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397 地下都市の空で

 一夜明けて……フォルセト達はまた古老達との合議を行うとのことで、朝から割と忙しそうな様子だ。

 というわけで俺達は俺達で、シオン達と共にできることを済ませてしまうことにした。リンドブルムやサフィール、コルリス、アルファといった面々をシグリッタに引き合わせたり、森に採集に出かけたり。昨日の夕食の席で決まったことを済ませてしまおうというわけだ。

 その傍らで通信機でタームウィルズとの連絡や報告を済ませたりしていこう。


 早速リンドブルム達をハルバロニスに連れてくると……案の定というか、テンションを上げたのはコルリスであった。ハルバロニスの光景とステファニア姫を見比べて若干落ち着かない様子だ。


「物を壊さないようにね」


 苦笑したステファニア姫が言うと、コルリスはシオン達を背中に乗るように促し、入り口部分となる高所から飛び立ってハルバロニスの周囲に広がる地底湖の上を悠々と飛んでいく。地底都市を飛ぶモグラというのも不思議な響きではあるが。


「何だか不思議な感覚です」

「あははっ!」

「……これは斬新だわ」


 とシオン達も楽しんでいる様子だ。


「絵を描くのは順番だっていう話だから、リンドブルム達も行ってくるといいよ。シリウス号の中だと、やっぱり窮屈だったろうし。ただ、この場所での狩りは無しの方向で」


 文字通り羽を伸ばしてもらおう、ということで。俺の言葉にリンドブルム達は頷いて、次々と高所から飛び立っていった。シャルロッテは彼らに乗るより肩に乗せたラムリヤを撫でたりしてご満悦といった様子だが。

 魔法の光を浴びて編隊を組んで飛行をするリンドブルムとサフィール達、更にシオン達を乗せて空を飛ぶモグラといった珍しい光景に、ハルバロニスの住人達も見物に集まってきたようだ。


 フォルセトが話を通したのか、俺達に対する警戒度も割と薄れているのかも知れない。リンドブルム達も彼らに見えるように空中で交差したり錐揉みで急降下したりと、何やら即席の航空ショーめいた光景が眼前で展開されている。あれも討魔騎士団達と訓練した成果だろう。


 遊んできていいと言ったのだが……或いは飛竜達にしてみるとあれも遊びということかも知れない。飛竜達に関して言うなら、かなり社会性が高いような印象を受けるからな。

 そのうちに飛竜が何か曲芸飛行を披露するごとにハルバロニスの人達も拍手で応じるようになった。

 コルリスも見物人達に手を振ったり、シオンを背中に乗せたままシグリッタとマルセスカの2人と両手を繋いで水面すれすれを飛行したりと楽しんでいる様子だ。やはりコルリスは愛嬌があるからか小さな子供に人気な様子である。

 騒ぎが耳に入ったのか、青い塔の上階にフォルセトと古老達も姿を見せて眼下の光景に盛り上がっているのが見えた。


 うむ……。即席ではあるが魔法で演出をしてやるか。親善と余興ということで。

 飛竜達の後を追うように光の欠片や泡を飛ばしたり、水の輪っかを飛ばしてそれを潜らせたり、曲芸飛行している飛竜達をライトアップしてやったりと演出の補助を行うと、ハルバロニスの人達は拍手喝采で応じてくれたのであった。




「んー……」


 即席の航空ショーも終わり……まずコルリスから塔の1階、魔法陣の描かれた大部屋に行ってもらう。

 シグリッタは画材を握ってコルリスの姿を紙に写していく。一方のコルリスはと言えば、床に腰を降ろしたまま静かにしていた。

 ステファニア姫にシグリッタの作業が終わるまでなるべく動かないようにと指示を受けたらしく、土魔法で椅子のような構造物を作ってそれに腰と背中を収め、長時間動かなくても塩梅の良い状態にしたらしい。相変わらず器用なことだ。


「シグリッタの絵の補充は、ここでしかできないのかな?」

「そんなことはありませんよ。魔法陣の準備はそれほど時間もかかりませんし、魔法陣無しで絵の獣を準備することもできるはずです」

「シグリッタの絵は、魔法陣無しだと本に戻せずに使い捨てになっちゃうの」


 と、シオンとマルセスカがシグリッタの絵についての説明をしてくれた。

 なるほど。こうして魔法陣の中で描くのは定着させてやる必要があるからか。ではタームウィルズなりシリウス号の船内などに魔法陣の用意をしてやれば良いわけだ。その場で絵を描いて即席の戦力を補充したりもできるのだろう。斥候やらなにやら、案外使い勝手の良い術かも知れない。


 先程少しだけ見せてもらったが、本の中身も白紙になっていた部分がそれなりに埋まって、鳥や犬などの獣の絵が増えていたから、シグリッタの生産速度も割と早いように見える。

 ……色々な魔物を調達できるということを考えると、迷宮との相性もいいかもな。


「……シオン、私は今日一日、色々描いている予定。動けないかも」

「分かった。じゃあ、僕達は外に狩りと採集の手伝いに行くかな」


 そのあたりは予定通りに、というところか。ローズマリーはそれを待っていたのか、羽扇で表情を隠して目を閉じているが、口元は綻んでいる……かも知れない。


「お二方はどうなさいますか?」

「私達も採集を手伝いに行こうかしら。森の中はほとんど見てないものね」

「そうね。せっかく来たのだから。色々と珍しいものが見られそうだし」


 ステファニア姫とアドリアーナ姫も採集に加わる予定……と。エルハーム姫とアウリアも採集に出る予定のようだ。


「では、私達が交代で休憩を取りながら町でのコルリス達の面倒を見ることにしましょう」

「よろしくお願いするわね、エリオット卿」

「はっ」


 エリオットは折り目正しく敬礼する。


「うん。それじゃあ、案内するね」


 と、マルセスカは屈託のない明るい笑みを浮かべるのであった。




「その黄色い花の根はよく洗って磨り潰すと痛み止めになります。化膿が起こるのも防げるという話ですよ」

「それは良いわね。鎮痛と消毒の効果というところかしら」


 ローズマリーは上機嫌な様子で根を傷付けないように土魔法で掘り返して花を回収していく。ヤシの実やらキノコやら、色々魔法の鞄の中に入れているようだが。


 採集はハルバロニス探索の時と同じように、虫除けと熱中症予防のための風のフィールドを纏い、アウリアの能力で茂みを除けていたりと、かなり楽に採集作業が進められた。

 町を出入りするために貰った護符のお陰で、人払いの結界の影響からも除外されている。方向感覚なども正常に戻っているので違和感もなく、割と活動しやすい印象だ。


「そこの青いキノコは食べられるよ。見た目は派手だけど美味しいの」

「これ?」

「うん」


 マルセスカはシーラと一緒に色々と採集しているようだ。どうもマルセスカはシーラと1対1で戦ったことで、シーラに懐いた印象があるな。


「ふむふむ。なるほどのう」

「これですね。見つけました」

「じゃあ、土魔法で採集するわね」


 と、シオンやマルセスカの話を参考にしながら和気藹々と採集している姫様3人とアウリアである。


「あれは何ですか? 変わった形の植物ですね」

「あ。これも月の王様の慈悲だそうです。ハルバロニスの外でも育てられるので、目立たないようにあちこちに植えてあるんです」


 グレイスに尋ねられて、シオンが答える。その植物には見覚えがあった。トゲトゲとした堅そうな葉っぱに、特徴的な形の果実が実っている。これは……パイナップルか。

 これも月の王が流刑の時に渡してくれたものか。本当に、地上の色々な地域から様々な作物を手に入れていたと見える。


「果実の上の部分を切って植えてあげれば育ちますので……そうですね。果実ごと持って帰っていただくのが良いのかも知れません」


 2個、3個とシオンがパイナップルを切って、それをマルレーンが受け取る。

 そしてにこにことした表情でパイナップルを手渡され、ローズマリーも笑みを浮かべた。


「ありがとう、マルレーン。……ふむ。この果物に限った話ではないけど、この森の気候で育つとなるとタームウィルズでは寒すぎるわよね。温室か……或いは室内で植えて、温度管理が必要になってきそうね」

「シルン男爵領に全部持っていくと管理も大変だし手狭になるだろうから……家に温室をまた作るか」


 普通の作物ではなく、薬草の類はタームウィルズ側に置くということでシルン男爵領の温室と差別化をするという具合だ。


「良いですね。フローリアさんやハーベスタ達も喜ぶのでは」


 と、アシュレイが嬉しそうに微笑む。


「うん。フローリア達は確かに喜びそうだ」


 そしてフローリアは温室の管理人としては打ってつけというか。ローズマリーも温室は活用するだろうしハーベスタ達もいる。

 水田についても考えなければいけないが……まあ、それらは帰ってからだな。

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