発信した内容は、各テレビ局はもちろん、ラジオから新聞の各社に
も、週刊誌や月刊誌の各編集局でも同じだった。
建設会社の有る地元では、更に、大きな騒ぎになっていたので有る。
隆一は、車の中でラジオを聞いて要るが、報道するアナウンサーの声も普
段と違った様に聞えて来る様だと思い、隆一は、運転席でニンマリとするの
で有る。
その当事者の建設会社でも大騒ぎになっている。
「社長、さっき、我が社のパソコンに突然訳のわからない文章が飛び込ん
できたのですが。」
と、事務員が大慌てで社長に報告したので有る。
「何がだ。」
と、言って、パソコンの画面を見て。
「なっ、何だ、之は、誰かのイタズラか。」
実は、社長自身が使うパソコンのスイッチを入れて無かったのだ。
「いいえ、其れが、わからないので。」
またも、事務員が社長室に飛び込んできたので有る。
「社長、大変です、テレビのスイッチを入れて下さい。」
社長は、直ぐにテレビのスイッチを入れると、画面のアナウンサーは建設
会社に送られてきたと同じ内容の文章を読んでいるのだ。
「なんだ、之は。」
と、社長も事態を理解したのか、戸惑いを見せ始めたので有る。
「オイ、一体、誰だ、この山の神って奴は。」
「はい、私も、今、初めて聞いた名前なので。」
テレビの画面には、あの山の神が映し出されて要る。
「あっ、あれは。」
「社長、あれは、土砂の集積場ですよ、でも、あの写り方は。」
と、事務員は首をかしげている、そうだ、今、テレビに映し出されて要る
土砂の集積場、実は、愛子が写した写真なので有る。
「よし、わかった、専務と部長は。」
「はい、今、出掛けられて、もう直ぐ、戻って来られると思いますが。」
「じゃ~、戻ったら直ぐに来る様に言ってくれ。」
「はい。」
と、事務員は社長室を出たので有る。
「君もだ。」
と、もう一人の事務員も社長室から出したので有る。
社長は、暫く考えたのだ、一体、誰が、何の目的のために、こんな事をし
たのだ。
社長室のテレビは隆一が発信した内容を伝えている。
テレビの画面には建設会社も映し出されて要る。
その時、電話が鳴った。
「はい、私だが。」
其れは、事務員からだった。
「社長、新聞社とテレビ局からですが。」
「何、、新聞社とテレビ局だ、今は、外出中だと言え。」
と、社長も戸惑っているが、今は、それどころでは無いのだ、この会社の
事務所には、それからひっきりなしに新聞社やテレビ局からだと電話が掛か
って来る為、事務員達は、その対応で仕事どころでは無かったので有る。
その頃、建設会社の専務と部長は取引関係の会社の訪問を終わり、車中に
いたのだ。
「専務、これを聞いて下さい。」
と、部長はラジオのボリュームを上げたので有る。
其れは、自分達の会社の話しであった。
「部長、何だ、この放送は。」
専務は、別の放送局に切り替えたのだが、どの放送局でも同じ内容を放送
している。
「専務、一体、何が起きたのでしょうか。」
と、部長も専務も訳がわからず。
「部長、先に会社に戻って、社長と相談だ。」
「はい、わかりました。」
と、二人を乗せた車は大急ぎで会社へと向かったので有る。
建設会社とマスコミに送られた内容は木田も見ていた、木田はニヤリとし
たので有る。
吉村隆一は、今までとは全く別の方法を取ったので有る。
一方、建設会社には次々と鳴る、報道各社からの電話で事務所はパニック
状態になっている。
この建設会社は運送事業も行っており、午前中の仕事を終えたダンプカー
が次々と車庫に戻って来るのだ。
ダンプカーの運転手はラジオなどは聞いて無かったために、事務所に入っ
た途端驚いたので有る。
何時もで有れば、運転手達を出迎え、日誌を受け取る、其れが、女性事務
員も別の数人の事務員の顔が青ざめているからだ。
次々と鳴る電話に運転手達は何が起きたのか理解できないので有る。
事務所の奥に有るテレビが何やら報道している。
そのテレビは、何時もは付いていないので、数人の運転手がテレビを見た
ので有る。
「オイ、之は、うちの会社じゃないか、一体、何が有ったんだよ~。」
「いや、オレも、今、戻って着たばかりで、何も知らないんだ。」
それでも、車庫には次々と大型ダンプカーが戻ってくる。
運転手達は何も知らないのか、事務所までは冗談話を言う運転手、笑って
いる運転手など居る、その運転手達が事務所に入ると、そこでは大変な騒ぎ
になっているのだ。
「お~い、一体、何があったんだよ。」
「お~い、こっちに着てテレビを見なよ、今、オレ達の会社の事を放送し
ているぞ。」
運転手達は、次々とテレビの前に座りテレビを見だしたので有る。
その頃、丁度、専務と部長が戻ってきた、二人は事務所に入ると驚いたの
で有る。
事務所はパニック状態になっているのだ。
二人は直ぐに社長室に入った。
「社長。」
「お~、専務か。」
「社長、一体、何が起きたんですか、部長と次の会社に行く予定だったん
ですが。」
「いや、私も、さっき知ったところなんだ。」
社長室のテレビは、隆一が発信した内容を伝えている。
「社長、之は、集積場の写真ですが、一体、誰なんですか、この山の神っ
てのは。」
「専務、私も、心当たりが無いんだ。」
彼らに、山の神が、誰なのかわかるはずが無いので有る。
「部長、このパソコンに入ってきた内容なんだがね。」
「はい、私も、今、考えて要るんですが、相当、詳しく調査したようです
が。」
「うん、私も、同じだよ、だがね、これだけの資料を作り出すと言うの
は、個人じゃ無理だと思うんだよ。」
「社長、私も、その様に思いますが、でも、この数年、あの付近で其れら
しき人物を見たと言う話しは聞いておりませんが。」
と、専務もわからないので有る。
「其れに、関連会社名も載っている、之は、県や市でも知らない事が載っ
ているんだ、相当な時間を掛けて調べたと思うんだ。」
専務も部長も頷き。
「私は、誰かのイタズラじゃ~無いかと思って要るんだが。」
「でも、社長、イタズラにしては手が込んでいるとは思いませんか。」
「それじゃ~、我々の仕事を乗っ取る、他の建設会社の仕業なのか。」
其れは、考えられないのだ、この建設会社のバックには、彼の兄の組織が
控えている事は、この地方では誰でも知って要るので有る。
「社長、其れは無いと思います。」
「う~ん、其れはわかっているが、じゃ~、市の役人なのか、やつらも、
此処までは調べてはいないと思うんだ、仮にだよ、調査書を上層部に出した
としてもだ、上層部は承認出来ないはずだ。」
建設会社からは多額の裏金が上層部に渡されているので有る。
「確かに、其れは無いと思いますが、一応、念のために、私から探りを入
れて見ます。」
「頼むぞ、専務、テレビでも新聞でもいいから、誰かに知り合いはいない
のか。」
「社長、あの新聞社に聞いて見ますか。」
「えっ、何処の新聞社だ。」
「あの新聞社ですよ、何時も誤報する。」
「あ~、あの新聞社か、だが、誰か知って要るのか。」
「私も、数回インタービューを受けた事が有りますので、名刺が有ると思
います。」
「よし、専務、その記者に聞いてくれ、この様な内容を送り付けた人物と
は、一体、誰なのか、それと、目的だ。」
「はい、わかりました、直ぐに。」
と、専務は新聞社に、部長は、市の上層部に電話を入れるので有る。
社長は、この文書を送った人物は直ぐにわかると考えたので有る。
この地方では、この建設会社が市町村は勿論だが、県が行なう建設工事の
殆どを握っているので有る。
だが、何故、其処まで契約出来るのだろうか、確かにバックには、兄の組
織が控えてはいるのだが、果たしてそれだけなのか、実は、この兄弟の先祖
に有ったのだ。
今でも、この市内もだが、県や多くの都市に建つビル群の土地の多くを所
有しているので有る。
何故、その様になったのか、彼らの先祖が、この地方で、銅の鉱脈を発見
し、其れが、元で大金持ちになり、その殆どの金で土地を買い取り、其処に
宿場が出来、やがて、大発展するので有る。
兄弟の先祖達は先見の、それも、10年や20年では無かったのだ、50
年、百年後までもを考えたので有ろう。
其れが、結果的にこの地方を牛耳る事に成ったので有る。
そして、百年以上も経った、今、大きな転換点となるので有る。
数分後。
「社長、市の幹部に聞いたんですが、市役所でも大騒ぎになっていると、
聞きました。」
「それじゃ~、市役所でも、その山の神の事は誰も知らないのか。」
「はい、その様ですね、市長が調査を開始する様にと、関係部署に指示を
出したと、聞きました。」
社長は、市役所が関与していると考えたのだが、其れは、今の段階では無
いと言うので有る。
その数分後の事で有る。
「社長、あの新聞社の記者に聞いたんですが、新聞社でも大変な騒ぎにな
っていると言う話しです。」
「何、新聞社でもか、其れで、何かわかったのか。」
「いいえ、新聞社でも、何処から発信されたのか知りたがっているようで
すが。」
「それじゃ~、市も新聞社、何もわからないと言うのか。」
専務も部長も頷くので有る。
「それじゃ~、何処から発信したのかも、誰が発信したのかも、全くわか
らないと言うのか。」
専務も部長も頭を抱えているのだ。
「じゃ~、何処から発信しのか、誰が発信したのかもわからずで、一体、
我々は。」
その時だった。
「社長、大変です、外を見て下さい。」
「えっ。」
と、社長達、3人が窓の外を見ると、会社の正面に多勢のマスコミが集ま
ってきているのだ。
「オイ、あれは、一体、どう言う事なんだ。」
と、社長の口調は荒れ出したので有る。
「社長、私に、怒られましても。」
「お~、すまん事をした、で、あれは。」
「社長、新聞やテレビ局ですよ、取材だと言って、次々に集まって来たん
です。」
「何、取材だと、一体、何を取材するんだ。」
「はい、さっき、パソコンに送られて着ました内容だと思いますが、私達
も、今は、下手に出る事で出来ないんのです。」
「そうか、君達も外に。」
事務員達も出る事が出来ないのだと。
「はい、じゃ~、社長、私は。」
「そうか、わかったよ、何かあれば直ぐに知らせてくれ。」
「はい。」
と、事務員は部屋を出たのだが。
「社長も、何が起きたのか、まだわかってないよ。」
「そりゃ~そうさ、僕も、あの画面を見て、本当の話なのかと考えて要る
んだよ。」
と、事務員達も理解できないので有る。
社長は考えていた、市内から出る産業廃棄物の全てはあの山の集積場に集
めている。
最初の頃は、一応、分別していたのだ、だが、産業廃棄物を分別するとな
れば、大きなコスト高に成り、その為に利益が上がらなかったので有る。
それが、途中からは中味の確認はせず、受けた廃棄物は全てあの集積場に
集めたのだ、他の業者もわかっていたので、産業廃棄物と言う名目で有れ
ば、何でも引き受け集積場に運んでいたので有る。
其れが原因なのか、この数年前から近くを流れる小川の色も変わってきた
ので有る。
市役所も、一応、検査に入るのだが、あの集積場は個人の所有する山だ。
之が、自治体か国の持ち物であれば、問題なく検査に入る事も出来るのだ
ろう、だが、あの山を含め、この付近一帯は兄弟の名義となっているのだ、
個人の持ち物で有る以上、下手な調査は出来ないので有る。
其れが、有る時期から、小川の色も変化しだしたのだが、其れは、直接流
入するのではなく、一度、地中に入り、其れが、数キロ先で少しずつ湧き出
しているので有る。
隆一の発信は、この地方もだが、全国的な反響を及ぼしてきたので有る。
だが、一体、誰だ、何の目的で送ったのか、其れが、今だ、わからないの
で有る
「社長、如何致しましょう、もう、数十社も集まってきています。
其れに、付近の住民も着て見ておりますが。」
「専務、何もわからないので、話す事は無いと伝えてくれ、それと、誰が
何の目的で送ってきたのか知らないが、我が社は、その様な事は一切してい
ないと。」
「はい、わかりました。」
と、専務は部屋を出、会社の正面へと向かったので有る。
数分後、専務は集まったマスコミに対し。
「皆さん、我が社は、あの様な仕事は行なってはおりません。
一体、何処の誰だかは知りませんが、何の証拠も無く、あの様な文書を書
かれたのは我が社にとっては大変な迷惑な話です。
今、我が社も調査しておりますので、わかり次第、皆さんにお伝え致しま
すので、何卒、本日は、引き取っていただきたいのです。」
専務の発表は当然なのだが。
「ですがねぇ~、その様な発表だったら、誰も信用しませんよ、だって、
この会社が長年捨て場と使用してきた土地の集積場からは高濃度の危険な物
質が検出されたって書かれているんですよ、その説明は無いんですか。」
「いや、私も、詳しい事は知りませんので。」
「何を言ってるんですか、貴方がセールスマンとして、この地域一帯の産
業廃棄物を引き受けて契約していると聞いて要るんですがねぇ~。」
「いや、本当に、何も知らないんだ。」
「じゃ~、何故、こんな文書が全国のマスコミに流れたんですか。」
「其れは、何かの間違いです。
先程も申しました様に、今、調査をしておりますので、詳しい事がわかり
次第、必ず、発表しますので、今日のところは、皆さん、帰って下さい。」
と、専務は頭を下げ、事務所に戻って着たので有る。
その後、数時間が経つが、事務所からは、誰一人として出てこないと、言
うよりも出れないので有る。
だが、一体、どの様な文面が書かれていたのだろうか。
私は、山の神で有るから始まり、途中には、この会社が長年行なってきた
産業廃棄物を自分達の持山に捨て。
その捨てられた中には有害な物質を含んだ土砂も捨てられ、雨が降る事
により、土中に染み込み、其れが、川へと流れ込み数十キロ先の海にまで流
れて行ったので有る。
海にも多くの魚介類がおり、その魚介類と獲り生計を立て、また、食生活
もなされていたのだ、この数年間、何か原因がわからないのだが、長い間食
べていた漁民達は身体の不調を訴えていたので有る。
そして、近年になると奇形の魚が獲れ、騒ぎが大きくなったので有る。
この山から、出た液体のために、雨が降ると川は変色して行くのだ、その
原因が正か、この山から流れ出た廃液に寄る物だとは、誰も気付かなかった
ので有る。
山の神は即時産業廃棄物の搬入を中止せよと勧告したのだが、その翌日も
止まる事も無く、市の内外から搬出された産業廃棄物を積んだ、大型ダンプ
カーは次々と山の集積場へと向かい搬出するので有る。
「我は、山の神で有るぞ、即刻中止せねば、そちも、そちの会社も大きな
損害を受ける事になるぞ。」
と、文面は続くので有る。
この頃、要約、警察も動き出したのだ、其れは、建設会社の前面道路は日
中も交通量が多く、数十台の中継車が停まったので一般の車両やバスの運行
にも支障が出てきた為、中継車両を移動させるようにと、警察から指示が出
たので有る。
それでも、マスコミ各社の中継車は別の場所に移動し、会社の前と道路の
反対側のバスの停留所から前後10メートル以上を開けるようにと指示が出
たので、殆どのマスコミはバスの停留所から移動し、一応、警察の役目は終
わったと感じたのか警察官も引き上げて行くので有る。
「誰か、知ってるか、あの山の神ってのを。」
「いや~、知らないよ、でもなぁ~、噂によると、マスコミの関係者だと
聞いた事が有るんだ。」
「えっ、それって、本当なのか、でも、何故、そのマスコミ関係者が山の
神を名乗る必要が有るんだよ、堂々と、新聞かテレビで報道すればいいじゃ
ないか。」
「そうだよなぁ~、オレも不思議な噂だと思ったんだよ。」
この様な会話がマスコミ関係者の間で話されていたのだ。
一方、愛子は記者クラブで各社の動きを探っていた。
「隆一さんが、発信した内容は飛んでも無い内容だ、でも、其れは、膨大
な資料に基づいた内容で、殆どの住民は知らない、勿論、各マスコミも知ら
ない事もあり、其れが、一層、大きな騒ぎになったんだ、でも、あの短時間
でよくも入力したのもだ。」
と、愛子は感心しているのだ。
あの発信から数時間が経過した頃で有る。
何か、動きでもあったのか、記者クラブが慌ただしくなってきた。
愛子は、記者達の会話を聞いていたのだ。
「オイ、あのパソコンの発信者がわかったらしいぞ。」
「えっ、本当か、其れで、一体、何処の誰なんだ。」
「あの建設会社のバックに。」
「うん、其れは、知ってるが、其れが。」
「その組織の組員が数年前に別の建設会社に。」
「お~、あれか、じゃ~、今から。」
「もう、殆どの記者が向かってるよ。」
「そうだろうなぁ~、でも、何故なんだよ、今頃になって復讐するん
だ。」
「うん、其れで聞いたんだよ、あの会社は、あの後、直ぐに倒産し、其れ
からが大変だったらしいんだよ、社長の資産は勿論、親戚が持ってた田畑も
売り払い、従業員や債権者に支払ったらしいんだ。」
「でも、その建設会社って、老舗で、仕事も真面目だって有名だったんだ
よ。」
愛子は、その話は知らないのだ、だが、その老舗の建設会社が、何故、倒
産したのか知りたいと思って要るので有る。
「確かに、あの会社の従業員は真面目で、確実な仕事をするって有名だっ
たよなぁ~。」
「それなんだ、その会社が数年前に建設したマンション。」
「うん、うん、知ってるよ、じゃ~、そのマンションに、その組員が入っ
たのか。」
「いや、どうやら違うらしいんだ、あの会社が建設したマンションは分譲
だって、分譲マンションに組員が入居する事は普通では出来ないんだ。」
「じゃ~、その組員が建設会社に脅しを掛けたんだ。」
「うん、オレが聞いた話しじゃ~、その組員の幼馴染みが入ったんだっ
て、ところがそのマンションなんだが、下請けの工事業者が手抜きをしたら
いんだよ、それも、運の悪い事に数ヶ所だったんだが、その数ヶ所の場所が
発見されたところに、その幼馴染みが入ったと言う事なんだ、其れで、何度
も話し合いが持たれたが、その部分を治すには、マンション自体を解体し、
新しく建て直すしか方法が無かったんだ。」
「でも、そんな事をしたために、建設会社は倒産したよ、でもね、下請け
業者は倒産していないんだよ。」
愛子もわかったので有る。
組織は、その建設会社を倒産させる為に、下請け業者に手抜き工事をさせ
たのだと、だが、普通、下請け業者は長年付き合いの有る業者に任せるはず
だ、其れが、どうして。
「そうか、じゃ~、あの組員は、下請け業者に甘い言葉か、それとも、現
金を渡して建設会社が倒産すれば、後々の面倒は見るとか、何とか言葉巧み
に下請け業者を配下に入れたのか。」
「うん、そのとおりだと思うよ、だって、今は、あの建設会社の下請けを
しているんだからね。」
「じゃ~、さっき言った、社長の親戚の男性と言うのは。」
「そうか、まだ正確にはわからないんだ。」
この記者クラブは、他の記者クラブとは少し違ったところが有ると聞いて
いたのだ。
其れは、この記者達は、情報を共有しているとは、愛子にとっては不思議
な光景に写ったので有る。
記者クラブと言っても、自社の情報を他社に知らせる必要は無いのだ、事
件によっては、大スクープとなるので有る。
だが、此処の記者達は平気だとでも言うのか、それとも、他に何か有るの
だろうか、他社の記者にも情報を提供している。
「でも、あの発信は全てのマスコミだろう、全国に、一体、何社有ると思
う、その全てに発信してだよ、発信した者に何の利益が有るんだろうかねぇ
~。」
「うん、其れは、今から調べるところだろうよ。」
「其れにしてもだよ、よくもまぁ~調べたもんだよ、之は、絶対に個人の
仕業じゃ~、無いと思ってるんだよ。」
「うん、其れは、わかるよ、これだけの資料を集めるのは個人じゃ無理だ
からねぇ~。」
やはり、彼らも、個人ではなく、大きな組織が関与していると考えたので
有る。
「まぁ~、その内にわかると思ってんだよ、まぁ~、其れまではのんびり
とするか。」
と、この様な会話が数人単位でされていたので有る。
一方、隆一は、のんびりとしていたのだ、1~2時間ごとにコーヒータイ
ムを取るので有る。
マンションを出発して半日以上が過ぎ、後少しで目的地に着くのだ、其処
で、最後のコーヒータイムを取りにサービスエリアに入ったので有る。
食堂に入るつもりだったが、其処に設置されていたテレビは地元のテレビ
局を放送しているで。
だが、そのテレビでも、隆一が発信した内容を伝えているのだ。
付近では、数十人が見ている。
「オイ、聞いたか、あの建設会社って、我々の住んでる隣の市に有るんだ
って。」
「あの会社って、昔から悪い噂が飛んでいたよ。」
「へぇ~、私、初めて知ったわよ、だって、日頃、私の生活に直接関係な
いもの。」
この席でも、数人の男女が話をしているのだ、その側で数人の男が話をし
て要るが、何やら問題の有るような人物達で有る。
隆一は、コーヒーを買い、空いた席に座り話しを聞いて要る。
「でも、あの人って言うのか知らないのだけど、山の神って名乗っている
人は、一体、どんな人なんだろうね。」
「其処だよ、テレビ局でもいろんな人が言ってるが、あれは、元従業員だ
とか、それともマスコミ関係者だとか、みんなも知らないから、好きな様に
言ってるよ。」
「でも、確かなのは、その建設会社が不法投棄をして要ると言う事なんで
しょう。」
「うん、其れだよ、あの付近一帯の山は建設会社が保有しているんだっ
て。」
「でもね、幾ら、建設会社が保有したって、あれだけ大量に不法投棄すれ
ばよ、雨が降ってよ、土砂の中に有る有害な物質が下流に流れ出す事ぐらい
誰だってわかるわよ。」
この男女は夫婦なのか、真剣な会話をしているのだ、隆一は、コーヒーを
飲みながら、次の作戦を考えて要るので有る。
高速道路のサービスエリア内でも、これだけの反応が有ると言う事は大都
市や、今から行く目的地では、想像も出来ない程の騒ぎになっていると考え
たので有る。
隆一は、このサービスエリアで食事も取る事にしたのだ。
目的地までは、数十キロだろう、食事が終わってから車でゆっくりと作戦
を考えるつもりだったが、隆一は、車の中で眠ってしまったので有る。
数時間後、目を覚ますと、周りは暗くなっていた、隆一は、煙草をゆっく
りと吸い、その後、燃料を入れ、再び、目的地に向かったので有る。
数時間後、目的地の市に着く頃には雨が降り出した。
隆一は、一度、建設会社の前を通過したが建設会社の明かりは消え、車庫
には大型ダンプカーが並んでいた、隆一の車は建設会社の前に有る公園の反
対側に止まった。
その場所からは大きく育った木々の間から建設会社の正門が見える。
隆一の車は、一応、環境調査車両なので天井には数本のアンテナと空気を
取り込む為の筒が有る。
それらを設置し終わると、運転席から後部の部屋に移ったのだ、この部屋
は、運転席とは独立しており、外からは中が見えない構造なので有る。
隆一は、パソコンを起動させると、早速、建設会社に新たな文面を送った
ので有る。
「我は、山の神で有る。
その方達は、山の神の忠告を無視し、今も、産業廃棄物を投棄しておる。
山の神の忠告が本当だと知るには、そち達が直接か、若しくは、間接的に
か被害を受けなければ理解が出来ないと判断した。
此れから、第一弾の損害を与えるが、それでも続けるのであれば、次々と
損害を受ける事になるで有ろうから覚悟はしておけ。」
と、発信したので有る。
隆一は、愛子との話を思いだしていた。
愛子は、ライフル銃で人を撃つ事だけがいいとは言って無かったのだ、で
は、一体、何を目標にすれば良いのか、隆一が持つライフル銃で人間を撃つ
と、人間はほぼ即死なのだ。
特別に作られたライフル銃の弾丸も普通では無い。
その時、思い付いたのだ、其れは、この公園から建設会社の正門までは2
百メートル以上は有る。
建設会社の正門の奥には、大型ダンプカーが並んでいる。
「そうだ、あのダンプカーのタイヤをパンクさせればいいんだ。」
普通のスナイパーならば、2百メートルの距離はそれ程難しい距離では無
い。
だが、あの正門に並んだダンプカーのタイヤを撃つには、前の公園内に有
る木々の間を抜ける事が必要なのだ。
隆一は、ライフル銃を撃つ為の小窓から正門を見た、其れは、運が良かっ
たのか正門まで見通しが利くので有る。
隆一は、一度、ライフル銃にスコープを付け、その小窓から見ると、正面
に有るダンプカーが見えた、だが、正門は、幅10センチ程の隙間で作られ
た頑丈な鉄扉で有る。
之は、余程、腕の良いスナイパーでなければ、奥のダンプカーのタイヤを
撃つ事は出来ないのだ、隆一は、スコープから数台の車が確認出来たので、
今がチャンスだと考え、弾をライフル銃に込めたので有る。
これほどの条件が悪い事は無い、だが、運が良かったのか、公園の木々の
葉は少しも揺れて無かった、其れは、無風に近い状態だ、隆一は、狙いを定
め、引き金を引くと、微かにプスットが音がした瞬間車庫に止めて有るダン
プカーから大きな破裂音がした。
その後、数台のダンプカーのタイヤがパンクしたが、この場所は住宅地で
はなく工場や倉庫だけの地域だったので、人的な被害は無く、隆一は、何事
も無かった様に小窓を閉め、ライフル銃をケースに収めたので有る。
付近では大きな音が数回鳴ったと思われるが、翌日の朝まで何も起きず静
かだった。
翌朝、出勤して来た運転手が大慌てで事務所に駆け込んできたのだ。
「大変だ、車庫の車のうち4台の前輪のタイヤがパンクしてるぞ。」
「えっ、4台もパンクしてるって。」
「だから、後ろのダンプが出せないんだよ。」
「直ぐに、タイヤ交換の手配をしてくれよ。」
「うん、わかったが、何故だ、4台も、それも前輪のタイヤだけが。」
事務員は、直ぐにタイヤ交換の手配をしたので、業者は1時間ほどで到着
し、タイヤ交換を始めたのだが。
「こりゃ~、大変だよ、タイヤホイールも破損していますよ。」
側で、見ていた運転手は。
「何故何だよ、昨日は何でも無かったのによ、パンクだけじゃ~無いって
事は前輪のホイールもだけど、内側のブレーキは。」
業者の作業員は驚いたので有る。
「う~ん、之は、もう駄目ですよ、だって、ブレーキ関係も全部駄目にな
ってますからねぇ~。」
その時、社長が出勤してきたので有る。
「あっ、社長。」
「一体、如何したんだ、朝からタイヤ交換か。」
社長は、少し不満そうな顔付きだったが。
「社長、大変なんですよ。」
「何が、大変なんだ、昨日パンクしていたのか。」
「社長、見て下さいよ、前の4台の、それも、前輪のタイヤだけがパンク
すると思いますが。」
「えっ、何だって、前の4台の前輪だけがパンクしてるって、本当なの
か。」
社長は、その時、初めて事の重大さを理解したので有る。
「そんな事って、普通じゃ~考えられないぞ、こりゃ~、誰かのイタズラ
なのか、オイ、直ぐに警察に連絡するんだ。」
社長は、事務員に言った後、考えたのだ、数日前に意味不明のメールが送
られてきた。
「直ぐに投棄を中止しなければ、大きな損害を被る事になる。」
と、そんなバカな事が本当に有るのか。
「社長、警察に連絡を入れましたが。」
「うん、わかったよ、それと、此処の防犯ビデオに、誰か、不審な人物が
写っていないか調べるんだ。」
「はい、わかりました、直ぐに。」
と、事務員は事務所に戻って行ったのだ。
「どうだ、交換は出来るのか。」
「社長、こりゃ~、とても無理ですよ、だって、ブレーキ関係が完全に駄
目ですから、デーラーさんを呼ぶしか方法は有りませんよ。」
タイヤ交換の作業員は、社長と運転手に説明し帰って行くので有る。
その数分後、警察が到着したので有る。
「一体、如何したんですか。」
警察官は、当初、事件だとは考えていなかったのだが。
「実は、これを見て下さい。」
と、社長は4台のダンプカーの前輪タイヤを見せたので有る。
「う~ん、パンクですね、其れで。」
「其れが、普通のパンクじゃないんですよ。」
「えっ、普通のパンクじゃないって、其れは、どう言う意味なんです
か。」
と、警察官は業者が外したタイヤとブレーキ関係付近を見たのだ。
「之は、一体、でも、何故、こんな状態に成ったんですか。」
この後、社長と数人の運転手が説明を始めたので有る。
付近の住民も建設会社で、何か事件が起きたらしいと数十人が見に来てい
るのだ。
隆一も当初は見るつもりだったが、隆一は、この付近の人間では無いの
だ、警察も事情によっては付近一帯の写真を撮るだろう、その時、全く知ら
ない人物が写っていれば、後で、何かと面倒な事になると思い、車から出る
事を避け、無線を聞いていたのだ。
警察官は、本署に連絡し、本署でも事件性が有ると判断したのか、数分
後、建設会社に一番近いパトカーが数台到着し、その後、数分で応援の警察
車両が次々と到着したので付近一帯は大騒ぎ有る。
「社長さん、之は、イタズラでは無いですね、一応、事件として取り扱う
事にしますので。」
「じゃ~、仕事は。」
と、社長は不安になってきたので有る。
「今の状況では、次に起きる事も考える必要も有りますので、今日は出来
ないと思って下さい。」
社長の不安は的中したのだ、其れに、今日の一日だけであれば問題は無い
が、之が、その後、大きな事件に発展するとは、この時、社長も考えはしな
かったのだ。
「社長さん、一応、事件として取り扱う事に成りましたので、この4台は
本署まで持って帰りますので。」
社長は、何も言えず、只、頷くだけで有る。
この第一報が、本署から本部に連絡が入ったのは数分後だった、本部から
は専門の鑑識官が本署へと向かったのも当然で有る。
だが、この時点で木田への報告はまだであったのだが、木田は、隆一がそ
ろそろ行動に出る頃だと思っていたので有る。
本署に到着した鑑識官は運ばれた着たダンプカーの前輪を見ていたが。
「うん、この金属は、何かの部品なのか。」
「之は、一体、何の部品だろうか。」
鑑識官は、不審な金属を見つけたので有る。
その金属は、隆一が撃ったライフル銃の弾丸だったが、この時は、正か、
ライフル銃の弾丸だとは、鑑識官も考えもしなかったのだ、運ばれた4台の
ダンプカーは、それから、数時間を掛けて調べたのだが、他のところには、
何も異常は無く、ブレーキ関係部品は完全に破壊されていたので有る。
鑑識官達は、4台のダンプカーから、8個の金属部品を見つけ、この金属
の精密な検査が行なわれる事に成ったので有る。
その頃、建設会社で大型ダンプカーの前輪タイヤ8本が何者かによってパ
ンクさせられたと言う事件が発表され、多くの報道関係者が建設会社に行
き、現場の建設会社前ではテレビ各社は早くも報道を開始している。
各社のレポーターは運転手達数人に話を聞こうとするのだが、どの運転手
も、一体、何が起きたのか把握していなかったので、質問には答える事が出
来なかったので有る。
事務所では事件を聞いた、専務と部長も社長室で対応策を協議している。
「社長、一体、何があったんですか。」
「いや、其れが。」
と、社長は、今朝起きたと思われるタイヤ破裂の話しをしたので有る。
「其れで、之は、此処だけの話しなんだがね、数日前に意味不明のメール
が届いた事は知って要ると思うが。」
「ええ、社長、私も、内容は知っておりますが、正か、4台の、それも、
8本のタイヤをパンクさせるとは。」
「うん、それなんだがね、防犯カメラには何も写って無かったんだよ。」
「えっ、じゃ~、一体、どんな方法でパンクさせたんでしょうか。」
社長も、会社の鉄扉は閉まっていたと聞いて要るのだ。
「でも、社長、外から駐車しているダンプまでは相当な距離が有ります
よ。」
「うん、其れは知ってるよ、じゃ~、誰が、どんな方法で駐車場のダンプ
4台で8本をパンクさせたんだ。」
そう、彼らに、その事を理解するのは不可能で有る。
「主任、こんな事件は初めてですね。」
「うん、そうだなぁ~、僕も、長い鑑識の仕事をして要るが、初めてです
よ、問題は、この金属ですね。」
「はい、私も、正かとは思うのですが、。」
「やはり、君もそう思うのか。」
「じゃ~、主任もですか。」
二人の鑑識官は、スナイパーが関与していると考えたので有る。
「でも、主任、本当にスナイパーでしょうか。」
「う~ん、だけど、其れを裏付ける物が無いんだ、一刻も早く、この金属
を分析する必要が有るなぁ~。」
鑑識官は、簡単に答えが出ると思ってはいないので有る。
「刑事さん、実は、数日前に、意味不明のメールが送られて来たのです
が。」
社長は、送られてきたメールの話しをするので有る。
「意味不明のメールって、其れは、どんな内容ですか。」
「はい、私が説明するよりも、そのメールを見て下さい。」
「はい、わかりました、では。」
と、社長と数人の刑事が事務所に行き、パソコンに残っているメールを見
るのだが。
「社長、一体、この我は山の神って、何者ですか、其れに心当たりは。」
数人の刑事も初めて見る内容に驚くよりも、首をかしげるだけで有る。
「刑事さん、我々も、一体、何者が送ってきたのか、其れに内容にしても
意味がわからないのですよ、本当に。」
「それじゃ~、社長さん、この内容に付いては、全く心当たりが無いと言
われるんですか。」
社長は頷き。
「本当に、何もわからんのですよ。」
「主任、でも、之は、イタズラにしては度が過ぎていますね。」
若い刑事は、イタズラだと思って要るのだが。
「其れは、違うぞ、之は、立派な犯罪だよ。」
「じゃ~、このパソコンは本部に持って帰り分析が必要ですよねぇ~。」
「えっ、刑事さん、このパソコンを持って帰られるのですか。」
社長は、心配の余り驚くのだ、其れは、会社の売り上げから、社外に知ら
れては困る内容までもが入っていたからで有る。
「社長さん、私達も、犯罪として捜査しますので、このパソコンは本部に
持って帰りますよ。」
社長も、側に居る部長も心配なのだ。
「このパソコンを鑑識さんに渡してくれ、其れで、本部で分析してもらっ
てくれ。」
主任刑事は、若い刑事に伝え、若い刑事はパソコンを持って出たので有
る。
「社長さん、我々は、会社や従業員の為に捜査するんですよ、我々、警察
はね、この様な犯罪が成功する様な事に成れば、この犯人は、また、別の会
社を標的にする事になりますよ、其れで、話しは変わりますが、犯人から何
か要求の様なものが有りましたでしょうか。」
「はい、電話では無かったのですが、そのパソコンに入っていますが。」
「其れは、どの様な内容なんですか。」
「はい、我々の会社は、産業廃棄物を私の持って要る山に持って行きす
が、メールで、その山に投棄する事を止めろって書いて有るんですが。」
「へぇ~、そうなんですか、じゃ~、社長さんの会社では、自分の持つ山
に運んでおられると言われるんですか。」
「ええ、そうなんですよ、あの一帯は、私の先祖からの持山なんで、私
も、自分の持山に捨てる事が犯罪になるとは思っていませんでしたよ、それ
なのに、何故ですか、この様な仕打ちを受ける事になるのですか。」
社長の気持ちはわからないでもないと刑事も思ったので有る。
「う~ん、社長さんの気持ちはわかりますがね、今の段階では、なんとも
答える事が出来ませんね、まぁ~、何れ、犯人像がわかるかと思います。」
「じゃ~、刑事さん、あのパソコンはどうなるんですか。」
「まぁ~、暫くは預かる事になると思いますよ。」
刑事は、何時もだが、答え方に其れ以上出来ないので有る。
「社長、パソコンが戻ってくるまでは。」
「うん、仕方が無いから、ノートにでも書いて行くしかないだろうなぁ
~。」
「えっ、じゃ~、また、入力をするんですか。」
と、事務員にすれば、二重の作業になる事に不満そうな顔付きになったの
だが。
「刑事さん、私達が入力したものまでも見るんですか。」
「いいえ、今の所は、あのメールだけですよ、我々だって、別に他を見る
必要な有りませんからねぇ~。」
「そうですか、わかりました。」
「其れで、社長さん、このメールを送ってきた犯人から、何かの要求があ
れば、直ぐに、私の方まで連絡していただきたいのですが。」
「勿論ですよ、直ぐに連絡を入れますので。」
一応の事情調集は終わり、刑事は事務所を出たのだが。
「主任、之は、ライフルか、何かわかりませんが、其れに近い弾です
よ。」
「えっ、ライフル銃の弾だって、だが、一体、何処から撃ったんだ。」
鑑識は直ぐにライフル銃の弾だと言ったが、その様な発砲があったとは警
察にも連絡は入って無かったので有る。
「鑑識さん、それじゃ~、何処から撃ったんでしょうかねぇ~、でも、あ
の公園からが一番狙いやすいと思いますが。」
「はい、我々の鑑識が公園内を調べていますので。」
警察は、何処からライフル銃を撃ったのか、どこかに痕跡が有ると思い、
公園内を探すので有る。
一番の目的は空になった薬莢を発見する事で有る。
だが、肝心の空薬莢は発見される事は無いのだ、警察が調べているところ
は、公園内と言っても、道路近くだけで、正か、公園外の道路に駐車してい
る車から発砲されたとは考えもしなかったので有る。
空薬莢を発見する為には、鑑識官だけでは足りず、刑事や他の警察官も動
員し、数時間も探したのだが、それでも、発見出来なかったので有る。
「主任、之は、今までに見た事も無い弾だと思いますよ、このダンプカー
のブレーキが完全に破壊されているところを見ると、相当、強力なライフル
銃だと思いますが。」
「鑑識さん、申し訳ないが大至急調べて下さい。」
「はい、直ぐに本部に戻り分析しますので。」
鑑識課員も、本部に戻って行くので有る。
その頃、会社に出勤して来た運転手達は、何もできず事務所に集まってい
たのだ。
「オイ、あのダンプに何かあったのか。」
何も知らずに出勤してきた運転手が聞いたのだ。
「あのねぇ~、前に止めてあったダンプがパンクしてたのよ、それも、4
台もよ。」
「えっ、じゃ~、オレのダンプもか。」
「そうよ、もう直ぐレッカー車が来て、警察まで持って行くんだって。」
「え~、あのダンプはオレのだ、じゃ~、仕事は。」
「私も仕事が出来ないのよ、だって、パソコンがね。」
その時、4台のレッカー車が到着したのだ、レッカー車は警察の指示で
次々と運び出されて行くので有る。
「社長、今日は、仕事に成りませんねぇ~。」
と、部長も仕事が出来ないと判断するのだ。
「そうだなぁ~、今日は、何も出来ないと考えてだ、そうだ、其れより
も、他の車も調べろ、此処には、50台のダンプが有るんだ、4台は無い
が、他のダンプで仕事は出来るはずだよ。」
社長は、仕事の入る様に部長に言うのだが。
「社長、之は、大事件なんですよ、運転手達も動揺しておりますし、犯人
が走行中のダンプを狙う恐れも有りますよ、取り合えず、今日のところは仕
事はストップした方が良いと思いますが。」
「社長、今日は仕事なんか出来ませんよ、こんな事件が起きたんですよ、
オレ達だって、何時、何が起きるのかわからない状態で仕事は出来ません
よ。」
他の運転手達もうなずき。
「社長、とにかく、今日は仕事は出来ませんよ。」
社長は暫く考えていたのだが。
「わかった、じゃ~、今日は仕事を止めるが、その前に全員で他のダンプ
に異常は無いか調べてくれ、若しか、何か不審な物やタイヤがパンクしてい
る様ならすぐに言ってくれよ、此方から、警察に連絡するから。」
「みんな、今、社長が言われた様に調べてくれ、みんな頼むぞ。」
運転手達は、車庫に止めて有るダンプに向かい、異常が無いか調べるのだ
が、勿論、有る訳が無い。
隆一は、車の屋根に取り付けた集音機で警察の会話や、社長達の会話の全
てを聞いて要るので有る。
数時間後、運転手達が事務所に戻って着た。
「社長、他のダンプに異常は無かったですよ。」
「そうか、わかった、じゃ~、みんな帰っていいぞ、あっ、それと、みん
な気を付けてくれよ、今は、犯人の顔もわからないからなぁ~。」
と、社長は、運転手達を帰したので有る。
その頃、本部に戻って着た鑑識係は直ぐに分析に入った。
「主任、ダンプのブレーキですが、完全に壊れていますよ、4台、全部で
す。」
「う~ん、だけど、一体、どんな方法でダンプのタイヤを撃ったんだろう
か。」
「そうですね、事務員に聞きましたが、あの扉はダンプが戻れば閉める事
になってるそうなんですよ、それと、最後に鍵を掛けて帰ったそうです。」
「うん、そうなんだ、鍵も壊されて無かったと言ってたからなぁ~。」
「主任、来て下さい。」
と、別の鑑識係が呼んだので有る。
「主任、これを見て下さい。」
と、分析器が出した結果を見せたので有る。
「之は。」
「主任、之は、金属の中でも鋼ですね、日本で作られた鋼じゃないで
す。」
「何処の国かわかるか。」
「其れは、無理ですよ、だって。」
この鑑識係は世界中にどれ程の鋼が有るかわからないと言うので有る。
隆一が使った、ライフル銃の弾は鋼であった、その為に破壊力は普通のラ
イフル銃とは比べものにならないので有る。
其れは、まるで、重機関銃と同じ様な威力を持って要るようであった。
「主任、之が、普通のライフル銃から発射されたとは思えないのです
が。」
「じゃ~、何か、自衛隊が使用して要るのと同じ機関銃だとでも言うの
か。」
「いいえ、私は、そうは言ってませんよ、だって、自衛隊が使用して要る
機関銃が正か、こんな市街地で。」
「うん、其れで、ライフルマークは出たのか。」
「主任、このライフルマークですが、今までに使われて様子も有りません
よ。」
「それじゃ~、新型のライフル銃か、それとも、外国製って事か。」
「主任、パソコンの発信地ですが、国内では無いですよ。」
「えっ、其れは、一体、どう言う事なんだ。」
「其れが、数十カ国も経由しておりますので。」
「何だって、外国から発信され、それも、数十カ国も絡んでいるって
か。」
「はい、その通りですね。」
「其れで、発信元は何処の国なんだ。」
「ええ、其れが、中東の国なんですよ。」
「中東の国って。」
「それも、今、戦闘中の都市なんですよ。」
「それじゃ~、それ以上は調べる事が出来ないじゃ~無いか。」
「はい、そのとおりです。」
隆一の使用して要るパソコンには、特別な装置が入って要るのだ、その
為、日本、いや、世界中のどの国から発信されているのかわかるだけで、正
か、日本国内から発信して要るとは考えもしないので有る。
其れは、隆一が、日本国内で発信したとしても、全て、外国が発信元とな
り、それ以上の追跡は出来ないので有る。
その時、刑事課の課長が着たので有る。
「如何ですか、何かわかりましたか。」
「課長、其れが、はっきりと言えば、何もわからないと言う方が正解です
が。」
鑑識係りも、今は、これ以上の分析が出来ないと言うので有る。
「えっ、何もわからないって、一体、どの様な意味だね。」
「課長、実は、パソコンを調べたのですが、発信元は外国で、それも、
今、戦闘中の国と言う事だけしかわからないのです。」
「何だって、外国の戦闘地域が発信元だと言うのか。」
「はい、その通りです、ですから、我々も、それ以上を調べ様が有りませ
ん。」
鑑識係りも、お手上げ状態だと言うので有る。
「では、ライフル銃ってのも外国製なのか。」
「はい、日本で作られたと言えません。」
「おい、おい、そんな話し、一体、誰が信じると思うんだよ。」
刑事課長も、信じる事が出来ないので有る。
「でも、ライフルマークは。」
「はい、それもですが、この弾の金属は日本製では有りません。」
「何だって、じゃ~、何か、使用されたライフル銃も弾も外国製で、パソ
コンのメールも外国で、それも、戦闘地域って事は、日本の警察は何も出来
ないって話なのか。」
「課長、其れが、我々、鑑識が出した結論です。」
刑事課長は、頭を抱え込んだのだ、それ程、シュルツの組織は強大なので
有る。
一国の警察が調べたところで、シュルツの組織が関与している証拠は何処
にも無いので有る。
だが、それ程の組織で有ると言う事も、隆一は今も知らないので有る。
刑事課でも、同じ様な話しになっていたのだ、一連の騒ぎが少し落ち着い
た頃で有る。
隆一は、次のメールを準備しているのだ、隆一は、何を考えて要るのだろ
うか、今度は、パソコンではなく、携帯から送ろうとしているので有る。
隆一の携帯もパソコン同様で、仮に、日本国内から発信したとしても、数
万、いや、数百万人の携帯から本人達が気付かない状態で送信されるので、
警察が突き止めようとしても不可能に近いので有る。
「我は、山の神で有る。
今朝、その方達のダンプカー4台のタイヤがパンクしていたであろう、次
は、何を目標にしようかと、今、思考中なのだ、その方達が、此れから先
も、我の山に投棄を続けるのであれば、何れの時に成れば、その方達自身に
火の粉が降り注ぐであろう事を覚悟しておけ、以上で有る。」
と、隆一は、メールを送り、その夜には車を出て、少し離れたホテルに宿
泊するので有る。
一方、木田は、隆一が送ったメールを読んで見ていた。
「隆一君は、この先、どの様な作戦を立てるのだろうか。」
と、独り言をつぶやいているのだ。
その木田にも、現地の状況は伝わってきている、其れは、隆一からでは無
く、公表されている内容とは別に警察内部の話で有る。
「刑事さん、私は。」
「あ~、あの建設会社の。」
「はい、実は、私の自宅にもパソコンは有りまして、そのパソコンに、山
の神と言う人物からメールが届いています。」
「自宅のパソコンにですか。」
「はい、その通りです。」
「其れで、内容は。」
「はい、ダンプ、4台がパンクさせたと言う内容とは別に、今後も投棄を
続けるので有れば、私達、自身に火の粉が掛かると言う内容です。」
「わかりました、では、直ぐに伺いますので、パソコンは使わないよう
に、それと、ご家族は。」
「はい、今、全員、居りますが、私よりも、娘達が怖がっておりますの
で。」
「わかりました、私達が着くまで少し時間が掛かりますが、付近をパトロ
ール中の警官を先に行かせますので。」
「はい、有難う、御座います。」
と、社長は、電話を切ったが、社長自身よりも、娘達の方が恐怖の表情で
いるのだ。
「ねぇ~、お父さん、この山の神って、一体、何者なのよ、私達は、何も
悪い事なんかして無いのよ。」
「うん、其れは、わかってるよ。」
確かに、娘の言う通りなのだ、娘達は、父親の仕事は汚れた仕事で有ると
思って要る。
だが、夫人や娘達は、父親が行って要る仕事の実態を知らないので有る。
数分後、数台のパトカーが社長の自宅に到着したのだ、警察官は表の警戒
に当たり、刑事達の到着を待って要る。
隆一は、その頃、ホテルに入りのんびりとしている、其れは、隆一自身が
メールを送ったので、後は、明日の朝、ニュースを見てからだと考えて要る
ので有る。
警察車両が次々と社長の自宅付近に到着して要る。
付近では、一体、何事が起きたのかと、多くの住民が見ているのだ、刑事
達は、大急ぎで社長宅に入って行く。
「あ~、刑事さん。」
「お待たせしました、其れで、パソコンに送られてきたのは。」
「はい、私が、電話でお話しをした、数分後だったと思いますが。」
「じゃ~、先に、そのパソコンを見せて下さい。」
「はい、あれからは、何も送られていませんが。」
刑事は、その文面を見て。
「社長、之は、間違い無く山の神が送ってきたと思われますね。」
「やはり、そうですか、でも、一体、何が目的なんでしょうか、私は、こ
のメールを見て、明日も仕事は止めようかと思ってるんですが。」
「其れが、良いと思いますね、数日間は搬入を止められたら犯人から、何
か、動きが有ると思いますので。」
「本当は、困るんですよ、我々が仕事を止めると、他の業者が。」
「社長さん、ですがね、ダンプカーのタイヤをパンクさせたと、この犯人
は認めてるんですよ、其れに、この文面からすると、何れ、皆さん自身に火
の粉が、と言う事は、何方かが、犯人の犠牲になる可能性が有ると言う事に
成りますよ、我々、警察も、此れから、24時間体制で社長さんの自宅と付
近を警戒する事にしますので。」
「刑事さん、有難う、御座います。」
社長よりも、夫人と娘達はまだ恐怖の表情が取れないので有る。
「それと、自宅の電話に犯人から連絡が入る事も考え、録音機逆探知機を
取り付けますのでね、皆さんの携帯ですが、申し訳有りませんが、電源を切
らないで欲しいのです。」
「刑事さん、私達の携帯に犯人から連絡が入るって事なのですか。」
「其れは、わかりませんが、一応、念の為と言う事も有りますので。」
娘は、何故、自分の携帯に連絡が入るのか不思議なので有る。
「でも、刑事さん、私達の携帯の番号が、何故、犯人が知る事が出来るん
ですか。」
今の時代、日本国内だけでも一億台以上の携帯が有るのだ、其処から、自
分達の携帯番号を特定出来るとは普通では考えられないと言うので有る。
「社長さんも、ご家族の皆さんも良く聞いて下さいね、社長さんの会社に
送られてきたメールの発信元ですがね、日本国内では有りません。
我々が調べた結果ですが、現在、戦争中の中の、それも、戦闘が行なわれ
て要る場所から発信されたとわかったんです。」
「えっ、戦争中の国からですか、でも、何故、その国から、私の会社にメ
ールが送られてきたのですか。」
社長も驚くと言うよりも、戦争中の国が、何故、自分達の会社の事を知っ
て要るのか、其れが、不思議だと思って要るのだ。
「社長さん、でも、よ~く考えて下さいね、確かに、メールの発信元は戦
闘中の地域ですがね、本当の発信地は、この日本国内だと、我々は思ってる
んですよ、其れでなければ筋が通りませんからね。」
夫人も娘達もまだ理解が出来ないので有る。
「刑事さん、じゃ~、犯人は、私達の事を知って要るんですか。」
「多分、近くに居ると思いますが、私も、それ以上の事がわかりませんの
で、まぁ~、皆さんに危害を与えるような事は決してさせませんので。」
「それじゃ~、私達は、何も出来ないの。」
夫人は、外出も出来ないと感じたので有る。
「はい、当分はその様に成りますねぇ~、まぁ~、暫くの辛抱だと思って
下さい。
我々も、全力で犯人を捜していますので。」
「お父さん、何か、悪い事でもしたの。」
と、娘の不安は大きくなるので有る。
「何を、今更、言ってるんだよ、お父さんは何も悪い事なはしていない
よ、其れは、会社の従業員も知って要るんだからね。」
「でも、じゃ~、何故、こんなメールが届くのよ。」
「それが、わからないから、心配して要るんだ、お前達や社員の事も
だ。」
だが、社長は、薄々、気が付いていたので有る。
あの山には、何を投棄したか、其れは会社のパソコンには全て入って要る
のだ。
有機物質は勿論の事、毒物も多く含まれて要る、その様な物を数年間も投
棄していたのは間違い無かったので有る。
だが、何故、今頃になって公表されるのか、其れが、全くわからない。
その様な時に、社長宅の前が突然騒がしくなった。
「主任、表に黒塗りの車が3台と、組関係と見られる男達が十人前後、社
長に会わせろと騒いでいるんですが。」
「何、組関係だと。」
社長は、直ぐにわかったのだ、其れは、実の兄達で有ると。
「刑事さん、多分、其れは、私の兄達だと思いますが。」
「えっ、社長さんのお兄さんですか。」
「はい、私の兄に間違い有りません。」
と、社長と、刑事数人が表に出て行くので有る。
「オイ、オレは、この家に住人の親戚なんだ、お前達に邪魔をする権利は
無い。」
と、組長は、何とか家に入ろうとするのだが。
「我々も、職務上、貴方が親戚だと言う確証が無い限り中に入れる事は出
来ません。」
と、やり取りをして要るところへ、社長と刑事が来たので有る。
「刑事さん、私の兄です。」
「わかりまして、ですが、他の者達を中に入れる事は出来ませんので。」
「わかったよ、お前達は、ここで待ってろ。」
「はい。」
と、配下の組員は、組長の命令に従い、外で待つので有る。
警察官、数十人が回りを見渡し、同時に組員達も見張っているので有る。
「兄貴、まぁ~、中に入ってくれ。」
「おい、事務所のパソコンに意味のわからないメールが届いたんだが、之
は、お前の事なのか。」
と、組長は、印刷された紙を見て。
「兄ちゃん、そのとおりなんだ、実は。」
と、社長は、この数日間に起きた事を話すので有る。
「其れで、今、仕事は出来ないのか。」
「うん、そうなんだ。」
組長は、何かを感じたのか。
「あの山を誰かが調査したのか。」
「いや、そんな話しは聞いて無いよ。」
「其れだったら、何も心配するな、オレが組員を配置して、誰も入れない
ようにするから。」
「社長、あの一帯は、社長さんの持ち物だと伺っておりますが。」
刑事も確かめたいのだ、私有地であれば、配下の組員を配置する事に警察
は止める事は出来ないと判断したので有る。
「刑事さん、其れは間違いは有りませんよ、あの一帯は、我々の先祖が2
百年以上も前から植林を行なった山ですか、其れは、全て登記されておりま
すので。」
「わかりました、私も、一応、確かめる必要が有りますので、社長さん、
申し訳ないのですが、登記書を拝見したいのですが。」
「はい、わかりました。」
と、社長は、自室に入ったのだが、直ぐに戻って来るはずの社長が、10
分、20分と経っても戻ってこないのだ、刑事は、最初、何も思わなかった
のだが、之が、後々、大事件へと繋がるので有る。
30分ほどして社長は手提げ金庫を持ってきたので有る。
「刑事さん、之が登記書です。」
刑事は登記書を見て納得したのか。
「社長さん、有難う御座いました。」
その時だった、パソコンにメールが入ってきたのだ。
「我は、山の神で有る。」
社長も組長も、そして、刑事達も真剣に文面を読んでいる。
「社長さん、この文面に書いて有る事は事実なんですか。」
社長は大慌てで、側の組長も知って要るのか、何も言わないのだ。
「社長さん、本当の様ですね。」
「あの~。」
と、言って黙り込んだので有る。
「社長さん、じゃ~、さっき、この登記書を持ってこられたんですが、か
なり時間が掛かっておりましたね。」
それでも、何も言えないので有る。
「じゃ~、この文面に書いて有る事は事実だと認めるのですか。」
「は~、はい。」
刑事は直感したので有る。
「社長さん、この山の神ですがね、社長さんの隠し財産が目的の様です
ね。」
「え~。」
と、社長は絶句したので有る。
「刑事さん、確かに、オレ達兄弟が溜め込んだ事は認めるが、之が、何
故、犯人が知って要るんだよ。」
「私も、其れが知りたいのですよ、社長さん、この事を知って要るの
は。」
社長の顔は青ざめているのだ。
「刑事さん、本当の事を言いますが、家族は誰も知りません。
私の兄だけが知って要るだけなんですよ。」
刑事は考えて要るのだが。
「主任、社長と組長しか知らないと言われましたが、会社の事務員さん
は。」
「うん、だけど、家族が知らない事を事務員が知って要るとは思えないん
だ。」
「刑事さん、会社の事務員も他の従業員達も、何も知りませんよ。」
「刑事さん、オレ達は一体どうなるんだよ。」
と、組長は、少しづつ怒りが顔に表れてきたのだ。
「組長、其れは、私は判断する事は出来ないが、相当な処罰の対象になる
だろう。」
「オレはね、どんな事をしても、この山の神って奴に一円たりとも渡す積
もりは無い。
刑事さんよ~、オレ達を守ってくれよ。」
「我々、警察の仕事は犯人から皆さんを守るのが任務ですから。」
と、主任刑事は、なんともやりきれない表情なのだ。
社長は別としても、何故、組長達を守らなければならないのだ、だが、仕
事として割り切るしか方法が無いので有る。
だが、その時、組長は表に出て行くので有る。
この山の神が何処かで見ているとは知らず、その山の神だが、この社長宅
の玄関から数百メートル、正確には5百メートル離れた所に20階建のビル
が有る、そのビルの中に居るとは、誰も知らないので有る。
其処で、山の神、其れは、隆一がパソコンを操り、隆一が仕掛けて置いた
盗聴器で会話を聞いて要るのだ。
この時、隆一も、正か、組長が恐ろしい行動を起こすとは思っても見なか
ったのだ。
「おい、チャカだ。」
と、組長は、組員が車に隠した拳銃を受け取り、何も無かった様に戻ろう
とした時だった、歩道には、数十人の野次馬が居たので有る。
組長は、歩道に居た女性の手を取り、後ろから羽交い絞めにしたので有
る。
「お~い、山の神って奴は、一体、何処に居るんだよ、早く出て来い
よ。」
と、女性を自分の前に立たせたのだ、付近に居た刑事達と社長も慌てて表
に出たが、組長の右手には拳銃が女性の頭に当てている。
「兄貴、そんな事は止めてくれ。」
「何、今更、何を言ってやがるんだ、オレ達が苦労して作った財産だ、誰
に渡すか。」
「兄貴、わかったよ、だけど、その女性とは関係ないんだよ。」
「オイ、その女性を解放するんだ。」
刑事達は、普段、拳銃は持っていないのだ、其れにしても、一体、何が気
にいらないのか、全く関係の無い女性を盾にするとは、5百メートル先のビ
ルに居る隆一も驚いていたので有る。
あの組長は、一体何を考えているのだ、だが、その組長は普段とは、全く
別人になっているので有る。
だが、その前から、隆一はライフル銃で人間を撃つ事などは全く考えてい
なかったのだが、今は、女性が人質になっている、この組長は突然として別
人になり、女性の頭に拳銃を突き付け、何時、発砲するのかわからない状況
になっている。
だけど、何も、焦る必要は無い、この組長と言う人物は多勢の群集の中に
山の神が居ると思って要るので有る。
隆一は、ライフル銃の照準を、一体、何処に定めて行くのかわからない、
刑事達も必死で組長の説得に当たっているのだ。
近くの警察官達も、配下の組員達も何をして良いのかわからず、時間だけ
が過ぎて行く。
女性が人質になって1時間が経過した頃に、組員達が乗ってきた乗用車か
た突然音がしたので有る。
其れは、隆一が、撃ったのだ、大きな声が飛び交う中でも音だが、数人の
組員が気付いたのだ。
「オイ、ボンネットから白い煙が出ているぞ。」
「えっ。」
と、数人で見た時、2台目、3台目とボンネットから白煙が上がったので
有る。
それでも、組員達は、車に乗らず、組長を見ているのだ。
「社長さん、我は、山の神で有る。」
と、突然、社長の携帯に山の神から連絡が入ったので有る。
「えっ、山の神って、一体、あんたは誰なんだ。」
側に居た刑事達も驚いたのだ、社長は携帯を手で塞ぎ。
「刑事さん、山の神って、言う人物からです。」
「山の神って。」
「はい、あのパソコンにメールを送ってきた人物からです。」
「社長、我は、山の神で有る。
その山の神が今から、重要な話しをするので、よく聞く事で有る。」
社長は慌てているのだ。
「何をだ、重要な話しとはなんだ。」
「山の神に、その様な口の聞き方が有るか。
まぁ~良い、今に、山の神の恐ろしさを知る事になるぞ。」
「其れは、一体、どう言う意味なんだ、私は、何も悪い事はしていないん
だ。」
「何を言うか、先程、送ったメールの内容が事実なのだ、まぁ~、其れよ
りも、今、組長は女性を人質に取っているが、社長に聞く、あの組長の頭が
無くなっても良いか。」
山の神は突然何を言ってるのか、社長は意味がわからないので有る。
「山の神、意味がわからないんだが。」
刑事達も動きだしたので有る。
「あの公園に居る群集の中で、今、携帯を使用中の人間を調べるんだ。」
と、主任刑事が部下達に命令したので有る。
その時、刑事課長も駆けつけたので有る。
「一体、何事なんだ、会議中に連絡が入り、直ぐに来たんだが。」
刑事課長も、現場が異様な雰囲気だと感じていたのだ、主任刑事は説明し
なが、周りを見回しているが、社長宅の前は道路で、その向かい側に公園が
有る。
主任刑事は、公園に集まっている人達の中に山の神が居るだろうと考えた
ので有る。
だが、刑事達の報告では、殆ど携帯を使用して要るが、山の神と思われる
様な人物は特定出来ないと言うので有る。
「社長、意味がわからないのか、では、はっきりと申し付ける。
そなたの兄でも有る、組長の頭が無くなるとは、山の神が、組長を殺すと
言う事だ。」
確かに、兄は、反社会勢力の組長だが、自分の目前で、しかも、多くのテ
レビカメラの前で殺されるのだと言われたので有る。
「兄貴を殺すって話しなのか、でも、兄貴は女性を。」
側の刑事達も話を聞いて要るのだが、十数メートル先の警察官達も拳銃を
構えている。
だが、果たして、警察官が組長を撃つだけの技量を持って要るのか、其れ
は、不可能に近いのだ、日頃、警察官達も射撃の訓練は行ってはいるが、そ
の状況下では、1発も組長の頭を撃つ事は出来ないのだ、だが。
「刑事さん、何とか成りませんか、確かに、兄貴は組長ですよ、今まで悪
事を働いた事は無いと申しませんが、今、テレビで放送されているんでしょ
う、幾ら何でも。」
刑事も放送されている事は知って要るのだが、刑事は、山の神との話を続
ける様に合図したので有る。
「はい、わかりました。」
と、社長は、そのまま。
「山の神、兄貴をどうしても殺すのですか。」
「其れは、そなたと組長の気持ち次第なのだ、無事に、女性を解放するの
だ。」
「はい、わかりました。」
と、社長は、そのままで。
「兄貴、その女性を放して欲しいんだよ、で、無いと、兄貴は殺されるん
だ。」
と、必死に説得するのだが。
「お~、何時でも殺せよ、殺せるものならやってみろよ、ポリ公の腕前じ
ゃ~、オレを殺す事は無理なんだよ、山の神って、奴は、一体、何処に居る
んだよ、早く出て来い。」
この時、隆一の狙いは定まっていたのだ。
「社長、刑事に伝えるんだ、我は、山の神で有る。
そなた達が幾ら探しても、我を見つける事は出来ぬ、我は、山の神だか
ら、と、伝えるのじゃ。」
「わかった。」
と、社長は、今の言葉を伝えるのだが、それでも、刑事達は周りを探して
いる。
「兄貴、早く、女性を解放してくれよ。」
「駄目だ、オレ達が苦労して作り上げた財産だ、誰にも渡す積もりは無
い、山の神、早く出て来ないと、この女性の命は無いぞ。」
其れにしても、隆一の狙っている場所とは、一体、何処なんだ、テレビで
中継されている様子は、木田も見ている。
木田は、隆一が、一体、何処を狙っているのか、この時には、薄々気付い
ていたが、あの距離では、とても無理だと思っていたので有る。
愛子も記者クラブで、他の記者達とテレビを見ている。
「隆一さんは、一体、何処に照準を合わせているのか、隆一さんの腕前で
あれば、組長の眉間を撃ち抜く事は出来る。」
と、愛子は考えて要るのである。
女性が人質になって早2時間が経過し、女性の体力は限界に来ているので
有る。
「社長、山の神が、どれほど恐ろしいか、今、組長の頭を撃てば、脳みそ
が飛び散る様子を全国民に見せるのは、山の神の本望では無い。
仕方が無いが、組長には少し痛いが直ぐに終わるぞ。」
「えっ、山の神、直ぐに終わるって。」
側の刑事達も山の神との会話を聞いて要るのだ、だが、その山の神って、
一体、何処に居るんだ。
と、周りを見るのだが、山の神らしき人物など何処にもいないので有る。
社長宅の周辺は物々しい警戒を行なって要る。
数十台の警察車両と数百人の警察官を見た組長は、今まで以上に感情をむ
き出しにわめき出したので有る。
「山の神、出て来い、早くするんだ、でないと、この女性の命は無い
ぞ。」
「兄貴、止めてくれ、早く女性を解放してくれよ、そうでないと、山の神
が兄貴を殺すって言ってるんだよ。」
社長も、必死で説得するが、組長は、全く聞く気が無いので有る。
「社長、終わりにする。」
と、言った、その時、隆一のライフル銃が火を噴いたので有る。
直後、組長の耳から鮮血が噴出したので有る。
ほんの少し間が空いて。
「痛い、わぁ~。」
と、組長は叫び声を上げたので有る。
組長は、手で耳をうさいだ、その時だった、刑事達が一斉に組長の側に向
かい、人質となっていた女性を連れ出したので有る。
「早く、救急車だ。」
と、刑事は叫び、直ぐ側で待機していた救急車はサイレンを鳴らし、人質
の女性を乗せて行くので有る。
「お~い、もう一台が必要だ。」
と、刑事は叫ぶが。
「社長、救急車などは必要はない、少し痛むだけで有る。」
だが、社長は、組長が頭を撃たれたと思っているのだ。
「でも、頭から血が。」
「頭かでは無い、耳からで有るのだ。」
と、山の神は言うのだが。
「刑事さん、山の神が救急車は必要無いって、耳からの出血だと言ってま
すが。」
刑事は、大変な驚きなのだ、現場に居た警察官達が付近を必死になって捜
したにも関わらず、山の神は発見できず、しかも、組長の耳を撃ったので有
る。
山の神は、一体、何処から組長を撃ったのであろうか。
「えっ、組長の耳を撃ったと。」
それでも、刑事達は組長の傷の治療が必要だと考えるのだ、その現場は騒
然としている。救急隊員も組長の傷を応急手当をするだけで、それ以上は何
もできず、組長は大声で叫んでいる。
「お~い、早く、病院に運んでくれよ、オレは死にたくは無いんだよ。」
「兄貴、大丈夫だ、右の耳を撃たれたんだから。」
「何でもいいから、早く病院へ運べ。」
山の神は、まだ近くに居るのだろうと刑事達も警察官達も周りを見てい
る。
その頃、山の神で有る、隆一は、既に、ビルの外に出ているのだ、暫く歩
き、其処から、タクシーに乗りホテルに向かっていたので有る。
木田は、組長が撃たれた瞬間を見ていたので有る。
あの隆一と言うスナイパーは5百メートル先から、組長の耳を撃ったので
有る。
隆一が、それ程までに素晴らしいスナイパーに成長したとは信じられない
と思ったので有る。
だが、現実に隆一は組長の右耳に狙いを定め、その右耳を撃ったので有
る。
一方、愛子もテレビを見ていた。
だが、記者クラブの記者達は一瞬、何が起こったのか理解出来ず。
「あっ。」
と、みんなが大声を上げただけで有る。
「えっ、今、何が起きたんだよ、組長の頭から血が出ているぞ~。」
「いや、頭じゃない。」
と、口々に言うのだが、側に居た愛子も。
「あっ。」
と、声を上げるだけで、あとは何も言わず、記者達の話を聞いて要る。
「だけど、あの女性が無事なだけでも、良かったと思うんだ。」
「うん、そうだよなぁ~、だけど、組長を撃ったって、あの山の神って、
一体、何処に居るんだよ。」
「う~ん、其れにしてもだ、俺は組長の頭を狙ったと思うんだよ。」
「うん。」
側で、聞いて要る愛子は。
「何、言ってるのよ、あれは、最初から組長の耳を狙ってたのよ、あんた
達、何処を見てるのよって。」
と、大声で叫びたいのだ、だが、今、そんな事を言えば大騒ぎになると。
「隆一さんは、あのビルから撃ったんだわ、其れにしても5百メートルも
離れた場所から数センチの耳を撃つとは信じる事が出来ないわよ、其れは、
普通のスナイパーだったらね、でもね、私の隆一さんだから出来るのよ。」
と、愛子は、心の中で言ったので有る。
その時、愛子の携帯が鳴った、隆一からで有る。
「愛子、当初の目的は一応達成したと思うよ。」
愛子は、大急ぎで、記者達のいない場所に行き。
「隆一さん、私もテレビで見てたのよ、あれは、初めから狙いを定めてい
たの。」
「うん、そうだよ、だって、僕は、人を殺すなんて出来ないよ。」
隆一は、愛子が思ったとおりの優しい人物だった。
「隆一さんって、本当は優しい人なのね。」
「愛子、僕は、君が思って要る以上には優しくは無いんだ。
だけど、今回の任務は、彼らを殺せって話しじゃ~無いと思うんだよ、彼
らの悪事を暴き出す事が大切だって思っただけなんだよ。」
愛子は、嬉かった、それにしても、隆一は、なぜ、殺さなかったのか、何
か、他に訳でも有るのか。
「隆一さん、教えて欲しいの、私は、何故、隆一さんは殺せなかったの
か、何か他に訳もで有るの。」
「僕はね、彼らに、此れから本当の地獄を味わってもらおうと考えてるん
だ。」
「えっ、本当の地獄を味わせるって、ねぇ~、一体、どう意味なの。」
愛子は、隆一の考えて要る事がわからなかったので有る。
あの時、組長や社長を殺さずに終わらせたのは何故なのか。
「あの組長と社長はね、この市や町が発注する仕事を殆ど独占と言っても
過言じゃない程仕事を取っていたんだ。」
「隆一さん、でも、公共の工事って、全て入札じゃ~無かったの。」
「うん、そうなんだ、だけど、あの社長は表では綺麗ごとを言ってるが、
その裏じゃ、兄貴の組長と組んで、他の建設会社を含めた多くの企業を脅か
し、全部と言ってもいいほど落札してたんだ。」
「でも、他の会社からは何か別の方法で役所に連絡していると思うんだけ
ど。」
「愛子、其れがね、彼らは、他の会社を下請けとして使うんだよ、そうす
れば、他の会社だって仕事が出来るだろう、それにね、彼らは、数回に一度
は、他の会社にも落札させるんだ、だけど、本当に落札したのはね、あの社
長達の会社なんだ。」
「でも、市や町もだけど、警察も調査しなかったの。」
愛子は知っていたので有る。
彼らは、他の会社には見返りを要求し、其れで、落札しなくても会社に損
害はないのだ。
その見返りの金額は一割と決めていたので、年間にすれば数十億円も稼ぐ
事が出来たので有る。
彼らのやり方は実に巧妙で、何度も警察が介入するのだが、一度も摘発さ
れた事が無かったので有る。
他の会社も一割と言う支出は大きいが、それでも利益が出る為に、社長達
の言う事が表に出る事は無かったので有る。
「でも、隆一さんは、何故解ったの。」
「僕はね、ネットの書き込みも大切だと思うんだ、だけど、他の会社の社
員が本音を言う所はお酒を飲んだ時なんだ、其れで、此処に着いた時、直ぐ
に近くの居酒屋に行ったんだ、何処の居酒屋でも同じだと思うんだけど、世
の男達は職場や家庭の不満をお酒を飲んだ勢いで話すんだよ。」
愛子も、あの組長達の事を聞き出したのも飲んだ勢いで話す男達だった。
「じゃ~、隆一さんも、時々、居酒屋に行くの。」
と、愛子は少し不満だった、もし、そこで、愛子に対する不満が言われて
いると思ったからで有る。
「いや~、僕はね、行かないよ、だって、今は、何も不満なんて無いから
ね。」
と、隆一も、愛子が期待した反対の言葉で返したので有る。
「じゃ~、隆一さんは、彼らに何をさせるつもりなの、その地獄って。」
愛子は、全く見当がつかないので有る。
「僕はね、彼らを、刑務所以上に過酷な現場に行かせるつもりなんだ、其
れはね、市と警察の幹部には山の神からと言う名で内容を送って有るん
だ。」
「ねぇ~、隆一さん、教えてよ。」
と、愛子はどうしても知りたいのだ、だが、隆一は話さなかった。
「愛子、この話はね、僕の独断なんだ、木田さんにも伝えてないんだ、其
れに、市や警察の幹部達がどんな動きに出るか、僕は、其れを楽しみにして
るんだ。」
「じゃ~、木田さんも知らないって言う事は、木田さんも後から知る事に
なるのね、だけど、私は、知りたいのよ、だって、隆一さんが独断で決めた
って事って、一体、どんな事なの。」
と、愛子は、何としても知りたいのだ。
「まぁ~、簡単に言えば、あの山に投棄した産業廃棄物を処理するって事
かなぁ~。」
「えっ、投棄された産業廃棄物を処理するって、でも、大量に有るの
よ。」
「そんなの簡単だよ、あの山に処理施設を建設すれば済む話だよ。」
と、隆一は、実に簡単に言うのだが、処理施設建設するためには、多額の
費用が必要になるので有る。
「隆一さん、でも、簡単に処理施設を建設するって言ったけど、建設費用
は。」
「愛子、社長宅の地下には多額と言っても、普通で言う多額じゃ~無いん
だよ。」
愛子は、どんな方法を使っても建設会社が裏金を作ったとしても、数十億
だろうと思ったので有る。
「ねぇ~、隆一さん、地方の建設会社よ、どんなに集めても、まぁ~、数
十億ってとこだと思うんだけど。」
「愛子、其れはね、僕だって驚いたんだ、現金で5百億以上、百キロ以上
の金塊も有るんだよ、其れに、家族が持ってる宝石だけでも数億は有るんだ
から。」
「えっ、それって、本当なの、私の頭じゃ~、理解できないわよ、だっ
て、あの市は税金の収入も思った以上に少ないのよ。」
「愛子、彼らはね、あの市の中心部に数十箇所の土地を持って要るんだ
よ、そこには、あの建設会社が建設したビルや商業施設だけでも数百ヶ所も
有るんだ、其処からの家賃収入の半分を誤魔化しているんだよ、それだけで
も年間にすれば数十億も有るんだ。
僕はね、その全てを没収したんだよ、今頃、あの社長の顔は真っ青になっ
ていると思うんだ、其れに、会社の資産もだよ。」
隆一は、パソコンをフルに使ったのだ、取引関係の有る銀行に対しても、
全ての出金を中止させる内容を山の神の名で送ったので有る。
一方、市の幹部宛に送られた山の神から指示と言うよりも、命令で市長を
初め、全ての幹部達は協議を始めている。
更に、警察本部も同様だった。
「愛子、簡単に話せる内容じゃないんだ、数日後には、この地方に有るマ
スコミにも送るから、その時になればわかるからね、其れまで少し待って欲
しいんだ。」
隆一も、相当疲れている様子だと感じた愛子は、其れ以上は聞かない事に
したので有る。
「隆一さん、ごめんなさいね、隆一さんが疲れているとわかってたのに、
私は。」
「愛子、いいんだよ、僕は、今から、ホテルで少し眠る事にするよ。」
「隆一さん、身体も大事にしてね、じゃ~、お休み。」
「愛子、済まない。」
と、隆一は、電話を切り、ホテルに入った隆一は、風呂に入った。
だが、初めての任務に身体も神経も想像以上に疲れていたのだろう、風呂
から上がると、直ぐにベッドに入ったが最初は神経が高ぶりで眠りに着いた
のは数時間後だった。
そして、隆一が目覚ましたのは、その二日後であった。