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598 決戦に向けて

 中枢部に向かうゲート近辺にハイダーを配置して俺達はその場を後にした。

 城で訓練を行う広場のスペースなどから考えれば、リンドブルムも結構な余裕をもって訓練に参加できそうだ。明日来る時は一緒に、というのが良さそうだな。


 というわけで馬車を手配してもらい、今回手に入れた戦利品を積み込んで俺達は工房へと向かったのであった。

 早速工房に運び込むために中庭で荷降ろししていると、工房の中からアルフレッド達が出てきた。


「やあ、テオ君。また……今回も随分と大猟だね」

「予想以上に大規模な戦闘になってさ。街の部分にも魔物が出るとは事前に聞いてたんだけど、侵入者自体がいなかったから、その分だけ数が多くなったのかも知れない」

「なるほど。魔石の質も……全体的に高いな。これなら色々できそうだ」


 魔石を手に取って光に透かして見ているアルフレッドは、寧ろほくほく顔という印象だ。物資が潤沢というのはアルフレッドにとっては有り難いことなのだろう。


「これだけあればまた色々作れそうですね」


 ビオラも馬車からの荷降ろしを手伝いながら言った。


「新しい食材も手に入れたんだ。まあ、鳥肉みたいな味だね」

「どんな魔物なのか気になるところだけど」

「ん。大きなトカゲみたいな魔物。跳んだり雷を撃ったり活きが良かった」

「……後で絵を描く……予定」


 と、シーラとシグリッタがアルフレッドに説明していた。


「というわけで食材が結構な量手に入っちゃってさ。冬だから傷むのは遅いとは思うけど、一部は早めに冷凍した上で氷室に入れて、後は燻製にしたり干し肉にしたりしなきゃいけない」

「燻製にするなら工房にも燻製箱があるから、使ってくれて構わないよ。テオ君の家と並行してやった方が早く終わるだろ?」

「それじゃあ遠慮なく」


 家に持って帰って貯蔵なり加工なりするものと、工房で加工してしまうものに選り分ける。


「ええと……殆どは凍らせておくのですね。氷室に貯蔵するのでしたら、私が家まで運んできます」


 と、アシュレイが言った。ああ、魔道具絡みの話もあるし、それは助かる。


「ありがとう。それじゃカドケウスも一緒につけるよ」

「なら、わたくしもアシュレイと行ってくるわ。運び込むならイグニスも役立つでしょうし」

「私もそっちを手伝うわ」

「ありがとうございます、お2人とも。それじゃ、ラヴィーネはこっちで留守番をしていてね」


 ローズマリーとイルムヒルトがアシュレイに付き添ってくれるらしい。

 アシュレイが笑みを浮かべて礼を言うと、ローズマリーは羽扇の向こうで頷き、イルムヒルトは穏やかな笑顔で答える。

 ラヴィーネは連絡用にこちらに残す、と。アシュレイに喉のあたりを撫でられてラヴィーネは心地よさそうに目を細めていた。


 まあ、工房と俺の自宅は目と鼻の先だし、アシュレイが氷室に貯蔵して凍らせてきてくれるのなら本当にすぐ終わって戻って来るだろう。

 氷室……とは言っているが、実際のところはヴァレンティナ製の水の魔石をそこに組み込んであるので冷凍庫のようになっているのだ。

 というわけで自宅に持っていく分だけ馬車に残し、アシュレイ達は馬車で家へと向かった。


「それでは、私は燻製にする作業を進めておきます」

「私達もそっちの作業を手伝ってくるわ」

「私も!」


 グレイスが言うと、残ったパーティメンバーとシオン達。それにヘルヴォルテとベリウスもそれに続いた。みんなでグレイスの手伝いをして一気に作業を終わらせてしまおうというわけだろう。

 ヘルヴォルテとベリウスに関してはクラウディアの身辺警護という感じではあるのだろうが……ヘルヴォルテも荷物を運んでいるし、ベリウスも三つの頭の上に荷物を乗せて、器用にバランスを取って運んでいった。


「燻製作りか。面白そうだし、私達も手伝ってきましょう」

「そうね。楽しそうだわ」


 と、ステファニア姫とアドリアーナ姫もそちらへ加わる。当然、コルリスとフラミアも2人に付いていった。

 というわけでみんなで手分けして工房の横手、軒先の下にある燻製箱のところへと恐竜肉を運んでいく。


「工房の燻製箱は、アルフレッドが用意したんだっけ?」

「いや。工房は民家を改装したものだからね。前の住人が用意したものを手入れしておいただけだよ。使ってないけど、地下にはお酒の貯蔵室もあるし」

「へえ」


 燻製箱にワインセラーね。自家製の燻製を摘まみながら酒を飲む……という感じだろうか。どうやら工房に昔住んでいた人物は結構な酒好きのようだ。




 恐竜肉の処理はみんなに進めてもらい、新しい戦利品から魔道具の使い道や配分についてアルフレッドと話し合う。


「カイザーアントとプリズムフリーの魔石は、質も中々良いけど、大きさも結構揃っているからな。やっぱり決戦の時の対策に使うのが良いと思う」

「そうだね。品質や大きさが均等だと僕も作業がしやすいし」

「ゴーレム用のメダルも結構あるからな。それと組み込んで、かな」


 数が確保できるものは数が必要な物に使う、というわけだ。


「こっちの魔石はどうしようか。結構大物だったみたいだけど」

「ドラゴニアンの魔石は一応考えがあるんだよね。こっちの水晶や斧と組み合わせて、魔法生物化しようって考えてる」


 T‐レックスの額の水晶と、ドラゴニアンの斧。水晶の雷撃は中々のものだったし、ドラゴニアンの斧もグレイスとの一戦を経て、刃こぼれもしていない。


「魔法生物?」

「んー。ウロボロスと似た系統かな。自律行動する浮遊斧っていう感じで、仲間の援護ができるようにする、と」


 完成品はルセリアージュの使っていた舞剣に似た感じになるだろうか。

 ドラゴニアンの使っていた戦斧ぐらいの重量級武器を扱えるのは……パーティーメンバーではグレイスとデュラハン、イグニスということになるのだろうが、魔法生物でありながらいざという時は予備の武器にすることもできるかなという気もする。


「術式は少し実験してから書いておくよ。ビオラやエルハーム殿下にも、少し柄の部分を改造してもらったりするかも知れない」

「分かった。じゃあそっちはテオ君の作業待ちっていうことで」

「ああ。なるべく早めに渡せるようにする」


 さて。今回の戦利品についてはT‐レックスの牙以外は大体使い道も決まったかな。

 魔物の牙については削り出してナイフにしたり、槍の穂先や(やじり)にしたりといった使い道が考えられる。闘気との相性も良さそうだし強度も十分なので中々使い勝手が良さそうだ。


 そうして牙の配分などをアルフレッドと話し合っていると、アシュレイ達がまず帰って来た。ラスノーテも一緒に工房にやって来たようだ。


「ああ、お帰り」

「はい。大部分は冷凍して、処理できそうな量だけ、セシリアさん達に燻製にしてもらっています」

「ん、ありがとう」


 それから程無くしてグレイス達も戻ってきた。


「ただいま戻りました。後は燻されるのを待っていれば大丈夫です」

「お帰り。こっちも色々使い道を考えたよ」


 そんな調子で各々の作業報告をし合い、戦利品について何を何に使うつもりか、みんなにも説明していく。


「――斧の魔法生物、ですか」

「出来上がりの予想がつかないわね」


 グレイスは少し目を丸くし、ローズマリーも顎に手をやって思案するような様子を見せている。


「まあ、基本的には補助要員かな。前衛の背中について背後を守ってくれたりとか、援護攻撃をしてくれたりとか」


 後は、この時期に作る物なので魔人対策の一環でもあったりするが。

 そんな調子でお茶を飲みながら話をしていると、アルフレッドが言った。


「そう言えば、王城のほうも資材の準備が進んでるってさ。準備が整ったらテオ君に遣いを出すって言ってたよ」

「ああ。瘴珠絡みの話?」

「砦だね」


 と、アルフレッドは頷いた。

 ベリオンドーラを迎え撃ち、足止めするにあたり……主戦場と想定している場所に砦に近いものを建造するという話になっている。

 砦は魔人連中にとって攻略価値のあるものではないのだが、そこに瘴珠が置かれているなら話は別だ。


 この砦はタームウィルズの防衛を目的としたものではなく、瘴珠を内部に安置し、そこを結界で覆うことで魔人からの手出しをしにくくするという狙いがある。当然、浮遊城の足止めもそこで行う、というわけだ。

 一見して強固に見えれば見える程、連中の目を引き付けられる。まあ、主戦場に防衛拠点があった方が、有利に働くというのも間違いではないが……。


 今からでは普通にやっていたら砦の建造など間に合わないが、そこは俺が魔法建築で行ってやれば大丈夫、というわけである。準備ができたら優先的に魔法建築に向かわねばならないだろう。

いつも拙作をお読み頂き、ありがとうございます。


1月25日発売予定の書籍版3巻について、表紙が公開となりました!

詳細については活動報告にて告知しておりますのでそちらを見て頂ければと思います。


ウェブ版、書籍版共々頑張っていきたいと思いますので、

今年もよろしくお願いいたします。

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