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番外2006 クラウディアへの想い

 循環錬気を行いつつもアシュレイの体調とセレスティンの成長について細かく計測して経過も見ていったが……まあ、二人とも順調といった感じだ。

 アシュレイは日に日に回復しているし、セレスティンも順調に身長、体重が増していて、その辺は安心できる。


 とはいえ、セレスティンが多少みんなとスキンシップが取れるようになる頃にはもうクラウディアの予定日が来てしまうので、色々と気を付けなければならない時期が続くのは確かなのだが。


 そこはそれ。みんなや城の面々もいるしティアーズ達も手伝ってくれるしな。


 子供達もセレスティンと接する事ができるようになるまでの間に、赤ん坊と接する際の注意点を学んで準備をしてくれていた。まあ、オリヴィア達もまだまだ幼いのでお世話にしてもその時は大人が傍についてもらったり、手伝ってもらう内容を考えたりしなければいけないが。

 真剣に学んでくれているし、色々頑張ってくれているのは確かだな。


 そうやって一日一日と過ぎていく。セレスティンも少しの時間なら接して大丈夫とロゼッタ、ルシールからのお墨付きが出たことで、オリヴィア達も随分と喜んでいた。


 アシュレイとグレイス達、城の女官役になっている面々が一緒についてあやしたり寝かしつける手伝いをしたりと、子供達にできる無理のない範囲で手伝ってもらった。一生懸命な子供達の姿は可愛いもので、俺達としても見ていて微笑ましいと感じられるものだ。


 それに加えてクラウディアの体調を見たり執務や仕事をしたりと、中々大変な日々を送っていたが、そうしている間にもクラウディアの予定日が近付いてくる。


「ふふ。みんなもそうだったけれど、確かに会えるのが楽しみね」


 寝台に横になったクラウディアは目を細めて微笑んでいた。


「うん……。俺も、楽しみにしている」


 そう言いながらクラウディアの手をとって、循環錬気を行っていく。クラウディアと子供の生命力の補強を行いながらののんびりとした時間だ。


 こういう時間は俺にとっても癒しだな。母子共に、強い生命力を感じられて安心もできるし、ゆっくりと接する事が出来る。二人を補強すると共に、俺自身も身体が温かくなるような感覚があって、良い感じだ。



「――思えば遠くに来たものね。こうやって大人になって……愛する人が隣にいて、なんて。夢には見ていたけれど」


 クラウディアが目を閉じて微笑むと、ヘルヴォルテもうんうんと頷いていた。こう……面と向かって口にしてもらえると照れ臭くもあるが。


「ん……。そうだね。クラウディアが一緒に歩んでくれて嬉しいよ。俺も、愛している」

「ふふ」


 長年迷宮のことで苦労してきたからな。そんなクラウディアからそう言ってもらえるのは嬉しいことだな。




 そうやって……夏も終わり、秋の気配も漂ってくる頃にクラウディアの予定日を迎えた。

 ロゼッタとルシールが交代で対応してくれる中、みんなでフォレスタニア城の待機室にて待つ、というのはいつも通りだ。


 予定日に合わせて駆け付けてくれたのは、オーレリア女王や月の重臣、エベルバート王とアドリアーナ姫、シルヴァトリアの七家に巫女頭のペネロープと、ハルバロニスの長老達と……改めて見ると錚々たる顔触れだ。


 この辺は流石に月の王家ならではというか。クラウディアについてはあまり大っぴらにできないし俺達も忙しいからと歓待はしなくても大丈夫という事ではあるが……まあ、魔法生物達や人員もいるからな。


 迷宮村の住民達や氏族の面々が張り切って滞在している客を迎える準備を進めてくれた。


「尊き姫君の御子ですからな。我ら氏族としても喜ばしいことです」


 というのはオズグリーヴの言葉だ。月の民やその系譜、月神殿にとって、クラウディアが深く尊敬されているというのがよく分かるな。


「此度は微力ながらクラウディア様とそのお子の無事を祈りに参りました」

「ふふ。ありがとう。こうして大切に想ってもらえることには嬉しく思っているわ」


 オーレリア女王の言葉に、クラウディアが微笑む。俺からも礼を言ってゆっくりしていって欲しいと伝えると「クラウディア様のお子もですが、オリヴィア達に会えるのも楽しみにしていたのです。役得ですね」と少し冗談めかしつつもそんな返答があった。


 そうなのだ。オーレリア女王やお祖父さん達もそうだが、フォレスタニアに顔を見せるとオリヴィア達を可愛がってくれる面々だからな。オリヴィア達も訪問を喜んでいる。




 そうした賓客を迎えつつ、クラウディアの予定日がやってくる。


 循環錬気を行って母子共に生命力の補強を、というのはいつも通りだ。ルシール達の診察を受けながらも落ち着いた様子のクラウディアと話をしつつ、できるだけ多くの時間を過ごす。


「いよいよね」

「ん……。そうだね。みんなで二人の無事を祈ってる」

「ふふ……。心強いわ。みんなと待っていて」


 クラウディアはそう言って、俺の頬に触れて。そのまま軽く抱擁する。浄化の魔道具を使ってからグレイス達と共に子供達も顔を見せに来て、クラウディアに応援の言葉を伝えていく。


「クラウディアおかあさん、ぶじにもどってきてね」

「ええ。ありがとう。頑張るわ」


 そう言ってエーデルワイスの髪を優しく撫でるクラウディアである。そうやって子供達と少し触れ合い、みんなとも言葉を交わした。


 大人数が一緒にいると安静にはできないということもあり、一旦部屋を出てロゼッタ達に任せる形となる。朝から準備を進めて、みんなで待合室にて待機だ。


 ロゼッタとルシールから交代で体調と経過を見守ってもらいながら時間が過ぎていく。

 そんな中イルムヒルトがクラウディアとの思い出話を子供達に聞かせたりする。色々と懐かしく感じてしまうが……俺達が初めて会ったのは宵闇の森だったな。


 こんな時ということもあり、色々とクラウディアとのことを思い出してしまう。ミステリアスな出会いだったし、実際謎だらけではあったけれど……。そうだな。初めから敵だとか危険だとかそういう気持ちにはならなかった。並行世界の俺からの想いもあったからそうなったのか。それともクラウディア自身の纏う魔力からそう言う印象を受けたのかは分からない。


 ただ……少なくとも言えるのは並行世界の俺も世話になっているし、こちらの世界でだって、クラウディアがいなければ俺達の今の状況はないということだ。

 だから。家族としてというだけでなく、生まれるよりずっと前からの恩人だと言えるだろう。


 そうしていると昼食を取ってからしばらくした頃合いで状況が動いた。


「クラウディア様が産気付いたようです。私達は昼食も済んでいるので、このまま進めていきますね」

「はい。どうかよろしくお願いします」

「承知しました。全力を尽くすとお約束します」


 ルシールは丁寧に答えてロゼッタと共に出産の準備に入る。助手として改造ティアーズ達もそれに続いた。


「それじゃあ、俺達も二人の無事を祈ろう」

「うんっ」

「わたしたちもがんばる」


 そう言うと、子供達も真剣な表情で頷いた。前回同様、しっかりと祈りを捧げてくれる。

 オリヴィア達にとっては2回目の待合室での祈りの時間だが……前より集中力が増している気がするな。祈りに魔力を込めるコツを掴んでいるというか。


「長年に渡り人々を救い、見守り、助けて下さったお方です。私達神殿も、その大きな恩を少しでも返せればと……皆に女神様への感謝を捧げるようにと伝えていますよ」


 ペネロープもまたそう言って。膝をついて手を組み、目を閉じて祈りを捧げる。詳しくは話せずとも、今日という日に合わせてそうした手筈を整えてくれていたらしい。


 そうだな。クラウディアへの恩を返したい。夫として、家族としての愛情。そして、この地上に生まれた者としての敬意。そうした想いを祈りの中に込めていくのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] みんなや城の面々もいるしティアーズ達そしてコルリスや着ぐるみ隊も手伝ってくれるからな
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