表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2799/2811

番外2004 子供達の応援

 アシュレイ達の体調は安定していて経過も良好だった。循環錬気で体調も診ているが、母子共に生命反応は力強く、見ていて安心していられる。


 アシュレイの子は――やはり水属性の魔力が強い感じがするな。


「もしかすると、特性封印――とまではいかなくても制限か継続的な循環錬気が必要かも知れないね」

「私と同じように、ということですね」


 循環錬気で手をとったまま、ベッドに横になっているアシュレイにそう言うと、彼女も静かに頷く。


「そこは少し気を付けて見ていないといけないけれど……治癒術の才能にも恵まれそうよね」

「ふふ。会えるのが楽しみです」


 ステファニアの言葉にこくんと頷くアシュレイである。そうだな。体調を崩してしまう程に水の魔力資質が強いというのは、アシュレイと同じような問題が出てくる可能性が高い。

 それでもアシュレイやみんなが落ち着いているのは、それに関してはリスクのない対策が確立されているからだ。


「必要だったら特性封印の指輪を作るわね」


 と、母さんが自身の胸のあたりに手をやって言う。


「はい。その時は是非……!」


 そんな言葉に、アシュレイは嬉しそうに応じていた。アシュレイは今も昔も母さんを尊敬しているからな。


 マルレーンの子についても闇属性の魔力に適正があるように思える。俺自身がどこかの属性に特化していないのもあって母親の特徴が出やすいのかも知れないな。それに、マルレーン同様、精霊達との相性も良さそうで結構なことだ。


「小さな精霊が集まってくるし、この辺はマルレーン譲りかもね」


 というと、嬉しそうにこくんと頷くマルレーンだ。


 クラウディアの子については――そうだな。月の王族に連なる上にクラウディアが神格も持つということで、クラウディアやオーレリア女王を彷彿とさせる波長の魔力を宿している。


「流石に神格は宿していないようではあるわね」

「クラウディアが月女神とは広く知らせてはいないからね。信仰が集まるわけではない、と」


 少し冗談めかして言うクラウディアに俺も軽く笑って答える。逆にその辺が広く周知されていたら――月神殿からの信仰が集まって、実際そうなっていた可能性が高いというか。


 エレナの子も、やはり呪法向きの魔力波長をしているという印象だな。そのことを伝えると、エレナは静かに目を閉じて頷く。


「呪法に関しては……そうですね。頃合いを見てきちんと指導しないといけませんが、それはそれで親子の触れ合いとしては楽しみではあります」

「まあ、色々な意味で扱いが難しいっていうのはあるからね。そうだとしても――絆や縁として技術や知識を引き継ぐのが誇らしいって思ってもらえるようにしたいね」


 呪法と言っても防御呪法だとか対策を始め、平和的な利用法というのはあるからな。

 それを言ったら活用方法次第で他の技術とて悪用というのは簡単に出来てしまうが。

 子供達については魔力や身体能力もそうだが、色々な知識に触れられる分、倫理面についてはしっかりとしていきたいところだ。


 まあ……現状では上手く行っている、とも思う。オリヴィアは特性封印の意味をちゃんと理解してくれているし、それで自分のことを卑下するでも、持っている力を無闇に怖がるでもない。ルフィナ達もそれぞれの違いを理解していて兄弟姉妹の仲も良いという状態なので、このまま成長していって欲しいところだ。


 そのオリヴィア達はと言えば、今も一緒にアシュレイ達の身の回りのことを何かと気にかけて手伝ってくれているしな。父親としては嬉しい限りである。


 将来に関してはともかく、まずは子供達が無事に生まれてくるまでしっかりとみんなの体調管理に注力したいな。


 ロゼッタとルシールも以前と同じようにローテーションを組んでこまめにみんなの経過を見てくれていているからな。こちらとしても安心感がある。




 ――アシュレイの子供が生まれる予定日は夏。

 クラウディアの子供はアシュレイから少し遅れて夏の終わりから秋の始まりにかけての頃合いとなるだろう。


 エレナとマルレーンの子供達の予定日はそこから少し間を置いて、冬になってからだ。


 そして暖かな春が過ぎ――段々と陽射しも強くなってきて……夏がやってくる。


 アシュレイ達もみんなのサポートを受けて落ち着いたものだ。グレイス達が先んじている分、流れも分かっているしグレイス達だけでも5回も立ち合い、サポートしてきているので当人もサポートする側も、立場こそ逆転しているが結構な場数を踏んでいると言える。


 同じことが言えるのは俺もだが……それでもやはり、予定日が近づいてくると落ち着かない気持ちになってしまうな。まあ、俺がそんなところを見せてしまうのもどうかと思うので、そういうのは表に出さないようにしているけれど。


 男の子だったら。女の子だったら。名前もそれぞれの場合を考え、生まれた後に必要となるであろう品々や設備を取り揃え、万端準備を整える。


 オリヴィア達は既にそれぞれの部屋を貰っているからな。先に使っていた子供部屋はそのまま生まれてくる子供達の為に使えるわけだ。ティアーズ達の監視も行き届いていて実績もあるので安心である。


 そうやってみんなが支え、色々な準備を進めつつ日常の仕事もこなすという……少し慌ただしい中で日々は過ぎていき――そうしてまずアシュレイの予定日を迎えたのであった。


 予定日に合わせて、エリオットとカミラ、二人の子であるヴェルナーにケンネルやミシェルもフォレスタニアにやってきて滞在している。子供の誕生に立ち会いたいという想いが強いのだろう。


「いとこかあ……うん。あえるのがたのしみ」


 ヴェルナーがにこにこしながら言うとオリヴィア達もうんうんと頷く。アシュレイも甥であるヴェルナーを可愛がっているしな。きっと従兄として仲良くしてくれるだろう。


 城の一角に臨時で作った待機部屋はそんな調子で賑やかなことになっている。

 とはいえ、予定日になったからとその通りになるとは限らないし、産気づいた後も長丁場になることもあるから、根を詰めずに待っていて欲しいところだ。


 始まってしまえば俺は待つしかないからな。今のうちにアシュレイとも顔を合わせて、話をしておく。


「体調はどう?」

「悪くはないですよ。本当にそろそろなのかなと思ってしまうぐらいで……それはそれとして、子供は結構元気ですが」


 そう言って微笑むアシュレイである。アシュレイのお腹を触らせてもらうと、動いているのが伝わってきて。そうだな……。みんなも言っているが俺も……会えるのが楽しみだ。


 そう伝えると、アシュレイは穏やかに目を細めていた。そっと手を繋いで、循環錬気を行いながらも、ロゼッタとルシールに言う。


「お二人とも、どうかよろしくお願いします」

「ふふ。任せて頂戴。私にとっては可愛い教え子でもあるもの」

「全力を尽くしましょう」


 ロゼッタとルシールもそう答えてくれる。一人ずつ交代で休憩や仮眠をして備えてくれるとのことで。これからルシールが休憩に入るとのことだ。

 二人ともアシュレイ達から信頼されているので、一緒に経過を診ていてくれるのは心強いだろう。


 そして……状況に変化が生じたのは夜になってからだった。

 産気づいたとルシールから連絡があり、交代で仮眠していたロゼッタも起きてきて、浄化の魔道具や体力回復の魔道具を用いながら出産の準備に入っていた。


 途端に慌ただしくなる空気に、子供達も不安そうではある。


「大丈夫よ。ロゼッタ先生もルシール先生も頼りになる人だもの」

「そうだね。みんなが生まれた時もロゼッタ先生とルシール先生が助けてくれたんだ」


 イルムヒルトの言葉に答えて、近くにいたロメリアの髪を撫でると俺を見上げてこくんと頷いてくる。


 子供達は普段、そろそろ眠る時間であったが、それどころではないようだ。生まれてきたら起こすと伝えてはおくが。


「アシュレイおかあさんをおうえんするの」

「うんっ。おきてまってる」


 子供達は決意を固めたような表情でそんな風に言ってヴェルナーと共に頷き合っている。まあ、そうだな。意志は固いようだし、そうした想いは尊重してあげたいところだ。


「分かった。どうしても起きているのが我慢できない時は、魔法で手伝うから言ってね」

「うん……! ありがとうおとうさん……!」


 俺の言葉に子供達も嬉しそうな様子だ。そんな反応にエリオットやケンネル達も表情を緩めるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 相撲に関しては……そうですね。頃合いを見てきちんと指導しないといけませんが、それはそれで師弟の触れ合いとしては楽しみではあります エキサイトモグラ翻訳
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ