番外1991 コルゴティオ族を迎えて
グロウフォニカ王都での歓迎は結構なものになった。水晶板で後方との連絡を取っていたということもあり、隕石への対処も上手く行ったということも伝わっているわけだ。
デメトリオ王やグロウフォニカ。俺達やヴェルドガル、シルヴァトリアや月の民。同盟を称える声で以って喜びを露わにしている。
飛べない鳥人族を守ったというのはグロウフォニカの民にとっても結構大きなことであったようで、かなりの熱狂ぶりだな。
というのも、当時の王女と飛べない鳥人族の物語は国民から人気があるそうで。王女は島から戻っても色々と民の為に尽力をした人物だというから、尚の事なのだろう。
「鳥人族を守ってくれてありがとう!」
といった声があちこちから聞こえてくる。
「ようこそグロウフォニカへ!」
「歓迎するぞ!」
コルゴティオ族についても伝わっており、彼らもそんな風に温かい声援で手を振って迎えられていた。
甲板の上に姿を見せ、明滅しながら『ありがとう!』『嬉しく思う』と、迎えてくれたグロウフォニカの国民に礼を言っているコルゴティオ族達である。
「これからルーンガルドで暮らしていくにあたり、我が国とも良き関係が続くことを願っている」
デメトリオ王がそんな様子に笑って言う。
『こうして温かく迎えてもらったこと、決して忘れはすまい。我々こそよろしく頼む』
アステルがそう答えて。そうして俺達はグロウフォニカの王城へと入った。
そうしてグロウフォニカでも温かく迎えてもらい王城での歓待を受けた後に、俺達は改めてヴェルドガルへの帰路についたのであった。
帰路は順調で、コルゴティオ族は空や海、そこを行き交う船や島々を眺めたり、俺達の暮らしや文化、歴史といったものについて話を聞いたりと、中々充実した時間を過ごせたようである。
『ほう。テスディロス殿達とは元々敵同士だったと……』
「そうだな。だが、ヴァルロス殿から後事を託され、その約束を守ってくれている」
「一族の呪いを解き、受け入れてくれたのですな。その信義に応えたいと思っているのですよ」
と、テスディロスやオズグリーヴが言うと、お祖父さん達も頷く。
「互いに一族として、長らく戦いを続けてきた関係ではあるがの。子孫がその宿命から解放されるというのは、喜ばしいことよな」
そんなお祖父さんの言葉に、エスナトゥーラもうんうんと頷き、コルゴティオ族の面々も確かに、と同意したりしていた。まあ……色々と自分達に重なる部分も多いのだろう。
ヴィタールはもういないけれど、戦い続けてその宿命から解放されたという点においては気持ちも同じだろうしな。
「今は私達も新しい仕事や楽しみを見つけたりして、前に進んでいますよ」
オルディアが笑って氏族の現状を伝える。
『我々の進むべき道でもあるな』
アステルが言って同意しながら明滅するコルゴティオ族である。そうして一緒にイルムヒルトの奏でる音楽を楽しんだり談笑したりと、コルゴティオ族との交流もしながらの帰路となったのであった。
『おお――あれが……』
『話には聞いていたが、確かに大きいな!』
水平線の向こうにセオレムが見えてくると、コルゴティオ族もその規模に盛り上がっている様子であった。
ルーンガルドでも一際大きな建造物だからな。そうした建物などの構造物を構築する文化がなかったコルゴティオ族にとっては船にしろ建物にしろ、色々と興味深いもののようだ。
頃合いという事で一旦シリウス号を洋上に停泊させ、そこで飛べない鳥人族を転送魔法陣で招待する。ポルケー達にも遠景からセオレムやタームウィルズを見てもらおうというわけだな。
転送魔法陣でやってきた鳥人族達も、セオレムを見て興奮している様子であった。まあ、喜んでもらえて何よりだ。
そんなわけで、まずはセオレムで歓待を受けてからフォレスタニアへ向かう事になるだろう。
隕石関連の話も既に伝わっているので、ヴェルドガルの歓迎もかなりのものだ。グロウフォニカの鳥人族、コルゴティオ族を一目見たいと思っている面々も沿道に出ていたり、結構な人出で、シリウス号や浮遊城が近くまで行くと相当な盛り上がりを見せていた。
造船所に到着すると王城からの迎えも来ていて、アステル達、ポルケー達を案内してくれる。メルセディアの案内で俺達も一緒に王城へ向かい、そこでジョサイア王やフラヴィア王妃の祝いと歓迎を受ける。
「苦難を乗り越え、遠路遥々よく来てくれた。この国を預かる王として、新たな友と賓客を迎える事ができて、嬉しく思う」
ジョサイア王がそう言って笑顔を向ける。
『我らを受け入れてもらえたことに、感謝の言葉もない。どうかこれからよろしく頼む』
「国外に出るのは初めてですが、皆喜んでおります」
アステルとポルケーがそれぞれの一族を代表して応じる。ジョサイア王は頷くと、俺達にも視線を向けてきた。
「そして、皆無事であったことは本当に素晴らしいことだ。その知と武、何より、勇気と誇りに敬意を表する」
オーレリア女王や七家の長老達にも向けてジョサイア王が言う。俺も一礼してそれに応じ、オーレリア女王も頷く。
「ルーンガルドと共にある者として、同盟に名を連ねる女王として、意義のある戦いに身を置き、皆肩を並べて戦えたこと、私も誇らしく思っています」
と、そんな返答をして笑みを浮かべるオーレリア女王である。七家の長老達も静かに一礼し……そうして迎賓館に案内され、歓迎と祝いの席が始まったのであった。
騎士団と魔術師隊の演武に、ポルケーやアステル達も喜んでいた。楽師達の音楽に合わせての一糸乱れぬ編隊飛行と魔法の演出ということで、ポルケー達にとってはかなり種族的な部分を刺激するものだったようで。音楽に合わせて身体を揺らしたりしていた姿は微笑ましいものがあるな。
アステル達はアステル達で、飛行の練度に対してもだが魔法にこんな使い方がある、ということに感銘を受けていたようだ。
歓待も経て、セオレムや街中の観光も行いつつフォレスタニアへと向かった。フォレスタニアにある各種施設も解説しながら移動し、迎賓館での歓待だ。
迷宮村や氏族の面々から迎えられて、ポルケーとアステル達は嬉しそうにしていた。
フォレスタニア城内の各種施設を見学したり植物園や火精温泉に出かけたりして、かなり楽しんでもらえたのではないかと思う。
ポルケー達から預かった作物を植物園で育てて外部にも保険を増やすという話になっているが……植物園の環境を見て「これなら安心ですな!」とかなり喜んでいた。花妖精やノーブルリーフ達と一緒に踊ったりして中々に盛り上がっている様子であったが。
さてさて。そうして島からの賓客を歓待しつつ、新しい仲間としてコルゴティオ族を無事にフォレスタニアに迎えることができた。
ヴィタールの記憶結晶についてもしっかりと保管し、中にある情報を死蔵するような事のないようにしたいということで……まず結晶本体は月光神殿に安置させてもらうこととなった。
ここから情報を収集して新区画にも役立てられるようにする、というわけだな。
というわけで迷宮核に移動し、まず月光神殿に少し手を加える。神殿内部に第二玄室を作り、そこにヴィタールの慰霊も兼ねて記憶結晶をしっかりと守れるような設備を拡張するというわけだ。
防壁と外郭の結晶柱で守られるという……まあ中々強固な設備に仕上がったのではないかと思う。実際の記憶結晶をそこに安置したら、続いては新区画の整備だ。まずは結晶からの情報を基にヴィタールの星の生命を、ルーンガルドに合わせた調整を施していく、というわけだな。