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番外2013 巫女達の歓喜

 まずは体調が落ち着くまで年少組やその子供達の復調と成長の経過を注視。日々の執務や仕事もこなしていく形。

 その間に母さんの命日もやってきて、お披露目の前にみんなで墓参りにも出かけた。アイリアとローデウスも外出して大丈夫だろうという、ロゼッタとルシールのお墨付きをもらった上での帰郷だ。

 冬場なので防寒はしっかりとしている。フロートポッドに加護や衣服にと、十分な対策を施しているから、子供達も快適に過ごせるだろう。


 ガートナー伯爵領の面々も前とは変わってきているな。ダリルとネシャートが無事に結婚に至ったというのも変化の一つではあるが、ハロルドとシンシアの兄妹や、昔母さんの事で動いてくれたカーター少年達も成長しているのだ。


 ハロルドとシンシアは変わらず墓守をしているが、ハロルドは中々精悍な印象になってきたし、シンシアも落ち着いた佇まいの美少女といった雰囲気の成長をしている。二人と森で不意に合ったら、神秘的な印象を受けるかも知れないな。


 仕事の方は相変わらず真面目にこなしてくれており、いつも母さんの家の周りや墓所、森の小道は綺麗なものだ。魔道具や簡単な魔法もかなり使いこなしており、中々多才な二人なのである。


 そんな二人であるから、カーター達もハロルドとシンシアを尊敬しているようで。今では良い友人として付き合いがあるようだ。

 ダリルやネシャートも彼らの事は気にしていて、将来的には何かしらガートナー伯爵家と繋がりを持って仕事をしたりというのもあるかも知れない。


「いやあ、みんな無事で良かった」

「本当に。私達もお話を聞いて、顔を合わせられるのを楽しみにしていましたから」

「ふふ。孫が増えて、私も嬉しいな」


 俺達が顔を出すとダリルやネシャートが父さんと共に迎えてくれる。ダリルは――何というか、穏やかな雰囲気に育った感があるな。色々と思慮深く行動するので武官、文官達からは堅実さがあって進言をよく聞いてくれると評判がいいらしい。


 領地の一部で父さんの代わりに執務を行っており、そこでも堅実な領地運営をしているということで……領民達からの評判も次代も安心と言われている、とのことである。


 ネシャートはネシャートで、ダリルのことを公私共に補佐しているとのことで。夫婦仲も良く……ガートナー伯爵家と伯爵領は中々に順調な様子である。バハルザードともネシャートの件で縁ができたので、お互いの印象がよく、伯爵領とバハルザードの間でも転移門を通じて特産品等の交易をしていたりもする。


 こうやって文化交流する中で新しく生まれてくるものもあるだろうし、先々が楽しみだな。

 そうして、少しずつの変化をしているガートナー伯爵領の現在を見たりしながらも、俺達は母さんの墓所参りを行った。


 母さん自身は、実際に同行してにこにこしていたりするが。冥精としては感謝の想いを向けられて力が増したりするからな。鎮魂の為だった墓参りとは、現状、俺達の間では少し意味合いが変わっている部分もあるか。それでも――やはり色々と昔のことを思い出してしまう日でもあるが。


 同行しているみんなも真剣な表情で祈りを捧げている。母さんに師事しているシャルロッテもだな。

 シャルロッテについては――封印の巫女として必要な知識、技術を母さんから継承し、応用しての実戦的な技法も俺から伝えたから、今では封印術のエキスパート的な成長を遂げている。それでも動物好きなところは相変わらずといったところだが。


 そんな調子で……子供達を連れての墓参りは大きなトラブルもなく、少しほのぼのとした空気の中で進んで行ったのであった。




 墓参りが終わったら後はガートナー伯爵領を少し巡って子供達のお披露目をしたが――母子共に無事ということでかなり喜ばれている感じがあるな。


「おめでとうございます……!」

「おめでとうございます、境界公……!」


 といった感じで一礼しながらも祝福の言葉をかけてくれて。他の領地よりも礼儀正しい印象があるのは昔のことがあるからだとは思うが……それでも喜んで祝ってくれているというのは場に満ちる魔力で分かる。昔のことから少しずつ立ち直り、癒されているというのも見て取れるな。


 そんな様子に――母さんも静かに微笑んで頷いていた。


 勿論、この時期に俺達がガートナー伯爵領に墓参りに来ることはみんな知っていたし、商人達が外から来て結構人出も多くなっていた。明るく祝福の言葉をかけてくれる領地外からの面々も結構いて、領地内の様子も見に行って良かったと思う。


 そうしてガートナー伯爵領を巡った後は、お披露目ということでタームウィルズやフォレスタニアでも同様に子供達の顔見せを行っていった。


「おめでとうございますっ!」

「いやあ、無事で良かったですね……!」


 月神殿では――マルレーンとローデウスの歓迎ぶりは特にすごいものだった。マルレーンの見習い巫女時代でも他の先輩巫女達に可愛がられたり心配されたりというのは同じだったようで。気がかりだったということもあり、こうやって無事に母親となったということでかなり喜ばれている様子だ。


「あり、がとう」


 マルレーンが柔らかく笑って祝福に対しての礼を言うと、巫女達は顔を見合わせ、それからマルレーンに思わずといった感じで抱擁をしたり、手を取り合って涙ぐんたりと相当な喜びようだ。ローデウスは勿論、年少組の子供達がフロートポッドで眠っているのを覗いて表情を綻ばせたり、オリヴィア達を可愛がったりと、結構な盛り上がりであった。


 さて……竜輪ウロボロスも――こうしたお披露目の場や出産の前の待合室での立ち会いをしたり、外の世界を見たりと……みんなとの交流を深め、見聞を広めている。


 干渉する事で変わったものというのを見て、それを竜輪ウロボロスにも気に入ってもらえたなら……俺としても嬉しい。

 そうしたことが並行世界にも伝われば、並行世界の俺にとっても、竜輪ウロボロスにとっても……みんなを守ったり平穏な日々を願い、動いていくための原動力にも繋がると思うのだ。


 まあもっとシンプルに、こうした日々を竜輪ウロボロスにも楽しんでもらいたい、というのもあるけれど。オリヴィア達は元々竜杖の方のウロボロスにも慣れ親しんでいたし、竜輪ウロボロスに対しても物怖じせずに交流を深めている感がある。


 さっきこんなことがあったとか、日常で起こったことを竜輪ウロボロスに楽しそうに報告したり、腕に抱いて頭を撫でながら街中を見せて回って設備の解説をしたり……オリヴィア達としても竜輪ウロボロスに何かしてあげたいというのが伝わってくるな。

 竜輪ウロボロスはどうかと言えば、面倒見が良いのか子供達が好きなのか、相槌を打ったり腕に抱かれて喉を鳴らしたりしていて。ほのぼのとした光景にみんなも微笑ましそうにしていた。


 そうして――国内でのお披露目が終わったところで、今度はベシュメルクや魔王国への訪問してのお披露目も行っていく。


 ベシュメルクに関してはエレナに関連した事実が広く公表できないというのもあり、クエンティン夫妻やガブリエラ、マルブランシュやスティーブン達のところに報告に行く意味合いが大きいが、ベシュメルクの国民も相当な歓迎ぶりだ。


 これについては――ザナエルクの圧政から国民を解放するのに尽力したと受け取ってくれているようで。

 街中の様子をフロートポッドの中から見て、明るい街中の様子に嬉しそうな表情を浮かべるエレナなのであった。


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[良い点] 体調が落ち着くまで年少組やその子供達の復調と成長の 為 漢獣水垢離(温泉)する
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