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僕は、スナイパー。  作者: 大和 武
2/10

          第 2 話 運命を決める出会い。

隆一と愛子は、機内では殆どと言って良いほど眠っていたので有る。


 其れは、愛子が隆一に相談し、二人は薬を飲んでいたのだ、何故、其れま


でする必要があったのか、隆一は考えもしないが、愛子は隆一が長時間のフ


ライトで体内時計が狂い、何時もの隆一に戻るには暫くの間で有っても許せ


ないと考えたのである。


それ程、今回、訪問するところの主人は愛子にとっても、尚更、隆一には大


切な人物なのである。


その為、愛子は隆一に嘘を言ってでも薬を飲ませる必要が有ったのだ。


表面上は到着時の時間差を無くすためであったが、十数時間のフライトを終


え、二人は有る国の空港に到着したので有る。


 愛子が、到着時刻を知らせてあったので迎えの車が用意されていた。


 「愛子、此れから、何処に行くんだ。」


 「そうね、車で2時間は掛かるのよ。」


 「え~、そんなにも遠いのか。」


隆一は、うんざりしていた、腰も痛いし、其れに、腹も減ってきたしと思っ


て要る。


 「隆一さん、お腹が減ってきたのよね。」


 「勿論だよ、其れに、腰も痛くなってきてるんだ。」


 「うん、私も同じなのよ、でも、後少しの辛抱よ、お願いね。」


 「此処まで来たんだ、今更、日本に帰りたいとは、僕も子供じゃ~、無い


んだからね、そうだ、愛子、その大切な人物の名前を聞いて無かったよ。」


 「あら、そうだったかしら、私は、言ったと思ってたのよ。」


 「いいや、僕は聞いた覚えが無いんだよ。」


 「じゃ~、言うわよ、その人はね、シュルツさんって言うのよ、アーチェ


リー世界じゃ、名の知れた人物なのよ。」


 「えっ、僕は聞いた事がないけど。」


 「あっ、そうか、本名を言って無かったわね。」


 「じゃ~、今の名前のシュルツってのは。」


 「私が、最初に聞き違えたのよ、でも、私は、シュルツって呼ぶんだけ


ど、本名はシュワルツと言うのよ、この名前だったら、隆一さんも知って要


ると思うの。」


 「な~んだ、シュワルツか、その人物なら、僕だって知ってるよ。」


 隆一も聞いた事がある名前だった、シュワルツとは、数十年も昔に十数年


間も世界一を続けた伝説的な人物なのだ、だが、何故、愛子は知って要るん


だ、それも、結婚報告までするような人物なのか。


 「御免ね、でも、私は、シュルツって呼ぶんだけど、一度も、怒った事が無いのよ、


いつもね、にこやかな顔をして要るわ。」


 「だけど、少しだけど嬉しいよ、僕だって、一生に一度は会って見たいと思ってた


人物なんだから。」


 「あ~、良かったわ、シュルツの家なんだけど、驚かないでね。」


 「まだ、僕が、驚くような話でも有るのか。」

 

 愛子は、シュルツの仕事は話題にしたく無かったのだ、今は、表社会の仕


事に就いて無かったのが幸いかも知れないのだ。


 「隆一さん、実はね、シュルツの家なんだけど。」


 「家に問題でも有るんだ、仕事を辞めたんで、小さなアパートに住んで居


る、そうだよね。」


 「其れがね、全くの反対なのよ、大きなお城に住んで居るのよ。」


 「えっ、なんだって、大きなお城だって、そんな話聞いた事が無いよ。」


 二人を乗せた車は、その頃、都市を抜けて、静かな田園風景の道路を走っ


ている。


 「愛子、何時の間に、田舎道を走ってるんだ。」


 「もう、さっきからよ、空港を出て、直ぐだったけど、隆一さんは、何か


考え事でもして要るような顔だったもの。」


 「いや~、参ったね、僕達は、その大きなお城に行くのか。」


 「そうよ、でも、とっても素敵なところなんだから。」


 「其れは、君が思ってるだけなんだろう。」


 隆一は、中世時代の城を思い浮かべている、岩石だけで造られた冷たい城


をイメージして要るのだ。


 隆一の思いに間違いは無いのだが。


 「愛子、大きな城に男が一人か、なんて、寂しいところに行くんだ。」


 「隆一さん、行って見れば判るからね。」


 愛子は、隆一が想像している様なところでは無いと必死なのだが。


 「ねぇ~、聞いて、お願いだから。」


 「いいよ、で、どんなお城なんだ。」


 「うん、そのお城も大きいんだけどね、付近一帯が、お城の敷地なの。」


 「え~、付近一帯が、その城の敷地だって、じゃ~、いったい、どれ位の


大きさなんだ、僕には想像できないよ。」


 「私も、知らないのよ、牧場も有るんだもの。」


 「牧場も有るって、牛や馬もいるんだ。」


 隆一は、まだ、こだわっている。


 「そうよ、だって、そのお城では、お酒も作っているんだもの。」


 「お酒も造ってるって、そんなの法律で禁止されているんだろう。」


 普通では、法律を犯している、だが、この城で、造られた酒は、一切、外


に出る事は無いのだ。


 「だって、造ったお酒は外には出ないのよ、全部、このお城で使用されて


いるのよ。」


 「え~、本当なのか。」


 と、言っているが、隆一はまだ信用していないので有る。


 「愛子、其れじゃ~、そのお城に住んで居る人物だけじゃ無いんだ、一体


何人が住んで居るんだ。」


 少しだが、隆一は、話を聞いてくれそうだと、と、愛子は思ったのだ。


 「私が聞いたところではね、あのお城は先祖からの遺産らしいのよ、だか


ら、今でも、領地が有ると聞いてるのよ。」


 「領地って、それじゃ~、何か、その人物は領民から税金を取っているのか。」


 知らない者は当然、中世時代を想像するだが。


 「そんな意味じゃ~ないのよ、ごめんね、領地じゃなくてね、この国の数


百ヶ所に大きな土地を持って要るのよ、それでね、その土地を貸しているの


よ。」


 「じゃ~、土地を貸して、その地代って訳か。」


 「うん、そうなのよ。」


 「愛子、僕は少し眠りたいんだ。」


 「いいわよ、着いたら、起こすからね。」


 「うん、頼むよ。」


 と、言って、隆一は目を閉じ、暫く考えていた、大きな城の持ち主と、愛


子の本当の関係は、愛子は大学時代に知り合ったと言うが、其れにしても、


その人物は世界的にも知られたアーチェリーの名選手である。


 愛子は確かに、当時は騒がれた選手だ、だが、愛子以上の選手は他にも数


十人は居た。


 それなのに、何故、愛子が、と、考えて要るうちに、隆一は本当に眠って


いたのだ。


 愛子も何時の間にか、隆一の肩に寄りかかり寝息を立てて要る。


 車は、二人を乗せて城までの1本道を走っている。


 隆一も愛子も相当疲れているのか、城に着くまで眠っていたのだ。


 それから暫く走ったのだろうか、車は城の門を入って行く。


 その時、愛子の目が覚めたのである。


 「隆一さん、起きて、ねぇ~、お城に着いたわよ。」


 隆一は目を開けて驚いたので有る。


 其れは、愛子が言った様に大きな城である。


 車はゆっくりと、城の正面玄関で停まった。


 「お~、愛子、ビューチィフル、愛子。」


 と、言って白人の大男が、愛子の頬にキスしたので有る。


 「愛子、彼を紹介して下さいね。」


 「ええ、シュルツ、私のハズバンドよ、隆一さん、この人が話をしたシュ


ルツさんよ。」


 「おお、君が、愛子の主人か、本当にうらやましいよ、愛子のような美人


を。」


 「有難う、シュルツさん、始めまして、私が愛子の主人で隆一です。


 お世話さまに成ります、よろしくお願いします。」


 シュルツは、人のよさそうな人物で、二コ二コと愛想を振りまいている。


 「さぁ~、入って下さいよ、愛子、特別の部屋を用意したからね。」


 「有難う、シュルツ。」


 「愛子、今日の夕食だがね、愛子が結婚したって聞いたんで、今夜は、君


の知っている人達も集まって、パーテイを開く事にしたからね。」


 「えっ、パーテイって、僕は、そんな用意なんかしてないよ、愛子。」


 「隆一さん、いいのよ、何も心配する事は無いのよ。」


 「隆一、私のパーテイってのはね、この城で働いている人達が集まるん


だ、だから、其れに、みんな、普段着だからね。」


 隆一はほっとしたのだ。


 「愛子、僕は西洋式のパーテイって、余り。」


 と、言い掛けて口を閉ざしたのだ。


 「隆一さん、私もなのよ、その事はシュルツも知って要るのよ、だから、


何も心配は無いのよ。」


 「愛子、其れにしても本当に大きな城だなぁ~。」


 「私が言った通りでしょう。」


 「愛子、此処まで時間が掛かったと思うんだ、君は少し休むといいよ。」


 と、言った、シュルツは使用人を呼んだ。


 来たのは、若い女性とさっきの運転手だった。


 「あっ、貴方は、さっきの運転手。」


と、言ったが、来た女性は運転手の娘で有る。


 「はい、先程は良く眠って居られましたね、之は、私の娘ですので、何で


も言って下さい。」


 愛子は、運転手も娘を知って要る様子で。


 「愛子、おめでとう、この人なの、ハンサムな旦那様ね。」


 「駄目よ、私の愛しい人なんだから。」


 と、言って、愛子と娘は笑い出すので有る。


 「ご主人様、私と娘が、お二人のお世話をさせて頂きますので。」


 「はい、よろしくお願いします。」


 と、隆一は頭を下げたので有る。


 「隆一さん、西洋では握手なのよ。」


 「そうか、そうだったね。」


 と、言って、隆一は親子に握手するので有る。


 「さぁ~、どうぞ、ご案内しますので。」


 と、親子は、大きな緩やかな階段を登っていくので有る。


 隆一は物珍しいのか、しきりに当たりを見ている。


 その愛子は、隆一の動きを見て微笑んでいるのだ。


 上がった、二階の部屋に案内され入った瞬間。


 「わぁ~、なんて、大きな部屋なんだ。」


 隆一が驚くのも無理は無かった、部屋にはベッドルームが二箇所、その


他、調度品も高額な物ばかりである。


 「愛子、之が、ホテルだったら、一晩で数十万はかかるね。」


 愛子は、頷き、微笑んでいる。


 「あ~、少し疲れたなぁ~。」


 と、言って、隆一はソファに座ったので有る。


 その時、部屋の電話が鳴った。


 「はい、愛子です。」


 電話の内容は、と、思う隆一に。


 「ねぇ~、お昼の食事なんだけど。」

 

 「えっ、もう、そんな時間なのか。」


 「そうよ、私達が着いたのが、お昼前だったもの。」


 「そうか、でも、僕は軽食がいいなぁ~。」


 「じゃ~、ソーセージとトースト、其れに、コーヒーでいいの。」


 「うん、其れで、いいよ。」


 愛子も隆一と同じ物を頼んだのだ。


 「直ぐに、出来るから、今から、行きましょうか。」


 「うん、判ったよ。」


 実は、之も愛子が用意していたので有る。


 隆一と愛子は階段を降り、食堂に行くと、既に、昼食は用意され、其処に


は、シュルツが二人を待っていたのだ。


 「さぁ~、お二人さん、座って下さいよ。」


 隆一は何も疑わずに。


 「はい。」


 と、愛子も座った。


 二人の前に、運転手とその娘が、コーヒーを運んできたのだ。


 「隆一様、此処のコーヒーは、大変美味しいですよ、ゆっくりと食事


を。」


 と、ニッコリとして、コーヒーを置き、下がったのだ。


 隆一は。


 「有難う。」


 と、言ったが、顔は驚きの表情である。


 「隆一さん、如何かしたの。」


 「いや、このソーセージの大きさに驚いているんだ。」


 「あ~、このソーセージね、其れはね。」


 と、言い掛けた時。


 「愛子、私が説明するよ。」


 と、シュルツが言ったのだ。


 「そうね、お願いします。」


 と、愛子はニコットしたのだ。


 「隆一、このソーセージはね、我々の牧場で作っているんだよ。」


 「えっ、其れじゃ~、このトーストも。」


 シュルツは二コ二コしながら。


 「勿論、それもだよ、愛子から聞いて要ると思うがね、私達はね、自給自


足の生活をして要るんだよ。」


 「えっ、本当なんですか。」


 「本当だよ、この城ではね、食料の殆どが、敷地内で取れるんだよ、だけ


ど、数ヶ月に一度は都会に行くんだよ。」


 「でも、さっきは、自給自足だと言われましたが。」


 「隆一、自給自足だと言っても、其れはね、食料だけだよ、さすがに服は


此処では作れないからね、其れにだよ、此処でも、多くの女性が働いている


んだ、特に女性達はファッションには敏感だからね。」


 愛子は頷き。


 「隆一さん、女性はね流行には敏感なのよ。」


 「そりゃ~、僕にもわかるよ、でも、之だけの大きな城を管理するのは大


変でしょう。」


 「いいえ、私は、何も出来ませんので、全て執事に任せて有りますよ。」


 と、シュルツは運転手を見たのだ。


 「では、あの方が。」


 「そうですよ、シュミットと言いまして、此処で一番実権を握っている人


物ですよ。」


 シュミットはいいえと、手を振っている。


 「隆一、私はね、愛子を我が子と思って要るんですよ、その愛子が、どん


な男性を見つけてくるのか、心配でね、でも、私の心配は無くなったよ、君


のような素晴らしい男性を見つけて、私も、嬉しいよ、ね、愛子。」


 其れは、本当だった、愛子は、この城で数年間も過ごしたので有る。


 「だけど、愛子、今夜は大変だよ。」


 「えっ、なんで今夜は大変なんですか。」


 側では、シュミットも笑っているのだ。


 「隆一、愛子は、この様に美人だし、それに頭もいいんだ、みんなにも優


しいんだよ、その為と言ってはなんだがね、牧場や農場で働いている男性陣


がね。」


 と、言ってやめたのだ。


 愛子も知って要る数人の男性からは、愛を告白されていたのだ。


 「隆一さん、怒らないで聞いてくれる。」


 「うん、いいよ。」


 「此処のお城で働いている男性からプロポーズされたのよ。」


 隆一は平然としている。


 其れは、こんな美人だ、誰にも相手されない方が不思議だ、その様な、女


性が、どの様な訳で、この僕に、だがこの愛子は隆一を愛している事は確か


で有る。


 だけど、一体、どんな目的があっての事だ。


 「僕だって、反対の立場ならね、その男性を殺してやりたいと思うよ。」


 「隆一も覚悟するんだね、今夜は危ない事にでも。」


 「えっ、本当に。」


 シュルツは冗談で言ったのだが。


 「隆一、冗談ですよ、でもね、愛子は其れだけ素晴らしい女性だと言う話


ですよ。」


 「あ~、良かった、僕は、本当に殺されるかと思ったよ。」


 と、言って、コーヒーを飲んだ。


 その時。


 「旦那様、そろそろ、時間で御座います。」


 「うん、判った。」


 「済みません、此れから、お仕事なんですね。」


 と、隆一は何も知らないので頭を下げたのだ。


 「いや、私が、何時も行なって要る食後の運動なんですよ。」


 「まだ、されていたんですか。」


 と、愛子は知って要るのだ。


 「愛子、食後の運動って。」


 シュルツはアーチェリーの真似をするのだ。


 「どうですか、隆一の事は愛子から聞いていますよ。」


 「僕もですか、でも、1年間のブランクが有りますので、自信が無いんで


すよ。」


 「隆一、之はね、遊びですよ、競技じゃ~、ないんですからね。」


 と、優しく誘ってくれたのが、隆一には嬉しかったのだ。


 「では、僕も久し振りに引きますか。」


 と、隆一は嬉しそうな顔付きになったのだ。


 「それでは、30分後と言う事で。」

 

 「はい、判りました。」


 「隆一さん、嬉しそうね。」


 「そりゃ~、嬉しいよ、大学の卒業前だったからなぁ~。」


 だが、シュルツは、隆一がどれ程の腕前を持って要るのか調べるつもりだ


った。


 「なぁ~、愛子。」


 隆一は、煙草を吸いたかったのだが。」


 「な~に。」


 愛子もわかっていた、実は、空港に着いてからは、1本も吸って無かった


事を。


 「僕はね、いや~やめた。」


 「隆一さん、煙草でしょう。」


 と、愛子は微笑んでいる。


 「うん、空港に着いてから、1本もだけど、この城じゃ~ね。」


 「いいのよ、此処は禁煙じゃ~無いのよ、だって、シュルツも、其れに牧


場の人達も煙草は吸うのよ。」


 「だけど、何か。」


 「隆一さん、私の事なら心配ないわよ。」


 「有難う、じゃ~、1本だけ、ゴメンネ。」


 と、言って、隆一は、胸のポケットから煙草を取り出し、1本に火をつけ


たのだ。


 「う~ん、ウマい。」


 と、隆一は美味しそうに吸っている。


 その時、そばから灰皿が。


 「あっ、有難う。」


 「いいえ、私も好きですから。」


 と、シュミットはニコットしたのだ。

 

 隆一は、煙草を吸い終わると、愛子と部屋に戻り、シャツを着替えたので


有る。


 「う~ん、本当に久し振りだから、的に当たるかなぁ~。」


 「隆一さんなら、きっと大丈夫よ。」


と、愛子は二コ二コとしている。


 その時、ドアをノックする音が聞こえた。


 「隆一様、旦那様も用意が整いましたので。」


 「は~い、わかりました、直ぐに。」


 と、二人は、大急ぎで階段を降り、シュミットの案内で、アーチェリー専


用の場所に向かうので有る。


 途中、何人かの農夫らしき男性から。


 「今日は、行ってらっしゃい、ガンバってね。」


 と、言われたのだ。


 「愛子、なんで、みんな、知ってるんだ。」


 「だって、隆一さんの事、全員が今日来ると知ってるんだもの。」


 「えっ、だって、僕は何も。」


 「私が、シュルツに言ったのよ、隆一さんは、私のご主人様なのよっ


て。」


 「じゃ~、みんな、僕の事を知ってるんだ、でも、何故、頑張ってね、


と、言われたんだろう。」


 「この道はね、アーチェリー場に行く為の道路なのよ、だから、誰だっ


て、そう思うわよ。」


 「なぁ~んだ。」


 と、言いながらも、隆一は、嬉しそうな顔で有る。


 それも当然だった、はじめて訪れた、それも、大きな城に着て、何も判ら


ない隆一に対し、気軽に、声を掛けてくれたので有る、それだけでも、本当


は嬉かったのだ。


 そして、専用場に着くと、早くも、新品が用意されていたのだ。


 「隆一、好きな物を選んでいいですよ。」


 隆一は、バランスと持った時の感触で最初に持った弓を選んだ。


 その様子はシュルツも見逃さなかったのだ。


 シュルツは隆一と握手した時の感触と体格から数本を選び、夫々、微妙に


調整をいていたのだ。


 シュルツは、最初に持った弓を選ぶと思っていたのだ、其れは、他の弓は


微妙な狂いが有るのだが、其れは、普通の人では判らないが愛子が言う事が


本当であれば、最初の弓を選ぶはずだと、其れは、確信に近かったので有


る。


 そして、選んだ弓はシュルツの思った通りの弓で有る。


 この男なら、例え、的を外しても問題は無いと。


 「シュルツさん、僕は、この弓にします。」


 「そうですか、判りましたよ、では、はじめましょうか。」


 「はい、よろしくお願いします。」


 と、頭を下げる隆一だった。


 側では、愛子の目付きが変わってきたのを、シュルツは見逃さなかった。


 其れは、シュルツの隆一に対する、試験だったからだ、だが、隆一本人は


何も知らないので有る。


 「それじゃ~、私から先に行きますよ。」


 と、シュルツは、弓を引き、矢を放ったのだ、放たれた矢は、シュルツの


思い通りのところに当たり、愛子は喜んだのである。


 だが、隆一もシュルツの後ろから見ていたので有る。


 このシュルツと言う人の後ろ姿は実に美しい、しかも、自然体で、余計な


力も入って無いと、隆一は感じたのだ。


 「さぁ~、今度は隆一の番ですよ。」


 「はい、では、失礼します。」


 と、言って、隆一は一呼吸したのだ。


 そして、暫くはじっと見ているのだ、其れは、前方の風の動きで有る。


 的までの途中にある、木の葉や草の動きを観察している。


 シュルツも隆一の動きを見つめている。


 隆一は、ゆっくりと弓を引き、次の瞬間、矢は放たれ、的の中心を外れた


のだ、だが。


 「隆一、素晴らしいよ、本当に、一年間もブランクがあったのかね。」


 と、シュルツは驚いている。


 「でも、僕の狙った場所じゃ~ないんですよ。」


 「えっ、隆一さんは的のほぼ、中心なのよ。」


 「いや、違うんだ、僕の的は、シュルツさんが当てたところなんだ、悔し


いよ。」


 シュルツは内心驚いている。


 この隆一という男は、私の放った矢の中心を狙っていたとは、其れに、隆


一は自然体で構えている、その隆一が使った弓は、自分の物と同じ感覚で扱


っているのだ。


 隆一という男は、今までにない特別な何かを持って要る、この男なら大丈


夫だと確信したので有る。


 「愛子、隆一は本当に一年間のブランクが有るのかね、私には、その様に


は見えないんだが。」


 と、言って、シュルツは、愛子にウインクしたのだ、其れが、愛子に送っ


た隆一は合格だと言う合図なのだ。


 そんな試験だとは、隆一は知らずにいた。


 「隆一、良かったら、少し遊んでは、どうですかね、愛子も一緒に。」


 愛子は素直に喜んだ。


 「本当、本当にいいのよね、でも、シュルツさんは。」


 愛子はわかっていたのだ、今日、世界中から数名が、この城に到着する事


を。


 「あ~、いいよ、私は、少し用事が有るのでね。」


 と、シュルツはニヤリとした。


 「じゃ~、愛子、久し振りに二人で、どうだ。」


 「うん、いいわよ、私は負けないからね。」


 と、愛子も隆一を引き止めるのに成功したので有る。


 「じゃ~、お二人さん、後でね。」


 と、言って、シュルツはにこやかな顔で戻って行ったので有る。


 一方、城では、世界中から数人の男達が次々と集まってきたのである。


 其れは、年、一回行なわれる総支部長会議だった。


 この城は、組織の事実上の本部なので有る。


 そして、城で働く全員が組織の人間なのだ。


 愛子は、極東各地支部の総支部長だが、今回の会議の一日目は参加出来な


いのである。


 隆一には、この城が組織の本部だとは言ってないからである。


 シュルツも知って要る。


 この城のシュミットは、総支部長なのだが、城では、隆一の運転手となっ


ているのだ。


 其れは、シュミットが、隆一の試験をする事を考えたからで有る。


 「皆さん、大変、ご苦労様ですね、実は、今日、みんなも知って要る、愛


子がご主人を連れて、この本部にやって着ました。


 ご主人は、愛子が合格を出した男性で、私も、先程、テストをしました


が、愛子の報告通りの、いや、それ以上の人物です。


 今夜は、歓迎のパーテイを行なうんですが、皆さんは、農場で仕事をされ


ている人達になって、隆一を観察して欲しいんです。


 彼は、この城の事は全く知りませんので、パーテイは、私の方で進めます


ので、心配は無用ですので、よろしく頼みますね、今、隆一は愛子とアーチ


ェリーを楽しんでいますので、皆さんが移動されてもわからないと思いま


す。


 詳しくは、明日の会議で報告します、では、よろしく頼みます。」


 シュルツは30分ほどで戻り、愛子にウインクした、其れが、合図だっ


た。


 「ね~、シュルツ、聞いてよ、隆一さんって、凄いのよ、全部、的の中心


なんだから、私、悔しくて、だって、大学の頃の私だったら、絶対に負けや


しなかったのに。」


 愛子は、本気が半分、芝居が半分だと、シュルツは知っていたのだ。


 「愛子、其れは、無理だよ、そうだろう、愛子はね、隆一に全てを奪われ


ているんだ。


 初めから、愛子に勝ち目は無いんだからね。」


 「う~ん、でも、本当に悔しいのよ、じゃ~、今の私じゃ~、一生、無理


って事なの。」


 シュルツは笑いながら。


 「まぁ~、不可能だろうね。」


 側で、隆一はニンマリとしているのだ。


 「仕方無いわ、隆一さんだから許してあげるわ。」


 「愛子、僕はね、今頃に成って、アーチェリーが楽しくなってきたよ。」


 「二人とも、どうかね、一休みしては。」


 「そうね、私、少し疲れたわ。」


 その時、シュミットがコーヒーを運んできたので有る。


 「ご主人様、コーヒーをお持ちしました。」


 「有難う、お二人にも、お出しして下さい。」


 「はい、かしこまりました。」


 「隆一様、愛子様、どうぞ、召し上がって下さい。」


 シュミットは腰の低い、穏やかな仕草で有る。


 やはり、西洋の執事と言われる人は違うと思う隆一で有る。


 「ご主人様、まだ、時間は早いのですが、今夜のパーテイにお出しするメ


ニューですが、如何致しましょうか。」


 「何人の予定なんだね。」


 「今回は内輪だけとお聞きしておりますので、50人くらいかと存じてお


ります。」


 「そうか、今夜は、隆一と愛子の結婚披露も兼ねているからね、隆一は、


肉と魚のどちらが好きなんだ。」


 「はい、僕は、魚の方が。」


 「そうか、じゃ~、隆一は特別な魚の料理を、愛子には、特製のビーフを


な。」


 「はい、かしこまりました。


 では、私は、失礼致します。」


 「愛子。」


 と、隆一は愛子の耳元で。


 「愛子、この城には、いったい、何人働いているんだ。」


 と、小声で聞いたので有る。


 「えっ、今、なんて言ったの。」


 「し~。」


 と、隆一は愛子の口を塞いだので有る。


 「でも、なんて聞いていいのか、わからなかったんだもの。」


 「隆一、私も、はっきりとは知りませんがね、5百人くらいだと思います


よ。」


 シュルツはニコッリとしたのだ。


 「えっ、5百人も、でも、さっきの話では、50人くらいだと言われまし


たので、私も、てっきり、50人だと思ったんです。」


 「私も、知らなかったの、だから、今、本当に驚いているんだもの。」


 「隆一、私もね、本当は知らないんですよ。」

 

 「えっ、でも、さっきは5百人だと言われましたが。」


 シュルツは笑い。


 「私はね、この城の主と言うだけで、シュミットに全部任せておりましま


すからね。」


 「あのネ、隆一さん、此処にはね、日本人も居るのよ。」


 「本当に。」


 「うん、その日本人はね、牧場で働いているのよ、このお城ではね、世界


中の人達が働いているのよ。」


 愛子は、時間を掛けて行くつもりだと、シュルツは思ったのだ。


 「さぁ~、愛子、始めるぞ。」


 「えっ、もうはじめるの。」


 と、愛子は言っているが。


 「愛子、私は暫く見ているよ。」


 シュルツは、隆一の後ろで見る事にしたで有る。


 隆一は、何か、動物的な勘を持って要ると感じて要る。


 シュミットは、愛子の考え方を尊重し、時間を掛けて行こうと考えて要る


のだ。


 「じゃ~、愛子、僕から先に行くよ。」


 「ええ、いいわよ。」


 と、愛子は下がり、隆一を見ているのだ、愛子は隆一の立ち姿を見ているのだ。


 愛子の側には、シュルツが何かをじっと見ているのだ。


 愛子はシュルツを見たが、シュルツは愛子が見ているとは知らなかったの


か、その目付きは真剣だ。


 シュルツは、隆一に他の事もさせるんだろうと思ったが、今は、聞く必要


は無い、何れ、判るだろうと視線を隆一に向けたのだ。


 だが、隆一は、まだ、矢を放って無かった。


 隆一は、何かを得徳したのかの様な雰囲気で有る。


 今まで、何度も見てきたが、こんな真剣な隆一を見るのははじめてであ


る。


 隆一は静かに、狙いを定め、呼吸を止めた、その瞬間、隆一の指が動いた


のだ。


 放たれた矢は、一直線に飛び、的の中心を少し外した、だが、隆一目付き


は違っていたのだ。


 「少し、外れたなぁ~。」


 と、口では言っているが、シュルツはわかっていたのか、静かに、その場


を離れ、別の場所に向かったので有る。


 隆一もシュルツの視線を感じなかった。


 隆一は、城に戻って行くのだと思っていたのだ、愛子も知っていたが、何


も言わなかったので有る。


 「あれ~、シュルツさんは。」


 「そうね~、今まで、私の側に居たのに。」


 「お城に戻ったんじゃ~、無いのか。」


 隆一は、シュルツが離れた事も知って要ると愛子は思っていた。


 隆一の感情は、この城に着て、本人も気付かないほど敏感になっていたの


で有る。


 その後、二人は、2時間も続けていたので有る。


 二人の側を離れたシュルツは牧場に着ていたのだ。


 そして、一人の日本人に何かを伝え、城に戻って行ったので有る。


 牧場から城までは30分以上掛かるがシュルツは戻る途中考え事をしなが


ら馬を走らせていたのだ。


 そして、数時間後、二人は戻って着たのだ。


 「隆一様、愛子様もお帰りなさいませ。」


 と、シュミットはにこやかな顔で迎えてくれたので有る。


 「ご主人様、隆一様と、愛子様が、今、お戻りに成られました。」


 「そうですか、シュミット、お風呂の用意は。」


 「はい、出来ております。」


 「隆一、愛子、如何でしたか。」


 「私、もう、隆一さんの相手にならないわ。」


 「そうですか。」


 愛子の言葉は合図だった。


 「隆一、貴方が本当に一年間のブランクがあったとは思いませんね。」


 「今日は、全部まぐれですよ。」


 と、言ってはいるが、眼つきが違っていると、シュルツは思ったのだ。


 「さぁ~、二人とも、少し疲れたでしょう、夕食までは、まだ時間が有り


ますのでお風呂に入って疲れを取って下さい。」


 「はい、有難う御座います。」


 と、隆一と愛子はシュルツに会釈し、部屋に戻って行くので有る。


 「シュミット、隆一の事だがね。」


 「はい、私は合格だと思っております。」


 「うん、私も、先程、弓の使い方を見たんだがね、その前に数本の弓の中


からだ、選んだ、弓は、私が、最高の仕上げをした物なんだ。」


 「隆一様は、何かを持っておられると、私も感じておりまた。」


 「そうか、私も、彼と握手した感じだけで調整したんだがね。」


 「はい、私も、隆一様と握手した時、何かを感じました。」


 「やはりな、私が先に放ったんだがね、隆一は、的ではなく、私の放った


矢を的にしたんだよ。」


 「えっ、本当で御座いますか。」


 「本人が言ったんだがね、その前に、隆一は、じ~と、見ているんだよ、


その眼つきは普通の眼つきじゃ~無いんだ。


 多分、普通の人が見ても判らないだろうがね。」


 「やはりですか、あの方は、本人もまだ、お気付きになってない感覚があ


る様に思うのですが。」


 「いや~、私も、そう感じたよ、数本、射るのを見たが、全体が自然体な


んだね、愛子もわかっていると思うんだ、それでだ。」


 「ご主人様、何か、作戦を考え付かれたのですね。」


 「うん、その通りだよ、明日の会議には、愛子も出席させなければならな


いからね。」


 シュミットは頷いている。


 「戻る途中、牧場に行ってきたんだ。」


 「さようで御座いますか。」


 「うん、其処に日本人の加藤がいるだろう。」


 シュミットはわかったのだ。


 「では、今夜の。」


 「そうだよ、加藤も呼んだよ。」


 「ご主人様、加藤に芝居を。」


 「そうだ、牧場の数人と、2~3日、牧場の見回りをさせようと思って


ね。」


 「さようで、御座いますか、でも、ご主人様、牧場の周辺には、狼や熊が


多く生息しており、大変、危険で御座いますよ。」


 「判っているよ、だから、加藤には数人は腕利きを連れて行く様に言って


有るんだ。」


 「さようで、御座いますか。」


 「私の、考えた作戦が成功すればだ、次の作戦に持って行くよ。」


 「はい、非常に楽しみでございますね。」


 シュルツは愛子は勿論だが、隆一が全く予想もしない芝居と言う名の作戦


に、と、言うより、隆一が本物のスナイパーになれるのか、極秘の作戦に入


って行くので有る。


 「そうなんだ、加藤もわかっているはずだからなぁ~。」


 「はい、ご主人様、良い結果を期待しております。」


 「シュミット、私はね、何とかして、隆一を。」


 「勿論で御座います。」


 一方、何も知らない隆一は。


 「愛子、僕は、何かわからないんだが、急に上手になったような気がする


んだけど。」


 「私も、本当に驚いて要るのよ、大学時代は、的には当たるけど、試合に


出れる様なレベルじゃ~無かったもの。」


 「いや~、本当に、僕自身が驚いているんだ。」


 「ねぇ~、何かあったの。」


 「いいや、別に、僕は、何時もの僕自身なんだ、僕に、一体なにがあった


んだろう。」


 「隆一さん、頭は大丈夫なの。」


 と、愛子は隆一の額に手を当て。


 「熱も無いわよ。」


 「当然だろう、僕は、本当に元気だ、何処も悪いところなんかないよ。」


 と、愛子の肩に。


 「ねぇ~、先に、お風呂に入って、ゆっくりとしましょうよ、私が背中を


流してあげるからね。」


 愛子は、優しい目で言ったのだ。


 「そうだな、でも、今日、はじめて着いたと言うのに、僕は、何日も前か


ら居るような気分なんだよ。」


 「えっ、本当、隆一さんが、そう思ってくれるなら、此処に来た意味が有


ったわよ。」


 「うん、僕も、実は、外国なんてはじめてだったんだ、だからね、飛行機


の中では色々と考え事ばかりしてたんだ。」


 「そうなの、私は、てっきり疲れて眠っているんだと思っていたの。」


 「それも、あるけどね、だって、そだろう、ある日、突然呼び出され、出


張命令、その時、愛子とね。」


 愛子も思い出していたのだ。


 「好きだったのよ、私、隆一さんの事を。」


 「えっ、本当に、だって、あの頃は。」


 「そうだけど、あの人とは、何も無かったの、でも、同じ部でしょう、私


から別れを言うのも、私は、いやだったの、で、あの人に嫌われるようにし


たのよ。」


 「そうだったのか、僕は、何も知らなかったんだ。」


 「私も、色々と悩んだのよ、だって。」


 「愛子、もういいよ、全て過去の話だからね。」


 と、隆一は愛子を抱きしめた。


 愛子の目には涙があふれ。


 「隆一さん、絶対に離れないわよ。」


 「僕だって、愛子を離さないからね。」


 「隆一さん、先にお風呂に入るのよ。」


 「そうだったな。」


 二人は其のまま風呂に入り。


 一方、牧場では。


 「ジム、2~3日だけど、日本人を牧場の周りを案内する事に成ったん


だ。」


 「あ~、其れで、さっき、ボスが来てたのか。」


 「うん、そうなんだ、明日から会議があるだろう。」


 「知ってるよ、でも、何故、日本人が。」


 「愛子のご主人なんだ。」


 「え~、愛子が結婚したのか、こりゃ~、大騒ぎになるぞ~。」


 「うん、其れは、別にいいんだけれど、そのご主人は、まだ、我々の事を


知らないんだよ、其れで、ボスの命令で2~3日の間、城から連れ出せと言


われたんだ。」


 「そうか、判ったよ、でも、愛子は。」


 「愛子は、会議に出席するんだ、其れで、今夜、二人の歓迎パーテイをす


るんだが、ボスも、僕に芝居をするようにと言われたんだ。」


 「なんで、加藤が芝居を。」


 加藤は、考えていた。


 「僕が、愛子にプロポーズして断られた、と、言う話でどうだろうか。」


 「何、君が、愛子にプロポーズしたって、本当の話なにか。」


 加藤はニヤリとして。


 「そんな、話、嘘に決まってるだろうが。」


 だが、本当は、ジムがプロポーズしたので有る。


 「加藤、本当の話をするとだ、愛子にプロポーズした事が有るんだよ。


 加藤は驚きもせず、話を変えたのだ。


 「じゃ~、ジムが、その話をしてくれるか。」


 「えっ、なんで、僕が。」


 「その方が、本当らしく見えるだろうからね。」


 ジムは、乗り気になっている。


 「だけど、この後が、問題なんだよ。」


 「加藤、何を考えて要るんだ。」


 「うん、そのご主人を連れ出す方法なんだ。」


 ジムはニコリとして。


 「そんなの簡単な話さ、牧場の見回りをするから、君もどうだって、言え


ばいいんだ。」


 加藤は、それでも考えて要る。


 「だけどなぁ~、牧場の周りには、狼が多いし、熊も、多く住んでるんだ


よ、我々だって、時々、恐ろしくなるんだから。」


 「それじゃ~、全員にライフルを持たせて行けばいいんだ、日本じゃ~、


拳銃やライフルは使えないけど、此処では、みんな、普通に使うんだよ、其


れに、狩りも出来るから、そのご主人だって、必ず、満足すると思うんだ


よ。」


 「そうだな、牧場じゃ~、ライフルは、何時も必要なんだからなぁ~、じ


ゃ~、ジム、4~5人集めてくれないか、それと食料もな。」


 「任せなって、その愛子のご主人を満足させればいいんだな。」


 「そうだよ、じゃ~、頼んだよ。」


 と、牧場でも、明日から、数日間、牧場の巡回と言う名目で、隆一を城か


ら遠う避ける作戦が開始させたので有る。


 そして、数時間後、城で、隆一と愛子の結婚披露パーテイが始まったので


ある。


 「ご主人様、予定の時刻と成りました。」


 「うん、判ったよ、隆一、愛子、こっちに来てくれ、みんなに紹介するか


らね。」


 隆一は、少し緊張している。


 其れは、西洋のパーテイにはじめて参加、それも、今夜は主役なのだ。


 「今夜は、みんなも知って要る、私の娘でもある、愛子が素晴らしい男性


を見つけ、その男性と結婚した事を知らせる、みんなも知って要ると思う


が、愛子は、私の娘と思って要るんだ、その娘、愛子が、惚れた、この男性


と一緒になったんだよ、彼が、愛子のご主人で、隆一と言うんだ、みんな、


お祝いの拍手を。」


 と、行った時、大きな拍手と口笛が聞こえて。


 「愛子、おめでとう。」


 「愛子、本当に良かったね。」

 

 と、あちらからも、此方からも聞えてくるのだ。


 「其れじゃ~、愛子の愛している、ご主人から一言だよ。」

 

 会場は、一瞬、静まりかえったので有る。


 「皆さん、始めました、今、ご紹介を頂きました、私が、愛子の主人で、


吉村隆一です。


 今後共、よろしくお願いします。」


 之が、隆一の名前がはじめて組織の人達に知られる場と成ったので有る。


 「私は、愛子が思う様な人間じゃ~、無いかも知れませんが、今では、私


の方が、愛子を愛しています。」


 「いいぞ、隆一。」


 と、掛け声があり。


 「有難う、御座います。


 実は、私は、外国がはじめてなんですが、先程も愛子に言ったんですよ、


このお城に、今日、着いたのに、私は、数日前から着ている様な気持ちなん


だと、今、はじめて、皆さんのお顔を拝見したんですが、数日、いや、数ヶ


月も前から知って要るような気がするんです。


 私は、このお城の人達と、今後も、仲良くして行きたいと思っておりま


す。


 私の至らない事は全て言って下さい。


 そして、私と愛子を今後共、よろしくお願いします。」


 と、隆一は、冷や汗をかいている気分だったが。


 「隆一、君は此れから、いつでも、此処に来てもいいんですよ。」

 

 と、シュルツは、微笑みながら言ったので有る。


 「其れじゃ~、みんなで、お祝いの乾杯をしましょうか、じゃ~、みんな


宜しいか、では、隆一、愛子、結婚おめでとう、乾杯。」


 と、シュルツの言った後、会場では、大きな声で。


 「愛子、隆一、幸せになぁ~、頑張れよ~。」


 その後は暫く飲み、食べながら、雑談が始まっているのだ。


 その時、一人の男性、其れは、ジムだったが、ジムは近づき。


 「愛子、この僕のプロポーズを受けて断った訳が、今、わかったよ、彼


が、愛子のご主人なんだね。」


 「ジム、そうなのよ、此れからも、よろしくね。」


 と、愛子は、二コットしたのだ。


 「愛子、彼じゃ~、僕も諦めるよ。」


 と、この時、会場は大笑いに成ったのだ。


 「ジム、君も、愛子にプロポーズしたのか。」


 「うん、そうだよ、君もか。」


 「そうなんだ、だけど、僕が振られた理由がわかったよ、隆一は、ハンサ


ムだよ、其れに、僕達が負けそうな体格だからね。」


 「そうなのよ、私の彼は、世界一、じゃ~無くて、宇宙一なんだもの、ね


ぇ~。」


 と、愛子は、隆一を見つめるので有る。


 「隆一、明日は、どこかに行く予定でも有るのか。」


 「いいえ、僕は、別に予定は有りませんが。」


 「じゃ~、僕達と、一緒に行かないか。」


 「えっ、何処に行くんですか。」


 シュルツの作戦が始まったのだ。


 「実はね、明日から、数日掛けて、牧場の見回りに行くんだが。」


 「数日間って、この牧場、そんなに広いんですか。」


 加藤も側に来たのだ。


 「君が、愛子のご主人なのか。」


 「はい、そうですが。」


 加藤の話が始まったのだ。


 「隆一、悪い事は言わないよ。」


 と、加藤はニヤリとした。


 「何故ですか、明日から牧場の牧場の見回りに行かないかって誘われたん


ですが。」


 「ジム。」


 と、言って、加藤はジムを見たのだ。


 「加藤、僕は、悔しいんだよ、だって、愛子は、僕のプロポーズをけって


だよ、隆一と結婚したんだからね。」


 と、ジムは愛子を見たのだ。


 愛子も会話に加わったので有る。


 「だって、あの時には、私は、隆一さんと、ねっ、隆一さん。」


 隆一は、この作り話を信用しているのだ。


 「でも、加藤さん、みんなは私を。」


 「隆一、この牧場は、多分だよ、世界でも、1か2位くらいの広大な牧場


なんだ、其れに狼も熊も、出没するんだよ。」


 「えっ、牧場って、周りを囲いして要るんじゃ~、無いんですか。」


 ジムもニヤリとして。


 「余り広すぎて、囲いなんか作れないんだよ、だから、何時も、見回りは


命掛けなんだよ。」


 隆一は少し考え。


 「僕は、本当は行きたいんだけど、僕が、一緒に行けば、みんなに迷惑が


掛かると思いますので、今回は、ご辞退させて頂くほうが良いと思います


が。」


 だが、隆一が行かなければ、この作戦は失敗に終わるのだと、シュルツは


思い。


 「隆一、其れは違うよ、隆一は危険だ、だが、隆一が行かなければ、危険


はないと、言うことじゃ~ないんだよ、其れじゃ~、この先、危険だ、其れ


はだ、事故も含めて、と、言う事にならないか、危険だから近寄らないと、


言う事に成るよ、例えば、隆一と愛子が日本に戻る事になった、だけど、帰


りの飛行機にも乗れないと言う事になるんだよ。」


 と、シュルツが話したのだ。


 隆一は素直に聞いて要る。


 「隆一、僕達も、少し大げさに言ったが、狼や熊は何時も出没しているわ


けじゃ~、無いんだ、隆一、済まないね、驚かせて。」


 と、ジムは誤り。


 「本当はね、僕は、本物の狼を見た事がないんですよ、映画やテレビなん


かで見ると、本当に恐ろしいように描かれて要るから。」


 隆一が思って要るのは、当たり前である。


 実際、日本では、この数十年間、狼が発見されておらず、映画の中や、テ


レビの中で映し出されて要る狼はすべて外国の狼なのである。


 「隆一、野生の生き物はだね、毎日々が生死を掛けた戦いなんだよ、この


森の中にいる全ての生き物がだよ、鹿もウサギもだ、我々、人間が狼を恐れ


ている様に、自然界で生きている生き物、特に動物は毎日が生死の狭間にい


るんだ。


 此処にいる、馬だって、同じなんだ、野生の馬は、人間を敵だと思い、い


つでも安全なところに逃げる事を考えて要るんだよ。」


 シュルツの話で、隆一は直ぐに納得するのだ。


 「僕は今まで、都会に住んでいたので、自然界とは、映画やテレビでしか


見た事が無いんです。


 僕も本当は行きたいんです。


 でも、本物の狼を見て、僕はパニックになり、その結果、皆さんに。」


 ジムは首を振り。


 「隆一、狼はね、本当は人間が一番恐ろしいんだよ、だから、僕達だっ


て、本物の狼は殆ど見た事が無いんだ、それにだよ、狼が、何時も、姿を見


せていれば、ウサギや鹿を捕まえる事も出来ないんだよ、そんな事に成った


ら、狼は絶滅する事に成るんだ、それにだよ、狼は賢いんだ、我々、人間以


上にね。」


 「えっ、そんなに賢いんですか。」


 シュルツは、後一押しだと思ったので有る。


 「人間はね、スポーツで、狩りをするが、自然界じゃ~生きる為に狩りを


するんだよ、だから、私も含めてだが、牧場の人達も農場の人達もスポーツ


で狩りはしないんだよ。」

 

 隆一もシュルツの話に頷いているのだ。


 「確かに、そうですよね、さっきも言われましたが、帰りの飛行機だっ


て、其れに、自動車の事故だって有りますからね。」


 後少しだ。


 「隆一、自動車事故の確率から考えてもだよ、狼や熊に遭遇する確率は殆


ど無いと思ってもいいくらいだと思うんだ。」


 「判りましたよ、僕も、本当はね、一度は本物の狼を見たいとは思って要


るんですが。」


 加藤はニヤリとして。


 「それじゃ~、隆一は、狼に会いたいんだ、だけど、まぁ~悪いがね、反


対に狼が、隆一を怖がってしまうよ。」


 と、加藤は笑うので有る。


 「えっ、なんでですか。」


 「だって、隆一は弓の名手なんだろう、狼だって、殺されるところには姿


を見せないよ、あの男は恐ろしいんだと言ってね。」


 と、加藤は笑い。


 「僕は、弓の名手じゃないですよ。」


 「でも、このお城のみんなは知ってるよ、愛子の旦那は弓の名手だっ


て。」


 「へえ~、其れは、嬉しいなぁ~、じゃ~、僕は弓を持っていきます


よ。」


 と、隆一も笑い。


 「隆一、其れがいいよ、隆一が僕達を守ってくれるんだ。」


 「それじゃ~、僕も連れて行って下さい。


 皆さんに迷惑を掛けないようにしますから。」


 シュルツも、側の愛子もほっとするので有る。


 「そうか、良かったなぁ~、加藤、明日は、朝食後にと言う事でどうだろ


うか、シュミット、明日の朝食後に、隆一を牧場まで送って欲しいんだ。」


 「はい、ご主人様。


 加藤、出る時に、私から連絡を入れますので。」


 「判りました。


 ボス、僕達は、此れから準備が有りますので。」


 「そうか、それでは、ジムも、よろしく頼みますよ。」


 「はい、ボス、じゃ~、隆一、明日の朝、待って要るよ。」


 と、加藤とジムは会場を後にするので有る。


 「隆一さん、私も、何度か牧場に行ったんだけど、一度も、野生の、そう


だ、一回だけ、野生の鹿を見たのよ、立派な角を持ってたわ、それ以外に野


生の生き物に遭った事が無いのよ。」


 「愛子が言うのだから、問題は無いね。」


 「その通りよ、加藤さんやジムの言う通りにしていれば、何も心配は無い


と思うわよ。」


 その頃、会場の奥で、数人の男達が隆一を見ているのだ。


 彼らは、世界中から集まった、総支部長なのだ、彼らは普段民間の会社


か、それとも、政府機関に勤めている。


 勿論、彼らの正体を知る者などいないのである。


 彼らは、隆一の何を見ているのか。


 「やぁ~、君が、愛子の旦那さんか、愛子、本当に、この男性で、いいの


か、僕はね、いつでも、いいよ。」


 この男性にも、家族は居るのだが。


 「ジーン、何、言ってるのよ、奥さんに言うわよ。」


 「愛子、冗談だよ。」


 愛子も別に悪い気はしないが。


 「ジーン、私はね、この人に惚れているのよ、誰よりもね。」


 「愛子、そりゃ~、わかっているよ、だけど、本当にハンサムだ、愛子、


こんな、ハンサムな男性だ、他の女性に採られないようにね。」


 隆一も嬉しいのだ、だが、先程から、視線を感じているが、愛子には聞け


ないのだ。


 「愛子、少し、失礼するよ、直ぐに戻ってくるからね。」


 「いいわよ。」


 隆一は、煙草を吸うためというよりも、視線を感じて要るのを確かめたか


ったのだ、


 一度、会場の外に出た。


 そして、煙草に火をつけ、何気なしに、周りを見るとお城の関係者とは、


少し雰囲気の違う、男性を見かけたのだ、だが、良く見ると、数人の男性が


居る。

 

 数分後、隆一は、煙草を消して会場に戻った。


 その途中、彼らは、隆一を観察している様に思えたのだ。


 だが、この男達の事は、愛子に聞く必要は無い、何れ時期が来ればわかる


だろうと、思ったのである。


 「愛子、お待たせ。」


 「隆一さん、煙草だったの。」


 「うん、気分を変えたかったんだ。」


 愛子は、隆一の仕草が少し変わったと思うのである。


 其れは、さっきと立つ位置が変わったからで、愛子は知らん振りを決め込


んだ。


 「隆一、明日の話なんだがね。」


 「はい、何か特別な事でも。」


 「そうじゃ~無いんだよ、服装なんだがね。」


 「そうだ、僕は服装の事を聞くのを忘れていましたよ。」


 と、ニガ笑いをするのだ。


 「いや、別に特別な服装じゃ~無いんだがね、愛子、隆一のジーンズは持


ってきたか。」


 「はい、私も、彼の分も有りますよ、其れが。」


 「愛子、明日から、数日間、馬に乗るんだよ。」


 「そうだったわ、私は、隆一さんが、普段、着ている服だけを持ってきた


んだけど。」


 愛子の芝居だった。


 「馬に乗る事なんて考えて無かったんだけど、丁度、良かったわ。」


 隆一も、普段はジーンズを穿いているので不思議には思って無かったので


有る。


 「僕は、馬に乗るのもはじめてなんだ。」


 「隆一さん、大丈夫よ、この牧場の馬はね、みんな、優しいのよ、其れ


に、あの目、あの目がね、とっても優しい目をして要るのよ、隆一さんも、


一度、乗ったらね病み付きになるわよ。」


 「そうかなぁ~、本当にそうだといいんだが。」


 シュルツは目で合図し、会場の奥にいる男達は隆一の知らない間に、何処


かに消えていたので有る。


 「そうよ、其れに、馬はね。」


 シュルツは。


 「愛子、それ以上、言わないほうがいいよ、余り言うとね、明日からの楽


しみがね。」


 と、優しい目で言ったのだ。


 「そうだったわねねぇ~、隆一さん、農場の人達の所に行きましょう


よ。」


 と、愛子は、シュルツの考えて要る作戦の為に連れて行くのだ。


 「うん、隆一、其れが、いいと思うよ、城に一番近いところにあるから


ね。」


 「そうだね、じゃ~、行くか。」


 と、隆一と愛子は、グラスを置き、農場の人達が居る場所に行くのであ


る。


 その間、シュルツは、何やら、シュミットに話をして要るのだ。


 「隆一さん、この農場の人達なのよ。」


 「隆一です、初めまして、よろしくお願いします。」


 「やぁ~、君が、隆一か、アーチェリーであのボスを驚かせたんだっ


て。」


 「えっ、皆さんも知っておられるんですか。」


 「勿論だよ、でも、あのボスを驚かすほどの名人がいるとは。」


 「いいえ、僕は、そんな。」


 隆一が、この城に着いてまだ、一日も経っていないのだ、アーチェリーの


事も、ほんの数時間前の出来事なのに、この城では、直ぐに情報が伝わるん


だと。


 「僕は、別に、シュルツさんを驚かせる積もりは無かったんですよ。」


 「だけど、ボスが言ってたよ、今日、来た愛子の旦那は凄いよ、私の放っ


た矢を的にするんだからなって。」


 「僕は、ただ、普通に的に当てたんじゃ~、何か面白く無いと思っただけ


なんですよ。」


 愛子は、側で、微笑みながら聞いて要るのだ。


 其れは、隆一と言う人間を知ってもらうためである。


 彼らは、全員、組織の幹部であり、愛子の仲間でも有る。


 「だけど、それが凄いんだよ、僕達も、ボスに教えてもらってるんだが、


的に当てるのも出来ないんだからね。」

 

 と、笑うので有る。


 「すみません、僕が余計な事を。」


 「いや、いいんですよ、僕達の出来ない事を、隆一がやったんだよ、本当


の事を言うとね、僕達は嬉しいんですよ。」


 「えっ、でも。」


 「いや、違うんだよ、ボスの悔しそうな顔を見たのははじめてなんだよ、


だからね、どんな男だろうと、みんなで話をしてたんだよ、だからと言っ


て、ボスは、別に怒っていないんだ、反対に喜んでいたよ。」


 「えっ、本当なんですか、実はね、さっきも少し脅かされていたんです


よ。」


 農場の全員が知って要るが、知らない振りをして。


 「隆一、何かあったのか。」


 「実はね、明日から牧場の見回りに行かないかって言われて、僕は、行き


たかったので、はい、と答えたんです。


 するととね、この城から、牧場に行くまでと、牧場の周りには、狼がいる


って脅かされたんですよ。」


 「隆一、其れはね、本当だよ、でも、僕達も、狼の遠吠えは聞くが、滅多


に狼を見る事が無いんだ。」


 「いや~、其れで、安心しました。


 僕も、本当は楽しみにして要るんです。」


 「ほぉ~、其れは良かったですね、牧場の人達は、皆さん、親切な人達で


すからね。」


 と、農夫は言うが。


 其れは、当然である、自分達の仲間なんだから。


 「隆一さん、良かったはね、私は、隆一さんの喜ぶ顔を見られるだけで十


分なの。」


 「愛子、日本にも牧場は有るが、僕は、テレビで見た様な広大な牧場は見


た事が無いんだ。」


 「隆一さん、この牧場は、テレビで見たと同じ風景だと思うわよ。」


 「僕も、そう思ってるんだ。」


 「それじゃ~、行きましょうか。」


 「いや~、僕は、少し聞きたい事が有るんだ。」


 「何か、心配な事でも有るの。」


 愛子は、余計な事を、今、聞かれても困ると。


 「今日、ソーセージを食べたんだけど。」


 「あの、ソーセージね、あれはね、この農場で作っているんですよ。」


 「やはり、そうでしたか、僕も、はじめて手作りのソーセージを頂いたん


ですが、とても、美味しかったんで。」


 「ソーセージは、農場でも、最高に自慢しているんですよ。」


 「また、食べたいんですが。」


 「そうですか、我々も、美味しいと言われるだけで、満足ですよ。」


 「有難う、じゃ~。」


 と、隆一と愛子は戻って行くので有る。


 その後、一時間ほど続いたパーテイは終わりに近づき。


 「みんな、今夜は、隆一と愛子の為に集まってくれて有難う。


 明日からの仕事も有るので、今夜は終わりにしたいと思う、みんな、此れ


からも、隆一と愛子をよろしく頼みますよ。」


 と、シュルツはパーテイの終わりを告げ、集まった農場や、その他の全員


が、夫々の家に戻って行くので有る。


 暫くして。


 「隆一、明日は早いから、今夜は眠ったほうがいいね、其れに、今日、着


いて色々な事があって、疲れているだろうからね。」


 「はい、有難う御座います。


 今夜は、本当に有難う御座いました。


 僕も、少し、疲れが出てきました。


 でも、明日が楽しみで、子供の頃の遠足を思い出します。」


 「そうか、隆一も、明日が楽しみなのか、其れは、良かったね。」


 「じゃ~、愛子、僕は先に寝るよ。」


  愛子は微笑み。


 「隆一さん、ゆっくりとね、今夜は邪魔しないから。」


 隆一は、愛子にキスをすると、2階に上がって行くのだ。


 「愛子、隆一は牧場に行ったら驚くだろうなぁ~。」


 「私も、そう思ってるの、こんな広大な牧場は日本には有りませんの


で。」


 「まぁ~、其れよりも、愛子、隆一は、何も問題は無いね。」


 「ええ、私も、そう思いました。


 私と同じ大学でアーチェリー部だったんですが、彼は、初めから、何か特


別なものを持って要ると感じていました。」


 「うん、私も、今日、はじめて会ったんだがね、彼は、私が見たところで


は、ダイヤの原石だね。」


 愛子は嬉しくなり、シュルツに抱きつくので有る。


 「愛子、明日から牧場の見回りに行くんだが、其れで、答えが出ると思う


よ。」


 「えっ、そんなに早くですか。」


 「今まで、何人か、牧場の見回りに行ったんだ、だがね、初日よりも2日


目くらいで、答えが出てしまうんだ。」


 「私も、思いますね、はじめは、何が目的で、牧場の見回りに、と、思っ


たののですが、私は、みんなと仲良くする事が大切だと、はじめは思いまし


たが、だけど、本当は違ったんですね。」


 「女性で、あれをクリアしたのは、愛子だけだからね。」


 何と、明日から始まる牧場の見回りは試験だったのだ。


 その頃、隆一は、早くも深い眠りに入っていた。


 「私は、隆一さんだから、問題なくクリアすると思ってるんです。」


 「うん、私も、問題は無いと思ってるんだよ、愛子、今日は、大変な一日


だったね。」


 「私は、別になんとも無いんだけど、隆一さんは、本当に疲れていると思います。


 でも、クリア出来なかったとしても、私は満足です。」


 「愛子は、本当に隆一の事を愛しているんだね。」


 「勿論、本当の気持ちなんです。」


 「其れはいい事だよ、さぁ~、愛子も眠ったほうがいいよ。」


 「有難う御座います、じゃ~、お休み。」


 と、愛子はシュルツにキスをして2階に上がって行ったのである。


 愛子が上がった頃、シュミットが来たのだ。


 「シュミット、隆一をどう見るかね。」


 「はい、何も知らないので、少し可哀そうだとは思いましたが、私は、今


日、はじめて隆一様を見たのですが、眼光は鋭く、体格も、申し分有りませ


ん。


 ただ、明日からの牧場の見回りなんですが、少し厳しいかと思っておりま


す。」


 「私も、同じなんだがね、私は、牧場の見回りは簡単にクリアすると思っ


て要るんだ。」


 「ご主人様、其れは、何か理由が有ると思うのですが。」


 「そうなんだよ、今まで来た者達で、私の放った矢を的にしようなんて考


えた者は一人もいなかったと思うんだ。」


 「確かに、その様ですね、あの距離で、10ミリの的に当てる事は誰も考


えませんよ。」


 シュルツもシュミットも同じだった、過去、この城に来た者達の中では、


隆一のとった行動ははじめてだった。


 今まで来た者達は普通に的の中心を狙っていたのだから。


 其れは、30メートルの距離だった。


 「私はね、隆一は、別の意味で、他の者達とは違ったものを持って要ると


感じたんだ。」


 「ご主人様は、別のお考えが有るのですね。」


 シュミットは、この時感じたのだ、牧場の見回りはテストでは無いと。


 「やはり、判ったかね。」


 「はい、私も長いお付き合いで御座いますので。」


 「シュミット、数年前に作った、あの特別製の。」


 シュミットは直ぐにわかったので有る。


 「はい、今も、大切に保管しております。」


 「そうか、あれを、調整して欲しいんだ。」


 「はい、畏まりました。」


 「だが、シュミット、之は。」


 「ご主人様、存じて降ります、ご主人様、後、何も用事が無ければ、私


は、次の準備が御座いますので。」


 「うん、判った、では、よろしく頼みましたよ。」


 「はい、では、お先に失礼致します。」


 と、シュミットは戻って行くので有る。


 そして、明くる日の朝、隆一は、早く目が覚めたのだ。


 「愛子。」


 と、言ったが、愛子も疲れているんだと、隆一は静かにベッドを出て、食


堂に行くと、早くも、シュルツは朝食をとっていたのだ。


 「お早う御座います。


 昨夜は、有難う御座いました。


 僕は、お陰さまで、楽しい一夜を過ごさせて頂きました。」


 と、隆一は、頭を下げたので有る。


 「そうですか、良かったですね、隆一も、さぞかし疲れたでしょう。」


 「いいえ、僕よりも、愛子が疲れたと思います。」


 と、隆一は、自分の事よりも、愛子の疲れを心配して要る。


 之が、日本人なのだと判っているシュルツである。


 「隆一、今日からは、楽しい牧場の見回りだがね、加藤とジムに任せる事


だよ、其れに、同行する者達も、最高の人材だからね。」


 隆一は頷き。


 「僕は、何も心配して無いんです。


 僕は、皆さんに迷惑にならないようにと、ただ、それだけで、後は、楽し


みの方が多いんです。」


 その時、シュミットが朝食を運んできた、其れは、あのソーセージとトー


ストで有る。


 香ばしい香りのコーヒーも一緒だった。


 「わぁ~、美味しそうな、ソーセージだ。」


 と、思わず叫んでしまったのだ。


 「すみません、突然、大きな声を出して。」


 側では、シュミットが二コ二コとして要るのだ。


 「隆一、いいんですよ、君は、素直な気持ちを口に出されたんですから


ね。」


 と、シュルツも二コ二コとして要るのだ。


 だが、この素直さが仇にならなければいいのだと思う、シュルツで有る。


 隆一は、ソーセージを美味しそうに食べ、コーヒーを飲み、30分ほどで


食事は終わったので有る。


 「隆一様、少し休まれてから、出発致しますので。」


 「はい、判りました、では、30分後に。」


 その時、愛子が降りて来たのだ。


 「隆一さん、早く起きたのね。」


 「うん、愛子も疲れていると思ったんだ、ぐっすりと眠っていたから、起


こすのも。」


 「別に起こしてくれても良かったのに。」


 「僕は、朝食も終わって、30分後の牧場に向かう事になったんだ。」


 「そうなの、隆一さん、このリュックの中に、5日分の着替えを入れたん


だけど。」


 「有難う、でも、僕が用意しようと思ってたんだ。」


 「隆一さん、私は妻よ、2~3日でも、1日でも出張の用意は妻がするも


のなのよ。」


 と、愛子は、少し、すねたのである。


 「判ったよ、御免ね。」


 「隆一さん、お土産話を待って要るわよ。」


 「うん、でも、土産話は出来るのかなぁ~。」


 「私はなんだっていいのよ、隆一さんのお話が聞きたいだけなの。」


 と、愛子はニコットしたのだ。


 まだ、時間は早かったが。


 「愛子、僕はそろそろ行くよ。」


 「隆一さん、楽しんできてね。」


 と、愛子は数日だけと思って要るが、隆一に抱き着き濃厚なキスをするの


だ。


 隆一も愛子の求めに応じたので有る。


 「じゃ~、行ってくるよ。」


 と、隆一は、玄関に向かうのだ。


 愛子も玄関まで一緒に行き、隆一が車に乗るのを見て手を振ったのであ


る。


 隆一の乗った車が見えなくなるまで、愛子は玄関で見送った。


 「隆一様、30分ほどで牧場に到着しますので。」


 「有難う、シュミットさん。」


 「後は、加藤とビルに任せ、私は城に戻ります。」


 「そうですか、でも、帰る時も注意して下さいね。」


 「はい、有難う御座います、隆一様も。」


 と、話は続くが、30分ほどで牧場に着いたので有る。


 「隆一様、此処が牧場です。」


 「へぇ~、テレビや映画で見るのと同じなんですね。」


 「はい、牧場では、木造の方が住み心地が良いと、加藤もジムも申します


ので。」


 「やはり、牧場は木造の家ですよね。」


 「でも、中は、昔と違いますので。」


 その時、加藤とジムが出迎えに現れたのである。


 「やぁ~、隆一、早かったね。」


 「ええ、僕も、早く牧場を見たかったですし、何かわかりませんが、子供


の時の様に眠れ無かったんですよ。」


 「シュミットさん、有難う、気を付けて帰って下さいね。」


 「はい、隆一様も、楽しんで下さい。」


 と、シュミットは、城に戻って行くので有る。


 「加藤、隆一を案内して、着る物と装備を渡してくれ。」


 「判った、隆一、じゃ~、行くぞ。」


 と、加藤は隆一を連れて行くので有る。


 二人は、小屋に入り。


 「隆一、ジーンズの上から、之を穿くんだ。」


 「あっ、之は、カウボーイ達がズボンの上から穿いている物なんですか。」


 「うん、そうだよ、牛革で作って有るんだ。」


 隆一に渡し、次にブーツを選ぶので有る。


 「隆一、この中から、自分に合ったブーツを選ぶんだ。」


 「えっ、このブーツも履くんですか。」


 「そうだよ、今、履いているスニーカーでは無理だから。」


 と、加藤は、ニコリとするのだ。


 次にハットも渡した。


 「わぁ~、之じゃ~、僕も、カウボーイになった気分ですよ。」


 「いや~、隆一は本物のカウボーイですよ、じゃ~、隣の部屋に行きまし


ょうか。」


 と、加藤はさり気なく、隆一を部屋に入れると、其処は、牧場で使用する


武器の保管庫なのだ。


 「うわぁ~、之は、加藤さん。」


 と、隆一ははじめて見る光景だった。


 拳銃やライフル銃が整理され保管されているので有る。


 「隆一、此処はね、牧場でも見回りの時と、若しもの時に使用するための


武器庫なんだ。」


 「本当に、本物なんですか。」


 加藤はニヤリとして。


 「勿論ですよ、我々も普段は使用する事は有りません。


 でも、牧場の見回りの時には、全員が持って行くんですよ。」


 隆一は、西部劇で見た、ライフル銃やガンベルト、隆一は、西部劇の中に


居る様な錯覚を覚えるので有る。


 「じゃ~、加藤さん、今から行く牧場の見回りにも持って行くんです


か。」


 「勿論ですよ、でもね、今は、西部劇の時代じゃ~無いので、敵は人間じ


ゃ~無いのでね。」


 「でも、何故、ライフル銃や拳銃が必要なんですか。」


 「隆一、昨夜も言いましたがね、狼や熊なんですよ。」


 「じゃ~、やはり、狼も熊も出没するんだ。」


 「勿論、出ますよ、でもね、狼や熊は食べ物を探すんですよ。」


 「はい、其れは、昨夜も聞きましたが。」


 隆一は、少しの不安を感じたが。


 「じゃ~、皆さんが持って行かれるんですよね。」


 「そうですよ、隆一も持って貰いますよ。」


 「えっ、僕は、一度も、銃なんて持った事も無いんですよ。」


 「其れは、知っていますよ、でも、ガンベルトを着けるとね、ガンマンに


なった気分になりますよ、まぁ~、実弾は入れませんがね。」


 と、加藤は笑い、隆一もニガ笑いするのである。


 「そうですか、僕もガンマンになった気分にねぇ~。」


 「隆一、不思議な事になるんですよ、このガンベルトを着けて下さい。」


 と、加藤は隆一にガンベルトを渡し、すると、隆一は子供の様な顔付きに


なったのだ。


 隆一はガンベルトを着けるので有る。


 「いいですね、その姿、鏡で見て下さい。」


 と、隆一を鏡の前に立たせるので有る。


 「いや~、参ったなぁ~、僕もガンマンですね。」


 と、隆一は、二コ二コとしているのだ。


 「ほらね、いいでしょう、之は、本物のガンマンですね、え~と、後は、


ライフル銃ですね。」


 と、加藤は、ライフル銃を数丁取り出したので有る。


 「えっ、加藤さん、僕もライフル銃を持つんですか。」


 「当たり前ですよ、隆一もみんなと同じですからね。」


 だが、隆一は、はじめて持つライフル銃の重みを感じて要るので有る。


 「加藤さん、さっきも言いましたが。」


 「判っていますよ、でもね、ライフル銃は必要なんですよ、若しもの時に


はね。」


 隆一はわかっているのか、うなずくのだ。


 シュルツの作戦はじわじわと進んで行くので有る。


 「まぁ~、狼が襲ってきても、我々がおりますから、心配は無いです


よ。」


 と、加藤は笑うのだ。


 「このライフル銃に実弾は入れるんですか。」


 加藤の顔は本当に入れるんだと言う顔だ。


 「勿論ですよ。」


 「でも、僕は一度も。」


 加藤は頷き。


 「此処を出発しましたら、暫く行ったところで、少し練習しましょうか、


其れで、十分ですからね、私が教えますから。」


 「判りました。」


 と、隆一は納得したのか、渡されたライフル銃を見ている。


 そのライフル銃は西部劇で見た、あのライフル銃である。


 「加藤さん、聞きたい事があるんですが。」


 「なんですか。」


 「このライフル銃なんですが、僕が見た、西部劇の中で使われた同じライ


フル銃ですよね。」


 やはり、聞いてきたかと思う、加藤で有る。


 「あ~、そうですよ、でもね、形は同じですが、現在の作り方で製造され


たライフル銃ですから、問題は有りませんよ。」


 加藤は話しながら、表に向かうので有る。


 表に出ると、今日から、一緒に行くカウボーイ達が居た、全員、同じ様に


カウボーイの服装と腰には拳銃、鞍にはライフル銃が収められているのだ。


 「やぁ~、君が、隆一か、今日から一緒に行くんだね、よろしくな。」


 と、一人のカウボーイが言うと、他のカウボーイ達も会釈した、顔付きも


穏やかで有る。


 後には、本物の幌馬車だ、之では、此れから牧場の見回りと言うよりも、


西部劇の映画でも撮影するのかと思う隆一で有る。


 「それじゃ~、行きますか。」


 と、ジムは穏やかな表情で言ったので有る。


 「はい、よろしくお願いします。」


 「じゃ~、みんな、乗ったら出発だ。」


 ジムが合図したので有る。


 隆一もはじめて乗るが、馬の背に座ると、本当に高いと思ったが、ジムの


合図で馬は静かに歩き始めたので有る。


 気分は最高だ、其れに、みんな同じカウボーイ姿だ、隆一の腰には、弾は


入ってはいないが拳銃もある。


 そして、今は、まだ、実弾の入っていないライフル銃も有る。


 「隆一、どうですか。」


 と、加藤はにこやかな顔で聞くのだ。


 「勿論、気分はカウボーイになったようですし、馬の背中に座ると、本当


に高いので驚いているんですよ、其れに、自分が映画の俳優にでもなったよ


うな気分ですよ。」


 と、隆一は子供の様な顔付きで喜んでいる。


 シュルツの作戦とは、全く気付いていない隆一で有る。


 出発して、森を進むと、時々、鹿を見るのだ。


 「加藤さん、あれは。」


 「あれね、あれは、野生の鹿ですよ、此方を見ているでしょう、一応、警


戒しているんですよ、此方が、何もしなければ、草を食べていますからね、


でもね、此方の動きで危険だと察したら直ぐに逃げて行きますよ。」


 隆一は、こんな近くに野生の鹿がいるのもはじめて見たので有る。


 それからは、何事も無く、1時間ほど、進んだところで空き地に出たので


有る。


 「それじゃ~、少し休みましょうか。」


 と、ジムが合図したので有る。


 「はい、判りました。」


 と、隆一も馬を降り、近くの木に馬の手綱を結び。


 「皆さん、よろしくお願いします。」


 と、隆一は帽子を取り、頭を下げた。


 「隆一、ライフルは。」


 「あっ、そうだ、鞍に付けたままだ。」


 と、大急ぎで取りに行くのだ。


 みんなもわかっている、隆一は日本人だ、日本では、一般の市民がライフ


ル銃を持つ事は許されない事を。


 「どうも、すいません、何せ、何もかもがはじめてなので。」


 ジムも加藤も何も言わず、二コ二コとしているのだ。


 一人のカウボーイが、馬車から実弾の入った箱を降ろしてきたのだ。


 「隆一、之が、実弾だよ。」


 「へぇ~、之がね、僕ははじめて見ました。」


 テレビや映画では良く見ている、ライフル銃の実弾だと。


 「今から、弾を込めますが、私が、実弾を込めますのでね、隆一もそれと


同じ様にすれば簡単に出来ますからね。」


 「はい、判りました。


 でも、緊張しますね。」


 隆一の手は汗が滲むのだ。


 ジムは隆一の側で数発の実弾を込めた。


 隆一も同じ方法で数発こめた。


 「之で、いつでも撃てるんですか。」


 「いや、違うんだ、今はね、弾が入っただけなんだよ、上に向けて引き金


を引いてご覧。」


 と、ジムの言ったように隆一はライフルを上に向けて引き金を引いた、だ


が、弾は出ない、何故、弾が出ないのだと思って要るので有る。


 「其れはね、弾を込めただけなんだよ。」

 

 と、ジムは持ち手で、手のカバーにもなっている金具を。


 「ほらね、カチッと、いったでしょう、之で、弾はいつでも発射出来るん


だ。」


 隆一も同じ様にすると、カチッと音がした。


 「はい、判りました、そう言えば、映画でも、同じ事をしていましたよ、


僕も、何度も見ていたのにねぇ~。」


「いや、気にする事は無いよ、はじめは出来ないんだから。」


 と、ジムは二コリとしたのだ。


 側では、他のカウボーイ達も見ている。


 なんで、こんな素人にと思われているんだろうと、隆一は思ったが。


「そうですよね、何でも初めから出来たら、皆さんの仕事は出来なくなるん


だと、僕は思ってはいませんよ、でも、皆さんの仕事は本当に大変です


ね。」


 と、隆一は感心するので有る。


 「じゃ~、今から、撃ってみますか。」


 と、ジムは隆一に何も教えず、行き成りライフル銃を撃ったので有る。


 その瞬間、前方にある、小石から白い粉が飛んだ。


 「わぁ~、凄い、あんな小石に。」


 と、隆一は驚いているので有る。


 「隆一、そうですか、撃って下さい。」


 と、言われた隆一は、何も教えられなかったが、映画のシーンを思い出し


ている。


 そして、隆一は引き金を引いた、弾はジムの撃った小石に命中したのだ。


 ジムも加藤も、他のカウボーイ達も驚いている。


 「隆一、本当にライフル銃を撃ったのははじめてなのか。」


 と、ジム達は戸惑っている様子だ、何も教えていない、それなのに、あの


小石に命中した、この隆一と言う男は。


 「勿論ですよ、でも、自分が一番驚いているんですよ。」


 「本当なのか、だけど、隆一は。」


 と、言ったジムは連射したのだ。


 的は、前方に有る1本の立ち木である。


 ジムは、牧場では誰でも知って要る射撃の名手で有る。


 その名手が驚いているのだ。


 「隆一、今のところに撃って見て下さい。」


 「はい、でも、出来るかなぁ~。」


 と、言って、隆一もジムと同じ連射したのだ、だが、数発しか弾は入って


いない。


 隆一は果たして、空撃ちをするのだろうかと、見ているので有る。


 隆一は全弾命中させたのである。


 そして、終わった。


 「ジム、申し訳有りません。


 弾を全部撃ち、弾切れに成りました。」


 ジムはと言うよりも、他のカウボーイ達は驚きを通り越している。


 「えっ、本当に。」


 と、加藤は知って要るが聞いたのだ。


 「ええ、さっき、1発撃ちましたんで。」


 この隆一は何発入れたのかも知って要るのだ、普通は必ずと言って良いほ


ど、空撃ちをするのだと、其れが、隆一は。


 「では、続けますか。」


 「はい、有難う御座います、でも、牧場の見回りの仕事があるのでは。」


 「いいんですよ、隆一の腕前で、我々も楽になりますから、少し続けます


か。」


 「はい、よろしくお願いします。」


 それから、射撃の練習は数時間も続くのだが、他のカウボーイも驚くほど


の腕前で有る。


 「隆一が、はじめて射撃をしたとは思われないですね、最初は少しです


が、的の中心を外していましたが、その後からは、全部が中心に命中してい


るんですから。」


 加藤も本当にはじめてなのか、それ程、信用できなかったのだ。


 その時、馬車のカウボーイが。


 「ジム、今から、別の場所に移動するよりも、此処で、昼食にでもしない


か。」


 「えっ、もう、そんな時間なんですか。」


 「うん、そうなんだ、出発した時間が遅かったからね、其れに、次の空き


地までは距離があるんでねぇ~。」


 「じゃ~、昼食の用意を頼むよ、隆一は、他の者と一緒に焚き火用の枯れ


木を探しに行ってくれ。」


 「はい、判りました。」


 と、隆一は喜んでいるのだ。


 だが。


 「隆一、拳銃の弾だよ。」


 「えっ、でも。」


 加藤は6発の弾を渡し、隆一は直ぐに拳銃に込めたので有る。


 それから、隆一は加藤と、他のカウボーイ達と一緒に枯れ木を探しに行く


ので有る。


 ジムは、馬車に積んである携帯電話でシュルツに報告するので有る。


 「ジムですが、あの隆一と言う男性なんですが。」


 「やはり、私も思った通りなのか。」


 「いいえ、それどころか、大変な腕前ですよ、はじめて、ライフル銃を使


うのでしょうか、私も、負けましたよ。」


 「ジム、それ程なのか、ジムが負けたと言わせるんだからねぇ~。」


 「ええ、私も、今まで、何人も引き受けましたが、隆一は数時間の練習


で、同じ所に撃ち込むほどに腕を上げましたよ。」


 「ジム、同じところと言うと、弾の上に次の弾を撃ち込まれると。」


 「そうなんです、その為に、弾痕は一箇所だけです。」


 「そうですか、判りました。


 では、此れから数日間は楽しみになりますね。」


  シュルツも予想はしていたのだが、ジムの話しでは、予想以上だと思っ


たので有る。


 「其れで、私の考えなんですが、宜しいでしょうか。」


 「宜しいでしょ、ジム、多分ですが、私と同じ考えだと思いますが。」


 「当たっていると思います。


 私は、此れから、狼の多い地域に入ろうかと思って要るんですが。」


 シュルツも同じだった。

 

 射撃訓練の的は動かない、だが、野生の、それも、狼の動きも早いが賢い


ので、先の動きが読めないのだ。


 「やはり、同じですね、後は、加藤に伝えて下さいね、では、また、連絡


を待っていますので、よろしく。」


 その頃、隆一は、枯れ木を探して森の中に入った。


 この森にも、多くの野生動物がいるのだ。


 其れに、今日は狩りに来たのでは無い。


 「大夫、集まったので、一度、戻りますかね。」


 「はい、判りました。」


 他のカウボーイは別の場所に置いて有る数本の枯れ木を運んで、すでに、


火はおこり、一人のカウボーイが調理をはじめていたので有る。


 彼らは、適当なところにも焚き火用の枯れ木を置いて要るのだ。


 「僕は、今、映画のシーンにいる様な気分ですよ。」


 「隆一、我々の牧場の家では、都会と同じなんですよ、でも、今回、牧場


の見回りは、本当に昔風で行きましょうか。」


 「はい、僕も、その方が嬉しいですよ、こんなところを車で行こうなんて


思いませんからね。」


 暫くすると、ソーセージと焼きたてのパンが出来、全員が食べ始めるので


有る。


 「あ~、なんて美味しいんだろうか。」


 側では、他のカウボーイも二コ二コとして、隆一の話を聞いて要る。


 「隆一、コーヒーも出来たよ。」


 と、香ばしい香りのコーヒーも受け取ると。


 「日本じゃ~、絶対に出来ない事ですね。」


 「隆一、話は変わるが、本当に上手だ、あれだけの腕前はざらにはいない


からなぁ~。」


 ジムは隆一を褒めるのだ。


 「本当にはじめてなんですよ、ただね、僕は、西部劇に出てくる様なガン


マンには余りというか、全く関心が無いんですよ。」


 ジムの眼つきが変わったのを加藤が気付いたのだ。


 「でも、隆一は、西部劇を良く見たと。」


 「其れは、見ただけで、映画としては大変面白いと思いますよ、だって、


あんな抜き撃ちなんて、本当に出来るのか疑問ですからね。」


 「まぁ~、我々も余り信用していないんだ、じゃ~、隆一はどんな、映画


が。」


 「ええ、勿論、西部劇は大好きですよ、でも、何か、僕にはわかりません


が、本当は。世間も知って要るようで、実態は知られていない、一匹狼が好


きなんですよ。」


 ジムも加藤もこの牧場の見回りが終わったあと、隆一の特別訓練をさせる


と、今、以上、其れは、スナイパー訓練に入れると思ったのだ


 「それじゃ~、隆一は、スナイパーが好きなんだね。」


 「まぁ~、あれは憧れですがね。」


 ジムはそれ以上聞く事を止めたのである。


 後は、シュルツの判断に任せる事にしたのだ。


 「じゃ~、そろそろ、行きましょうか、この調子だったら、明日の昼頃に


は、最初の宿舎に着けると思うからね。」


 火を消して、馬車に荷物を積み込み、出発するのだ。


 ジムと数人が先頭になり、隆一と加藤は、馬車の後方に入ったので有る。

 

 ジムは少しづつだが、狼のいる森を進んで行くので有る。


 「隆一、この付近は時々だが、狼が出没するんだ、狼は非常に賢いから


ね、注意をするんだ、それと、ライフルと拳銃には弾を込めて置くようにだ


よ。」


 隆一は直ぐにライフル銃に弾を込めた。


 其れよりも、隆一ははじめて経験した、実弾を撃つと言う事が、この森の


中で狼に対して、本当に命中するのかと考えていた。


 「みんな、気を付けてくれよ。」


 ジムの指示で、他のカウボーイ達は周辺に気を配り、馬を進めていくの


だ。


 30分ほど進んだと所で、ジムは手を上げ、みんなを止めたので有る。


 隆一もさっきから異様な雰囲気を感じていたのだ、ジムが止めたのは、狼


なのか、それとも、他の動物なのか。


 「静かに。」


 ジムは前の方に大きなヒグマの親子を発見したのだ、ヒグマは森で、食料


を探している様子である。


 暫く様子を見ている。


 ジムが合図した。


 「よし、進むぞ。」


 隆一が感じた異様な雰囲気はヒグマの親子だったのか。


 「加藤さん、僕はさっきから、何か異様なものを感じて要るんですが。」


 「隆一もわかりますか。」


 「はい、何処からか判らないんですが、見られている様な感じなんで


す。」


 「隆一、森の入るとだね、人間が見てるんじゃ~無いんだよ、動物なん


だ、その動物は息を潜めているんだ。」


 「何故、息を潜めて、僕は敵じゃ~無いですよ。」


 「其れは、我々だけが思って要るだけなんだよ、野生の生き物は、相手が


人間と言うのは関係が無いんだ、毎日が生死の狭間にいるからなんだ。」


 「判りました、でも、なんだろう。」


 隆一は、日本では経験できないほどの緊張した時間なのだ、その森も、数


時間で抜ける事が出来るのだが、後少しの所で、ジムは手を挙げ、全員が静


かに停まったのだ。


 「加藤、前に来てくれ。」


 加藤は静かに馬を走らせた。


 隆一は馬車の後ろにいる。


 その加藤は直ぐに戻って着た。


 「隆一、後少しで森を抜けるんだが、その前に、狼が数十頭、食べ物を探


しているんだ。」


 「えっ、本物の狼が。」


 「うん、多分だが、狼は我々の存在を嗅ぎつけたと思うんだ。」


 やはり、さっきの異様な気がしたのは狼だったのか。


 「何頭くらいなんですか。」


 「はっきりとは判らないんだが、数十頭はいると思うんだ。」


 「えっ、数十頭もの狼が。」


 「其れで、隆一は、馬から馬車に移ってくれ、奴らは、この馬車に積み込


んだ食料を奪いに来るかも知れないんだ。」


 「えっ、僕が、馬車にですか、わかりましたが、前に乗るんですか。」

 

 加藤は、少し考え。


 「いや、前には、ジム達が居るんで大丈夫だと思うんだが、後ろからも襲


ってくる事も考えないと駄目なんだ、だから、隆一は、馬車の後ろに乗って


くれ。」


 「判りましたが、僕だけなんですか。」


 隆一は不安だった。


 「私は、御者の横に座るからね、馬は馬車につないでくれ。」


 「判りました。」


 と、言って、隆一と加藤は馬を降り、加藤は御者の隣に、隆一は荷台の後


ろに座った。


 隆一にはじめて訪れた狼の集団で有る。


 ジム達はゆっくりと進んで行くのだ。


 その数分後、隆一のライフルが火を噴いたのだ、隆一も正か来るとは思っ


て無かった、だが、其れは突然だった。


 「隆一、大丈夫か。」


 「は~い、僕は大丈夫ですよ、でも、突然だったので。」


 「で、命中したのか。」


 「はい、命中しましたよ、額にですが。」


 「えっ、額に命中させたのか。」


 「ええ、そうですが。」


 ジムも加藤も、まだ、確認は出来て無かったが、一人のカウボーイが、後


ろに走って行き、直ぐに戻って着た。


 「間違いなく、額に命中しているよ、だけど、この距離から、額に命中さ


せるなんて、今まで、見た事も聞いた事も無かったよ。」


 カウボーイは驚いているのだ。


 「狼は、仲間が殺された事は知って要るからな、此れからは本気に成って


くるぞ、隆一、後ろは任せたからなぁ~。」


 と、ジムは簡単に言ってはいるのだが、隆一は、はじめての経験だった事


もあり、心臓がドキドキと脈を打っているのが判るので有る。


 その数分後、前からの銃声だ、この音はライフルじゃ~無い、拳銃の音だ


と、隆一は思った。


 其れは、ジムが撃ったので有る。


 それから暫くは何事も無く、また、数分経った時、突然、数頭が馬車の後


ろから、襲ってきたのだ。


 隆一のライフルが連続して火を噴いた。


 一頭は額に、二頭目は胸を撃ち抜かれ、隆一は、直ぐに構えているが。


 「加藤さん、弾の残りが少ないので。」


 「判った。」


 と、加藤は弾の入った箱を隆一に渡したのだ。


 隆一は、一個、二個、三個と弾を補充するのだ、だが、隆一の目は、後ろ


と左右を見ている。


 果たして、全く、ライフルを扱った事の無い者が出来るのだろうか、と、


加藤は思った。


 馬車が過ぎた後の数十メートルの後ろに数頭の狼を発見した時、隆一は迷


わずに、ライフルの引き金を引いたので有る。


 その内の一頭が倒れ、他の狼は姿を消したので有る。


 隆一は、確認出来ないのだが、三頭に確実に命中しているはずだと、隆一


は自信を持って要るのだ。


 その数分後、狼の群れは消えている、どうやら、隆一が殺したのは、群れ


のリーダーだったようである。


 「隆一、物凄いなぁ~、一体、何頭殺ったんだ。」


 「僕ですか、7頭かな、それ以上は知りませんので。」


 「でも、本当に素晴らしい腕前だったよ、最初は、我々が隆一を守る為に


来てるんだが、其れが、反対になったという事になるね。」


 ジムも後ろに来て驚きの表情で有る。


 「後、少しで、森から抜け出せると思うんだ、森を抜けたら、今日は、其


処でキャンプをするからね。」


 ジムは、少し早く馬を進めて行くのだ、その後、一時間ほどで森を抜けたので有る。


 「みんな、此処で、キャンプに入る、隆一は枯れ木を探してくれ。」


 「は~い、わかりました。」


 と、隆一の返事は気持ち良く、近くに落ちている枯れ木を集めはじめるの


で有る。


 話は、少し戻り。


 隆一が牧場の見回りに出発した頃、城の会議室で、有る目的の為の会議が


行なわれはじめたので有る。

 

 いつもなら、簡単な報告と、2~3の重要案件だが、今回は、違ったので


ある。


 「皆さん、緊急の呼び出しに、応じてくれた、ご苦労です。


 本来ならば、私からの提案ではなく、愛子からするはずだったんだがね、


実は、昨夜見てもらった若者なんだ、彼は、私達の組織の存在は知らない、


勿論、此処に居る、愛子の正体もだ、私は昨日、はじめて会ったんだが、こ


の男は何か特別なものを持っていると感じたのだ、実はね、昨日、愛子は隆


一、そうだった、彼の名は、吉村隆一と言うんだ。


 そして、この愛子のご主人でも有るんだ。


 その隆一は、私は、アーチェリーを、彼は楽しんだと思って要るんだが、


君達も知ってのとおり、簡単なテストをしたんだがね、隆一は、私の放った


矢を的にしたんだよ。」


 集まった、総支部長達は驚いたので有る。


 「私も、今まで、何度もテストを行なったんだが、そんな事を考えていた


者は居なかったんだ、まぁ~、其れは良いとしてだ、私は、隆一の姿勢を見


ていたんだ、隆一はね、最初から、最後まで、自然体なんだ、之は何を言っ


てるか、君達で有れば想像も付くだろうと思うんだ。」


 全員が頷いているので有る。


 「そうだよ、我々の任務は、常に自然体で行うと、言う事なんだ、普通の


人達はだ、普通の人はこの自然体は簡単に出来ると思って要るだろうが、人


間が常に自然体を保つと言うのは、そんなに簡単な事じゃ~無いんだ、だが


ね、隆一は、この城に着いた時から自然体なんだ、この自然体が出来れば、


極東総支部が以前から求めていたスナイパーの誕生も可能だと、私は思って


要るんだよ。」


 このとき、北米総支部長から質問があった。


 「何故、極東総支部に専門のスナイパーが必要なんでしょうか、我々の組


織の中には、優秀なスナイパーが居るわけですから、そのスナイパーを使わ


ないと言われるのでしょうか。」


 「いや、そうでは無いんだ、今も、世界中で活躍してもらっている事は、


十分承知して要るよ、だがね、全員が白人なんだよ、私は、別に有色人種


が、如何のと言う事は考えていないんだ。


 ただ、極東総支部の人口を考えて欲しいんだ、北米やヨーロッパには、白


人が多い、じゃ~、別の地域はどうだ、アフリカ総支部、中東総支部、極東


総支部、中南米総支部、これ等は、全て、有色人種なんだ、確かに、我々の


白人社会では、銃などの武器は扱いになれている、だが、その様に思って要


るのは白人至上主義と言う人達だけなんだ。


 この地域には、白人以上に運動能力に優れた有色人種が多勢いるって話な


んだよ。


 其れで、話は戻るが、今日の朝から、この隆一に牧場の見回りだと言っ


て、数日間、牧場に行かせているんだ。


 今回の見回りは、隆一、本人も知らないがテストを行なうんだ。」


 先程も総支部長が質問した。


 「今まで、聞いた事にテストですね。」


 「うん、そうなんだ、君達も知って要ると思うがね、日本と言う国は、個


人が銃を持つ事を禁止している、一部の組織以外はね、だから、隆一も拳銃


やライフル銃なども、テレビで知っていても、使った事は無いと、愛子から


聞いて要るんだ、そんな素人が、はじめて使うだろう、拳銃ライフル銃を使


う事はできないと、私は、思って要るんだ、だがね、本人の知らない内にテ


ストを実施する。


 勿論、隆一はテストだとは思ってもいないから、何も考えていないと思


う。


 今回、初めて行なうテストは、今後にも、役立つだろうと思って要る。」


 ヨーロッパ総支部長からの質問と言うよりも話で有る。


 「私は、昨日、お二人が到着されてから見ておりましたが、私も、皆さん


も愛子は知っていますが、隆一と言う愛子のご主人は知らないと、其れは、


当然です。」


 彼はシュミットで有る。


 ヨーロッパ総支部長なのだ、シュミットも、普段は別の場所にいるのだ


が、各総支部長に依頼で、スナイパーのテストが有る時には、この城に戻


り、テストに立ち会うのである。


 「皆さん、私もですが、はじめての国、それも、はじめて行く時に眠れま


すか、私も、当然直ぐには眠る事は出来ません。


 でも、隆一は、直ぐにと言うほどの速さで眠るんですよ、私は、この時、


感じました。


 愛子の時もですが、隆一は大物だとね、この男に緊張する事は無いのかと


思ったぐらいなんですよ。」


 その時だった、シュルツの携帯電話が鳴ったのだ。


 「あ~、シュルツだが、ビル、如何ですか、隆一の様子は。」


 と、聞いたので有る。


 暫く話しが続き、そして、シュルツの電話は終わり。 


 「みんな、聞いてくれ、今の話なんだがね、隆一の射撃にはビルも負ける


と言ってたよ。」


 出席した総支部長達は驚いたのだ、ビルは組織の中でも、トップクラスの


スナイパーなのだ、そのビルが負けるとは、一体、隆一と言う男は、どれ程


の腕前なのだ。


 「ビルの話しでは、隆一は、最初に撃った弾の上に次々と命中させている


と言うのだ、私もね、ビルの腕前は知って要るよ、だけど、隆一は、はじめ


てのライフル射撃で、そんな離れ業をしたと言うんだ。


 ビルも本当に驚いたと言うんだ、私も、ビルの報告に間違いは無いと思っ


て要るんだ、本当は私が、この眼で確かめたいと思って要るんだよ。」


 その時、愛子が手を上げたのだ。


 「皆さん、私は、確かに隆一さんを愛しています。


 でも、私も、この組織の最高幹部の一人として、一人の男性を推薦したん


です。


 実は、本当のところ、彼をこの仕事に就いて欲しいとは思って無いんで


す。


 私は、愛した男性を何も知らない内に、この世界に引き込んでしまったん


ですが、皆さんが許可していただければ、私は、この組織の事を、隆一さん


に話はしません。


 この城に来る時は、私だけです。


 隆一さんには、何も知って欲しくは無いのです。


 私も、今は、後悔とは別に、この仕事に就いて欲しいと言う、両方を考え


て要るんです。」

 

 と、愛子は涙を流しての話したのである。


 「みんなも知っての通り、我々は表と裏両面の顔を持って要る。


 君達の中には、奥さんが、裏の仕事に就いている事を知って要る者は居な


いはずだ。


 この組織に入れば、当然である、愛子は隆一に全てを話してはいない、其


れは、私が保証する。


 愛子が推薦する、隆一をスナイパーとして訓練に入れたいと思うが、みん


なの意見は、どうかね。」


 全員が頷き。


 「それじゃ~、許可されたと言う事で、愛子が推薦する隆一を、今後は、


この城で、特別訓練に入る、但し、本人には、何も伝えない。此処だけの話


と言う事にする。」


 愛子は頷き、嬉涙を流している。


 そして。


 今日の会議は、之にて終了する、全員、ご苦労でした。」


 と、シュルツは、会議の終了を宣言し、会議は終わったので有る。


 シュミットと愛子は残り。


 「愛子、此れからが辛いぞ、それでもいいのか。」


 愛子は頷き。


 「はい、私も承知しています。


 日本支部の木田も隆一さんの仕事は政府の仕事だと言っておりますので、


私も、それ以上、隆一さんには、何も話しません。」


 「そうか、愛子が其れまで覚悟しているならば、スナイパーの訓練方法も


変更するとしようとするか、ビルを専属に付けるが、隆一に射撃を進める方


法だな。」


 「私がやってみます。」


 「そうか、愛子、頼みましたよ、じゃ~、隆一が戻ってから考えるとしま


すかね、それと、シュミット、隆一専用のライフル銃を作ってくれなか。」


 シュミットはわかっていたのだ、この城の地下には専門の工場がある。


 シュミットは手配を済ませていた 。


 こうして、隆一は、何も知らずにスナイパーの道に入って行くのである。




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