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番外2002 少しの変化と共に

 そうやって竜輪ウロボロスを迎え、マルレーンの誕生日も経て、少しの変化と共に俺達の新しい日々も始まった。


 変化というのはその……何と言うか、アシュレイ、クラウディア、マルレーン、エレナと、年少組であったみんなとの変化だな。結婚しているが色々と時期が来るまで待っていたので。


 対外的には第一夫人といった序列はあるけれど、家庭内では対等だからな。これはパーティーメンバーとして一緒に戦っていたからこそでもあるだろう。


 俺からみんなにも対等に、ということになるから……子供達を、というのは求められていることではあったな。

 ただ……誕生日を迎えたからといって漫然と俺達の関係を進めるというのも何だったので、誕生日のお祝いも兼ねてみんなと一緒に夫婦水入らずで出かけたりもしたが。

 うん。要するにデートだ。


 出かけた先はタームウィルズ近隣ではあるが。フロートポッドをリンドブルムに引いてもらって、のんびりとした空の遊覧である。


 近場の丘の花畑に赴いたり、秘密の入江になっている海辺に赴いたり……まだ結婚していなかった頃に思い出の深い場所に出かけてピクニックといった感じだ。


「花妖精の花畑も、この海岸も……昔から変わっていなくていい場所ですね」


 楽しそうなアシュレイに、微笑んで頷くマルレーンだ。


「しずかで、きれい……」

「お父さんとお母さん達の、思い出の場所なのよ」


 クラウディアが答えると、オリヴィア達がにっこり笑う。


「見てきて、いい?」

「わたくし達と一緒にね。海は危ないもの。水だけじゃなくて、危ない貝だってあるのよ」

「うんっ」

「きをつける」


 と、ローズマリーと手を繋ぐルフィナとアイオルトである。


「というわけで、子供達は私達が見ておりますので」

「ん。今日の主役はテオドールとのんびりしていても大丈夫」

「ふふ。ありがとうございます」


 グレイスやシーラの言葉に嬉しそうに答えるエレナである。


「いってらっしゃい。お母さん達の言う事をちゃんと聞いてね」

「はーい!」

「いってくるね、おとうさん!」


 嬉しそうに手を上げて答えるヴィオレーネとロメリアだ。エーデルワイスもまた、ステファニアと手を繋いで、周囲の散策に出かけた。カドケウスやバロールも一緒だし滅多なことはあるまい。


 そんな調子でみんなと手を振り合いながら微笑ましく見送らせてもらい、アシュレイ達とのんびりする時間を作らせてもらった。寄り添って一緒に過ごす。


「改めて出会った頃を思い返すと懐かしいですね」

「そうだね。ここで水上を滑ったりしたっけ。ここの事はBFOで知っていたからなんだけど」

「仮想空間の遊戯ですね。楽しそうです」

「人もあまり来なくて、良い穴場ね。BFOを遊んでいた人達もめざといものだわ」


 そんな話をして笑う。こうやって前世のことも話せるのはみんなぐらいのものだ。

 紙飛行機についても地球の記憶由来という事で、マルレーンも地球の話を好んでいたりするしな。干渉の関係上、みんなにも手伝ってもらうにはあっちの知識をつけてもらう必要もあるし。


 そんな調子でみんなと軽い世間話をしていると、少し離れたところから楽しそうな子供達の笑い声が聞こえてくる。


「その……子供達……楽しみですね」


 それを受けてエレナが言った。ほんの少し、頬を赤らめている。


「ん……そうだね。みんなには随分待たせちゃったし」


 そう答えるとマルレーンは笑って首を横に振る。


「私達の身体を気遣ってくれてのことだものね」

「ですから今日から改めて……よろしくお願いしますね」

「ふつつか、ものですが」


 と、マルレーンもそんな風に言って。みんなではにかんだように微笑み、頷き合う。


「うん。俺の方こそ……よろしくね」


 改まってとなると少し気恥ずかしいのはあるが……誕生日を待っていたということもあり、みんなの心の準備は既にできているようだ。


 肩を寄せ合ったり、手と手を重ね合わせたりしていると周囲の散策を終えたグレイス達も戻ってくる。そうやって……ゆっくりと時間も過ぎていったのであった。




 ――アシュレイ、マルレーン、クラウディア、エレナとのことも……そうやって少しの変化を経て前に進んで行った。

 何というか……それまでの間待たせてしまったこともあって、みんな子供に会えることを楽しみにしているようだ。

 これまでの子育てでオリヴィア達が可愛く感じていたというのもあるだろうし、みんなで助け合って周囲の人達も支えてくれて、流れも分かっているので不安が少ないというのもある。


 それに加えて、オリヴィア達も弟か妹が増えたら嬉しいなんて。そんな話もしていたからな。だからまあ、みんな前向きだ。俺もそうした想いには応えたいと思っている。


 そうやって俺達の日々は過ぎていった。

 周囲に目を向ければ――こちらもまた、色々と変化しているな。

 まず、ヘルフリート王子とカティア、ダリルとネシャートも無事に結婚した。


 ヘルフリート王子については、周囲の受け入れ状況や根回し等がようやく整ったから晴れて、という感じだな。

 ネレイド族と結婚する事で見た目が変化しなくなる問題については、前々から決めていた通り、時間経過と共に変化する幻影を纏う魔道具を開発し、ヘルフリート王子に使ってもらっている。


 年齢ごとの見た目については……ヘルフリート王子自身やメルヴィン公、グラディス夫人達の姿から10年ごとの姿をまず迷宮核に予想してもらい、そこから細かく中割りを作っていくような感じで経年変化する幻影を構築している、というわけだな。


 体格等は実際の姿に合わせて多少魔道具側が補正してくれる。太った痩せた、等だな。ヘルフリート王子は体格補正がかかった場合の幻影を見て「格好悪くならないように気を付ける」等と言っていたが。


 まあ、最終的には1年毎の変化を幻影として用意するような仕上がりになったから、見た目からはボロが出る事はないのではないだろうか。連続して何年分も見ていくと変化もわかるが、1年ごとだと切り替えてみてみても違いが分かりにくかったからな。


 そんなわけでヘルフリート王子とカティアはヴェルドガルとグロウフォニカ、ネレイド族やグランティオスを始めとした面々に祝福されて結婚式を挙げ、島で夫婦としての生活を始めている。子供に関してもいずれ報告があるだろう。


 ヘルフリート王子は事情があるからそこまで大々的な結婚式ではなかったが、細かい部分の演出については工房で担当させてもらった。

 空を舞う魚や色とりどりの貝殻、光の粒や泡の幻影を散らばせたりして。その光景にはヘルフリート王子やカティア、結婚式の列席者も随分喜んでくれた。


 ダリルとネシャートについても無事に結婚式に至っているが――演出面に関してはこちらもそうだな。

 式が終わって直轄地の街中を巡る間にバハルザードのイメージを想起される幻影を映し出して異国情緒の溢れる風景を領民にも楽しんでもらったりした。ネシャートは故郷から離れているということもあって色々大変なところもあるだろうけれど、その辺の違いを領民達が理解を示すことにも繋がってくれればいいな。


 まあ、反応は上々だ。ガートナー伯爵領ではちょっとしたバハルザードブームになっていた様子だからな。ラクダを模した土産物を並べている場所もあって、他所から来た商人や冒険者がそれを買い求めているところも見た。


 ともあれ、ダリルとネシャートの結婚についてはダリルが後継者として相違ないと内外に示した形でもある。バハルザードもそれを認めているという意味合いもあるから、領内の家臣達も団結してダリルを支えていってくれるのではないかと思う。

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― 新着の感想 ―
[良い点] モグラやペンギン達と一緒にね。海は危ないもの。水だけじゃなくて、危ない貝だってあるのよ あにまるが放置した貝は毒なのよ
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