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僕は、スナイパー。  作者: 大和 武
6/10

 第 6 話  1号指令とは、一体。

 食事も終わり、食後のコーヒーを一口飲み、隆一は、パソコンのスイッチ


を入れた。


 之が、隆一にとって、最初の任務となる指令であった。


 木田は、隆一が最初の任務なので行き成りの指令は出さなかった。


 はじめの文言は、此れから行なう任務が、どれ程、国民の為に、其れが、


日本と言う国家のためになるのか、其れを伝えていたので有る。


 隆一も、心の中では理解はして要るつもりだったが、改めて、木田からの


指令を読む事によって、いかに、その任務が重大なのかを知ったので有る。


 そして、本題の指令で有る。


 「愛子、ちょっと、こっちに来てくれ、木田さんからの指令メールだ。」


 「は~い。」


 と、愛子は、元気な返事で着たので有る。


 愛子は、隆一のそばに座り、パソコンの画面を見ている。


 「隆一さん、第1号、指令なの。」


 「うん、僕にとっては、最初の任務なんだ、どんな内容なのか、今から切


り替えるからね。」


 と、隆一は、画面を切り替えたので有る。


 其処には、有る、地方都市名と現場の写真が映し出されいる。


 「えっ、之は、一体、何なんだよ。」


 と、隆一は、思わず叫んだ、画面に映し出されたのは、大量のというより


も、山と山の間が土砂と産業廃棄物によって谷間が塞がっているではない


か、何と言う事だ。


 「隆一さん、之は、大量の土砂と言う様な表現じゃ~、無いわよ、完全に


谷間が土砂と産業廃棄物で谷間が無くなっているんだもの。」


 「其れにしても、本当にひどいよ、何故なんだ、こんな姿になるまで、行


政は行動を起こさなかったんだ。」


 二人は、あきれた表情で見ている。


 隆一は、次の画面に切り替えたので有る。


 「う~ん、之は、何だ。」


 よく見ると、その地方の建設会社名と社屋だった、次の画面に切り替え


た、すると、何故、あの様な大量の土砂と産業廃棄物で谷間が埋め尽くされ


たのか詳細に書いて有る。


 「愛子、この文面からすると、この会社は、5年や10年じゃなく、20


年以上も前から、産廃物と土砂を、あの谷間に違法投棄してたと言う事にな


るね。」


 「うん、私も、そのとおりだと思ったわよ、でも、何故なのよ。」


 「確かに、その通りだと思うけど、じゃ~、次に行くよ。」


 と、隆一は画面を切り替えた、すると、何故、今まで行政が介入出来なか


ったのか理由がわかったので有る。


 「隆一さん、この付近一帯は、あの建設会社の社長個人の所有となってる


わよ。」


 「う~ん、之が、結果的に何も出来なかったと言う訳なのか。」


 「でも、だとしてもよ、この山間以外の土地は。」


 「うん、わかった、切り替えるよ。」

 

と、切り替えた途端で有る。

 

「あっ、之は。」


 と、隆一は、大きな声を上げたのだ。


 「隆一さん、之は、大変よ、だって、あの都市の飲料水の。」


 「うん、此処に、大きなダムが有るね、でも、この谷間に川はと。」


 と、別の画面に変え、地図を出したので有る。


 「愛子、この地方都市の地図をプリントして欲しいんだ。」


 「わかったわ、それと、この建設会社も必要ね。」


 「うん、それと、建設会社の社長が所有している土地の全てもね。」


 「じゃ~、関連しているところを全部って事ね。」


 「うん、愛子、済まない、なんか、君に余計な仕事を頼んで。」


 「う~ん、いいのよ、だって、其れで、隆一さんの任務がスムースに行く


んだったら、私は、嬉しいのよ。」


 愛子に不満は無かった、其れは、今の隆一の目付きでわかったので有る。


 あのお城での一年間とは、全く別人の目付きになっているからで有る。


 木田に言われた時は少し不満もあったが、この任務は隆一が一人で出来る


ものでは無いと感じていたので有る。


 「隆一さん、私は、隆一さんの補助する事で隆一さんの任務が完遂出来れ


ばそれでいいのよ。」


 「愛子、僕も最初の任務が、これほど大変だとは思って無かったんだよ、


だって、この資料の整理と情報を集めることを一人ですることは出来ないと


思ったんだ、其れで、愛子にお願いが有るんだけど、いいかなぁ~。」


 愛子は直ぐにわかったのだ、木田も、愛子には情報収集をして欲しいと言


ってたのだ。


 「愛子、君には世界中の情報収集を行なって欲しいんだけど。」


 と、愛子は数年間世界中を飛び回っていたのだから情報収集は当然だと思


ったので有る。


 「隆一さん、何でも言って、私に出来る事があれば、何でもするわよ。」


 愛子は、組織に入った当初、やはり、シュルツからも言われたのだ、其れ


が、情報収集だったので有る。


 「僕が、直接行って、この資料に基づいた情報を集めるのが任務なんだけ


ど。」


 「隆一さん、私が、情報収集すればいいのね。」


 隆一は、愛子に申し訳ないと思っているのだ。


 「愛子、申し訳ない、僕が、この任務が政府と言うよりも、地域住民のた


めと思って要るんだ、こんな状態になった、あの山もだけど、付近の人達、


其れに、その山間部に住む野生の生き物には生死の問題だと思って要るん


だ。」


 隆一が、こんなに変化するとは、愛子も思っていなかったので有る。


 「隆一さん、私は、資料の整理をするわ。」


 「うん、有難う。」


 マンションには、大きなテーブルが有る、其れは、各種の資料を整理する


為の物だ。


 愛子は、隆一の補助と言う名目だったが、愛子は今までの経験で、情報収


集と言う、専門の任務が出来る事に喜びを感じたので有る。


 愛子は、次々と資料を整理をして行く、隆一も、必要と思われる画面を


次々と打ち出しするので有る。


 「隆一さん。」


 「うん、何。」


 「コーヒーを入れるから、少し休んだら。」


 「うん。」


 と、返事はするが、隆一の目は画面に集中しているのだ。


 初日から、こんなに集中するとは、愛子は想像もしていなかったのだ。


 「ねぇ~、隆一さんってば、お願い、少しだけでも休んで欲しいの。」


 「うん、わかった。」


 と、隆一は、やっと、重い腰を上げたので有る。


 「ねぇ~、隆一さん、余り、最初からそんなに。」


 「いや、愛子、僕は、なんとも無いんだ、今まで、自分自身がこんなに仕


事に集中出来るとは思って無かったんだ、其れに、愛子が思うほど僕は疲れ


て無いんだ、それよりも、今は、早く現地に行きたい気分なんだ。」


 何と言う男だと愛子は思ったので有る。


 最初の任務は隆一の思って要る以上困難な任務のはずなのに、此処は、時


間を掛けて多くの情報を集め、分析する必要が有ると愛子は考えていたの


だ、だが、今の隆一に愛子の考えなどが通じるはずが無い、では、どの様な


方法が有るんだろうかと、愛子はコーヒーを飲みながら考えるので有る。


 隆一も、何かを考えて要る様子で有る。


 「ねぇ~、隆一さん、この任務だけど。」


 「うん。」


 隆一の返事は、別のことを考えて要るのだと思った。


 「ねぇ~、隆一さん。」


 「うん。」


 と、また同じ返事で有る。


 「なぁ~、愛子、今、最後の文章を読んでいるんだけど、木田さんは、山


に放棄された大量の産業廃棄物を、別の場所に移せと書いてるんだけど、で


も、あれだけ大量の廃棄物を移動させるって簡単じゃ~無いと思うんだ。」


 「そうね、でもよ、あれだけ大量に有る物を何処に移すのよ。」


 「其処なんだ、其れに、どんな方法で移せって言うんだ。」


 隆一も愛子も、木田からの指令を真剣に考えるのだ、その後、暫く会話も


なく時間だけが過ぎ。


 「ねぇ~、隆一さん、その廃棄物なんだけど。」


 「うん、わかってるんだ、だけど、僕は、その前にする事が有るんだ。」


 愛子はわかったのだ、其れは、隆一と同じ考えだと言う事で有る。


 「隆一さん、多分、多分だけど、私と同じ考えじゃないかと思うんだけ


ど。」


 「やはり、君もか。」


 「うん、そうなのよ、だって、今有る大量の廃棄物の移動よりも、先によ


投棄を中止させる方が大事だと思うのよ。」


 「うん、僕も同じ考えなんだ、今でも、毎日、数十台かそれ以上の台数で


あの場所に投棄していると考えると、中止させる事が先決だと思うんだ。」


 「でも、でもよ、どんな方法を使うの、だって、資料によるとよ、過去に


何度も役所から通達が届いているのに、彼らは、その通達を全く無視してい


るのよ。」


 「役所も通達だけで何の手立ても打ってないんだろう。」


 「だって、あの一帯は建設会社社長個人も土地なのよ。」


 「うん、だけど、今まで、一体、何をしてたんだと、言いたいよ。」


 二人の会話は続き、それでも、愛子は資料の整理と分析を、隆一は、主な


資料を打ち出すので有る。


 その後の二人は資料の分析をはじめて10日を経過した頃で有る。


 「ねぇ~、隆一さん、私が、一度、現地調査をしようと思うの。」


 「えっ、なんで愛子が、此処に有る資料で十分だと思うんだけど。」


 「勿論よ、これだけの資料があれば、十分なんだけど、私は、何かが足り


ないって思ったのよ。」


 「何が、足りないんだ。」


 「うん、之は、私だけの考えなのよ、確かに、資料は十分揃って要るわ、


だけどね、この資料の中に、現地の声が無いように思ったのよ。」


 隆一は、何も言わず、考えたので有る。


 確かに愛子の言う通りかも知れない、資料には、現地住民の声が全く無い


のだ、地域住民がどの様な考え方を持っているのか、愛子は其れを調査した


いと言うので有る。


 「じゃ~、君は、現地住民の生の声を聞きたいって言うのか。」


 「私は、そう思ったのよ、私はね、この資料に書かれていないことを知り


たいのよ、だって、地域の人達がどんな思いなのか、資料じゃ、何も書かれ


て無いもの。」


 「わかったよ、で、何時、行くんだ。」


 「うん、私はね、出来るだけ早い方がいいと思ってるの、其れで、明日の


夜なんだけど、あの都市じゃなくて、別の都市に行く夜行バスが有るの


よ。」


 「えっ、そんなに早く行くのか。」


 隆一は、まさかと思った、資料だけの分析で10日も掛かったのだ、だ


が、愛子は、現地調査に、それも、明日の夜行バスで行くとは。


 「で、何日位の予定なんだ。」


 愛子は、少し考え。


 「私は、別に時間を掛けるつもりは無いのよ、だって、余り時間を掛ける


と不審な人物が居ると思われるでしょう、だから、短期間で終わりたいの、


だから、2~3日って、とこだと考えているの。」


 「じゃ~、身辺調査って、話なんだ。」


 「う~ん、其れはまだわからないけど、だって、現地に着いてから考えよ


うと思ってるのよ。」


 「愛子、でも、危険じゃ無いのか、君に若しもの事が有れば。」


 愛子は嬉しかったのだ、隆一がそれほどまでに自分のことを心配してくれ


る事に。


 「隆一さん、本当に有難う、でも、私は危険を冒すつもりは無いのよ。」


 愛子自身、今までに何度も、命の危険な状態になったことは経験している


のだ。


 「本当に軽く調べるだけなのよ。」


 「本当なのか、本当に危険は無いんだなっ。」


 隆一は、愛子が情報収集の専門家だと知らないので有る。


 「本当よ、本当に大丈夫なんだから、だって、私に若しもの事が有る訳が


無いと思ってるのよ、私はね、近くの喫茶店に入って聞くだけなんだか


ら。」


 「本当なんだな。」


 「本当よ、隆一さん、女性って、噂話が大好きなのよ、女性同士の方が話


しが聞きやすいのよ、其れに、相手が男性だと、他の話は出来ないのよ。」


 「ふ~ん、そんなものなのかなぁ~。」


 「隆一さんが勤めてた会社でも同じだったの、私が、社長の愛人だって、


あの会社の女性社員は、その話だけで一日が過ぎるのよ、その内にね、本当


の話が何処からともなく出てくるものなのよ、まぁ~、女性って、何時の時


代でも他人の噂話が好きなのよ、私はね、其れを利用するだけなの。」


 隆一は、納得したのか。


 「愛子、わかったよ、でも、絶対に無理はするなよ。」


 と、隆一は、何時になく、強い口調で言ったので、愛子は嬉し涙が出てき


たので有る。


 隆一さん、本当の私は情報収集の専門家なんだと、大声で叫びたい気持ち


なのだ。


 「隆一さんのためなの、それと、日本のためにね。」


 愛子は、一瞬、しまったと思ったのだ、隆一のためはわかる、だが、何


故、日本の為だと言ったのか。


 「いいんだ、愛子の気持ちだけで、僕は十分なんだよ、其れに、愛子が無


事ならね、それ以上、何もいらないよ、本当なんだ。」


 隆一の目は、愛子の瞳を見ていた、愛子は、隆一の鋭い目に一瞬どきっと


したのだ。


 「私はね。」


 と、其れ以上は言えなかったので有る。


 「で、愛子、準備は。」


 「うん、明日しようと思ってるの、其れに、私も考える事が有るのよ。」


 「えっ、一体、何を。」


 愛子、君は、一体、何を考える必要が有るんだ、僕は、お前の身体が大事


なんだと大声で叫びそうに成ったので有る。


 「私ね、隆一さんと仕事に、い~え、任務に就ける事が、今は、とっても


幸せなのよ、だって、私は。」


 愛子の目に涙があふれ、其れ以上は何も言えなかったと、言うよりも、言


う事を止めたので有る。


 「愛子、君の気持ちはわかってるよ、だけど、本当に無理だけは止めてく


れよ、お願いだからね。」


 愛子は、隆一の胸に飛び込み、愛子は溢れる涙をぬぐう事も忘れ、二人


は、そのまま、ベッドに倒れ込んだので有る。


 そして、明くる朝、隆一は、早くもパソコンを軌道させている。


 其れは、出来る限り愛子に負担を掛けたくないと思ったからなのだが、や


はり、愛子の言う通りだった、殆どの情報は有るが、愛子の言う様な情報は


無かったので有る。


 それでも、隆一は、本来の任務に付いて、何か良い方法は無いか考え出し


たので有る。


 その建設会社は、登記上は弟が経営者となっているが、実質上の経営者は


長男なのだ、その為、今まで、何度も役所は勧告するが、彼らは、聞く耳も


無かったのだ、役所は、警察も介入させたが、その全てが失敗に終わって要


ると言うので有る。


 何故なのか、其れは、その兄はこの地方では最大の勢力を持って、殆どの


企業に何らかの形で入り込んでいる、巨大な反社会的組織なのだ、木田は、


その組織を完全に破壊せよとの指令を出したので有る。


 隆一に、出されたはじめての任務、それが巨大な反社会的組織を完全に破


壊せよと、だが、そんな事が果たして出来るのだろうかと、隆一は深刻に考


えるので有る。


 其れに、一体、何からはじめれば良いのか、愛子は、単身で情報の収集に


行くと言って要る、何か、良い作戦は無いのかと考えるのだが、はじめての


任務、それも巨大組織を壊滅せよ、幾ら、考えたところで直ぐに浮かんで来


るものでは無い。


 隆一は、目を閉じて考える、その様な状態が数時間も経った頃で有る。

 

 隆一が、子供の頃に父親から聞いた民話を思い出したのだ。


 隆一は、頭の中で想像するのだ、ああだ、こうだ、と、話と言うよりも、


作戦を考えはじめたのだ、隆一は、時々、笑みを浮かべながら、話を組み立


てて要る自分が楽しいと思うので有る。


 その様な顔付きをして要るときに愛子が目を覚ましたので有る。


 「隆一さん、一体、如何したのよ、何を、ニヤニヤとしているの。」


 隆一は、思わずはっとし。


 「えっ、僕が、ニヤニヤとしてるって本当に。」


 「本当よ、私、隆一さんの頭が一瞬、変になったと思ったわよ。」


 「えっ、僕の頭が変になったって、うん、其れは、本当かも知れない


よ。」


 と、またも、隆一はニヤリとするので有る。


 愛子は、後に、隆一が巨大悪を退治するとは、この時には思いも寄らなか


っただ、だが、隆一に胸の内では作戦が練られて行くので有る。


 「ねぇ~、一体、如何したのよ、私、なんだか気持ちが悪いわよ。」


 隆一は、作戦の内容を言うこともせず。


 「何よ、ねぇ~、教えてよ、お願いだから。」


 と、愛子は、しきりに隆一の顔を覗くのだが、隆一は、ただ、ニヤリとす


るだけだったので。


 「もう、隆一さんなんて、大嫌いよ、何も言ってくれないんだもの。」


 「愛子、済まない、これだけは、後の楽しみにして欲しいんだ、それと、


今、僕の考えた方法には、愛子が集めた情報が最も大切なんだ。」


 「えっ、だって、今は、何も無いのよ。」


 「愛子、無いから楽しみなんだ、僕は、大真面目なんだ、愛子が集めた、


噂話が最大の武器になると思うんだ。」


 愛子は、隆一の言う意味がわからないので有る。


 「私は、何の意味かわからないけど、噂話なら何でもいいの。」


 「うん、何でもいいんだ、後は、僕に任せて欲しいんだ。」


 愛子は、少し首をかしげるのだが。


 「わかったわ、じゃ~、何でもいいのなら、私も楽しんで集める事にする


わね。」


 と、愛子は、微笑み。


 「隆一さん、私、シャワーを浴びて、行く準備をするね。」


 「うん。」


 と、言った後、愛子がシャワーを浴びる間、ニヤニヤし続けるので有る。


 シャワーを終えた愛子は準備に入るのだが。


 「愛子、少しは変装するんだろう。」


 「うん、今は、私が誰なのか知られると困るのよ。」


 「わかったよ、じゃ~、任せたよ。」


 準備は直ぐに終わり。


 「隆一さん、食事に行きましょうよ、私は、その後、バスに乗るつもりな


の。」


 「じゃ~、行くとするか。」


 隆一は、大きなバックを引き受け、愛子は、小さめのバックを引き、夕食


に向かったので有る。


 その夕食も2時間ほど掛けたが終わり、愛子は、夜行バスに乗り出発した


ので有る。


 隆一は、久し振りの夜の街を歩いたのだ、時間も遅く、多くの人達はお酒


に酔い、また、若い二人連れは腕を組み、何か楽しそうな会話をしているの


だろう、時々、笑い声が聞える、少し歩いて行くと、数年振りだろうか、屋


台が目に留まったので有る。


 隆一の足は自然とその屋台へと向かって行き、何も考えないうちに注文を


したのだ。


 お酒と、目の前には良く煮込まれたおでんが有る。


 「親司さん、え~と、ちくわに厚揚げ、それとごぼてんを。」


 と、言って、隆一は、一杯目のお酒を一気に飲んだのだ、其れは、数年振


りだった。


 その屋台の側では、数人の男達が、何やら議論している様子で有る。


 「お兄さんは、この近所なのかねぇ~。」


 と、屋台の主人は気軽に声を掛けてくるのだ、だが、隆一は、首を横に振


り、何も、言わず、注文したおでんを食べながら、またも注文し、其れを、


持ち帰るので有る。


 「おっと、危ない。」


 と、独り言だ、何時もの隆一ならば、注意するのだが、愛子が急に情報集


めに行くと言って出発したのが原因なのかわからないが、不用意な気持ちで


夜の街に出掛けてしまったので有る。


 此れからの隆一は、何が有ろうとも身分を隠し、所在も明らかには出来な


いので有る。


 其れは、常に隠密行動を取らなければならないのだ、持ち帰ったおでんは


まだ温もりが有る、冷蔵庫からビールを出し、おでんを肴に一人で飲み考え


ていた。


 愛子は、一体、どんな噂話を集めてくるのだろうか、その内容によって


は、ストーリも違って来るんだと、一人でニヤニヤとして考えるので有る。


 だが、久し振りの一人酒、ビールを二本で酔ってしまったのか眠ってしま


ったのだ。


 数時間は眠ったのか、突然、携帯が鳴った、其れは、愛子だった。


 「隆一さん、今、何をしてたの。」


 「うん、別に、何もして無かったけど。」


 「ふ~ん、そうなの、今ね、丁度、運転手が休憩に入ったのよ、で、電話


したの。」


 隆一は、時計を見ると、夜中の2時を過ぎていた。


 「明日、じゃ~無くて、あちらには何時に着くんだ。」


 「早朝の6時の予定なの。」


 「そうか、夜行バスって、眠れ無いんだろう。」

 

 「うん、そうなのよ、其れに、昨日、隆一さんが話してくれなかった事も


気になるのよ。」


 愛子は、どうしても聞きたいのだろうが、今度ばかりは話をする事は出来


ないんだと隆一は考えて要る、


 「愛子、今度ばかりは、君にも言えないんだ。」


 「ねぇ~、どうしてなの。」


 「昨日も言っただろう、愛子が集めてくれた噂話が今回の鍵を握ってるん


だって。」


 「じゃ~、わかったわよ、隆一さんのバカ。」


 と、愛子は相当不満の様子なのだが、それも仕方が無いので有る。


 「愛子、御免な、多分、経過を聞いたら大笑いすると思うんだ。」


 「えっ、私が大笑いするって、隆一さんは、今回の任務を笑い話にするつ


もりなの。」


 と、一転して怒るのだが、それでも、隆一は言わないと決めているので有


る。


 「じゃ~、隆一さん、バスが出発するからね、あちらに着いたら、連絡す


るわね。」


 「うん、わかったよ、じゃ~ね。」


 と、話は終わったので有る。


 その後、隆一は久し振りの独り寝で、眠りに入った数時間後で有る。


 「お早う、隆一さん。」


 と、元気な何時もの愛子の声で起こされたので有る。


 「お早う、愛子、無事に着いたようだね。」


 「うん、そうなの、今から、近くの喫茶店で朝食なの。」


 愛子は、何か楽しそうな声で有る。


 「愛子、何か楽しそうだけど、何かあったのか。」


 其れは、愛子が乗ったバスに目的地の近くに住む女性と知り合いになった


ので有る。


 「実はそうなの、あの後、また、休憩に入った時に知り合ったのよ、綺麗


な人なの。」


 「ふ~ん。」


 と、隆一は、なんとも気の無い返事で有る。


 「隆一さん、その女性なんだけど、出張の帰りなのよ、其れに、あの都市


に住んでるのよ、だって、私、なんだか知らないけど偶然とは思えないの


よ。」


 「えっ、本当なのか。」


 と、隆一の目が一瞬にして覚めたので有る。


 本当にそんな話しが有るのか、たまたま、乗り合わせた女性が目的地に住


んで居るとは、隆一は信じがたいと思うほどであった。


 「其れで、その女性と、今から朝食に行くのよ。」


 愛子が考えた噂話が聞けるかも、其れは、今の隆一も知る事が出来ないの


で有る。


 「じゃ~、また連絡するわね。」


 と、愛子は切ったのでだ、まさか、まさかの話で有る。


 愛子の事だ、必ず、何かを聞いてくるだろうと思ったので有る。


 その頃、愛子は、バスで乗り合わせ知り合った女性とバスターミナル近く


の喫茶店に居たのだ。


 「私、まだ、名前も言って無かったわねぇ~。」


 「ええ、私もだわ。」


 「私は、愛子って言うの。」


 「私は、あきえって言うの。」


 「で、あきえさんは、仕事の帰りなの。」


 「ええ、そうなのよ、昨日のお昼に終わったの。」


 「私は、此れからが仕事なの。」


 「え~、じゃ~、此れから仕事なの、其れは大変ねぇ~。」


 「うう~ん、別に大した仕事じゃないんだけど、あきえさん、其れより


も、このバスターミナルに着く前だったと思うんだけど、物凄い大きなお屋


敷を見たんだけど、私、はじめて見たのよ、あんな大きなお屋敷を、一体、


どんなお金持ちが住んでるの。」


 と、愛子は、噂を聞く前に、あおの大きな屋敷の事を聞きだそうと考えた


ので有る。


 「あの屋敷ねぇ~、大きな声じゃ言えないんだけど、噂なんだけど、この


地方で最大の組長の屋敷って話なのよ。」


 「えっ、本当なの。」


 と、愛子は、わざと大げさに言ったので有る。


 「でも、なんで、あきえさん、そんな事まで知ってるの。」


 あきえは、暫く考え。


 「実はね、私の仕事って、夜の仕事なのよ。」


 「夜の仕事って、ホステスなの。」


 「ううん、私、一応、クラブの経営者なの。」


 「えっ、本当に、わぁ~凄い。」


 今度は、本当に驚いたのだ、確かに、あきえは美人で有る。


 だが、化粧は薄く、とても、夜の仕事をして要るとは思えないので有る。


 「あきえさんの様な美人のママだから、お客さんも多勢居るんでしょうね


ぇ~。」


 「まぁ~、それなりにってとこかなぁ~。」


 と、あきえは微笑むので有る。


 「それじゃ~、私の仕事なんて、誰にも知られる事も無いわよねぇ~。」


 「えっ、愛子さんだって、大変な美人よ、正か、私の商売敵じゃないでし


ょうね。」


 「あ~あ、残念でした、私は、小さな編集社の記者なの。」


 「愛子さんが、記者だなんて、本当なの。」


 愛子は、芝居が上手なのだ。


 「ええ~、本当よ、でもね、其処の編集長ってのが、大変な頑固者なの


よ、自分が気に入らなければ、絶対に載せないんだもの。」


 「じゃ~、愛子さんは、何を書いてるの。」


 「私は、一応、料理なの。」


 「愛子さんが、料理を書いてるって、どんな料理なの。」


 「う~ん、実はね、大きな料理屋さんや、有名な料理店は好きじゃないの


よ、だって、完成してるでしょう。」


 愛子は、少しづつ話を近づけて行くので有る。


 其れは、あの大量に投棄された廃棄物が有る山のまだ奥に川魚の料理をし


ている料理店が有ると聞いていたので有る。


 「私は、地方のそれも、余り知られていない小さなお店でね、それも、地


元じゃ~、有名だって言う店を探し、本にするんだけど。」


 「じゃ~、その頑固者の編集長のために一度も掲載されて無いの。」


 愛子は、業と、寂しげな顔で。


 「うん、実は、そうなのよ、でもね、私だって意地が有るのよ、この頑固


者を何時か、きっと、納得させてやりたいと思ってるの、だって、悔しいも


の、このまま、その編集社を辞めると。」


 この言葉があきえの気持ちを動かしたで有る。


 「じゃ~、愛子さん、今夜、私のお店に来れば。」


 「えっ、だって、私の出張費は少ないのよ、あきえさんの様な美人が居る


高級クラブのお金なんて無いもの。」


 「何言ってるのよ、何も愛子さんに客として来て欲しいと言ってるんじゃ


無いのよ。」


 「えっ、それって。」


 「愛子さん、この土地に何日位、居る予定なの。」


 「う~ん、2~3日って、予定なんだけど。」


 「じゃ~、その2~3日、私のお店を手伝ってよ。」


 「え~ぇ、この私がホステスに、そんなの無理よ、だって、私、そんな服


は持って来て無いもの。」


 愛子の作戦は、見事に成功したのだ、夜の蝶になれば、それこそ、2~3


日もあれば、どれだけ大量の情報を得る事が出来るか計り知れないので有


る。


 其れに、今日、着いたばかりで、この土地の人達は愛子の事も知らないの


だ、下手に喫茶店で話を聞くよりも大きな収穫になるかも知れないのだ。


 「愛子さん、私と同じ様な体型でしょう、今から、私の部屋に来て、服を


選びましょうよ、私が、話しをするよりもきっと、行けると思うわよ。」


 愛子は、全く夜の世界を知らない訳では無い、大学生の頃、アルバイトで


何度か経験した事が有るのだ。


 「でも、私、ホステスなんて、やった事が無いのよ。」


 「う~ん、何も心配要らないわよ、愛子さん見たいな美人だったよ、座っ


ているだけで十分よ。」


 「あきえさん、本当なの、でもね、私がお店に出た事で、あきえさんに迷


惑が掛かるんじゃ無いかしら。」


 「愛子さん、頑固編集長に勝つためよ、私に任せてよ。」


 よし、これで、十分だと、愛子は確信したので有る。


 「それじゃ~、私、一度、ホテルに入って、戻ってくるわね。」


 「何も、ホテル代を出す事も無いのよ、このマンションに居れば。」


 あきえは、完全に愛子を信用したので有る。

 

 愛子は、心の中で、あきえに申し訳無いと思ったのだが、この2~3日


で、二度とあきえに会う事も無いのだと、言い聞かせ、少しは気持ちが楽に


なるので有る。


 「あきえさん、本当に有難う、今度こそ、頑固親父をぎゃふんと言わせて


見るわ。」


 「そう、その意気よ。」


 その後、二人は、夕方まで眠る事になったのだ、夕方には美容室に行かな


ければなら無い、そして、数時間後、すっかり別人になった愛子はあきえの


経営するクラブに入ったので有る。


 「ねぇ~、みんな聞いて欲しいの、この美人、愛子さんって言ってね、2


~3日だけど、まぁ~体験入店する事になったの、愛子さんは、ルポライタ


ーなの、だけど、今日、ホステスに挑戦する事になったのよ、だから、みん


な、優しく教えてあげてね。」


 あきえはホステスの全員に伝えたのだ、このクラブは美人が多いと愛子は


思った。


 その数分後、最初の客が入ってきたので有る。


 その客こそが、組長の事を知って要ると言う人物なので有る。


 「あ~ら、吉田さん、今日は、一体、如何したのよ、こんなに早くか


ら。」


 「う~ん。」


 と言った、客の吉田はあきえの側に居た愛子を見て。


 「ママ、こんな美人、この町に居たかなぁ~。」


 「吉田さん、目が早いのね、今日、入った愛子さんって言うのよ。」


 「えっ、本当か、じゃ~、オレが一番最初の客か、愛子さんか、本当に美


人だね。」


 「ええ、そうよ、そうだ、愛子さん、この吉田さんだったら、さっきの話


し、詳しく教えてくれるわよ。」


 吉田と言う客は、一体、なんの話かわからないので有る。


 「ママ、さっきの話って、一体、何の話なんだ。」


 「それよりもね、吉田さん、愛子さんのためにね、1本、ねぇ。」


 「あ~あ、わかったよ。」


 「じゃ~、チーフ、吉田さんに、何時ものを1本出して。」


 と、1本、数万円もするブランデーを出したので有る。


 愛子は微笑み。


 「吉田さんと、言われましたね、有難う御座います。」


 と、軽く頭を下げたので有る。


 吉田は、愛子のそんな仕草がなんとも言えなかったので有る。


 「ママ、オレは、もう最高に気分がいいぞ。」


 「吉田さん、実はね、組長の家の話しをして欲しいのよ。」


 「えっ、ママ、一体、なんで、組長の家の話しを。」


 と、吉田は、一瞬、顔をこわばらせたのだが、あきえがその訳を話し、吉


田は理解したので有る。


 吉田は、不動産の鑑定士なのだ、この都市の殆どを吉田は鑑定している。


 それから、吉田は、愛子に組長の豪邸だと噂の有る家の内部までを詳しく


説明したので、愛子は業と驚き、こんな豪邸を見るのも最初で最後だと言っ


たので有る。


 「愛子さん、君の本当の仕事は。」


 「私ですか、私の本業はルポライターなんですよ、それも、地方の小さな


名店をね探しているんです。」


 愛子は、吉田に確信させたのだ、其れが一番早いと思ったからで有る。


 「有るよ、有りますよ、この都市もね、だけど、その場所は大変なところ


に有るんだ。」


 愛子は、業と少し驚いたような表情で。


 「えっ、本当なんですか、私も、是非、行って見たいんです。」


 と、愛子は、吉田に手を合わせたのだ、その吉田は、愛子の作戦にまんま


と乗せられたので有る。


 「愛子さん、その場所なんだけど。」


 と、吉田は少しづつ説明を始めたので有る。


 愛子は、何度もうなずき、時には驚き、愛子は吉田の説明するのを理解し


た振りをし。


 「わぁ~、なんて、言ったらいいのかわからないだけど、私も、一度、行


って見たくなったんだけど、今の話じゃ~、一人で行くのは無理なのね。」


 「オレも、行ったのは、20年も前に話しなんだ、それこそ、絶品だねぇ


~。」


 愛子は、業と沈んだ顔をして。


 「じゃ~、仕方無いわねぇ~、あきえさん、これじゃ~、あの頑固編集長


の負けた顔を見る事も出来ないわねぇ~。」


 「愛子さん、仕方無いわねぇ~、だって、こればっかりは。」


 と、あきえも沈んだ顔に成ったので有る。


 吉田は少し考え。


 「オレが、一度、組長に頼んで見ようか、だって、せっかく、その魚料理


を取材に来たんだろう、愛子さんがかわいそうだよ。」


 愛子は、吉田に手を合わせ。


 「本当なの、吉田さん、行けるの、本当に。」


 「でも、まだわからないよ、あの組長の事だ、一体、何を言い出すかわか


らないぞ~。」


 愛子は、胸を張って。


 「いいのよ、私に何かがあったら、私の主人が相手だもの。」


 「えっ、愛子さんの主人って。」

 

 「ええ、そうよ、私の主人って、この世界じゃ~、名の知れたスナイパー


なの。」


 「えっ、スナイパーって。」


 吉田は驚き、あきえもはじめて聞く話で有る。


 「そうよ、殺し屋よ、だって、ヨーロッパじゃ~、名前は知れ渡っているのよ。」


 「愛子さん、美しい顔で冗談が好きなんだから。」


 と、吉田は、全く信用しないので有る。


 其れに、あきえも同じだった。


 「愛子さん、それって、本当の話なの。」


 と、二コ二コしながら言うので有る。


 愛子もわかっている、日本では、そんな職業が有り得る訳が無いと言う事


が。


 「そうね、まぁ~、私が想像しただけの話しってかなぁ~って。」


 だが、あきえは何かを感じたのか、愛子の顔を見たのだ、やはり、其処


は、客商売、人を良く観察しているので有る。


 吉田は、数時間も居ただろうか、其れに、愛子が居るだけであきえの店は


閉店直後まで満席状態が続いたので有る。


 あきえのマンションに戻った二人は、疲れがピークの状態だった。


 「愛子さん、本当に有難う。」


 「いいえ、私は、何もする事がなく、お客さんの話を聞けただけでも良か


ったと思ってるのよ、だって、他じゃ~、聞けない話も聞けたので。」


 「そんなの、私は、愛子さんに居て欲しいと思って要るんだけど、其れ


は、とても無理だと思って要るの、それでね、愛子さんには失礼だと思うん


だけど、之は、私の気持ちなの、受け取って欲しいの。」


 と、あきえは、白い封筒を出したので有る。


 「えっ、之は。」


 「お願いよ、ほんのお礼なのよ。」


 愛子は戸惑ったのだ、今朝、到着し、本格的な調査を行なう積もりだった


のが、バスで知り合ったあきえのお陰で、他では聞けない情報が手に入った


ので有る。


 本来ならば愛子が礼を出さなければならないのだ。


 「あきえさん、私が頂く訳には行かないのよ、だって、本当だったら、私


がお礼をしなければいけないのよ。」


 あきえも同じだった、愛子は、プロのホステスでは無いが、愛子のお陰


で、何時もの倍では効かない売り上げとなったので有る。


 「お願いよ、愛子さん、私達の仕事は、毎日が戦争なの、其れに、今日は


今までの倍以上の売り上げがあったのよ、そのお礼も出来ない様なあきえだ


と思われるのは、私の恥なのよ。」


 愛子は、その様な事などは考えもしなかったので有る。


 「あきえさん、私、そんな事、考えもしなかったの、だって、私にすれば


よ、宿泊代も掛からず、其れに、お食事だって、それこそ、私の方が。」


 だが、あきえはどうしても受け取って欲しいと。


 「愛子さん、これで、私の気持ちが楽に成るのよ、だからねっ。」


 と、あきえは手を合わせたので有る。


 「あきえさんの気持ちが楽になるんだったら仕方無いけど。」


 と、愛子は、封筒を受け取ったので有る。


 「愛子さん、シャワーが終わったら、少し出かけない。」


 「えっ。」


 愛子は、何の必要があって外に出るのだと思ったが。


 「うん、いいけど、何処に行くの。」


 「うん、私の友達が深夜営業しているお店が有るのよ。」


 「何か、食べ物でも。」


 「違うの、そのお店はコーヒー専門店なのよ、で、私達の様に深夜まで働


いて居る人達のために開いているのよ、とっても美味しいのよ。」


 愛子は、別に断る理由も無かった。


 「深夜のコーヒーか、いいわねっ。」


 と、愛子は。


 「じゃ~、直ぐに用意するわよ。」


 この後、二人は、深夜営業の喫茶店に行き、あきえは、愛子が喜びそうな


情報を話してくれたので有る。


 二人の会話は夜が明けるまで続いたが、此れからは、サラリーマンの時間


帯で有る。


 二人はマンションに戻り昼過ぎまで眠ったのだが、愛子が目を覚ます頃、


あきえは部屋に居なかったのだ、あきえが戻るまでの時間、愛子は、任務の


事を考えていた。


 昨日、到着したこの町で、其れに思わぬ事であきえと知り合い、その夜、


あきえの経営するクラブでは思いも寄らないほどの情報を集める事が出来た


ので有る。


 その情報を早く隆一に知らせたいのだが、昨日の今日だ、急いで帰る事な


ど出来ない、あきえの出方を見てから判断すればいいと考えたので有る。


 ドアの鍵が開く音がした、あきえが戻って着たので有る。


 「あら、愛子さん、もう起きたの、もう少し寝てればいいのに。」


 「有難う、でも、私、良く眠ったわ、だけど、あきえさん、何処かに行っ


てたの。」


 「そうなよ、私達の仕事柄、お酒が身体に残るの、それにね、起きても直


ぐには食べられないのよ、私も、色々な物を作ったんだけど、私は、之が一


番身体にあっているのよ、だけど、愛子さんは。」


 「私は、別になんとも無いわよ、其れに、食べ物に好き嫌いは無いの。」


 愛子は、あきえが身体の事を心配して、何かを買ってきたんだと思った。


 「じゃ~、直ぐに出来るから、待っててね。」


 と、あきえは、台所に行き、何かを作り始めたので有る。


 「ねぇ~、愛子さん、今日は。」


 「まだ、何も決めて無いの、どうして。」


 「じゃ~、私のお願い聞いてくれる。」


 「いいわよ、私に出来る事だったら。」


 「其れじゃ~、今夜、もう一日だけ、お店に出て欲しいの。」


 愛子は予想していたのだ、昨夜の今日で有る、多分、2~3日は居ると言


ったので今夜も手伝って欲しいと言われるだろうと。


 「私はいいけど、みんなに迷惑にならないかしら。」


 あきえは、愛子が居る事で、店には多勢の客が来ると考えたので有る。


 「あのね、昨日のお客さんがね、愛子さんが何時まで居るのか、電話をし


てきたの。」


 愛子は、あきえが電話したのだろうと思ったのだ。


 「私で良ければ、いいけど。」


 其れは、愛子に取っても都合が良かったので有る。


 今夜は、別の客が来るだろう、その客達からも、別の情報を得る事が出来


るので有る。


 「さぁ~、出来たわよ。」


 と、あきえは、特別製だと言う、雑炊を作ったので有る。


 「わぁ~、取っても美味しそうね。」


 「味は薄味にして有るのよ、後は愛子さんの好みで調整してね。」


 「有難う。」


 と、愛子は一口食べ。


 「あきえさん、本当に美味しいわよ、どんな作り方なの、私も作って見た


いわ。」


 「いいわよ、じゃ~、書いて置くわね。」


 「有難う、之は、彼も喜ぶと思うわよ。」


 「愛子さんは独身じゃ無かったの。」


 「私、私には、大切な旦那さまが居るわよ。」


 「でも、私は、てっきり独身だと思ったのよ。」


 愛子は、あきえには独身だとは言って無かったのだが、その時だった、愛


子の携帯が鳴った。


 「あっ、隆一さんだ。」


 と、愛子の顔色が変わったので有る。


 「隆一さん、どう、何か、困ってる事は無いの。」


 「う~ん、別に、で、そっちの方は。」


 「うん、戻ってから話をするわ。」


 「わかった、じゃ~ね。」


 と、隆一は切ったので有る。


 隆一は、何時もの愛子とは違う、余り、長い話は出来ないと考えたのだ。


 「愛子さん、今の電話が。」


 あきえは、その電話の主が愛子の主人だと直ぐにわかったので有る。


 「今のが、私の主人なの。」


 「いいわね、ご主人が居るなんて、本当に羨ましいわ。」


 あきえは独身なのだ、その時、あきえの携帯がなった。


 「もし、もし。」


 其れは、昨夜の吉田と言う男からであった。


 「うん、うん、わかりました、じゃ~。」


 と、あきえの電話も直ぐに切れたので有る。


 そのあきえに顔が少し沈んだ様に見えたので有る。


 「あきえさん、何かあったの。」


 「うん、・・・別に。」


 とは言ったのだが。


 「ねぇ~、私のために、あきえさんに迷惑が掛かったんじゃ無いの。」


 愛子の心配は当たっていたので有る。


 吉田からの電話は一体何が。


 「御免なさい、私が、お店に迷惑を掛けたみたいで。」


 「愛子さん、そうじゃ無いのよ、何時かは来ると思ってたんだけど。」


 「えっ、一体、誰が来るの。」


 あきえはかなり深刻な顔付きになっているのだ。

 

 「あのね、吉田さんが、あの組長に愛子さんの事を話したそうなのよ、其


れでね。」


 「えっ、じゃ~、あの組長があきえさんのお店に来るって言うの。」


 あきえは、力なく頷くので有る。


 「今更、今夜は、お店を開きませんとは言えなかったし、あの組長が来れ


ば、他のお客さんにも迷惑が掛かるし、私は、如何すればいいのかわからな


いの。」


 と、あきえは何も出来ないと深刻に考えて要るので有る。


 下手に断る事も出来ないのだ。


 「あきえさん、何も心配する事は無いわよ、私に任せてくれる。」


 「えっ、愛子さんに。」


 愛子は、今まで何度も修羅場を潜りぬけてきたのだ、其れよりも、店には


他の客も居るし、彼らも下手な事はしないだろうと考えたので有る。


 「私も、この業界で仕事をしてるとね、何度も、この様な状況に入った経


験が有るの、あきえさんは、何も心配する事は無いわよ。」


 と、愛子は簡単に言ったが、あきえはどうやらはじめてらしいと、愛子は


思ったのだ、あきえは不安だったが、愛子に任せる事にするので有る。


 数時間後、二人は、行きつけの美容室に行き、数時間で戻って着たが、時


間が進むに連れて、あきえの顔は不安がいっぱいだと言う顔で有る。


 その二人が店に着いたのは、午後8時を回っていた、店内は既に満席に近


い。


 愛子は、早速、あきえが指示したところに行ったので有る。


 その席は、この町でも特に有名な人物らしく、気前も良く、新しい高級酒


を入れたので有る。


 あの組長は、何時頃来るのであろうかと考える愛子だった。


 時間が過ぎ、10時頃の事だった、店のドアが開き、50代の男と女性が


二人、其れに、30代の若い男数人が入って来たので有る。


 他の客はまだ気付いていなかったが、愛子は直ぐに、之が、話しに聞いた


組長だと。


 「オイ、愛子って、女は何処に居るんだ。」


 と、若い男が威張っている。


 「はい、私が、愛子ですが。」


 「お前が愛子か、組長。」


 と、若い男が組長に頭を下げたので有る。


 「ねぇ~、貴方は何方なの、私は、あなたに愛子って、呼び捨てにされる


言われは無いわよ。」


 愛子は、強気に出たので。


 「何、お前、此方はなぁ~。」


 「やめろ、他のお客さんに迷惑が掛かる。」


 若い男は、黙り、後ろに下がったので有る。


 「済まんなぁ~、あいつは、何も知らなかったんだ、許してくれ。」


 と、組長らしき男が頭を下げたので有る。


 「で、貴方は。」


 と、愛子はあくまで強気で有る。


 「すまなかった、わしは、この一帯を。」


 と、言って、男は口を閉ざしたのだ。


 其れは、他の客が見ていたからで有る。


 「まぁ~、先に座って下さい、立ち話は、お店に迷惑が掛かりますの


で。」


 愛子は、平然としているのだ、側に居る、あきえはと言うと、何も言わず


に、ただ、愛子の側に居るだけで有る。


 「其れで、今日は、何の用事なの。」


 「オイ、飲みに来たんだよ。」


 「お前は黙っているんだ。」


 と、言われ、若い男は、頭を下げ後ろに立っている。


 「何度も済まない、いや~、実は、有る人物から聞いたんだ、この店に、


今まで見た事も無い美人が居るってね。」


 「其れで、話は。」

 

 「愛子さんって、言ったね、オレは、飲みに着たんだ、済まないが、何か


飲ませて欲しいんだが。」


 「わかったわ、じゃ~、このお水を。」


 「愛子さん、お水じゃないんだよ、お酒だよ。」


 「お酒ですって、一体、何を飲むの。」


 愛子の度胸に組員達も少し驚いている、だが、何も言わず静かに見ている


のだ。


 「う~ん、そうだなぁ~、ブランデーは有るか。」


 「勿論、有るわよ、だって、あきえさんのお店は最高級のクラブなの


よ。」


 「そうか、最高級のお店か、じゃ~、ブランデーを頼むよ。」


 「チーフ、ブランデーを1本お願いね。」


 チーフの顔は少し白くなっている様に見えるのだが、高級ブランデーを持


ってきたのだ。


 「これ、1本で幾らかご存知なの。」


 「そうだなぁ~、1本二万円ってとこかなぁ~。」


 「其れは、酒屋さんのお値段よ、此処じゃ~、5万なのよ、先にお金を払


って下さい。」


 その様子を見た若い男達が愛子の側に来たのだ。


 「お前達は下がっているんだ、オイ、金だ、早く出せ。」


 組長らしき男は若い男に命令したのだ、すると、男はビジネスケースから


札束を取り出し、組長らしき男に渡したので有る。


 「愛子さん、これで、どうかね。」


 と、男は札束を三つも出したのだ。


 「何よ、これじゃ~、多すぎるわよ。」


 「いや、いいんだ、残りの金で、今日、来た客の支払いは出来ると思うん


だが。」


 この組長は、一体、何を考えて要るんだ、それにしても、札束を、それも


三つで有る。


 それは、あきえにとっても突然の事で理解出来ないので有る。


 「あの~。」


 「うん、あんたが、この店のママさんか。」


 「はい、あきえと申します。」


 「あきえさんか、いい名前だ、オイ、早く出さんか。」


 またも、札束を出したので有る。


 「あきえさんに一つと、愛子さんに一つ、これで、今夜は飲ませて欲しい


んだ。」


 「お客さん、このお金で、一体、何を考えて要るのよ。」


 あきえは側で、少し震えているのだ、其れの意味はわかっていたからだ。


 「お客さん、このお金で、私を好きに出来ると思ったの、あんた、言っと


くけどね、私の身体に指一本でも触れたら、あんたの命は無いよ。」

 

 後ろの若い男は拳を作っているが。


 「そうじゃ~無いんだ、誤解されては困るんだ、之は、飲み代だからね、


ママさん、オレは、あんた達を自由にしようとは思って無いよ。」


 「じゃ~、私は。」


 「いや~、愛子さんの度胸には参ったよ、だってよ、オレはね。」


 「知ってますよ、何処かの組長さんでしょう。」


 「愛子さん、どこかは無いよ、オレは、この町の。」


 「あ~、聞いてるよ、この町じゃお客さんの組に逆らう事は出来ないって


ね。」


 愛子は、昨夜の話を思い出したので有る。


 「愛子さん、何を聞いた知らんが、余り、深入りするのは、危険だと思う


よ。」


 やはり、本性を出してきたと思ったが。


 「其れは、私を脅しているんですね。」


 「いや~、済まない、言い方が間違ったよ、他人の言う事、全てが本当じ


ゃ無いって話なんだよ、特に我々に対しては、世間は良くは思っていないと


わかってるからね。」


 「じゃ~やはり。」


 「愛子さん、話題を変えようか、昨日聞いたんだが、君はルポライターだ


ってね。」


 「そうよ、其れが何か。」


 他の客達は帰る事が出来ない状態になっていたのだ、それ程、愛子は、互


角に相手しているのだ。


 「いや~ね、愛子さんが、料理専門だって聞いてね。」


 「そうよ、私の仕事は有名な料理店や有名な料理人が相手じゃないの、地


方によっては、その土地の人達だけが知ってるお店が有るのよ、私は、其れ


を調べる為に、全国を回ってるの、それと、何か関係が有るの。」


 「じゃ~、この地に来たのも、その隠れた店を調べるためなのか。」


 「そうよ、でも、貴方には何も関係ないと思うのよ、私は、此処に来たの


は、少し山の中で、川魚の料理をされて要ると聞いたから来たのよ、それ


が、知りたいだけなの。」


 「愛子さん、それなら直ぐにわかるよ、オレの山が直ぐ近くだからな


っ。」


 「えっ、今、なんて言ったのよ、今、オレの山から直ぐ近くだと、何故な


の、じゃ~、その付近の山は全部貴方の持山なの。」


 「いや~、そうじゃ無いが。」


 「私は、その川魚料理さえいただければ何も問題は無いのよ、ねぇ~、あ


きえさん。」


 あきえは、頷くが、まだ、少し震えが残っている。


 「じゃ~、愛子さん、明日にでも、その店に行こうじゃないか。」


 「えっ、なんですって、何故、私が、一緒に行かなければならないの


よ。」


 「愛子さん、その道路なんだけど、一日数本のバスが通っているだけなの


よ。」


 と、はじめてあきえがしゃべったので有る。


 「じゃ~、レンタカーを借りるわよ。」


 「愛子さん、今、行くのは大変危険なのよ。」


 「あきえさん、何故なの、バスが通ってる道路なんでしょう。」


 「そうじゃなくて。」


 「ママさん、オレが説明するよ、その道路は一日中、大型ダンプが走って


るんだよ、其れで、危険だと言うんだ。」


 「わかったわよ、だけど、悔しいわよ、なんで、そんな道路に一日中ダン


プが走っているのよ。」


 「いや~、実は、オレの弟が建設会社をやってるんだ、其れで、関係上、


オレの持ち山に土砂を捨てに行くんだ。」


 「其れじゃ~、誰も、その川魚の料理に行けないじゃ無いのよ。」


 「いや、其れが、今は反対の方向から登れるんだ。」


 「じゃ~、私も反対から登る事にするわ。」


 「愛子さん、簡単じゃ無いのよ、だって、そこまで行くだけども、半日は


掛かるの。」


 「えっ、そんなのって。」


 「だから、オレが一緒に行くと言ってるんだよ。」


 「なんで、そんな事に成ったのよ、あきえさん、教えて。」


 あきえは何も知らないと、首を振るだけで有る。


 「まぁ~、仕方無いか、じゃ~、明日の朝、バスターミナルで。」


 「わかったよ、オイ、電話して、明日はダンプは山に入るなと、オレが言


ったと言え。」


 やはり、聞いたとおりだった、この男が全てを握っているのだ。


 この男達を完全に排除すると言う事になれば、一体、どんな方法を使うの


だろう、と、愛子は思ったのだが。


 「でも、私のために、皆さんの仕事が。」


 「いいんだ、其れよりも、その川魚料理が有名になるとどうなるんだ。」


 「そんなの簡単な話しよ、そのお店じゃなくて、この周辺にも全国から多


くの人達が訪れる事になるわよ、でもね。」


 「えっ、何か有るのか。」


 「私のところの編集長ってのが、大変な頑固者なのよ、この編集長がダメ


と言えば、絶対に本にはならないのよ、絶対にね。」


 「愛子さん、その編集長ってのは、一体、どんな男なんだ、オレが直接話


をつけようか。」


 「編集長って、私の父親よ。」


 「やはりなぁ~、親も親だが、その娘ってのか、愛子さんは。」


 「そうよ、其れで、私も、親父をギャフンと言わせたいから、全国を回っ


て、本当に美味しい食べ物を探しているのよ、何か文句でも有るの。」


 「そうか、わかったよ、其れで、あんたは独身なんだろう。」


 「残念ね、私は、独身じゃ無いわよ。」


 「じゃ~、旦那は。」


 「私の、主人は世界一のスナイパーなのよ。」


 「何だって、そんなの嘘に決まってるだろうよ、日本じゃ~、そんな仕事


は無いんだ。」


 「私は、何も日本ではとは言って無いわよ、その人達の間ではね、世界で


もナンバー1と、言われている殺人を専門にする人なのよ、だから、さっき


も言ったでしょう、私に、何か有れば、確実にこの世から消えるのよ。」


 愛子は、何れ、隆一がナンバー1のスナイパーになることは確実だと思っ


ていたので、彼らに言ったのだが。


 「わかったよ、オレもだが、オレの組員には、今後、二度と、この店には


来るなと伝えておく、其れでいいか、ママさん。」


 あきえは、この組長の言う話しなど信用していない、だが。


 「本当なのね、今の話が若しも嘘だとわかれば、あきえさん、何時でもい


いのよ、私に連絡くれる、後は、私の主人に任せるから。」


 あきえは何も言わず、ただ、頷くだけで有る。


 「じゃ~、愛子さん、明日の朝、10時でどうだ。」


 「いいわよ。」


 「ママさん、すまなかった、オレは、二度と来ないから、それと、さっき


渡した金で今日の客の支払いに使ってくれ。」


 「ちょっと、待ちなよ、他の客の事より、あんたの飲み代は如何するんだ


よ。」


 と、愛子は、それでも強気で有る。


 「お~、そうだった、其れで、幾らになるんだ。」


 「そうだね、このお店のナンバー1が相手したんだから、10万でいいわ


よ。」


 「えっ、10万って、其れは。」


 「じゃ~、いいよ、少し待ちなよ、確か、今日の朝、日本に帰ってきてる


はずだから、連絡を入れて見るよ。」


 と、愛子は、隆一に本当に電話を入れたので有る。


 「あ~、隆一さん、お願いが有るのよ、今、此処に居るんだけど、どうし


ても殺して欲しい奴がいるのよ、私の、居場所は隆一さんも知ってると思う


のよ、その町ではね、一番の嫌われ者なの、大至急にね。」


 愛子は、スピーカーに切り替えたのだ。


 「わかったよ、じゃ~、直ぐに向かうよ、其れで、ライフルか、それと


も、C4で、家事吹っ飛ばすのか。」


 「どちらでも、いいわよ、勿論、他の者達も当然道ずれによ。」


 「当然じゃ~無いか。」


 と、電話は切れたのだが、それでも、他の者達を含め、誰も信用しないの


で有る。


 だが、後日、現実に起こるとは、この時、一体、誰が想像したであろうか


、組長も組員達も大笑いしたが。


 「いや~、愛子さんの度胸に惚れたよ、じゃ~、10万だな。」


 と、言って、組長は10万円をテーブルに置き、このクラブを後にし、約


束通り、二度と、来る事は無かったので有る。


 彼らが出た後、あきえの店の客は誰もがほっとしたので有る。


 そして、全員が愛子に拍手をしたのだ。


 「愛子さん、本当に何も無くてよかったわ。」


 あきえもやっと安心したので有ろう、薄くなった、ブランデーを一揆に飲


み干したので有る。


 その内に、店内の客は、一人、また一人を帰り、30分ほどで全員が帰っ


て行ったのだ、店のホステス達も安心したのか、誰もが自然と飲み出し、や


がて閉店と成ったが。


 「みんな聞いてね、さっきのお金だけど、私は怖いから、このまま預かっ


て置きたいのよ、いいでしょう。」


 ホステス達も納得しているので有る。


 その後、ホステス達も帰り、あきえと愛子も帰るので有る。


 「あきえさん、悪いんだけど、私、このお金は頂くわよ。」


 あきえも納得したのか頷いている。


 「いいわよ、でも、愛子さん、本当に御免なさいね、飛んだ事になってし


まって。」


 「私は、別になんとも無かったわよ、だって、あんな事、私は、年中と言


ってもよいいほど、経験しているもの。」


 あきえは驚きよりもあきれているのだ。


 愛子と言う女性は、本当にルポライターなのか、それとも、全く関係の無


い仕事をしているのか、今のあきえに愛子を本性を見破る事は出来ないので


有る。


 「愛子さん、明日、本当に行くの。」


 「勿論、行くわよ、だって、之は何としても雑誌に載せたいもの。」


 「わかったわ、、だけど、本当に気をつけてね。」


 「あきえさん、本当に有難う、私は、明日、その川魚料理の食事が終わっ


た後は、多分、戻って来れないと思うの、だって、奴らに、此れからの事を


知られたくないもの、それと、何かあれば連絡してね、私の番号を教えてお


くから。」


 と、愛子は、あきえにメモを渡すので有る。


 「じゃ~、今夜が最後になるのね、だったら、あのコーヒーを。」


 愛子も、今は、コーヒーの方が嬉しかったので有る。


 二人は、長い時間話をしていたのだが、やがて、夜が明ける頃になったの


で有る。


 「あきえさん、あの食べ物の。」


 「いいわよ、じゃ~、二人で作りましょうか。」


 あきえも、之が、最後の食事になる事は知っていた。


 「ねぇ~、愛子さん、今回のことを忘れて、また来て欲しいのよ。」

 

 「うん、でもね、はっきりとは返事が出来ないの、御免ね。」


 あきえも、わかっていたのだ、愛子は、二度と来る事は無いと、食事は、


二人の笑い声で終わり、愛子は、出発の準備をして要る、あきえは、何も言


わず、見ているだけで有る。


 愛子の準備は一時間ほどで終わり。


 「さぁ~てと、準備も出来たし、あきえさん、本当に有難う、私、なんて


お礼を言って良いのかわからないの。」


 あきえの目は潤んでいたのだ、僅か、二日間だったが、あきえが今までの


人生で最高の友人が出来たと思ったのだが、その愛子は、何処かの町に行く


のだと、そこで、新たな友人が出来るのだ、この人は、そう言う人生を送っ


ているのだと、あきえは、自分に言い聞かせたので有る。


 「愛子さん、私、見送りはしないわよ、だって、涙が止まらないもの。」


 「あきえさん、何も気を使わないで、じゃ~、行って来るわね。」


 と、愛子は、何事も無かった様にあきえのマンションを出たので有る。


 タクシーを乗り、バスターミナルに着くと、二つのキャリーバックをロッカ

ーに入れ、手提げバックだけを持ち外に出たので有る。


 数分後、黒塗りの高級車が近づき、愛子の側でハザードランプを点け


停まった。


 「愛子さん、どうぞ乗って下さいね。」


 と、昨夜の組長で有る。


 愛子はニコリともせず。


 「はい、わかりました。」


 と、車に乗り込んだ、愛子を乗せた車は30分ほどで市内を抜け、やがて


山道に入ったのだ、その山道は、毎日、数十台、いや、数百台と大型ダンプ


が登って行くのだ。


 だが、今日は、1台も走っていないので有る。


 その山道も、30分ほど行くと、左に入る、未舗装の脇道が有る。


 「この道は。」


 「其れは、その先に有る土砂捨て場に行く為の専用道路だよ。」


 「えっ、土砂の捨て場って、そんな場所に有るの。」


 当たり前だが、愛子は知って要るのだ、だが、今は、何も知らない事にな


っている。


 「でも、その場所って、国の持ち物なんでしょう。」


 「いや、其れが、違うんだ、あの前に見える山から、左の後ろに見える山


まではね、オレが先祖から貰い受けた個人の所有する山だって事だよ。」


 其れは、航空写真で見るよりも遥かに大きな山だと思ったので有る。


 「あれ~、ねぇ、あれは。」


 と、愛子はわざと聞いたので有る。


 「あれか、あれが、土砂の捨て場なんだ。」


 「え~、じゃ~、大変な量なのねぇ~、百万トンは有るの。」


 「いや、その数倍は有るなぁ~。」


 と、組長は平然とした顔で言っている。


 一体、何年掛かって、此処まで運んできたのだ、写真で見るの違い、実


際、その捨て場を目の前にすると、本気で怒りたくなる、だが、今は、調査


が大事なのだ。


 この調査した内容を整理して、隆一と作戦を考える事になるのだが、今


は、冷静になって調査するのだと、愛子は、自分に言い聞かせたので有る。


 それから、10分ほどで、川魚料理の店に着いたので有る。


 愛子が、付近一帯を写している姿は誰が見ても本物のルポライターで有る


 愛子は、レンズを交換し、先程、通過した見舗装の道路と、その先に見え


る土砂捨て場も写しているが、その姿を組長は見ているが、何も言わず、店


の前で、愛子を待っているのだ。


 「ねぇ~、組長さん、その看板の横に立って欲しいのよ。」


 「なんで、オレが、」


 「私の文章には、この様に書くつもりなのよ、この人物は、此処の川魚料


理が大好物で、週の内、2~3回は食べに来ていると。」


 「本当に載せるつもりなのか。」


 「私は、そのつもりでも、頑固編集長が何と言うかわからないけどね。」


 「よし、わかったよ、だが、オレが写真に載るとまずい事になるぞ。」


 と、愛子に凄みを利かせるのだが。


 「私が、一番怖いのは、私のご主人様よ、だって、世界一の。」


 「スナイパーだろう。」


 と、組長は大きな声で笑っているのだ。


 「其れよりも、中に入ったらどうだ、今、店主が色々な物を作っているん


だ、それも、写す必要が有るんだろうよ。」


 愛子は、ルポライターの仕事を忘れていた。


 「直ぐに行くわよ。」


 愛子が店内に入ると、そこには、20人ほどの客が居たので有る。


 愛子と組長は、カウンターに座り、愛子は、店主の作る様子をカメラに収


めて行く。


 他の客は、ハイカーの服装だ、其れは、反対側から来たのだろう、やは


り、此処の魚料理が食べたいのか、数人の男性は料理を待ちきれず、冷えた


ビールを飲んでいる。


 「はい、お待ちどうさまでした。」


 と、最初の一品が出されたので有る。


 カウンターには、予約席の札が置かれ、他のハイカー達は、何も不満など


なさそうなので有る。


 愛子も一口食べ。


 「わぁ~、本当だわ、之が、うわさに聞いた、幻の魚の料理なのね、で


も、本当に美味しいわ、ご主人、この魚は、何時も食べる事が出来るの。」


 「いいえ、普段はとても無理ですよ。」


 「でも、予約が入ったのは昨夜なんでしょう。」


 「ええ、そうですよ、其れが、運のいい事に、その日のお昼頃なんです


が、この川の少し上流で獲れたんですよ。」


 「え~、そんな事も有るんだ、でも、普段はどんな魚なの。」


 「そうですね、時期にも寄りますが、此処では、鮎が主ですね。」


 と、店主は笑顔で話をしてくれるので有る。


 「じゃ~、本当に時期を外れると、予約しても食べる事が出来ないの。」


 「はい、でも、其れは仕方有りませんよ、一応、私は、フナを此処で養殖


していますがね、此処の川は他とは違うのか、他のフナとは違うんですよ、


今、此方のご主人にお出ししたのが、それなんですが。」


 愛子は、むっとした。


 「ご主人、申し訳ないですが、この人は、私の主人じゃないですから


ね。」


 「其れは、申し訳御座いません。」


 と、店主は頭を下げたが、手だけは停まらないので有る。


 愛子は、その様子をカメラに収めている。


 「ご主人、この女性は料理専門のルポライターなんだ、其れで、此処の川


魚の料理を全国に知らせたいと思ってるんだ。」


 一瞬、店主の手が止まった。


 「えっ、其れは本当なんですか。」


 店主は少し困った様子で有る。


 「ご主人、何か、困る事でも有るの。」


 愛子は、本当の話を聞きたいので有る。


 「私は、困るんですよ、私はね、今で十分なんですよ。」


 「でも、お客が増えれば、お店としてもいいと思うんだけど。」


 その時、店主の目が少し動いたのを見逃さなかったが、其れは、知らない


事にしたので有る。


 店主は隣の男があの組長だと知っていたのだ。


 「お客さん、人間は欲を書いては駄目なんですよ、確かに、お客さんが増


えるのは嬉しいですよ、でもね、お客さんが増えると、本当の料理を出せな


く成るんです。


 後ろのお客さんはね、もう10年以上、この店に来てくださっているんで


すよ。」


 「じゃ~、本当の意味の常連さんなんですね。」


 「はい、その通りです、この人達は、季節の変わり目には、必ず、ここに


来てくださっているんですよ、若しも、他に多勢のお客さんが増えると、そ


の人達が来られるのを楽しみが無く成りますから、この人達だけじゃ~有り


ませんよ、私は、そのお客さんに、川魚本来の味を出させていただいている


んです。


 だから、これ以上お客さんが増えると本当に困るんです、どうか、この店


は載せないで欲しいんです、お願いします。」


 と、この店主は本当の気持ちを言ったので有る。


 だが、あの山の土砂捨て場の事は一切触れなかったので有る。


 「ご主人、わかりましたよ、私も、今日は本当の魚の味を知りました。


 私は、このお店は一切載せることはしませんので、安心して下さい。」


 店主も、嬉しそうな顔で。


 「本当ですか、。」


 「勿論、本当です、でも、何時の日か、私と主人と来る時だけは許して欲


しいの。」


 「じゃ~、私の店の名刺ですが、これに、私の携帯番号を書いておきます


ので。」


 「じゃ~、私も。」

 

 と、愛子は、ルポライターの名詞に番号を書いたので有る。


 その時、組長の目が動いた、だが、この番号は知られても困る番号では無


かった。


 その後、二人は、魚料理を堪能したのか、2時間が過ぎたので有る。


 他の客は、まだのんびりとしている。


 「じゃ~、愛子さん、戻るとするか、ご主人、悪いんだが、さっきの話、


オレはね、本当に嬉しいよ、オレは、何も出来ないが、今日の全員の支払い


だが、オレにさせて欲しいんだ。」


 まだ、店内に居た客は驚いた。


 「何故なのよ、だって。」


 「愛子さん、このお客さん達は、何年のいや、10年以上もこの店に通っ


ているんだ、オレは、今日はじめてきたんだが、愛子さんも、書かないと約


束したんだ、今のオレに出来る事はこれだけなんだよ、これで、足りるか


ね。」


 「ええ、勿論ですが、でも、皆さんは。」


 他の客は、何も言えないのだ、口調は優しいが、その姿は普通の人間では


無い事は誰でも直ぐにわかるので有るのだ。


 「旦那さん、これじゃ~、多過ぎますよ。」


 「いいんだよ、オレの気持ちなんだ、受け取ってくれ、じゃ~な。」


 と、この組長は、本当に人がいいのか、それとも、其れが、愛子にはわか


らなくなってきたので有る。


 「愛子さん、これから戻って、また、あの店に出るのか。」


 「いいえ、私は、このまま、別のところに行きますが、何故聞くの。」


 「いや~、別に、なんでもないんだが、また、あのクラブに行くのかと思


っただけだ、じゃ~、あのバスターミナルに行けばいいのか。」


 「其れで、いいわよ。」


 最後まで、愛子は変わる事もなく、愛子を乗せた黒塗りの高級車は、その


後、バスターミナルに着き、愛子を下ろすと、別の方向に向かったので有


る。


 其れは、あの組長の住む町の方角だった。


 愛子は迷っていた、このまま、あの組と、建設会社を調べるようか、それ


とも、之で、調査は終わり、隆一の待つ部屋へと向かうのか考えるうちに、


愛子はバスターミナル近くの喫茶店に入っていた。


 「コーヒーを。」


 と、注文すると、隆一に電話を入れるので有る。


 「あっ、隆一さん、愛子です。」


 隆一は、愛子が帰ると言ってくると思っただ。


 「愛子か、何時に着くんだ。」


 「うん、其れが、今、少し迷っているの、本当は、今すぐに帰りたいの、


其れに、大変な情報を手に入れたわよ。」


 「えっ、大変な情報って。」


 「本当の話はね、今の今まで、あの組長と一緒だったのよ。」


 「えっ、本当なのか、一体、何があったんだ、何も無かったのか。」


 隆一は、心臓が止まりそうだった。


 「そんな危険な事をするんだ。」


 隆一は、怒っている、それも、中途半端な怒り方では無いと、愛子はわか


ったのだ。


 「隆一さん、御免なさい、其れに、こんな話、電話じゃ出来ないのよ。」


 「だったら、直ぐに帰って来い、早く。」


 今まで、何度も隆一を怒らせたが、今回は今までとは違うのだ、誰が、考


えても、愛子は、あえて危険な状況で有る。


 「愛子、バスじゃ駄目だ、特急に乗れ、今、直ぐにだ、解ったのか。」


 「はい、わかりました。」

 

 愛子は、それ以上言う事ができず、タクシーに乗り、近くの大きな駅に行


く様に言ったので有る。


 タクシーは高速に乗り、一時間ほどで大きな駅に着いたので有る。


 愛子は、タクシーの中から列車の予約をしていたので、一番早い特急に飛


び乗った。


 「隆一さん、列車は、今夜の9時に到着します。」


 愛子も何時もと違う口調になっていた。


 「わかった、じゃ~、その時間に迎えに行くからねっ。」


 隆一も、今は、冷静になっているのだ。


 「お願いします。」


 と、愛子の声は沈んでいるのが、隆一にはわかったので有る。


 愛子は、列車の中で、どうして、隆一に言い訳をしようかと考えていた、


だが、今の状態で隆一に下手な事は言えない、それよりも、隆一には素直に


なって本当の話をすればわかってくれるはずだと考えたので有る。


 愛子は、二日連続のホステスの仕事で眠れ無かったのだろう、列車の揺れ


が眠りを誘い、何時の間にか眠っていたのだ。


 そして、列車は定刻に到着したので有る。


 愛子は、早く隆一の顔が見たいのだが、大きな二個のキャリーバックのた


めに、気持ちは早く、だが、足は遅かった。


 その隆一は、改札口で待っていたのだ、愛子は、自然に涙が止まらなかっ


たので有る。


 「お~い、愛子、此処だよ。」


 と、隆一は力いっぱい手を振っている、その隆一の姿を見た途端、愛子は


キャリーバックから手を離し、飛んで行ったので有る。


 付近に居た、他の旅行客は笑っている、だが、愛子は、今は誰がどう思う


と関係は無かったので有る。


 「隆一さん、本当に御免なさい。」


 と、愛子の目は涙が溢れている。


 「もう、いいんだ、其れよりもバックを。」


 「あっ、そうだった。」


 その時、親切な若者が。


 「はい、忘れ物ですよ。」

 

 と、彼はニコットして去って行ったので有る。


 「何を泣いているんだ、もう、終わった事じゃないか。」


 「私は、私は。」


 「いいんだよ、愛子さえ無事だったらね、何も入らないよ、さぁ~、家に


帰ろうか。」


 隆一は、何時も以上に優しかったので有る。


 「なぁ~、愛子、本当は僕が行けば良かったんだ、愛子が危険な目に会わ


せた僕が悪いんだ。」


 改札を出た愛子は、隆一にしがみつく様な姿だったが、隆一は、優しく、


何も言わず、二人は、駅前からタクシーの乗り、二人を待つマンションへと


向かったので有る。


 タクシーは30分ほどでマンションに着き、隆一がドアを開けた、中は、


思った以上に整理されている。


 ただ、大きなテーブルの上だけは愛子が出発した後、隆一がどれだけの枚


数を出したのかわからないほどおびただしい枚数で有る。


 「之、全部出したの。」


 「そうだよ、だって、次々と見たいと思う資料だったからね、愛子、疲れ


ただろう、先にお風呂に入ったら。」


 「うん、有難う、じゃ~、入ってくるね。」


 愛子の目から涙は止まっていたので有る。


 愛子は、安心したのか風呂場から愛子の歌声が聞こえてくるので有る。


 その楽しそうな声を聞いた、隆一も、之で、安心だと思ったので有る。


 愛子は、一時間ほど風呂に入り、さっぱりした顔で上がってきたので有


る。


 「隆一さん、本当に御免なさい。」


 と、愛子は、隆一の胸に飛び込んできたので有る。


 「愛子、本当に、もういいんだ、僕が悪かったよ。」


 愛子は首を振り。


 「うう~ん、隆一さん、よ~く、聞いてね、本当に、私はね、何も無かっ


たのよ、其れより、私、二日間も有るクラブに居たのよ。」


 「えっ、なんで、愛子が、クラブに。」


 「今から、その話をするわね。」


 と、愛子はあきえと、出会った時のことから、話をはじめるので有る。


 途中、何度か、コーヒーを飲み、隆一は、愛子の話を真剣に聞くので有


る。


 愛子の話は、翌朝まで続いたのだ。


 「それでね、私は、まだ、調査が終わって無かったと思い、その話をする


つもりで電話をしたのよ。」


 「そうだったのか、だけど、それだけの情報があれば十分だと、僕は思う


んだ。」


 「でもね、何かが足りないと思ってるんだけど。」


 「愛子、世の中、そんなに簡単に情報が集まれば大変な事だよ、其れに、


その建設会社だって、実質的には、その組長が握っている事もわかったんだ


から。」


 其れは、あの川魚料理を食べに行く前の話だった。


 組長は、愛子と、食事のためにダンプの通行を止めたので有る。


 「其れじゃ~、隆一さんは、その建設会社じゃ無くて、その組長を。」


 「うん、之で、本来の狙いが決まったよ。」


 「でも、他の事は。」


 「別に、今、直ぐにと言う様な問題じゃ~無いんだ、其れよりも、山中に


廃棄物を運べない方法を考えて要るんだ。」


 と、言ってはいるが、この時、既に、隆一の頭の中で作戦が出来上がって


いたのだ。


 「愛子、今から、何か食べに行かないか。」


 「うん、でも、そうだ、私、あきえさんに教えて貰った美味しい食べ物が


有るのよ、隆一さん、ご飯は。」


 「うん、少ししか無いんだ、すまない。」


 「いいのよ、あっ、之だけあれば十分に足りるわよ。」


 と、愛子は、早くも普段着に着替えているのだ。


 「さぁ~、行きましょうよ、早く~。」


 と、愛子は、子供が親の手を引く様な仕草で、隆一を引っ張るので有る。


 「わかったよ、で、一体、何を作るんだ。」


 「隆一さんは、何も聞かないの。」

 

 と、愛子は、ニコットするのだ、二人は、近くのスーパーに行き、愛子


は、あきえから教えて貰った食材を買い、子供の様な仕草をしているのだ、


愛子と言う女性、普段は本当にあどけない可愛い女性だが、其れが、任務と


もなれば、本物の狼かと思うほどの目付きになるので有る。


 愛子が見せる、本当の姿はいったい、どっちが本当なのか、隆一もわから


ないのだ。


 二人は、マンションに戻り、台所に入った愛子の使う包丁の心地よい音が


なんとも言えない、其れは、子供の頃から聞いていた母親が使う包丁の音な


のかも知れないのだ。


 暫くして。


 「う~ん、之で、出来上がったわ。」


 と、独り言で有る。


 「隆一さん、お待たせしたわねぇ~、之よ。」


 と、愛子は、最高の笑顔になっている。


 「愛子、之は。」

 

 「うん、あきえさんから教えてもらったの、薄味にして有るけど、後は、


隆一さんの好みで、お塩を入れてもいいのよ、でも、その前に、一口食べて


欲しいの。」


 愛子の料理は本格的だ、其れは、年中外国に行って現地で本場の味を覚え


たからで、だが、之は、新しいメニューとなりそうな気がすると、隆一は思


いつつ、一口食べたので有る。


 「愛子、之は、本当に美味しいよ、だって、何かわからないが、僕が子供


の頃に食べたような味なんだ。」


 「わぁ~ほんと~、私、とっても嬉しい。」


 と、愛子は抱きついてきたので有る。


 「オイ、オイ、危ないよ。」


 「いいの、だって、隆一さんが褒めてくれたんだもの。」


 と、愛子は、何かを忘れたような顔になっている。


 やはり、向こうで、何かがあったんだ、だが、愛子は、絶対に言わないと


思った。


 「そうだ、愛子も疲れているだろうから、2~3日は、何もせずのんびり


としようか。」


 「えっ、本当なの、でも、隆一さんは、作戦を考えてたんでしょう、私


は、もう、なんとも無いのよ、だって、隆一さんが、側に居るんだもの。」


 と、今度は、別の表情になっているので有る。


 「其れに、僕だって、少しは休みたいんだ。」


 其れは、隆一の本音だった、愛子の居ないマンションで一日中パソコンの


画面を見て、数百枚もの資料を出したので有る。


 勿論、その中には、愛子が調査できたものもあれば、時間的に出来なかっ


たものまであるのだが、その数日無理をしたのが、やはり、愛子の顔を見た


ので疲れが一度に出てきたのである。


 「そうねぇ~、私も、あの資料を見て、隆一さんは相当無理をしたんだと


思ったのよ、じゃ~、本当に、2~3日は何もしないでのんびりとしましょ


うね。」


 「うん、其れで、僕も助かるよ。」


 その後、二人は、資料もパソコンのスイッチも入れず、公園に行ったり、


映画を見たりとのんびりとしたので有る。


 そして、数日後の朝で有る。


 「愛子、起きて要るのか。」


 「うん、さっき、目が覚めたの、御免なさい、朝の用意ね。」


 「いや、今はいいんだ、其れよりもこっちに来てくれないか。」


 「えっ、何かあったの。」


 愛子は、正か、隆一が作戦を開始しているとは思っても見なかったので有


る。


 「そうじゃ~無いんだ、愛子に見せたいものが有るんだ。


 「えっ、何なのよ、見せたいものって。」


 と、愛子は、隆一の側に来て、パソコンの画面を見て、驚いたので有る。

 

 「ねぇ~、隆一さん、之は、一体、なんなの。」


 其れは、隆一がここまで進めて要るとは思わなかったので有る。


 「あ~、之か、之は、愛子が出発した後、僕が、書き込みをしたんだ。」


 と、隆一は、平然とした顔で言ったので有る。


 「でも、この文章があの人達に理解出来るの。」


 「うん、僕も、其れが心配なんだけど、こんな文章、普通の人達だった


ら、之は大変だと思うはずなんだ、でも、果たして、どうなるのか、其れが


わからないんだ。」


 「でも、隆一さんは、之を理解するものだと思ってるのね。」


 「うん、その通りなんだ。」


 「でも、之を、何時、発信するの、だって、之は、彼らだけじゃなくて、


ほぼ全国のマスコミに送れるようにセットされてるのも。」


 何故、隆一は、当事者だけでなく、マスコミにも、それも、全国のマスコ


ミに対して発信する必要が有るのだ、それでは、任務に支障が起きる可能性


が出てくる事も考えられるのだ、其れは、当事者名を公表する事によってで


有る。


 「愛子、僕はね、任務は確かに重要だと思ってるよ、でも、僕も悩んだん


だよ、公表すれば、するで、何十、いや、何百と言うマスコミが当事者やそ


の周辺に取材に行くだろうし、公表せず、隠密にすれば、マスコミは、別の


場所で大騒ぎをするだろうしね、其れに、警察も行政も絡んでくるだろうか


ら、それこそ、大変な騒ぎになるだろうと思うんだ。」


 「でも、それじゃ~、隆一さんの任務に支障が出ると思うんだけど。」


 愛子は、隆一の任務に支障が出る事が心配なので有る。


 「だけど、僕も、色々と考えたんだよ、それでね、僕は、反対にマスコミ


を利用してやろうと考えたんだ。」


 「えっ、マスコミを利用するって。」


 「うん、今までは、マスコミが後回しになっていたと思うんだ、僕は、其


れを、先に持ってきただけなんだ、マスコミを利用すれば、任務に支障を来


たす事はわかってるよ、でもね、マスコミを利用すれば、僕や愛子が調べる


事の出来ない事だってわかると思って要るんだ。」


 隆一は、あえて、マスコミを利用すれば、愛子が危険の事に巻き込まれな


いだろうと考えたので有る。


 「隆一さんの言う事はわかるわよ、私、一人が調べたって、ほんの一部分


しかわからないんだもの、だって、情報の収集って、本当に時間が掛かると


思うのよ。」


 「うん、そうなんだ、確かに、愛子が調べてくれた内容は、誰にでも出来


る事じゃ~無いと思うんだ、でも、多勢のマスコミが調べるって事は殆ど、


この資料に有るんだ、でもね、この資料に無い情報が公表されるって事にな


ると、一体、どうなると思う。」


 「う~ん。」


 と、愛子は、直ぐには答える事が出来なかったので有る。


 木田から送られた資料は膨大な量である、だが、マスコミの調査方法は別


なので有る。


 公表されない情報でも資料として、社内に保管されていると考えたのだ。


 「それにね、僕は、愛子が、危険を犯して情報収集するのは反対なん


だ。」


 隆一は、何時も愛子を大切に考えて要るのだ、其れは、愛子自身も隆一の


気持ちは痛いほどわかっている、だから、あえて、危険を冒してでも、隆一


のためにと、情報を集めたいと考えて要るので有る。


 「隆一さんの気持ちは本当に嬉しいのよ、だからって、言うんじゃ無いけ


ど、私は、隆一さんのために出来る事なら何でもしたいのよ。」


 隆一も、愛子の気持ちはわかっているのだ。


 「僕はね、今まで、誰も考えなかったと思うんだ、警察や行政が介入する


為に、マスコミに流す事なんか。」


 今までは、マスコミを利用する事は一部を除き、タブーだったのだろう


か、それとも、隆一の考えたマスコミを利用すると言う作戦は過去にもあっ


たのか、其れは、問題では無いので有る。


 だが、今回の任務に対し、あえて、隆一は、マスコミを利用しようと考え


たので有る。


 「隆一さん、之を、何時、発信するの。」


 「う~ん、実はね、僕も、今、何時ごろ発信しようかと、本当は迷ってる


んだ。」


 其れは、愛子も同じだった、今日なのか、それとも、明日なのか。


 「愛子、僕はね、之を発信すれば、一体、どうなるのかわからないんだ、


其れに、今、此処で発信する方がいいのか、それとも、僕が、現地に着いて


から発信する方がいいのか、迷っているんだ。」


 愛子も、同じだった、現地に行くにも、準備が必要だから。


 「隆一さん、私は、現地に行く準備も必要だと思うのよ、それでね、私


は、隆一さんの準備が終わってからでも、遅くは無いと思うんだけど。」


 愛子の言う方が正しいと思い。


 「うん、そうだね、今は、何の準備も出来て無いんだから。」


 「其れで、隆一さんは、何時、出発する予定なの。」


 「うん、2~3日後かなって、今、思ったんだが。」


 だが、この作戦には、何かが足りないと、愛子は考えているので有る。


 「ねぇ~、隆一さん、私は。」


 隆一は、愛子は残すつもりだったのだ。


 「うん、それなんだ、マスコミの動きを調べて欲しいんだ。」


 「えっ、マスコミの動きって。」


 「うん、大きなマスコミは、殆ど、大都会に本社が有ると思うんだ、その


動きだけは、現地じゃわからないんだ。」


 愛子は、直ぐに理解したので有る。


 愛子にマスコミの動向を探れと言う名目で残すつもりだったのだ。


 「わかったわ、隆一さんが現地に行き、私は、マスコミの動向を探り、隆


一さんに連絡するのね。」


 「うん、そうなんだ、愛子にも大きな負担を掛けるが。」


 「いいのよ、だって、其れで、隆一さんの任務が成功出来るんだったら、


私は、それだけでも十分なの。」


 「愛子、有難う。」


 と、隆一は、愛子の素直な気持ちが可愛く感じたので有る。


 「愛子、でも、無理だけはするなよ、相手は、百戦練磨の手強い連中だか


らなっ。」


 愛子は、少し、戸惑ったのだ、相手は百戦練磨と言うが、何故、手強いの


かわからないので有る。


 「ねぇ~、隆一さん、何故なの、相手は、マスコミの本部でしょう、其れ


が、何故、手強いのよ。」


 「それなんだ、現場の記者は必死で取材しているんだよ、でも、記者が取


材した記事を全部載せる事は事実上不可能なんだ。」


 愛子も、隆一の言ってる意味はわかっているが。


 「隆一さんの言う事はわかるわよ、でも、何故、其れが手強いのよ。」


 と、愛子は、隆一の言った事に不満を示すので有る。


 「愛子、記者も必死なら、本社の連中は、その数倍も必死なんだと思うん


だ。」


 隆一の言う必死と言う言葉に、愛子は、何かを知ったかのようで有る。


 「私も、わかるわよ、だって、現場の必死さは知って要る積もりよ。」


 愛子は、今まで、隆一の他に何人もの推薦者を送り込んだのだ、愛子も、


何とかしてボス達に合格出来る様にと必死に頼むのだ、だから、愛子もわか


っているのだ。


 「愛子、マスコミの関係者でも、最前線で取材した記事がだよ仮に認めれ


たとしても、果たしてどれだけの一般人読むかなんだよ、一度も認めらずに


会社を去って行く人達がどれだけ多いか知ってるか。」


 愛子は、そこまでは考えていなかったので有る。


 「それじゃ~、隆一さんは、記者達は取材した記事を何としても載せたい


と思って要るの。」


 「当たり前じゃないか、だって、一度、スクープを取って掲載されると、


社内での評価も違ってくるんだよ、考え方を変えれば将来にも明るい希望が


湧いてくるんだ。


 その為には、昼夜関係なく見張ると言うか、其れが、被害者だろうが、加


害者だろうが、相手に関係は無いんだ。

 

 「じゃ~、その動きを隆一さんに連絡すればいいのね。」


 「だけど、全部は必要無いんだ。」


 隆一も、愛子を残す為に色々と考えるのだが。


 「全部必要無いって言うの。」


 「全部を連絡する事も大事なんだけど、う~ん、僕の狙いは、一部の動き


だけなんだ。」


 愛子は、直ぐには理解できなかったので有る。


 「隆一さん、一部の動きって、どんな動きなの。」


 「僕も、テレビなんかで見る記者クラブって有るだろう、あの記者クラブ


の動きが知りたいんだ。」


 「でも、私は、記者じゃないのよ、どうやって、記者クラブに入るの。」


 隆一は、突然閃いたので有る。


 「愛子は、日本人だけど、外国生まれの日本人になるんだ、そして、その


外国から派遣された記者ってのはどうだろうか。」


 「えっ、私が、外国の特派員になるの。」


 「うん、それなら、日本人記者達も話をすると思うんだ。」


 「でも、何故、外国の記者なのよ。」


 愛子は、どこから見ても日本人だ、其れに、数ヶ国語を話す事が出来るの


で有る。


 「愛子はね、外国語が数ヶ国語出来るじゃないか、だから入りやすいん


だ、僕はね、愛子が、記者と話す必要も無いと思うんだ、彼らが話す内容な


んだ、其れはね、記事として載らない内容がね、其れで、マスコミ各社はど


んな風に見ているか、其れを知りたいんだ。」


 「じゃ~、隆一さんは、このパソコンから発信した内容を各社がどんな風


に見ているかを知りたいって言うのね。」


 其れは、本当だった、全てのマスコミが最初どの様な反応するのか、それ


から途中で更に、終わった後からは各社とも必死になるだろう、だが、全て


の記事が新聞やテレビ、ラジオで放送されるとは限らないので有る。


 隆一は、記事の中味よりも発信後の各社の動きが知りたいだけなので有る。


 「わかったわ、じゃ~、私と、隆一さんの共同作戦を行なうのね。」


 隆一は、首を縦に振りながら。


 「うん、そうなんだ、僕は、今回が最初の仕事で、一体、どんな動きにな


るのか、何もわからないんだ、愛子が集めてくれるだけでも、僕は、安心な


んだ。」


 愛子も、隆一が其処まで考えて要るとは思わなかったので有る。


 「でも、隆一さん、パソコンからの発信は何時頃するの。」


 「別に急いで無いんだ、僕は、現地に着いてからでも発信しようと思って


るんだ。」


 「そうね、私も其れがいいと思うの、だって、今、発信すると、私も準備


不足だし、隆一さんも、現地の事情も知らないと作戦を進める事が出来ない


と思うのよ。」


 愛子の言う通りだ、愛子の準備もだが、隆一が現地に行く準備も必要にな


ので有る。


 「準備と言っても、僕は何時でも行けるよ、問題は愛子だなぁ~、どんな


方法でだよ記者クラブに入るかだね。」


 愛子は、その前に、有る考えがあった、その考えとは。


 「隆一さん、私の事なら何も心配要らないのよ、だって、なんだか、私、


わくわくしてるんだもの。」


 「えっ、愛子がわくわくしてるって。」


 愛子の顔が何かを想像している様であった。


 「うん、そうなのよ、私もね、記者クラブなんてテレビでしか見た事が無


いのよ、だから、テレビの中と、本当はどっちかなぁ~って、今、想像して


るのよ。」


 「そんなに楽しみにしているのか、じゃ~、僕は、準備出来次第と言うか


明日の朝出発するよ。」


 「だったら、私は、隆一さんの出発した数時間後に有る人物に会うわ


ね。」


 「えっ、有る人物って、誰なんだ。」


 「隆一さん、木田長官よ。」


 隆一は、直ぐに理解したのだ、やはり、警察関係は木田長官が頼りなの


だ。


 「そうか、木田長官か、其れで、愛子は、何処の国の特派員になるん


だ。」


 「う~ん、其れはね、ひ・み・つ、なの。」


 と、愛子は、微笑み。


 「秘密って、僕の想像する国じゃ~無いって事か。」

 

 「多分、隆一さんだから、あの国だと思うんだけど、でも、それじゃ~ね


っ。」


 と、またも、愛子は微笑むので有る。


 「まぁ~いいか。」


 「隆一さん、忘れ物の無い様にねっ。」


 「全部、終わってるよ、愛子、しばらくの間、離れるけど、大丈夫か。」


 と、隆一は、愛子を引き寄せ、思い切り抱くのだ、愛子も、其れに答える


ように、二人は、そのままベッドへ行くので有る。


 話は、少し戻り、隆一と愛子がマンションに着いた翌朝だった、突然、隆


一の携帯が鳴ったので有る。


 「はい、吉村です。」


 相手は、有る国の大使館員だと名乗ったのだが、隆一に大使館員だと名乗


る男を知らないのだ、その為に隆一は言葉使いを考えて話すので有る。


 「其れで、私に、何か用件でも有るのでしょうか。」


 だが、側に居る愛子は何かは知っていたので有る。


 「実はですね、有る人物から、吉村隆一さんに届ける様にと言われた品物


が有るので、私が連絡させてもらったのですが、今日の午後でもお会いする


事は出来るでしょうか。」


 「ええ、私は、何時でも。」


 「では、今日に午後2時に。」


 と、大使館近くのホテルを指定したので有る。


 「わかりましたが、でも、何か目印になる物は。」


 「そうですね、私の胸にバラを1本挿して行きましょうか。」


 「わかりました、バラの花ですね、では、午後2時に。」


 と、隆一は電話を切ったのだが。


 「愛子、一体、誰なんだろう、僕に大使館から、それも、何か渡す品物が


有るって言うんだがなんだろうか。」


 愛子は、品物が何かを知って要るのだ。


 「私も知らないわよ、だって。」


 と、愛子は言葉を濁したのだ、隆一は、約束の時間の一時間前にホテルの


ロビーに着き、ロビー近くのラウンジでコーヒーを飲んで、隆一はホテルの


入口を見ているのだ、そのホテルは意外にも外国人が多く、いったい、どの


人物が大使館員なのか隆一に見分けがつかない、仕方なく何も考えずコーヒ


ーを飲んでいると。


 「あの~、吉村隆一さんですね。」


 体格の良い外国人が話し掛けてきたのだ、彼の日本語は流暢で有る。


 「はい、僕が、吉村ですが。」


 と、隆一は、その男の胸元を見た、やはり、バラが1本指してあった、彼


も座り。


 「私は身分を明かす事は出来ませんが。」


 と、彼は、立派な革を使った細長いケースを横に置いたので有る。


 隆一は、そのケースだと直ぐにわかったが。


 「其れで、僕に渡す物が有ると聞いたのですが。」


 「はい、その通りで、このケースなのです。」


 と、男は、ケースを隆一の前に置いたので有る。


 「この中味を見たいのですが。」


 男は慌てた様子で。


 「其れは、駄目です、此処ではねっ。」


 と、二コリとしたので有る。


 このケースの中に、一体、何が入って要ると言うのだ、と、隆一は考える


のだが。


 「では、私は、之で帰りますので。」


 と、男は、直ぐにホテルを出て行ったので有る。


 隆一も支払いを済ませ、その足でマンションに帰ってきたので有る。


 「愛子、このケースなんだ、で、一体、中身はと。」


 隆一がケースを開けると。


 「えっ、之は、僕のライフル銃だ。」


 と、大声を上げて、隆一は、大変な驚きで有る。


 「愛子、でも、どうして、ライフル銃がお城から日本に持ち込む事が出来


るんだ。」


 隆一は、理解できないと言うので有る。


 「隆一さん、さっき、会った人なんだけど。」


 と、愛子は、本当の事は知って要るのだが。


 「うん、昨日、電話を掛けてきた大使館員だと思うんだけど、でも、僕


は、その人物が本物の大使館員だと思わなかったんだ、でもね。」


 「隆一さん、大使館ってのはね、他国の法律は適応出来ないよ。」


 「えっ、じゃ~、フリーパスって話なのか。」


 愛子は、頷き。


 「実は、そうなのよ、よく、テレビの二ユースでも有るでしょう、外国の


大使館に逃げ込む話を。」


 「うん、その話は、僕も何度か聞いた事が有るけれど。」


 「大使館ってのはね、治外法権なので、例えばよ、外国に有る、日本の大


使館だって同じなのよ。」


 「それじゃ~、荷物の検査も無いって事なのか。」


 「そうなのよ。」


 「だけど、其れにしてもわからないんだ、なんで、僕のライフル銃が送ら


れて着たんだろう。」


 と、隆一は、首をかしげるのだが、今の愛子は、何も言えないので有る。


 隆一も、愛子の胸の内を察していたのか、今は、其れ以上は聞かないで行


こうと、何れの時が来れば解決するだろうと考えたので有る。


 そして、再び話は戻り、今日は、隆一が現地に向かう日の早朝で有る。


 隆一は、大型のキャリーバック一個と、ライフル銃のケースを、愛子も大


型キャリーバックを引きタクシーに乗り、改造車を停めて有る所に向かった


ので有る。


 改造車は、シャッター付きの車庫にあり、大型のバックは後部に、手提げ


バックを持ち、運転席へと、愛子は、外で改造車を出した後、シャッターを


下ろした、隆一は、愛子を呼び、しばしの別れを惜しみ軽いキスをしたので


有る。


 愛子は、再び車から降り。


 「隆一さん、行ってらっしゃい、気を付けてねぇ~。」


 大きく手を振り、隆一も窓から手を振り、改造車は一路現地に向かって行


くので有る。


 愛子は、マンションに戻り、まだ、時間が早かったのだが、木田に連絡を


入れたのだ。


 「もしもし、木田さん、愛子です、朝、早く御免なさい。」


 木田は、別に慌てる事も無く。


 「お早う御座います、隆一君が現地に向かったのですね。」


 木田も、この数日間のうちに現地に向かうだろうと予想はしていたので有


る。


 「ええ、そうなの、其れで、木田さんにお願いが有るの。」


 と、愛子は、昨日、隆一と相談した内容を説明を始めたので有る。


 木田は、愛子の説明を聞くうちに、之は、隆一が愛子を危険なところに行


かせないためだと思ったのだが、隆一の考える事は、木田の予想外だった。


 「愛子さん、隆一君は、何か他の目的があって、愛子さんに頼んだと思う


のですが、其れにしても面白い作戦ですね、わかりました、じゃ~、私も、


その作戦に参加させて頂きますよ、そうですねぇ~、直ぐに手配するとし


て、お昼頃に来ていただけますか、其れまでには終わっておりますので。


 「有難う、木田さん、でも、隆一さんって、私達が考える様な作戦じゃなく


て、本当に予想出来ない事を考える人なので、この先、どうなるのか、私も


予想できないのよ。」


 「いや~、私もですよ、愛子さんを記者クラブに潜入させるなんて、はじ


め、聞いた時には驚きましたよ。」


 「あの人は、この一年で、今までの吉村隆一じゃなく、全く別人の吉村隆


一になった思うのよ、だって、私は、こんな事になるなんて夢にも思わなか


ったんだもの。」


 愛子も木田も、隆一の予想外の作戦に戸惑っているので有る。


 「それじゃ~、愛子さん、私は手配が有りますので。」


 「御免なさい、よろしくお願いしますね。」


 と、愛子は、電話を切り、コーヒーを飲み、昼まで少し眠ることにしたの


で有る。


 その頃、隆一は、高速道路を目的地に向かって走っていた。


 2時間ほど走ったところで少し休むためにサービスエリアに入り、サービ


スエリアの奥に車を止め、コーヒーを飲みながら考えていたので有る。


 何故、ライフル銃が送られて着たのだ、ライフル銃は狼を仕留めるために


必要なのに、其れに、日本ではライフル銃を使用する事も無いはずだ、だ


が、何か他の理由が有るのかも知れない、だが、その理由がわからない。


 愛子は、ライフル銃が届いたが何も言わなかった、多分だが、その訳は愛


子が知って要るに違い無いと、だが、どうしてもわからないと考えて要る間


に時間が過ぎ、隆一は、再び、ハンドルを握り目的地へと向かったのだ。


 数時間が過ぎ、お昼近くになり昼食を取る為に止まった、その時、愛子か


ら電話だ。


 「もしもし、愛子です、隆一さん、今、どの付近なの。」


 「いま、丁度、お昼にしようと思ってパーキングに入ったところだったん


だ。」


 「もう、そんな時間だったの、じゃ~、少し話し出来るのね。」


 「うん、いいよ。」


 「隆一さん、昨日の話なんだけど。」


 「あ~、あの記者クラブの話し。」


 「そうなのよ、私、隆一さんが行ってから木田さんに連絡したのよ。」


 「うん、うん、其れで。」


 「木田さんも驚いてたわよ、だって、木田さんも全く予想しなかったっ


て。」


 「それじゃ~、木田さんの協力は。」


 「其れがねっ、反対に、木田さんは大乗り気なのよ。」


 「じゃ~、記者クラブの潜入は出来るんだね。」


 「勿論、出来る事になったわよ。」


 愛子も喜んでいる。


 隆一の目的は、愛子を危険な場所に行かせなかったのだが、隆一の思いと


は反対に、愛子は大変乗り気で。


「今日、午後から、その記者クラブに行く事になったのよ。」


 「そうか、良かったね、だけど、記者達に愛子の事を知られては。」


 「隆一さん、其れは、大丈夫なのよ、だって、その記者クラブには、私


は、話しは出来ないのよ、日本語も殆どわかりませんって、ことになってる


のよ。」

 

 「じゃ~、何かあれば連絡するんだぞ。」


 「うん、だけど、その場では出来ないと思うけど、必ず連絡は入れる


わ。」


 「別に無理をする事は無いからね。」


 「うん、じゃ~ねっ。」


 と、愛子は、電話を切ろうとしたので有る。


 「愛子、話は変わるけど。」


 「な~に。」


 「ライフル銃のことなんだけど。」


 愛子も、ライフル銃のことを聞くだろうと思っていたので。


 「ライフル銃って。」


 「先日、僕に直接渡されたライフル銃なんだ。」


 「其れで、何かあったの。」


 愛子は、どの様に説明すれば、隆一がわかってくれるか考えるのだが。


 「日本じゃ、ライフル銃なんて、必要無いと思うんだ。」


 「そうね、隆一さんの言う事もよくわかるわ、日本じゃ、他の国と違っ


て、拳銃やライフル銃なんて、普通の人達が持つ事は許されていないの


よ。」


 「うん、其れは、僕もわかってるんだ、だから、必要無いって思ってるん


だ。」


 だが、隆一は、必要の無いライフル銃を何故持ってきたのか。


 「隆一さん、だけどよ、例えばね、有る事件が起きた、その時、犯人は人


質を取った。


 その犯人は、拳銃を持ち、人質を左手で羽交い絞めにして要ると思って


ね、この時、隆一さんなら如何するの。」


 隆一は考える事も無く。


 「だって、警察官も多く配置されて要ると思うんだ。」


 「其れは、当然だけど、犯人は、警察に引き上げを要求したのよ、でも、


警察は、その場を離れ、少しだけ下がった、其れが、余計に犯人を怒らせ、


人質の頭に拳銃を突きつけたの、だって、その様に成る事は最初からわかっ


ていたのよ。」


 愛子は、少しずつだが、話を進めて行くので有る。


 「でも、警察にだって、専門のスナイパーは居ると思うんだけど。」


 「うん、でもね、スナイパー専門の警察官だって居るのよ、確かにね、警


察官だって日頃は射撃の訓練はして要ると思うわよ、でもね、日本じゃ、余


ほどの事が無い限り拳銃は使用しないのよ。」


 「勿論、其れは知ってる、時々だけどニュースにも出てくるけど、何時も


同じ説明をマスコミは聞くんだね、銃の発砲は正しかったのかって。」


 「うん、それでね、さっきの話しに戻るけど、犯人は人質を今にも殺そう


としている、だけど、日本の警察官の腕じゃ~、犯人どころか、人質を先に


死亡させる危険が有るのよ。」


 「え~、そんなに日本の警察官は拳銃の扱いに慣れていないのか。」


 愛子は、いよいよ、核心部分に入って行くので有る。


 「その時にね、隆一さんがライフル銃を構え、いつでも犯人を撃つ事が出


来るとよしたら、隆一さんは如何するの。」


 「う~ん、其れは、大変難しいなぁ~、だって、犯人の頭か胸、それも心


臓に狙いを定めたいが、犯人は人質を羽交い絞めにしてるんだねぇ~。」


 「そうなのよ、でも、隆一さんの腕前だったら犯人の拳銃か、拳銃を持っ


た腕を狙う事も出来ると思うんだけど。」


 「え~、ぼくが拳銃を。」


愛子は、知って要るのだ、其れは、ビルからで有る。


 「私は、知ってるのよ、隆一さんは、ライフル射撃の訓練で最初の弾痕に


当てたと。」


 「だって、あれは、狼の眉間を狙って撃つ訓練をしてたんだ。」


 「それなのよ、私はね、どんな物でも使い方だと思ってるのよ、ボールペ


ンだってね、使い方次第で大変な凶器に成るのよ、隆一さんのライフル銃


は、狼を仕留めるために作られた、其れは別としてよ、何もライフル銃で犯


人を撃ち殺す必要は無いと思うの、だって、普通の人じゃ不可能を可能にす


るのが隆一さんだと思うのよ。」



 「う~ん、そう言われればその通りかも知れないなぁ~、このライフル銃


を使用し、人間を殺すのでなく、次の犠牲者を出さない為に使用すればいい


んだ。」


 と、行ったが、本当に、隆一は、納得したのだろうか、自らのライフル銃


で、たとえ、極悪人と言えど直接殺しはしないと、だが、隆一と同じで、警


察のスナイパーが、隆一の後に撃つ事までは感知しないと自らに言い聞かせ


たので有る。


 「隆一さん、何時ごろ、目的地に到着の予定なの。」


 「うん、僕は明るいうちには着きたくは無いんだ、其れはね、この車っ


て、意外と目立つんだ。」


 「えっ、何故なの、私は、そんな風には見えないんだけど。」


 愛子は、単純に考えていたので有る。


 確かに、外観は見た目には地味なのだが、外壁に書かれた文字が目立つの


で有る。


 其れは、大きな文字で無いのだが、日中は目立つと言うので有る。


 「じゃ~、今夜遅くか、夜明け前に着く予定なの。」


 「僕は、その予定で入るんだ。」


 「じゃ~、あの文言は着いてから発信するの。」


 「いや~、其れは、もっと早く発信するよ、だって、愛子はもう直ぐ記者


クラブに行くんだろう、その頃に発信する予定なんだ。」


 「じゃ~、私は、記者クラブの動向を探りに行くのね。」


 「うん、その通りだ、じゃ~、愛子、僕は昼食を取ってから出発するから


ね。」


 「隆一さん、本当に気を付けてよね、私、もう心配で、心配で、今は、何


も起こらないように祈るだけなのよ。」


 「愛子、有難う、じゃ~ねっ。」


 と、隆一は愛子との話は終わり、食堂に向かったので有る。


 隆一は、食事を早く終わり、早々と車に戻って着て、パソコンのスイッチ


を入れた。其れから、あの建設会社と全てのマスコミに対し発信を始めたの


で有る。


 其れは、隆一が、考え抜いた作戦の開始であった。


「我は、山の神で有る。


 その方の会社が今も行なっておる、あの美しい山間部に大量の土砂で、其


れは、その方達が言うところの産業廃棄物で有る。


 その産業廃棄物をあの山間部に捨てる行為を直ぐに止めなければ、その方


達は勿論のこと、関係した全ての会社に多大な損害を被る事になるであろ


う。」


 と、それからも長文が建設会社と全てのマスコミに発信され、其れは、遂


に隆一がデビューする任務と成ったので有る。


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