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僕は、スナイパー。  作者: 大和 武
4/10

第 4 話   帰国命令。

 隆一の射撃訓練が開始されて半年が過ぎた頃で有る。


 「愛子さん、木田ですが。」


 「まぁ~、木田さん、如何されたんですか。」


 「いや~、別に特別な用事でも無いのですが、その後、隆一君の訓練は如


何なものかと思いまして。」


 「隆一さんの訓練ですか。」


 と、愛子は返事に少し困ったので有る。


 確かに、射撃訓練は順調なのだが。


 「愛子さん、何か問題でも有るのでしょうか。」


 「いいえ、別に問題と言うほどでは有りませんが、隆一さんの射撃訓練に


関しては全てクリアしています。」


 「じゃ~、何が有るのですか。」


 愛子の心配は射撃ではなく、机の上での勉強なのだ。


 其れは、隆一が一番苦手としているので有る。


 「木田さん、実はね、隆一さんが、一番苦手としている勉強の方が少し遅


れているの。」


 隆一は、射撃を楽しんでいる、だが、室内で勉強となると厳しい状態なの


だ。


 「愛子さんが思われた以上に遅れているのですか。」


 「いいえ、其処までは無いとは思って要るんですが、でも。」


 「それじゃ~、何も問題は無いと思いますが。」


 「木田さん、隆一さんは何時ごろまで、此処で訓練を続ければいいの。」


 「其れは、愛子さん次第ですよ、確かに、早く帰国していただければ、私


としても大変ありがたいことに間違いは無いのですがね。」


 「私も、早く終わらせたいと思って要るの、だけど。」


 と、言ったが、愛子の本音は違うと、木田は思って要るので有る。


 「愛子さん、私は、別に急いではおりませんよ、愛子さんの気持ちも大切


ですから。」


 と、木田は、愛子を気遣うので有る。


 「木田さん、本当の話をしますとね、隆一の苦手なのは外国語じゃ、無い


の、実は、私も、化学は苦手だったのでよくわかるのよ、其れに、化学方程


式を覚えるのは大変なのよ。」


 木田も、理解は出来るので有る。


 「愛子さん、私も、学生時代、大変苦労しましたからね。」


 「でも、隆一さんも必死なんだけど。」


 「ですが、余り、追い込むのはいいとは思いませんので。」


 「私は、別に追い込んではいないのよ、だけど、隆一さん自身が早く終わ


らせたいと思っているのよ。」


 「わかりますよ、じゃ~、私に何か出来る事は有りませんか。」


 愛子は少し考え。


 「木田さん、隆一さんの仕事なんだけど、それ程、大変な仕事なの、化学


の勉強が必要なほど。」


 「愛子さん、隆一君の仕事にはとても大切なものなんですよ、水質や土壌


分析は簡単なんですがね、でも、本格的な分析ともなれば、専門の機関に依


頼しなければならないのです。


 その専門機関は、毎日、大量の分析依頼があり、例え、隆一君から大至急


だと言われても直ぐには結果が出ない、と、言うよりも、送られてこない


と、私は判断したんです。」


 木田は、隆一が専門的な分析が出来るとなれば、余計な時間を省く事が出


来ると考えたので有る。


 「では、隆一さんの仕事には、専門的な知識が必要なのね。」


 「そうなんですよ、私もね、隆一君には、大変な負担を掛けていると思っ


ていますよ、ですが、隆一君なら出来ると判断したんです。


 愛子さんにも、大変な思いをさせて申し訳ないと思っています。


 隆一君の任務は、誰でも出来る様な任務じゃ無いことだけはわかって欲し


いんですよ。」


 愛子は、隆一の訓練と勉強を早く終わり、帰国して欲しいと思う反面、出


来るだけ長くそばに居て欲しいのだ。


 「はい、私も、隆一さんであれば出来ると確信していますが。」


 「愛子さん、隆一君を早く帰国させようと無理をさせないで欲しいんです


よ。」


 木田には別の問題が有ったのだ。


 「えっ、早く帰国させるのが、何故、駄目なの。」


 「う~ん、之は少し話しづらいですがね。」


 木田は、国内の整備が進んでいない事を理由に考えて要るのだ。


 「愛子さん、本当はね、国内の整備が進んでいないのですよ。」


 「えっ、国内って、何か特別な整備が必要なの。」


 「ええ、そうなんですよ、今回、隆一君の任務は極秘に進めて要るのです


が、でもね、一部のマスコミが報道したんですよ。」


 「木田さん、でも、隆一さんの任務と言うのか、仕事というのは、水質や


土壌を分析し、告発するという、特別捜査官なんでしょう、何が問題な


の。」


 「我々が、極秘に進めて要ると言う事に、何か裏が有ると報道されたんで


すよ、勿論、全てを否定していますがね。」


 「じゃ~、問題にならないと思うのだけど。」


 「愛子さん、マスコミはね、極秘に進めて要るのが問題だというんです


よ。」


 「でも、何故なの、何故解ったの、隆一さんと、私が日本を出たのは半年


以上も前なのよ。」


 「其れは、わかっていますよ、其れで、私の方も調査したんですがね、実


はね、裏社会の数人が有る国で射撃の練習と言うか、訓練を行なって要ると


わかったんですよ。」


 「じゃ~、私達とは関係が無いってわかったじゃないですか。」


 「愛子さん、勿論、我々は、その様に思っておりますよ、でも、何故だか


わかりませんがね、一部のマスコミは真相を追究する必要が有ると騒ぎ始め


たんですよ。」


 「木田さん、でも、私達とは、全く関係が無い話じゃ無いですか、なぜ、


それほど、深刻に成る必要が有るんですか。」


 「愛子さん、我々の任務は極秘中の極秘なんですよ、だから、慎重の上に


も慎重に物事を進める必要が有るんです。」


 何時もは、反対の立場で有る、愛子は組織の中でも慎重に物事を進めるこ


とで有名なのだが、何故、今回だけは、やはり、隆一の存在が左右している


とでも言うのか。


 「私も、其れはわかってるわ。」


 「私の調査も秘密で進めた結果なんですよ、だといって、隆一君が帰国し


ても、何の問題も有りません。


 ですが、帰国した隆一君は、暫くは何も出来ないってことに成ります。」


 「じゃ~、何ですか、たとえ、隆一さんが帰国しても、任務に就く事が出


来ないって話なの。」


 「そうなりますね。」


 愛子は、この時、少なくとも、後半年は隆一の側に居ることが出来ると考


えたのだ。


 「それじゃ~、隆一さんは、暫く、今の生活を続ける事になるの。」


 と、愛子は、嬉しさで微笑んでいる。


 木田も、愛子の気持ちはわかっていたので有る。


 「愛子さん、私も本当は、早く戻ってきて、早く任務に就いて頂きたいと


思っていますよ、でも、そうですね、半年は辛抱して頂きたいと思って要る


んですが、如何でしょうか。」


 電話の向こうで、愛子が喜んでいる姿が見えるようだと、木田は思ったの


で有る。


 「木田さん、わかりました、じゃ~、隆一さんの訓練を続ける事にします


ので。」


 「申し訳ないですねぇ~。」


 「いいえ、私も、隆一さんの訓練を続ける事が出来ますので、大変嬉しい


の、でも、何故なの、その裏社会の人達が射撃をしただけで、マスコミが騒


ぐの。」


 「ええ、でも、問題は、その部分なんですよ、彼らはね、実は、20数年


も前に抗争事件を起こしているんですよ。」


 「えっ、そんな昔に、でも、彼らと私達とは、全く関係は無いと思うんだ


けど。」


 「愛子さん、その抗争事件で犠牲になられたのが、隆一君の御両親なんで


すよ。」


 「えっ、正か。」


 愛子の驚き様は普通では無かった、愛する隆一の両親を殺した者達が、


今、また、抗争事件を起こそうとしている。


 日本では、多分、隆一の両親のことが報道されているだろう。」


 「木田さん、其れは本当なの。」


 「本当なんですよ、今、隆一君が帰国すれば、嫌でも、マスコミは騒ぐで


しょう、そんな事になれば、どうなるか、誰が考えてもわかりますよ。」


 「隆一さんも、忘れようとした昔の事件を報道されるって。」


 「愛子さん、幾ら、日頃、冷静な人間でも、自分の両親を殺した者達を許


して置けると思いますか。。」


 「でもね、隆一さんが、日本国内に、あっ、わかったわよ、当事者の隆一


さんが日本国内に居ない事が余計に騒ぎを大きくしたのね。」

 

 「その通りなんですよ、社長も工場長もマスコミには何も話されてはおり


ませんよ、でもね、何も知らない他の従業員は話をしますよ。」


 「そうよねぇ~。」


 愛子は、今の状態で帰国すれば、大変な事になる、だが、日本の、いや、


世界中のマスコミが隆一を探しても、居場所はわからない、それ程、この城


は秘密のベールに包まれているので有る。


 「木田さん、じゃ~、隆一さんが、お城に居る事は。」


 「其れはですね、誰にも知られてはおりませんのが、幸いして要るんです


よ。」


 愛子は、喜びよりも、胸を撫で下ろしたので有る。


 「日本のマスコミは、隆一さんは、何処かで復讐するような報道でもして


いるの。」


 「今のところは有りませんがね、今のマスコミは、証拠も無いのに騒ぎ立


てるようなところが有りますからね。」


 「じゃ~、今、射撃の訓練をして要る人達なんだけど。」


 「愛子さん、心配は要りませんよ、我々だってバカじゃ~有りません


ね。」


 「彼らも、動きは取れないってことなの。」


 「勿論ですよ、今は、国外ですが、日本に帰国と同時に徹底的にマークす


る事になっていますから。」


 「じゃ~、安心しても。」


 「日本国内のことは任せて下さい。」


 愛子は安心したので有る。


 「木田さん、ボスには。」


 「まだ、伝えてはおりませんので、愛子さんから、伝えていただければと


思います。」


 「わかったわ、じゃ~、また、変化があれば連絡して下さいね。」


 「わかりました。」


 愛子は、組織上では木田の上司になるので有る。


 「ボス、愛子ですが、少し時間を頂きたいのですが。」


 「あ~、いいですよ。」


 「じゃ~、今から、寄せて頂きます。」


 と、愛子は、シュルツの執務室に向かうので有る。


 隆一は、射撃の訓練を続けているので、今のうちに、ボスに相談しようと


思ったのだ。


 「愛子です。」


 「入って下さいよ。」


 「はい。」


 と、愛子は、ドアを開け、シュルツの座っている机の前に。


 「まぁ~、座って下さい。」


 「はい。」


 と、座り。


 「何か、お話しでも。」


 「はい、実は、先程、日本の木田から連絡有りまして。」


 「ほ~、木田君からですか、何か、特別な問題でも起きたのかね。」


 「木田は、隆一さんの帰国を遅らせて欲しいと言ってきたのですが。」


 「ほ~、帰国を遅らせて欲しいと、其れは、何故ですか。」


 「はい、木田の報告ですと、日本の裏社会の人間が、有る国に向かい、現


地で射撃訓練を開始したと言うのですが。」


 愛子の表情は沈んでいる様に見えたので有る。


 「愛子、その人間と隆一とは、一体、どの様な関係が有るんだね。」


 「ええ、実は、問題は、その人間達なんです。


 20数年前に有る組織と抗争事件を起こしたんですが、その抗争事件で犠


牲になられたのが、隆一さんのご両親なんです。」


 「それじゃ~、また、抗争事件を起こすとでも。」


 「はい、木田は、その様に言ってきたのですが、問題は日本の一部マスコ


ミが騒ぎ出したと言うのです。」


 「じゃ~、隆一のこともですか。」


 「はい、日本で仕事をしていた時の会社の社長や工場長はマスコミに対し


ては何も語って無いと言ってましたが、何も知らない他の従業員がマスコミ


に話をしたらしいのですが。」


 と、愛子は、木田からの報告をシュルツにその後、1時間ほど説明したの


で有る。


 「愛子、良くわかりましたよ、其れで、話は変わりますが、愛子は、隆一の


訓練が終われば如何するんだね。」


 シュルツの思ったとおりで有る。


 愛子の表情は暗くなり、何も言えないと言う様な顔付きになったのだ。


 「愛子、木田からは何も聞かされていないのかね。」


 「ええ、何も聞いておりませんが、でも、私も覚悟は出来ておりますの


で。」


 「愛子、だけど、隆一は、何も知らないのだろう。」


 「はい、何も知りません。」


 シュルツは、思いきったことを考えていたので有る。


 「愛子は、隆一を本当に愛しているのかね。」


 「えっ、何故、その様は話をさせるのですか、私は、隆一さんと離れたく


ないのです、でも、今の、私の立場を考えると。」


 「だけど、木田は、何かを考えて要ると思うんだよ、今まで、隆一以外の


者達はね、単にスナイパーの訓練を受けただけだと思うんだよ、だが、隆一


の訓練というのわだ、今までに無い方法で行なって要るんだよ、何故か、愛


子にわかるかね。」


 愛子は、木田の本心を知らなかったので有る。


 単に、スナイパーの任務ならば、語学や化学などの勉強は必要が無かった


ので有る。


 だが、隆一は、射撃訓練のほかに語学や化学の勉強と言った特別な勉強を


して要る。


 シュルツは、考えたのだ、木田は、当分の間、日本国内で任務に就かせる


ことを。


 「愛子、木田の考えではね全ての訓練が終わり次第帰国させ、日本国内の


任務に就かせようと考えて要ると思うんだよ。」


 「日本国内だけにですか。」


 だが、愛子が一緒に任務に就く事は出来ないと思うので有る。


 「だがね、今までと違うのは、別の任務が有ると言う事なんだ。」


 愛子も、隆一の本来の任務は環境調査した結果を関係機関や企業の許可を


得ず公表出来ると言う、特別な権限を持って要る特別捜査官なので有る。


 調査もだが、分析に時間を掛けるのではなく、独自で分析する為に必要な


勉強をしていたので有る。


 「愛子、木田は、今までに無い権限を捜査官に与えるのだ、だがね、幾ら


素晴らしい捜査官が調査してもだよ、結果が出るまでに時間が掛かっては意


味が無い時も有るんだよ。」


 と、シュルツは、隆一の任務には、大切なパートーナーが必要だと言って


いるのだ。


 「勿論、ボスの言われる事もよくわかりますよ、でも。」


 と、愛子の気持ちがはっきりとしないので有る。


 「私はね、愛子が、とても大切なんだよ、出来れば、うん、そうだ、木田


に直接聞くよ、其れが、一番早い方法だ。」


 と、言った、シュルツの手は既に木田に連絡を入れために動いているので


有る。


 愛子は、驚き。


 「ボス、何を聞かれるのですか。」


 シュルツは、直ぐに返事もせず、愛子は、少し戸惑いを見せたので有る。


 「愛子の処遇ですよ、愛子は、総支部長だが、隆一の件に関しては、木田


が全権を持って要るんだよ。」


 「はい、其れは、私も、十分承知しておりますが。」


 その時、連絡が取れたので有る。


 「木田さんですか、シュルツですが。」


 木田は、愛子を隆一が訓練を終えた時点で帰国を要請するつもりだ。


 「ボス、急用でも。」


 「いや、別に急用でも無いんだがね、先程、日本の話を聞きましたよ。」


 「そうですか、実は、以前から動きがあったのですが、勿論、我々も察知


はしておりました。」


 「やはりね、其れで、その後のことだがね。」

 

 「はい、マスコミは、隆一君の居所を探しているのは確かです。


 其れで、愛子さんには帰国を少し遅らせて欲しいとお願いしたところなの


ですが。」


 「やはり、そうでしたか、其れで、話は変わるのだが、隆一の任務です


が。」


 「はい、私は、総理とも話をしたのですが、当分の間ですが、日本国内で


任務に就かせたいと考えております。


 彼の任務の詳細については、後日、連絡をいたしますが、隆一君には、パ


ートーナーが必要だと考えております。」


 シュルツの思ったとおりであった。


 「では、そのパートーナーは。」


 「勿論、愛子さんですが、愛子さんが拒否されると、考え直す必要が有り


ますので、私は、愛子さんに承諾して頂きたいのですが、愛子さんの立場上


の問題も有るとは思いますが。」


 シュルツの側には愛子も居るのだ。


 「だが、愛子自身、どんな任務なのか、まだ、知らないのでは。」


 「はい、私は、まだ、伝えておりませんが、この任務が日本国内で成功す


れば、何れ、各国でも採用されると思っております。」


 シュルツは、木田が考えて要る任務に興味が湧いてきたので有る。


 「木田、簡単に説明できないかね。」


 木田は、その後、1時間も掛けて説明したので有る。


 「木田、大変、素晴らしい作戦だと思うよ、其れで、どうしても、愛子が


必要に成ると言う事がわかったよ。」


 側に居た愛子は嬉しさのあまり、涙がほほを伝うので有る。


 「愛子、良かったね。」


 「有難う、木田さん。」


 木田は、愛子が、どれほど、隆一のことを思っているのか知っていたので


有る。


 「木田、この話だが、隆一は知って要るのか。」


 「いいえ、彼には、まだ伝えておりませんが。」


 「じゃ~、暫くは言わないほうがいいと思うよ。」


 「はい、私も、その様に思っていますので。」


 「隆一には、帰国してから説明しても遅くは無いと思うんだが。」


 「ボス、その方向で考えております。


 説明は電話よりも直接会って話をするほうが良いと思います。」


 「木田さん、私のことをそれ程までに心配してくださって、本当に有難


う。」


 「いいえ、私は、愛子さんだけの問題じゃないと思っています。


 隆一君だって、半年で愛子さんと別れることになれば、その後の任務に支


障をきたすと考えたんですよ、仮に、私が、隆一君の立場になれば、任務ど


ころの騒ぎじゃないですよ。」


 と、木田は、少し笑いながら言った、だが、木田は、隆一の任務を考えて


要ると言っているが、本心では無いと、愛子はわかったので有る。


 「木田、だがね、帰国のときなんだが、同時に帰国するのは、少し考えた


方がいいと思うんだがね。」


 「はい、それも、十分承知しております。


 愛子さんを知る者は日本では有りませんが、今、報道されている内容から


すれば、隆一君の顔はマスコミもわかっていると思いますので、此れから、


各報道機関とも話をし、隆一君の過去に付いては、一切、報道させない積も


りなんですが。」


 シュルツも、其れが最善だと考えたので有る。


 「木田、私も、その様に配慮して貰えるのは、私個人としても大変嬉しい


話だよ。」


 側では、愛子も頷いている。


 木田は、その問題が直ぐに収束するとは思っていないので有る。


 「ボス、私も、最善を尽くす積もりなんですが、何処で、マスコミが騒ぎ


出すかわかりませんので、私が、最終判断をしようと思って要るんです


が如何でしょうか。」


 シュルツも、木田の判断に任せることにしたので有る。


 「木田、私も其れで良いと思うんだよ。」


日本の内情は、日本に居る者が把握しているからで有る。


「それじゃ~、ボス、後日連絡を入れますので。」


「そうか、じゃ~、よろしくお願いしますよ。」


と、木田との話は終わり。


「愛子、本当に良かったなぁ~、これで、隆一と別れることもなくなったか


らね。」


 「はい、私も、本当に嬉しいです。」


 「愛子、木田は、私の考えとは別の任務を考えて要るんだ、だから、隆一


の勉強も本気に成って欲しいと。」


 「はい、此れからは、私自身が真剣に成ります。」


 「それでだよ、今までとは、取り組み方を考え無ければならないんだ


が。」


 「はい、問題は、化学の勉強なんです。」


 「えっ、化学って、隆一の任務では、化学の勉強が必要だと聞いてはいた


んだが。」


 「はい、ボスや木田の考えておられる以上に大変なんですよ。」


 愛子は、真剣に考えて要ると、シュルツは思ったので有る。


 「愛子、私も、隆一と同じでねぇ~。」


 「えっ、ボスも、勉強が。」


 「嫌いなんてもんじゃ~無かったんだよ、子供の頃、なんで、こんな勉強


が必要なんだと、思ったくらいなんだよ。」


 「私は、反対でしたね、でも、隆一さんの勉強は大変なんですよ、隆一さ


んの任務は、専門的な知識が必要になるんです。


 分析結果を公表した後で、実は、あの分析結果は間違っていましたと、簡


単に取り消す様な任務じゃないんです。」


 「だがね、分析するのは機械だと、木田が言ったと思うんだが。」


 「はい、確かに分析は機械が行なうんですが、全て機械の判断が正しいと


は限らないと、私は思って要るんです。


 事実、私も、何度か経験しています。


 隆一さんの任務は、土壌と、水質の分析が重要だと、木田も言っていまし


たので、その為には、化学の勉強が必要になるのです。」


 愛子は、子供の頃に経験しているので有る。

 

 その時、分析した専門家が間違った答えを出したので有る。


 その為に、多くの人達の治療が遅くれたことも確かなので有る。


 「其れで、愛子は、専門の知識が必要だと考えたのかね。」


 「はい、勿論、私の子供の頃とは大違いで、薬品の種類も多く成り、分析


する人達の負担は想像以上です。


 私は、現在の分析器を信用していないのでは有りません。


 でも、機械というのは、何時、故障するかわからないと思っているので


す。


 機械が故障しているから、分析は出来ませんとは言えない状況になった時


のために、化学の勉強と、人間の手で行なう分析ですね、之が出来れば、其


れに、例えば、相手がその分析は間違っていると言って、別の専門家に分析


を依頼する事だって有ると思うのです。


 その時に、この勉強したことが、本当の意味で役に立つと、私は、確信を


持って言えるのです。」


 愛子は、子供の頃に経験したのが切っ掛けで、大学では化学を専攻してい


た。


 大学を卒業すれば、専門の仕事にと思っていたが、其れが、今では全く別


の仕事に就いているのだ。


 「愛子、隆一のことだがね、射撃の訓練は何時まで続けるんだ。」


 シュルツは、ジムから報告で、隆一は、最高のスナイパーになれると聞い


て要るのだ。


 「私も、隆一さんの射撃訓練は終わっても良いと思って要るのですが、一


方で、化学の勉強だけと言うのは、隆一さんに大きなストレスが蓄積すると


思います。


 私もですが、ストレス解消のためにも、時々でも射撃を行なえば、少しは


気分転換になるのでは無いかと思います。」


 今日の愛子は、何時もと違う、其れは、木田が隆一と愛子の二人で任務に


就くのだと言ったからで、其れまでの、愛子は訓練の終了で、別れなければ


ならないと思っていた、其れが、今の熱弁になったのだろう。


 「じゃ~、愛子は、射撃の訓練と言うよりも、まぁ~、隆一のストレス解


消って話なんだね。」


 と、言った、シュルツは笑って許そうと思ったので有る。


 「はい、私は、隆一さんを信じています。


 私も、此れからの半年間は、気持ちを切り替え隆一さんの勉強の手伝いを


します。」


 愛子の決意は固いと、シュルツは感じたので有る。


 「だがね、愛子、隆一を余り追い込むので無いよ、隆一だってわかってい


ると思うからね。」


 「はい、其れは、私も十分承知しております。」


 「それじゃ~、頼みましたよ。」


 「はい、では、失礼します。」


 と、愛子は、部屋を出たが、愛子の目には涙が溢れ出たので有る。


 愛子は、此れから先、どの様な状況下になったとしても、隆一とは離れた


くは無い、その為に、今は、鬼になってでも隆一にしっかりと勉強してもら


うしか無いのだと思うので有る。


 愛子が考え事をしながら廊下を歩いていると。


 「之は、愛子では。」


 シュミットだった。


 「あっ、シュミット、何かあったの。」


 「いいえ、先程から、愛子の様子が何時もと違うので、気になったんです


がね、隆一のことを考えて要るんだね。」


 何故、シュミットに解ったのだろう、まだ、誰も知らないはずだと、愛子


は思うが。


 「隆一さんは射撃訓練なの。」


 と、愛子は、考えとは別の話をしたので有る。


 「隆一は、最高のスナイパーに成る事は確実ですよ。」


 シュミットもジムから報告を受けていたので有る。


 勿論だが、愛子も知って要る、シュミットは、愛子は別のことで悩んでい


ると思い。


 「愛子も、隆一の射撃の腕前は知って要るはずですね、愛子、何か別の問


題で考え事をしているのでは有りませんか。」


 愛子は、はっとした、自身は、誰にも気づかれない様にと話方も注意して


いるつもりだが、やはり、シュルツやシュミットには通じないので有る。


 「シュミット、実はね、隆一さんの勉強のことなの。」


 シュミットは二コリとして。


 「愛子は、その様な問題で悩んでいたのですか。」


 「ええ、私には、とても大事な問題なんです。」


 「うん、うん、其れは、私もわかりますよ、其れで、一体、何の勉強なの


ですか。」


 愛子の声に元気がなく、それでも、シュミットは真剣に聞いて要るのだ。


 「う~ん、其れが、化学なの。」

 

 「何だ、そんな事ですか。」


 と、シュミットは微笑んでいる。


 「えっ、シュミット、そんな事って言われますが、隆一さんは、化学が一


番の苦手なの、今日も、此れから、私が教えることになっているんです。」


 シュミットは、微笑み。


 「愛子、私の娘が化学の専門家なんですよ。」


 愛子は知らなかったので有る。


 「其れは、本当なの。」


 「勿論、本当ですよ、今日、此処に来る事になっているのですが、その娘


に相談すれば良いと思いますが。」


 之は、天の助けなのか、愛子の表情が一変したので有る。


 「有難う、シュミット、私、なんてお礼を言って良いかわからないわ。」


 愛子は、嬉しさのあまり、シュミットに抱きつくので有る。


 「有難う、有難う、本当に。」


 「愛子、いいんですよ。」


 シュミットも嬉しそうだ、愛子は、やっと、シュミットから離れ。


 「だけど、隆一様が、何と。」


 愛子も我に返り。


 「そうだったわ、私、隆一さんの気持ちを聞いて無かったのね。」


 シュミットは、苦笑いをして。


 「其れは困りましたねぇ~。」


 また、愛子の表情が少し沈んだので有る。


 「まぁ~、その前にジョアンナに相談しますからね、それから、私が、直


接、隆一様にお話しをしましょう、私のお任せ下さい。」


 シュミットは、愛子にウインクしたので、愛子の表情も戻ったので有る。


 其れは、この様なときには、シュミットは最高の人物なので有る。


 「そうですか、でも、私にも、何か出来る事があれば。」


 愛子は、相当責任を感じて要ると、シュミットは思ったので有る。


 その頃、何も知らない隆一は、射撃の訓練に励んでいるのだ。


 「隆一、君は、本当に大した男だよ。」


 ジムは、今の隆一には教える事も無いと思っているのだが。


 「ジム、僕は、まだ出来ないんだ。」


 「隆一、何をだよ、もう僕は、教える事が無いんだ。」


 「そうじゃ~無いんだ、僕が知りたいのは、あのボス狼をどの様にすれば


退治出来るか、其れが知りたいんだ。」


 隆一は、今でもあの狼のボスを殺す事に執着していると、ジムは思うのだ


が。


 「う~ん、其れは簡単じゃ~無いと思うんだ、でも、今の隆一であれば確


実に殺す事が出来ると思うよ。」


 「でも、僕は、まだ、自分の思ったところに命中させる事が出来て無いん


だ。」


 この男は、一体、何処に命中させる事が出来れば納得するんだ、既に、8


百メートル先の的に全てを命中させているでは無いか。


 「じゃ~、隆一の的は、一体、何処なんだ。」


 「ジム、僕はね、狼の眉間なんだ。」


 と、隆一は涼しい顔をして簡単に言ったのだが、ジムの驚きは普通では無


かった。


 「えっ、隆一、今、なんて言ったんだよ、8百メートル先の狼の眉間に狙


いをつけてるって言うのか。」


 隆一は涼しい顔で。


 「ええ、そうですよ、でも、本当に難しいですね、僅かに外れるんです


よ。」


 隆一は、二コリとして要るが、涼しい顔に隠された本当の隆一という男は


恐ろしい男だ、隆一が本者のスナイパーにでもなれば、一キロくらいの距離


ならば確実に相手は殺されるだろう、だが、今の隆一は、狼のボスを殺すだ


けが頭の中に有るのだ、だが、本当に隆一は、何も知らないのだろうか、普


通の男なら、これほど、射撃訓練を必死に成る事は無い。


だが、隆一だけは違う、世界中で我々の組織の実態を知る者はいない、だ


が、若しかして、隆一は、別の組織の人間なのか、だが、今、その様な組織


が存在しているとは聞いた事が無い、だとすると、本当に、隆一は、まった


くの素人なのか、ジムの頭の中は混乱してきたので有る。


 「だけど、隆一、本当なんだよ、今の隆一は世界一だよ、そんな、隆一


に、僕が何を教える事が出来るんだ。」


 ジムは、真剣な顔で言うのだが。


 「だって、ジムは、誰もが認めているんですよ、この牧場じゃ~ナンバー


1だって、僕は、ジムが言うのが本当だったら、何故、狼の眉間に命中させ


る事が出来ないのです。


 僕は、世界一より、この牧場で、ボスの狼を仕留めたい、之が、本当の気


持ちなんですよ。」


 今の話が本当だとすれば。


 「ジム、本当なんですよ。」


 「隆一、何故なんだ、何故、其処まで、隆一は狼のボスを仕留める事に執


着するんだ。」


 その時、隆一の目がきらりと光った。


 「だって、この牧場のジムや加藤さんも出来なかったボス狼の退治です


よ、僕が、仕留めれば、愛子が一番喜ぶと思うんですよ、それにね、ボスが


いなくなれば、狼だってバラバラになると思ったんです。


 そうなれば、牛が襲われる回数も減るんじゃ無いかと思ったんです。


 本当に、僕は、バカなことを考えました、済みません。」


と、隆一は、舌をぺロリと出し、頭を下げるので有る。


 隆一の話は、一体、何処までが本当なのか、ジムの頭は更に混乱するので


有る。


 「隆一、別に謝ることじゃないよ。」


 確かに、狼のボスを仕留めるのに何年も掛かっている、それこそ、隆一が


仕留めたなれば、誰もが、隆一を認め、ジムの立場は無くなるのだが、そん


な小さな問題では無いと、ジムは考えて要るので有る。


 「隆一、君の腕前だったら、確実に仕留めることが出来るよ、是非とも、


狼のボスを仕留めて欲しいんだ。」


 ジムは、本当の気持ちなのか、だが、心の中では、隆一に仕留めて欲しく


は無いと、こんな素人に狼のボスを仕留められたのであれば、自分達のプラ


イドに傷が付くと。


 「でもねぇ~、やはり、ジムや加藤さんが仕留めるべきですね、僕の様な


素人が狼のボスを仕留めたんじゃ~、それこそ、前の話じゃ~無いですが、


僕は、誰かに撃たれますよ。」


 と、隆一は、笑いながら言うのだが、本心なのか、それとも。


 「じゃ~、何か、隆一がボスを仕留めると、牧場の誰かに撃たれるって


か、隆一、この牧場の人達は、そんなことぐらいで怒りはしないよ。」


 と、ジムも笑い、隆一が冗談を言ってるのをわかっているのだ。


 「隆一、其れで、何時まで射撃の訓練を続けるんだ。」


 と、ジムは心配するのだが、隆一は、射撃を楽しんでいるのだ。


 「ジム、僕は、納得したいんだ、だから、後、暫くは続けさせて欲しいん


ですよ。」


 その頃、城には、シュミットの娘、ジョアンナが着いたので有る。


 「やぁ~、ジョアンナ、久し振りだが、如何したんだ。」


 「うん、パパの顔が見たく成ったのよ。」


 シュミットも満更では無かったので有る。


 「本当か。」


 ジョアンナは、くすっと笑い。


 「ねぇ~、パパ、隆一さんの訓練は、まだ続いているの。」


 何時もは、隆一の事など気にもしないジョアンナだが、何故、今日に限っ


て聞くんだと、シュミットは思ったが、ジョアンナが気になるのならば話は


早いと。


 「ジョアンナ、実は、大事な話しが有るんだが。」


 「パパ、一体、如何したの、突然に、何時ものパパじゃないわよ。」


 ジョアンナが心配するほど、シュミットは真剣な顔付きなのだ。


 「うん、実はね、隆一君のことなんだが。」


 「えっ、隆一さんに何かあったの。」


 と、ジョアンナも少し心配するので有る。


 側では、愛子も心配そうな顔をして要る。


 「隆一君の訓練だが、射撃だけじゃ~無いんだよ。」


 「えっ、まだ、他にも有るの。」


 と、ジョアンナも少し心配になったので有る。


 「ジョアンナ、隆一さんは、化学が苦手なの、今も特訓しているんだけ


ど。」


 「ねぇ~、愛子さん、何を、特訓しているの。」


 「うん、一番の問題が化学記号なのよ、その記号を知らないと。」


 「愛子さん、簡単に化学記号を覚えるって言うけれど、普通の人間じゃ~


不可能なのよ、だって。」


「えっ、何故なのよ。」


と、愛子は、驚きよりも、何故、覚える事が不可能なのか。


「愛子さん、化学記号って、いったい、どれほど有るのか知ってるの。」


 愛子は、簡単に考えていたのだ、其れは、中学か高校時代を思い出したか


らで有る。


 「う~ん、私も知らないんだけど、多くたって二千くらいじゃ~無い


の。」


 ジョアンナは、大袈裟に両手を広げ。


 「愛子さん、其れはね、一番、良く知られて要る記号なのよ、実際はね、


一万種類とも、二万種類とも言われているのよ、私だって、知って要るのは


数十種類だと思うの、正か、愛子さん、その化学記号を隆一さんに覚えて欲


しいって言ったんじゃ無いでしょうね。」


 愛子は、驚きの表情で有る。


 「え~、だって、記号を覚えるのが最初なんでしょう。」


 ジョアンナは呆れている。


 「うん、確かにね、だけど、愛子さん、記号を覚えても何の意味も無いの


よ、だって、検査分析するのは、全て機器なのよ、今頃の専門家の仕事って


のはね、機器が分析した書式を正式な文書にして提出するのが仕事なの。」


 「でも、方程式だって。」


 「今頃、そんな事をする人なんていないわよ。」


 「だって、隆一さんの仕事って言うか、任務はね。」


 「ええ、知ってるわよ、じゃ~、愛子さん、聞くけど、今の分析機器なん


だけど、愛子さんや隆一さんの生まれ育った日本の機器が最高水準の機器だ


って事を知ってるの。」


 「ええ、何度か、テレビで見た事は有るけれど、そんなに凄いの。」


 「愛子さんは、日本のことを知らないのね、だったら、少し教えて上げる


わよ、日本の技術はね、世界一と言っても過言じゃないのよ、どの国だって


自国の製品を使いたいのよ、だけど、日本製って、故障も少ないし、性能


は、今の世界じゃ、間違いなくナンバー1よ。」


 「でも、他の国の放送を見ると、自国の製品だって書いて有るのよ。」


 「愛子さん、数十年も前の話なんだけど、ある国外の時計メーカーがね、


テレビに映ると駄目だって言うので、社長や多くの社員が使ってる日本の時


計の文字盤だけを変え、写ったことも有るのよ。」


 「えっ、それって、全部日本製の時計なの。」


 「ええ、そうよ、一時期だけど、安価な製品が出回ったことがあったの、


でもね、今では、どの国も安価な機器は使用しないのよ、だって、直ぐに故


障して、使い物にならないんだから。」


 「其れじゃ~、ジョアンナが使っている機器もなの。」


 「勿論、日本製よ、だって故障は無いし、それに、早くて正確なのよ。」


愛子は、日本製の機器が最高だとはじめて聞かされたので有る。


 「其れじゃ~、隆一さんは、別に勉強する必要は無いの。」


 「う~ん、その判断は、私には出来ないわよ、だけど、機器の操作や分析


によっては機器じゃなくて、自分自身で行う時も有るから、普段使用する薬


品の事は知識として覚えるほうが良いと思うんだけど。」


 「じゃ~、ジョアンナ、隆一さんに普段行なって要る機器の操作方法も含


めた最低限必要な事を教えて欲しいんだけど、いいかしら。」


 其れならば、数日で終わると愛子は思ったのだが。


 「ええ、良いわよ、でも、此処からは5時間も掛かるのよ。」


 シュミットは、色々と考えていたのだ、シュミットは、この城では、殆ど


の物事に関しても特別にシュルツの許可を取る必要の無い人物なので有る。

 

 「ジョアンナ、明日の朝、ヘリで行けばいいんだよ、それだったら直ぐに


着くはずだ。」


 「パパ、いいの。」


 「うん、私から連絡を置くからね、あっ、大事な事を忘れていたよ。」


 「えっ、何が。」


 愛子も隆一に話すのを忘れているのだ。


 「愛子も、一番大事な隆一が知らないとは、其れが、一番問題ですよ。」


 「私から連絡を入れておくからね。」


 「あっ、そうか、私って本当にバカね、一番、大切な隆一さんに何も話し


て無かったんだから、もう~、私って本当におバカなんだから。」


 と、愛子は、舌をぺロット出し、ジョアンナは笑い。


 「なんて、本当におバカさんな、愛子だこと。」


 愛子も苦笑いするのだ。


 シュミットも、笑いながら頷くので有る。


 「まぁ~、愛子、何事もだが、物事は、何処で、どの様になるかわからな


いって話しですよ。」


 「はい、私も、良くわかりました。


 此れからは、全体を見る事も必要だってことが、其れに、何が、起きるか


わからないってこともですね。」


 ジョアンナも、久し振りに隆一の顔を見る事に。


 「愛子さん、でも、機器の操作って、簡単だけど、簡単じゃ無いのよ。」


 「え~、そんなに難しいの。」


 愛子は、機器の操作は簡単に出来ると考えていたので有る。


 「そうじゃ無いのよ、分析する物によっては、何種類も機器が必要になる


のよ、だから、隆一さんを暫く、私が預かってもいいのよ。」


 愛子の心は穏やかでは無かった、ジョアンナは美人なので、隆一に正かと


思うのだが。


 「ジョアンナ、実はね、愛子も一緒に覚える必要が有るんだ。」


 「えっ、だって、勉強するのは隆一さんなんでしょう、愛子さんには、別


の任務に就かれるんじゃ無いの。」


 と、ジョアンナは不満な顔つきになったのだ、ジョアンナが言うのも当然


で有る。


 確かに、隆一は愛子の主人だが、この組織では、隆一は全くの新人なの


だ、その新人が、会社で言えば重役クラスの人間と、果たして同じ土俵上で


仕事が果たせる事が出来るのか。


 「ジョアンナ、之はね、私の想像ですがね、愛子と隆一はチームを組むと


思うんだ。」


 「えっ。」

 

と、愛子は、大きな叫び声を上げたのである。


それと言うのも、愛子は思いもしなかったシュミットの言葉だった。


 「ねぇ~、パパ、なんでそんな事を言うのよ。」


 ジョアンナも、何か、裏に有ると思ったので有る。


 「そうだなぁ~、之はね、私の勘なんだが、今まで、多くのスナイパーを


訓練してきたんだがね、今回の様に特例は無かったと思うんだ、それに、半


年も前に来た日本人は、銃とは、全く関係の無い民間人だよ、愛子も、今ま


で、日本人を送り込んできたが、全員が、元警察官か元自衛隊員なんだよ、


勿論、彼らも、今は、世界中で活躍しているがね、全員がスナイパー専門だ


ったので、この城でも、射撃訓練だけを行なったんだ。」


 側では、ジョアンナもうなずいているが、愛子は、じ~っと、シュミット


を見ている。


 「其れが、今回だけは特例だ、射撃訓練は全てクリアするだろう、今まで


ならば、この時点で合格だ、其れが化学の勉強も必要だって言うと、誰だっ


て考えるのが普通なんだよ。」


 「じゃ~、パパは、愛子さんも勉強が必要だって。」


 「ジョアンナ、パパは、そんな事は言って無いんだ、愛子が隆一に教えて


いると言うのが勉強になっているんだ。」


 「それじゃ~、今までは、愛子さんが隆一さんに教えていたの。」


 愛子は頷くが、表情は穏やかでは無いのだ。


 「私はね、今まで、自分が正しいと思って隆一さんに。」


 ジョアンナは、愛子の口を塞ぎ。


 「いいのよ、愛子さん、此れからは、私が愛子さんの代わりになるわ


よ。」


 「本当にいいの。」


 ジョアンナは、微笑んで。


 「私が、特別な方法を考えるからね、愛子さん、私に任せて欲しいのよ、


隆一さんは、必ず、出来ると信じて欲しいのよ、今は、それだけなの。」


 ジョアンナは、愛子にウインクしたので有る。


 「じゃ~、パパ、私は上層部に連絡を入れたいのでね。」


 と、ジョアンナは別の部屋に向かうので有る。


 シュミットも連絡を入れていた。


 「シュミットですが、隆一に話が有るんだ、其れで、直ぐにも戻して欲し


いんだがね。」


 「わかりました、じゃ~直ぐに。」


 と、ジムは何も聞かないので有る。


 その一時間後、隆一が戻って着たので有る。


 「シュミットさん、僕に、何かお話が有るって言われましたんですが。」


 シュミットはニコットして。


 「そうなんですよ、まぁ~座って下さい。」


 「はい。」


 と、隆一は何も知らずに座るので有る。


 「隆一様、今回の射撃訓練は如何ででしたか。」


 「はい、一応、今のところはですが、其れが何か。」


 と、隆一は、射撃訓練の話だと思って要るのだが。


 「実はね、射撃とは全く関係の無い化学の話なんですがね。」


 「えっ、化学って。」


 と、隆一の顔が曇ったので有る。


 毎日、愛子からは励まされているのだが、実は、愛子の教え方はとんでも


なく厳しいのだ、あの優しい愛子が鬼のように思えるほどで有る。


 「隆一様、私も、愛子様から聞かされておりますが、実は、私の娘が化学


専門の仕事に就いているんですよ。」


 「えっ、だって、娘さんは、此処に居られないと聞いておりますが。」


 「ええ、それがね、今日、突然やってきましたので、本当なんですよ。」


 「でも、何か作り話のように思えるんですが、だけど、僕は別にそんな事


はどうでもいいんですよ、其れよりも、僕の化学の先生は。」


 隆一は、愛子がいないほうが不思議だとでも言っている様である。


 「愛子様は、今、ジョアンナと話をしておられますので、隆一様が戻って


こられましたので、直ぐに来られると思いますよ。」


 「はい、待っています。」


 と、その時、愛子とジョアンナが着たので有る。


 「久し振りですねぇ~、隆一さん。」


 と、ジョアンナの瞳がキラットしたのを、愛子は見逃さなかったのだ。


 「本当に久し振りですねぇ~、さっき、シュミットさんから聞きました


が、今日、来られたと。」


 と、隆一は気づいてはいない。


 「ねぇ~、隆一さん、さっきまで、ジョアンナと話をしていたのよ。」


 「其れは、僕のことで。」


 「そうなのよ、ジョアンナの話じゃ。」


 と、先に言い掛けたとき。


 「愛子さん、その後は、私が話をするわね。」


 と、言って、ジョアンナは、此れから先の勉強方法を話し始めたのだ。


 ジョアンナの話は30分ほどで終わり。


 「わかりました、じゃ~、明日の朝早く出発するのですね。」


 と、隆一は、一応、納得したので有る。


 「有難う、隆一さんもわかってくれて、私も、嬉しいのよ。」


 と、愛子は、嬉し涙を流している。


 「じゃ~、ね、明日からは、私が先生よ、隆一さん覚悟をしてね。」


 と、ジョアンナは、隆一にウインクするのだ。


 「それじゃ~、僕は部屋に戻って明日からの準備に入りますので、失礼し


ます。」


 と、二人は、部屋へと戻って行くので有る。


 翌朝、早朝の5時には、隆一も愛子も起きていたのだ。


 「ねぇ~、隆一さん。」


 「うん。」


 「御免なさいね、私が勝手に決めて。」


 「いいんだ、僕だって、君の時には真剣に勉強をして無かったからね。」


 隆一は、愛子を責める気持ちは無かったので有る。


 自身が本気に成っていなかったのが原因だとわかっていたのだ。


 「愛子も、辛かったと思うんだ、今度は、本気で勉強するよ。」


 「有難う、じゃ~、食堂に行く。」


 その頃、シュミットもジョアンナも食堂で朝食をとっていたので有る。


 「お早う御座います。」


 と、隆一も愛子もにこやかな顔で食堂に入ってきたので有る。


 「今日は、特別に隆一さんのために作ったのよ。」


 と、ジョアンナは、微笑みながら、隆一の前に出した、其れは、今、でき


たばかりの大きなソーセージとトーストで有る。


 「わぁ~、凄いなぁ~、このソーセージが一番好きなんですよ。」


 と、隆一は、子供の様な顔になっている。


 「愛子さんにも、特別製のソーセージよ、それと、トーストもね。」


 「有難う、ジョアンナ、じゃ~、頂くわ。」


 と。愛子も二コ二コとしている、だが、隆一は必死になって食べている。


 30分後。


 「ジョアンナさん、本当に美味しい朝食でした。


 でも、これで、当分お預けになりますよね、あちらに着いたら、よろしく


お願いします。」


 と、隆一は、ジョアンナに頭を下げるので有る。


 何時もの、隆一の顔付きでは無い、今度は、真剣になっていると、愛子は


感じたので有る。


 「隆一様、愛子様、では、今から30分後に出発しますので、準備のほう


を。」


 「はい、わかりました。


 では、30分後に。」


 隆一と愛子は部屋に戻り、其れから30分後、裏のヘリポートから3人を


乗せ、ジョアンナの勤務する施設へと飛び立ったので有る。


 隆一も愛子も数日間の予定だと考えていたのだ、3人を乗せたヘリコプタ


ーは一時間後、ジョアンナの勤務するビルのヘリポートに到着した。


 3人は降りて、ジョアンナの勤務するラボへと向かったので有る。


 隆一は、外国に行く事もはじめてだったが、まさか、政府機関の入るビル


に、それも、ジョアンナの勤務するラボに行く事などは最初は想像もしなか


ったので有る。


 ジョアンナに連れられ数ヶ所のセキュリチィーのチェックを受け、要約、


ジョアンナのラボへと到着したのだ。


 「わぁ~、物凄い設備ですねぇ~、僕がテレビで見たとおりですよ。」


 と、隆一は、子供のように驚いている。


 「さぁ~、二人とも座って、コーヒーを入れますからね。」


 と、ジョアンナは、優しい目で。


 「私も手伝うわ。」


 と、愛子も立つので有る。


 隆一は、興味津々だと言う顔で見渡している。


 「こんなにも、機械が有るんだなぁ~。」


 と、目を丸くしているのだ。


 「さぁ~、出来たわよ。」


 と、ジョアンナと愛子はコーヒーを置き、隆一は、早速飲んでいるが、目


だけは機械を見ているのだ。


 「隆一さん、どう、之が、色々な物質を分析する機器なの。」


 「でも、僕が想像していた以上よりも小型なんですねぇ~。」


 「そうなの、みんな同じ事を言うのよ、この機器も見るまでは大きな機械


だと思っているのよ、でもね、この機器でも既に古いのよ。」


 「へ~、そんなぁ~、僕には最新式の機械の様に見えるんですが。」


 ジョアンナは、二コリとして。


 「隆一さん、この機器もなんだけど、機器類、特に超精密機器はね世界中


で、毎日と言ってもいいほど、新しい機種が発表されているのよ。」


 「え~、毎日ですか、それじゃ~、ジョアンナさんの機械も新しくなるん


ですか。」


 隆一は、それ程、新しい機器が毎日売り出されて要るとは知らなかったの


で有る。


 「隆一さん、此処に有る機器なんだけど、どれも高価な機器ばかりなの


よ。」


 隆一は、高価だと言っても、それ程は高くは無いと、其れは、全てが小型


なので大量に生産されて要ると考えたのだ。


 「でも、大量生産すれば安くなると思うんですが。」


 「う~ん、私は、何台生産されているのか知らないの、だけどね、私達が


使う機器に一番大切な事って何か知ってる。」


 隆一は首をかしげ。


 「やはり、正確さだと思いますが。」


 ジョアンナは、二コリとして。

 

 「そうなの、一番大切な事は正確だって事なのよ、それと、次には。」


 隆一はわからなかったので有る。


 「隆一さん、正確な事も大事なんだけど、故障もしないってことも大事な


のよ。」


 愛子は、側で静かに聞いて要る。


 「へ~、そうなんですか、故障しないって事がねぇ~。」


 「そうなのよ、検査中に故障が起きれば、どうなると思う。」


 「其れは、大変ですよ、だって、機械の修理が終わるまでは検査も出来な


いってことになるんでしょう。」


 「そうなのよ、私はね、正確な事も大事なんだけど、故障しないってこと


が一番だと思うのよ。」


 隆一は、頷くので有る。


 「其れにね、隆一さん、此処に有る機器はね、全て日本製なのよ。」


 「へぇ~、本当なんですか、でも、何故、この国の機械を使わないんです


か。」


 「うん、私はね、別に、我が国の機器を信用して無いわけじゃ無いのよ、


でもね、一年に一度でも故障がよ、その故障が大きな事件の証拠になる様な


物質の検査中に発生したと思って欲しいの、その機器の修理に数週間も掛か


ってしまい物質が何かの拍子で変化し、別の物質になったとしたら、一体、


その事件の証拠となる物質はどうなると思う、其れは、大変な事に成ってし


まうのよ。」


 「ジョアンナさん、僕も少しですけどわかりましたよ、正確な事も大事だ


けど、一番は、やはり故障しないって事なんですよね。」


 「うん、私は、そう思っているのよ、此処の機器は過去に一度も故障が無


いのよ。」


 「へぇ~、素晴らしいですね、じゃ~、ジョアンナさんは、この機械を信


頼されているんですね。」


 「勿論よ、だけど、隆一さん、此処に有る機器は超精密な機器ばかりな


の、だからね、メンテナンスも大切なのよ。」


 「でも、一体、誰が、そのメンテナンスをするんですか。」


 「現地にも優秀な人材が居るけど、やはり、この機器を製造した会社の技


術屋さんね、彼らは、数ヶ月に一度は検査ために来られるのよ。」


 「でも、何も故障して無いんでしょう。」


 「わたしも、はじめの頃は同じ様に思ったの、だけど、あの人達はね、故


障してからでは遅いと言うのよ、その為にも早めの検査が必要だと。」


 「でも、本当に大したもんですね、僕も、改めて見直しましたよ、其れ


で、ジョアンナさん、この機械で分析するんですか。」


 隆一は、早く終わりたいと思っている、早速、作業服に着替え実地訓練に


入るので有る。


 「じゃ~、隆一さん始めるわよ。」


 と、ジョアンナは微笑み、ラボに有る機器の説明に入るので有る。


 隆一の目は真剣そのもので、手には、ジョアンナの説明した内容を必死で


メモを取るノートが、今まで何人もの人達がこのラボに来て説明を受けた


が、隆一のように必死になっているのをはじめて見たので有る。


 最初の機器の説明だけでも1時間を掛けたのだ。


 「ねぇ~、隆一さん、一休みしない。」


 「僕は、別に続けても宜しいですが。」


 と、言ったが、ジョアンナは少し疲れている様子だと感じて。


 「わかりました、じゃ~、僕は、今の間にメモした内容を整理しますか


ら。」


 椅子に座り、今までとは人が違ったようにメモを整理して要る。


 隆一と言う男の集中力は並では無い、この隆一に全てを教えると言った


が、果たして自分の体力が何処まで続くのかと考えるジョアンナなのだ。


 「ジョアンナ、私、コーヒーを入れてくるわね。」


 と、愛子も少し疲れた表情をして要る。


 「有難う、愛子さん、私はブラックにしてね。」


 「隆一さん、コーヒーは。」


 だが、隆一は返事もしない、それ程にも集中しているので有る。


 愛子は、何も言わず、三人分のコーヒーを入れ、テーブルの上に置くと。


 「有難う、愛子、さっき、何か言ったのか。」


 「うう~ん、いいのよ、私の独り言なんだから。」


 「ふ~ん、わかったよ。」


 と、隆一は、再びメモの整理を始めるので有る。


 30分ほどしてメモの整理が終わったのか。


 「ジョアンナ先生、続きをはじめていただいてもよろしいですが。」


 「その前に、隆一さん、少し休んだら、先はまだ長いんだから。」


 「はい、わかりました、じゃ~、コーヒーを頂きます。」


 隆一は、コーヒーを一口飲み。


 「あ~ぁ、美味しいよ。」


 「隆一さん、煙草はいいの。」


 「いや、いいよ、別に気にもならないから。」


 と、また、一口飲み。


 「愛子、僕はね、驚いているんだよ、だってね、こんな小さな機器が試験


管に入ったほんの少しの分量でも膨大な物質を探し出すんだ、日本でも、同


じ様なラボが有るんだろうなって考えていたんだ。」


 「私は、まだ何も知らないのよ、でも、きっと同じ機器が有ると思うの


よ。」


 ジョアンナもうなずき。


 「多分、これ以上の最新型の機器が有ると思うのよ。」


 「じゃ~、機器の取り扱い方も変わってくるんですか。」


 「私は、基本は変わらないと思うの、だけど、此れから先も機器の性能は


上がって行く事は間違いは無いと思うのよ、でもね、その機器を操作するの


が大変なのよ。」


 「そんなに難しいんですか。」


 「うん、機器も機械も性能は上がるけど、扱うのは人間なのよ、人間は機


械じゃないから機械の性能に追いつけないのよ、だって、そうでしょう、大


昔にこんな装置なんて無かったのよ、その頃と、今とは何が違うって、其れ


は、技術が大変な勢いで進んで行くんだけど、其れを作ったのが人間なの、


一部の、それも最高の頭脳を持った人がね。」


 「でも、なんで、こんなに大量の化学物質ができたんですか。」


 「隆一さん、其処が問題なのよ、人間はね、自分達の利益のために、訳の


わからない物質を作りだしてきたのよ、その中には、劇薬や毒薬も有るの


よ、今度はね、其れを分解する為の薬品を開発する事になるのよ、それに


ね、分解する薬品をまた分解する薬品が次々と開発されていくのよ。」


 「それじゃ~、同じ事の繰り返しじゃ無いですか。」


 「ほんと、そうなのよ、でもね、全部がそうじゃ無いのよ、人間が未知の


病気に成った、この病気を治すために開発された薬品だって有るのよ。」


 隆一は、機器の説明も大切だが、何故、大量の薬品、その中には劇薬も毒


薬も含まれている事に気がついたので有る。


 「今、有る劇薬や毒薬なんですが。」


 「それも同じなのよ、薬によってはね少量なんだけど劇薬を使う事も有る


のよ。」


 「えっ、劇薬なのにですか。」


 「其れは殆ど無いんだけどね、例えば、モルヒネなんだけど、あの薬は常


用作用が有るのよ、隆一さん、薬の使用方法で本当の薬にもなるし、常用し


たために毒薬にもなる人達もいるのよ。」


 「でもね、僕もテレビの映画で見た事が有るんだけど、少量でも大量の人達を殺せる


薬も有るって聞いた事が有るんだけど。」


 「うん、それも、さっき渡した本にもノートに書いて有るわよ、特にこの


ノートだけど、他人には絶対に見せないでね。」


 「じゃ~、専門的な知識を持った人が読むと。」


 「う~ん、その人が善良な人間だったらと思うでしょう、でもね、善良な


人間ほど、何時、豹変するかわからないのよ、だって、薬品や物によって


は、混ぜ合わせ方によっては考えの及ばない薬品に成る事も有るのよ。」


 「えっ、じゃ~、使用方法を間違うと大変な事になるってことなんです


か。」


 「うん、そうなのよ、でもね、自然界だって同じなのよ、普段は問題の無


い薬が捨てられ、その草地や山に有る物質を混ぜ合わさったことが原因で取


り返しのつかない事態に成る事だって有るのよ。」


 そんな事が現実に起こるのだろうか、と、愛子は考えて要るのだが、子供


の頃を思い出し、そうだ、あの時は何も知らなかったので有る。


 この世の中、何が原因で大変な事態を招くのかわからないので有る。


 「隆一さん、このノートを暗記するくらいの気持ちでいてね。」


 「わかりましたよ、僕も、此れからは必死になって覚えて行きますの


で。」


 「それじゃ~、機器の説明に入りましょうか。」


 「はい、わかりました。」


 その後、ジョアンナは、時間の経過も忘れ、隆一に説明するので有る。


 隆一も、真剣に聞き、ノートに書き写す、愛子も途中からは真剣になって


行くので有る。


 何時間過ぎたのだろうか。


 「わぁ~、もうこんな時間になってしまったわ。」


 隆一も時計を見ると、夜の8時を過ぎているので有る。


 「隆一さん、愛子さん、今日は終わりましょうか。」


 愛子は隆一の顔を見た。


 「そうですね、今からでも食事に行きませんか。」


 愛子も安心したのか。


 「そうね、私も、すっかり時間を忘れてしまって、ねぇ~、食事に行きま


しょうよ。」


 「そうですね。」


 「其れじゃ~、私が時々行くお店が有るのよ。」


 「いいわよ、私は、今、何でもいいから食べたいのよ。」


 愛子も相当疲れている様子だ、それから、三人が行ったのは日本料理店で


有る。


 「え~、ジョアンナさんが日本料理を食べるとは思わなかったですね。」


 「うん、でもね、このお店なんだけど、店主が日本人なのよ。」


 「へ~、其れは珍しいなぁ~、だって、話に聞いた事が有るんだけど、看


板だけを日本料理って書いて有るんだけど、中に入ると、何か変な感じがす


る店が多いって。」


 「うう~ん、この店主は日本で長い事お店を開いていたんですって、だか


ら、私は本物だと思ってるのよ。」


 「でも、何故、日本料理を。」


 隆一は、ジョアンナが日本料理が好きになったことに何か不思議なものを


感じたので有る。


 「私の生活って、時間が有る様で無いのよ、だから、何時も外食なんだけ


ど、何時も自分の好物ばかりを食べるでしょう、だから、たまにだけど此処


に来るのよ。」


 三人は好物を頼むのだが、隆一は久し振りにお造りを注文したので有る。


 其れに、日本酒も久し振りで有る。


 「あ~ぁ、美味しいよ、日本に居た頃には、日本酒がこんなに美味しいと


は思わなかったんだけど。」


 「そうね、私も、本当に久し振りなのよ。」


 と、愛子の顔が少し赤く染まっているし、隣のジョアンナも同じだった。


 薄く染まった美人を他の客達はうらやましそうに見ているので有る。


 2時間ほどの食事を堪能した三人は表に出。


 「そうだ、愛子、今日泊まるところを。」


 「そうだったわね、私もすっかり忘れていたわ。」


 「隆一さんも、愛子さんも心配は無いのよ、パパが手配しているから。」


 「わぁ~良かったよ。」


 「じゃ~行きましょうか。」


 と、ジョアンナはタクシーを止め、三人はホテルに向かったので有る。


 そのホテルはジョアンナも使っているホテルなのか、フロント係りとも顔


見知りの様子だった。


 ジョアンナは二階に、隆一と愛子は三階の部屋に入ったので有る。


 「愛子、今日は有難う。」


 と、言った隆一は、突然、愛子を襲うような様子だった、愛子も何故か、


今日は何時もより燃えているのか。


 隆一は、何度も求め、愛子も其れを受け入れるので有る。


 明くる朝、愛子の携帯が鳴ったが、愛子はまだ眠っている。


 「もし、もし。」


 「あっ、隆一さん、ジョアンナよ、もう起きたの。」


 「うん、僕はね、だけど、愛子はまだ眠っているんだ。」


 「そうなの、じゃ~、二人で朝食に行かない。」


 「わかりました、じゃ~、10分後に。」


 「じゃ~ね。」


 と、ジョアンナの声は、何故か弾んでいるのだ、10分後、隆一は下の食


堂に入った、既にジョアンナは座っていた。


 「お早う。」


 と、ジョアンナはブルーの瞳を輝せている。


 「お早う御座います。」


 隆一は、まだ眠気が残っている様子だったが。


 「ねぇ~、隆一さん。」


 と、意味有りげな言い方なのだが、何故か、隆一の返事が無い。


 「ねぇ~、隆一さんって。」


 と、それでも返事が無い、隆一は何かを考えて要る様子で有る。


 「ねぇ~。」


 と、言った時。


 「お早う。」


 っと、声が聞えた、愛子の声だった。


 「あっ、お早う。」


 と、ジョアンナは、何時もの顔になっている。

 

 前に座っている隆一は気がつかない様子で有る。


 「隆一さん、お早う。」


 と、愛子は隆一の耳元で言った、すると。


 「えっ、あっ、愛子か、お早う~。」


 「ねぇ、隆一さん、どうしたのよ。」


 「いや~、何でも無いよ、少し考え事をしてただけなんだ。」


 その時、食事が運ばれてきた。


 「ジョアンナさん、今日は何を。」


 「う~ん、そうねぇ~、昨日、一応の説明は終わったので、今日は、復習


したいと思うんだけど。」


 「復習って。」


 「うん、そうなのよ、私は、隆一さんの仕事の内容は知らないけど、分析


器の中でも、一番、良く使われている。」


 「あ~、最初の機器のことなんだ、でも、あの機器は。」


 「そうなのよ、あの機器が水質検査でも一番良く使用されるのよ。」


 「でも、あの分析器の使用方法は簡単だって、昨日聞いたけど。」


 愛子は、二人の会話を聞きながら別の事を考えていたのだ。


 「隆一さん、その話は後でも出来るでしょうよ、先に食べましょうよ。」


 と、ジョアンナはコーヒーを飲んだので有る。


 その後、30分ほどで3人は食事を終わり、ジョアンナのラボへと向かっ


たのだが、隆一は、朝から何かを考えて要る、一体、何を考えて要るのだろ


うと、ジョアンナは車中で思ったので有る。


 3人は、車中では余り会話する事もなく、ジョアンナのラボに着いた。


 「さぁ~、隆一さん、今日は、昨日の復習よ。」


 と、ジョアンナは笑顔で言ったが。


 「わかりました。」


 と、その後、隆一は、昨日、ジョアンナから説明を受けた機器の使用方法


から、検査方法までを話すので有るが、側では、愛子が感心しているのだ、


昨日聞いた説明を隆一は殆ど覚えているのだ。


 隆一が、これほどの集中力を持っていたのだろうかと。


 「素晴らしいわよ、今まで、何人もの人に説明したけど、隆一さんの記憶


力って本当に素晴らしいわよ。」


 と、ジョアンナも感心しているのだ。


 「隆一さん、じゃ~、今からは別の勉強って言うか、昨日渡したノート


は。」


 「持っています。」


 「じゃ~、そのノートに書いて有る内容を説明するわね。」


 と、ジョアンナは、その後、数時間を掛けたので有る。


 其れは、昼を過ぎた頃まで続き。


 「ごめんなさい、お昼を過ぎて。」


 「いや~、いいんですよ。」


 と、隆一は、続けてもいいと思ったのだが。


 「隆一さん、お昼にしましょうよ。」


 と、愛子は、休みを取る事にしたので有る。


 3人は、昼食も早々に終わり、ラボに戻った後、隆一と愛子は、ジョアン


ナの説明を聞くので有る。


 その後の説明は夕方まで続き。


 「隆一さん、私の説明はこれで終わりよ、そのノートは、隆一さんの仕事


の役に立つと思うわよ。」


 「ジョアンナさん、ありがとう。」


 と、愛子も、これで終わったと思うので有る。


 「隆一さん、分析で一番大切なものって、何か知ってる。」


 突然、話しが昨日に戻ったので有る。


 「一番に正確な事、それと、機器が故障しないことだと思います。」


 「素晴らしいわよ、それだけは忘れないで欲しいのよ、それとだけど、隆


一さんも、愛子さんも、このラボを見て欲しいのよ。」


 実は、ジョアンナは、機器の故障で何度も苦しい状況に入ったので有る。


 「うん、僕も、メンテナンスは本当に大切だと思っています。


 以前の工場でもですが、会社は、機械のメンテナンスを年に一度か二度は


行なっていたと聞いています。」


 隆一は、工場でも、工場長から話を聞かされていたので有る。


 機械類の不具合が原因で作った商品にクレームが付くというのは、我々、


会社の信頼を失う、その為には、日頃から機械類が何時でも正確に作動して


いるのか、少しでも不具合があれば、直ぐに点検修理を行なう事が必要だと


聞いていたので有る。


 「そうなのよ、此処に有る機器は精密な機器だし、其れに出た結果は世間


に公表するので、間違った結果は、其れはね、機器の不具合で起きましたと


は言えないのよ。」


 「ジョアンナ、本当にありがとう。


 私も、本当に良い勉強になったわ。」


 「愛子さん、いいのよ、私に出来る事をしただけだもの。」


 「じゃ~、ジョアンナさん、これで終わりなんですか。」


 と、隆一は、愛子が聞きたい事を聞いたので有る。


 「本当はね、此処で10日間くらい掛けて行なう積もりだったのよ。」


 「えっ、10日間もですか。」


 と、隆一は、少し驚いたので有る。


 「普通は、其れくらいの時間が掛かるのよ、でもね、隆一さんはね、私の


期待を見事に裏切ったのよ。」


 と、ジョアンナは、怪しげな笑みを浮かべている。


 そのジョアンナの顔つきを愛子は見逃さなかったのだが。


 「ジョアンナ、それほど、この機器類を覚えるって大変なの。」


 と、愛子は平静を装っている。


 「ええ、本当よ、だって、私なんか、この機器の使用方法や、その他の事


を覚えるのによ、1ヶ月は掛かったんだもの、それも、私は大学で専門の勉


強をしてきたのによ。」


 「ふ~ん。」


 と、隆一は、他人事の様に思っているのだ。


 「だから、私は、隆一さんも最低でも10日間は掛かると思ったのよね、其れをねっ、隆一さんってねっ本当に。」


 と、また、ジョアンナは含みの有る笑みを浮かべるが、隆一は気付いてい


るのか、それとも、全く気づいていないのか、側で、愛子は考えて要る。


 「じゃ~、隆一さん、愛子さん、私の講義と言うのか、説明会と言ってい


いのかわからないんだけど終わりにしますね、隆一さんも愛子さんも頑張っ


てね。」


 と、今度のジョアンナはいつもの笑顔だった。


 「有難う、御座いました。


 僕は、ジョアンナ先生から教えていただいた事を忘れずにします。」


 と、隆一も、何時もの笑顔になったので有る。


 「じゃ~、此れから食事に行きましょうか。」


 と、3人は夕闇に消えて行ったので有る。


 そして、翌朝、ジョアンナが連絡し、一時間ほどでヘリが到着した。


 ジョアンナは残り、隆一と愛子の二人はヘリに乗り込み、シュルツの居る


城へと向かったので有る。


 話は、少し戻り、3人がヘリに乗り込んだ、その後で有る。


 「シュミット、隆一と愛子は何処に。」


 「はい、ジョアンナのラボに行きました。」


 「やはり、そうだったのか、私もね、愛子からは聞いてはいたんだが。」


 「はい、私も、愛子から話を聞きましたので、其れならば、ジョアンナに


直接教えてもらう方が良いと判断しましたもので、直ぐに行っていただく事


にしました。」


 「うん、私も、其れで良いと思いますよ、愛子じゃ、隆一も本気に成らな


いと思いましたのでね。」


 やはりと言うのか、シュルツも、隆一の勉強が進んでいないと気に成っていた様で有る。


 「ジョアンナは、気合が入って要る様子ですから。」


 「そうなのか、隆一も今度ばかりは真剣になりそうかね。」


 「はい、私は、その様に願っておるのですが。」


 「其れで、予定と考えて要るのは何日間なのかね。」


 「今まで、ジョアンナの勉強と言いますか、研修と言いますか、1週間か


ら10日間前後掛かっておりますので。」


 「やはり、其れくらいの日数は必要だと言うのかね、これの方が、隆一に


とっては大変厳しい訓練となりそうだね。」


 「はい、私も、射撃訓練よりも、化学の勉強の方が大変だと思っておりま


すので。」


 「わかりました、では、ジョアンナから連絡が入り次第で宜しいので頼み


ましたよ。」


 「はい、ボス。」


 と、二人の会話があった二日後で有った。


 「パパ、私、ジョアンナよ、明日の朝、迎えのヘリを頼みたいのよ。」


 「えっ、もう、隆一君の研修は終わったのか、まだ、二日目だよ。」


 「だって、あの隆一さんって、普通の男性じゃないわよ。」


 「ジョアンナの言ってることが、パパにはさっぱりわからないよ。」


 「隆一さんの頭の中って、普通じゃ無いのよ、だって、私が、一度だけの


説明したんだけど全てと言っていいほど暗記しているのよ、それもね、私の


説明は5分や10分じゃ無いのよ、数時間から半日もしているのよ、其れを


全部なのよ。」


 シュミットは、ジムの話を思い出していた。


 「隆一は、本当に素人なのかって、それ程、凄いと言う事なので有る。」


 「其れじゃ~、隆一君の研修は。」


 「隆一さんの研修って言うけれど、私も最初は何時もと同じで10日間前


後を予定していたのよ、其れが、今までは普通だったのよ、其れが終わって


から本格的に実施訓練に入るんだけど、隆一さんの場合は特別ねっ。」


 「ジョアンナ、特別って、いったい、どう言うことなんだ。」


 「だって、隆一さんは、帰国してから最新の機器を扱うのよ、此処の古い


機器で訓練する必要も無いって判断したのよ。」


 ジョアンナは、いつも机上で10日間も掛けて勉強させ、その後は実施訓


練として、ラボの機器で行なうのだが、隆一にはその必要が無いと言うので


有る。


 「じゃ~、隆一君の実施訓練は。」


 「うん、私は必要無いと判断したのよ。」


 「わかったよ、それじゃ~、明日、ヘリを向かわせるからね。」


 「パパ、有難う、それと、私は残るわ、二日間の仕事も残ってから早く片


付けたいのよ。」


 「ジョアンナ、わかったよ、まぁ~、いいか。」


 シュミットも、ジョアンナが隆一に好意を持って要ることは知ってはいた


のだが。


 「何よ、パパ、何か有るの。」


 「いや、何でも無いよ、ジョアンナ、今回は、本当に助かったよ。」


 「パパ、いいのよ、だって、これって、私の仕事なんだもの。」


 「うん、まぁ~、此れからも頼むよ。」


 「良いわよ、じゃ~ねっ。」


 と、ジョアンナは、隆一と愛子が城に帰る手配をしたので有る。


 そして、明くる日、隆一と愛子が乗ったヘリは城へと帰って行ったのだ


が、ヘリが城の領域に近づくと、牧場や農場など、城の上空は勿論だが、周


辺を飛行してくれたので有る。


 「隆一さん、このお城の周辺なんだけど。」


 「へぇ~、こんなに大きいのか。」


 「隆一様、愛子様、之は本の一部なんですよ。」


 パイロットの説明に隆一は驚いたのだ。


 「えっ、これで一部って。」


 「はい、全ての領域を見ようとすれば半日は掛かりますよ。」


 「え~、本当なんですか、ジムが言ってましたよ、余りにも大きすぎて牧


場に柵を作る事が出来ないって、あれは本当だったんですね。」


 「はい、その通りなんです、普段の見回りはヘリ5機で巡回するんです


よ。」


 パイロットの仕事も大変だと思う隆一で有る。


 「じゃ~、皆さんの仕事も本当に大変なんですね、僕なんか簡単に考えて


いましたので、大変、申し訳なかったです。」


 「いいえ、私達よりも、ジム達の方が余ほど大変だと思いますよ、だっ


て、あっ、隆一様、左側のあの丘を見て下さい、狼の大群です。」


 隆一は、思わず叫んだ。


 「わぁ~、之は大変な数ですね、こりゃ~、ジム達も大変な事に。」


 「でも、仕方が無いのですよ、今、発見した場所を牧場に伝えたって、狼


は直ぐに移動しますからね。」


 と、言ったが、それでもパイロットは、牧場に連絡を入れたので有る。


 「隆一様、あの中にボスがいますよ、他の狼よりも、一段と大きな狼です


から直ぐにわかりますよ。」


 「あっ、あれだ、あれに間違い無い、でも、本当にデカイよ。」


 「ねぇ~、隆一さん、どれなの。」


 と、愛子も探している。


 「愛子、あの先頭にいる灰色の大きな。」


 「わかったわ、あれなのね、ボスって言うのわ。」


 「はい、その通りですね、ざっとですが、5百頭はおりますね。」


 「あっ、あれは。」


 と、隆一は驚いたので有る。


 「あれですか、あれはね、ボスが指令を出したのです。」


 狼の大群は、急に四方八方に散らばって行くのである。


 だが、ボスの狼は。


 「あれ~、あのボスだけが残ったよ。」


 「そうなんですよ、あのボスはまず指令を出すと、暫くは見ていますが


ね、まぁ~見てて下さいよ、どの方向に行くか。」


 ボスの狼は何事も無かった様に悠然と丘を下って行くので有る。


 「あのボスはね、どの場所に行けば早く牛を仕留めているかわかってるん


ですよ。」


 「愛子、僕はね、どうしても、あのボスを仕留めたいんだ。」


 「隆一さんの気持ちはわかるけど、牧場の人達が何年も掛けて追っている


のよ。」


 「だからなんだよ、あのボスのために、今までに何頭もの牛が餌食になっ


てるんだ。」


 「じゃ~、隆一様はどうしてもあのボスを仕留めたいと。」


 「うん、そうなんですよ。」


 「頑張って下さいね、それでは、今から城に向かいますので。」


 と、パイロットは、ヘリを旋回させ、城へと向かったので有る。


 20分後、ヘリは、城の裏に有るヘリポートに着陸したので有る。


 出迎えたのは、シュルツだった。


 「やぁ~、隆一、愛子、ご苦労でしたね。」


 と、シュルツは、にこやかな顔で出迎えたので有る。


 「只今、戻りました、でも、楽しかったです。」


 と、隆一は、ジョアンナの話が新鮮だったのだろうと、シュルツは思った


ので有る。


 「本当かね、其れは良かった、だけど、疲れていると思うので、数日間は


何もせずにのんびりと過ごすんだね。」


 と、シュルツは、愛子に視線を送ったので有る。


 「そうですね、シュルツさん、話は変わりますが、先程、狼の大群を見ま


したよ、其れに、ボスの狼も。」


 シュルツも知っていた、パイロットからの報告は牧場だけでは無いのだ、


シュルツも無線は聞いて要るので有る。


 「そうでしたか、隆一は、ボス狼を仕留めたいと思って要るんだね。」


 「はい、どうしても仕留めたいんです。」


 「わかったよ、だがね、君の仕事は日本に帰ってからなんだよ。」


 隆一は、少し落胆した様子だった。


 「そうですよねぇ~、後、何日かすれば戻らなければ成らないかも知れま


せんからねぇ~。」


 愛子は、ドッキとしたのだ、隆一は、何故知って要るのだろうか。


 「そうだよ、だけどね、隆一もたまには此処に戻ってきて、あのボス狼を


追って欲しいんだがね。」


 「えっ、本当にいいんですか。」


 直ぐに元の表情に戻った隆一で有る。


 「まぁ~、その話は何れの時にね、今は、ゆっくりとする事だよ。」


 「はい、わかりました、じゃ~、愛子。」


 愛子も頷き。


 「はい、では後程に。」


 と、愛子はシュルツに合図を送ったので有る。


 二人は部屋に戻ったが、隆一は直ぐに眠ってしまったので有る。


 愛子は、隆一が眠ったのを確認し、シュルツの部屋に向かったので有る。


 「愛子です。」


 「どうぞ、まぁ~座って下さい。」


 「はい、ボス。」


 愛子は、わかっていたのだ、隆一が言った様に、数日も過ぎれば日本に帰


国する事に成ると。


 「愛子、木田には、私から連絡を入れておきましたからね。」


 「はい、私も承知しております、数日後に帰国する事になると。」


 「愛子、木田は、君の事も考えた任務に成ると言ってたよ。」


 愛子は、これで、隆一と離れる事は無いと確信したのである。


 その後の数日間は、乗馬を楽しんだりと、のんびりと城の周辺を散策した


りとしていたのだが。


 「はい、吉村です。」


 と、突然、隆一の携帯電話が鳴ったのだ、其れは、木田から連絡が入った


ので有る。、


 「吉村君、木田ですよ、久し振りですね。」


 「長官、本当にお久し振りですね、其れで、僕の帰国の時期が決まったん


ですね。」


 「はい、そのとおりです、帰国は3日後と成りました。」


 やはり、隆一の予想したとおりだった、側では愛子も予想していたのか、


表情は穏やかで有る。


 「はい、承知しました。」


 「航空券は、手配済みですから、それと、吉村君と、愛子さんは、同じ飛


行機では有りませんので。」


 「えっ、長官、何故なんですか、愛子と僕が別の飛行機なんですか。」


 隆一は、愛子と共に帰国出来るものと思っていたので有る。


 「吉村君、事情が有りましてね、吉村君には直行便で、愛子さんは、一


度、他の空港で乗り継ぎしてから帰国する事になったんですよ。」


 隆一も、ほっとしたので有る。


 最初は、愛子と離れるのでは無いかと思ったのだが。


 「吉村君、其れで、日本に帰国されましたら、10日間ほどですが、自宅


で過ごして下さい。」


 「はい、僕も両親に会うのが久し振りですから。」


 「ええ、仕事のことは、暫く考えずに、ご両親とゆっくりとしていただい


ても宜しいですからね、其れに、お土産話も有ると思いますので。」


 「はい、両親も驚くと思いますよ、僕が、此処で体験した事を話をすれ


ば。」


 と、隆一は、既に、心は、日本に向かっていたので有る。


 「其方での話はしていただいても宜しいですからね。」


 「はい、有難う、御座います。


 其れで、仕事の話なんですが。」


 何故、そんなに急ぐ必要が有るのと、側で、愛子は思っていた。


 「吉村君、仕事の話は日本に戻られてからにしましょう、それじゃ~、日


本でお会いしましょうか。」


 「はい、わかりました、じゃ~、日本で。」


 と、話は終わり。


 「愛子、二人は日本に帰ることに成ったよ。」


 「一年ぶりね。」


 「もう、そんなに経つのか、僕は、まだ半年くらいだと思ってたんだ。」


 「木田さんは、他に何か言ってたの。」


 「いや、暫く、両親とのんびりとして下さいって。」


 「それも、いいと思うのよ、だって、突然だったもの。」


 隆一も、同じ様に思っていたので有る。


 有る日、突然、工場長の呼び出しを受け、今度は、今までの仕事とは全く


別の仕事だと言われ、其れにもまして、愛子という謎に満ちた美人からは、


僕のことが好きだと言われ、当然のように二人は結ばれた、次には、はじめ


ての外国で、それも、広大な敷地の城で一年間も過ごすとは、あの会社に就


職した当時には考えもしなかったので有る。


 その一年間は、日本では味わう事の出来ない体験の毎日だったのだ。


 隆一と愛子は、シュルツに会い、帰国する事になったと伝えたので有る。


 その日の夜は、隆一の送別パーティが盛大に行なわれたのも当然だった、


隆一は、3日後には、一年間過ごした城とも別れることになるので有る。


 その3日後の朝の隆一は何時もり早く起き城の正面から見ているのだ、其


処に。


 「隆一さん、お早う、随分と早いのね。」


 「うん、そうなんだ、でも、なんだか寂しいような、嬉しいような気分な


んだ。」


 「私も、隆一さんの気持ちはわかるわよ、だって、一年間ですもの。」


 「うん、そうなんだけど、でも、今日、この城とも当分の間お別れって事


になるとね。」


 執務室からは、シュルツとシュミットの二人が見ていたので有る。


 「シュミット、今回は、我々の組織にとっても、多くのことを学ばせて貰


ったね。」


 「はい、私も、その様に感じております。」


 「隆一と言う、今までとは全く違った人物だったが、彼は、当分、日本で


の仕事に就くことに成るんだが。」


 「はい、私は、隆一であれば、問題なく任務を遂行出来ると思っておりま


す。


 其れにも増して、ボス、私も新鮮な一年間で御座いました。」


 「うん、そうだね、城のみんなも、今までとは違う方法も有るんだと感じ


て要ると思うがね。」


 「はい、私達以上に、みんなも楽しんだ一年間だったと思います。」


 「二人が上がって来る様だね、朝食の用意は。」


 「はい、全て整っております。」


 「では、私も、食堂に行きますからね。」


 「はい、承知しました。」


 と、二人も食堂に向かったので有る。


 「さぁ~、愛子、僕もこの城で最後の朝食に行くよ。」


 愛子は隆一にしがみつくようにして食堂に向かったので有る。


 「お早う御座います。」


 「いや~、お早う、隆一、長い一年間だったね。」


 「いいえ、僕は、大変短かったと感じています。」


 その時、シュミットが朝食を運んできたので有る。


 「お早う御座います、隆一様、愛子様。」


 「シュミットさん、お早う御座います。


 大変、長い間、お世話になり、本当に有難うございました。」


 と、隆一は、椅子から立ち上がり、礼を言って深々と頭を下げたので有


る。


 「隆一様、私も、何もお世話させて頂いたとは思っておりません。


 私は、当然の事をさせて頂いきましたので、お礼を言われる事など考えて


おりません。」


 シュミットは、何時もの執事の様子で有る。


 「では、隆一、最後の言っては何だがね、君が大好きになった特別製のソ


ーセージだよ、之は、今朝、農場から隆一にと特別に届いた物だからね。」


 隆一は嬉しかった、この城の人達は最初から最後の日まで、本当に親切だ


ったからだ。


 「シュミットさん、僕はどう言って良いのかわかりませんが、最初、此処


に到着した日から、今日の朝まで、本当に親切な人達ばかりで、心の底から


感謝しています。」


 「まぁ~、隆一、話よりも食事ですよ。」


 「はい、では、頂きます。」


 と、隆一は、特別製のソーセージを口に入れた。


 このソーセージを今度は、何時、食べることが出来るのかと考えていた


が、その朝食も終わり、一時間後には出発の用意も終わり玄関に出ると、そ


こには、ジムや加藤、其れに、アンナも、そして、多勢の人達が見送りに着


ていたので有る。


 「隆一、何時でも戻ってきて下さいよ、ボスの狼は隆一を待って要るから


ね。」


 と、ジムは優しい目だった。


 「隆一、何時でも、戻っておいでよ、私達はね、何時でも大歓迎だから


ね。」


 と、アンナも言った目に涙を浮かべていた。


 「ジムもアンナも、其れに、皆さん、本当に有難う御座いました。


 僕は、一度、日本に戻りますが、また、此処に戻って参りますので。」


 「じゃ~、隆一、元気でなっ。」


 と、シュルツと握手し、隆一は車に乗り込み、車はゆっくりと走りだした


ので有る。


 「愛子、日本で待ってるからね、早くだよ。」


 「うん、私も、早く帰るからね、待っててよね。」


 と、愛子の目には涙が溢れているので有る。


 その数時間後、空港に到着し、隆一は、日本に帰るために機上の人となっ


たので有る。



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