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番外1985 平穏を守るために

 思念体達――改め、コルゴティオ族という名前も決まり、そうして次の小隕石と追跡者を迎えるために準備を進めていった。

 コルゴティオ族は乗ってきた隕石を操作。人数分に小分けして鎧兼、個別の搭乗機のようにして用いたり、合体して今のように大きな隕石にしたりできるようで。


「地上では大気による抵抗がありますからね。こういった形状にするとその抵抗を減らすことができます。その場合、揚力等も生じたりはしますが」


 と、鳥や戦闘機をモデルに土魔法で模型を作って見せると、コルゴティオ族は隕石を操作してそう言った形状に変化させていた。


『なるほど……。これは確かに飛びやすい』

『重力と揚力に大気の抵抗か。考えるべきことが多いな』

「音の伝わる以上の速度を出すと衝撃波が出てしまいますのでお気をつけて。その時は別途対策なりが必要ですね。自分だけでなく、衝撃波は仲間にも被害が出る可能性がありますので」

『承知した』

『分体との戦いでは……そこまでの速度は必要ないだろう。我らも高速で飛ぶためには人数を集めて力を使う必要があるしな』


 とのことだ。まあ、基本は衝撃波対策無しでも大丈夫そうだな。


 さてさて。そうして準備も進んだところで、浮遊城にてこの場に集まっている面々と共にのんびりさせてもらって、早めに休んで体力と魔力の調子を整えるという事になった。小隕石が飛来するのは明日の事。できる準備とて限りがあるので魔力、体力のコンディションを整えつつ、信頼関係の構築という部分に重きを置いて動いていくわけだ。

 飛べない鳥人族に避難をしてもらうついでに歓待もする準備を進めていたという事もあり、ゴーレム楽団や各種飲食物の準備もされている。


 鳥人族達は草食性が強いと聞いていたから野菜に穀物、果実が主だがコルゴティオ族は普通の食事をとらないからな。準備してきた品々で問題なく過ごすことができる。


 代わりに、コルゴティオ族は魔石が良い栄養補給になるようだ。

 というより、魔石を触媒に元素魔法を発動すると、器がある者にとっての治癒魔法と同じような作用を齎すようで。魔力をプールするタンクとしての役割の他に、ダメージを受けた際の治療薬や疲労回復として丁度いい。実戦使用には向かない小さめの魔石等を配って明日の小隕石飛来に備えるといった感じだな。

 属性魔石だとどうなるかも試してみたいところはあるが、まあ実験的な部分は一先ず終了だ。問題が解決したらのんびり検証していけば良い事だろう。


 ゴーレム楽団の演奏に合わせて鳥人族達が歌ったり踊ったりして、その姿にコルゴティオ族も明滅していた。踊りは視覚情報なので、彼らにとってもパフォーマンスとして分かりやすい。

 歌や演奏は宇宙空間で生きてきた彼らにとって馴染みのなかったものだ。

 だからこそ最初は翻訳術式も通じなかった部分はあるのだが、大気の振動自体は感知できるようである。魔力を波として放って情報伝達手段として使っていたようだしな。

 音声による情報伝達という概念も理解したため、歌や演奏による大気の揺らぎを感じ取って楽しんでいるようである。


『何というか……揺らぎが心地良いというのは理解できる』

『会話の言葉よりも魔力に影響しやすいのかも知れない』


 そんな感想を漏らすコルゴティオ族である。ちなみに彼ら自身の名前については自分達で考えていく、ということになった。

 ルーンガルドの文化や言葉を学びながら考えていきたいという事で、楽しそうに明滅しながら将来を楽しみにしているコルゴティオ族である。


 そんな風にしてコルゴティオ族はみんなとの談話や歌と演奏も楽しんでくれているようだ。戦いと逃亡の中に身を置いていたから、戦意を持つ時と仲間達の間で寛ぐ時のオンオフの切り替えがきっちりしているというか。明日の戦いに備える心構えというのはしっかりできている印象だ。それは頼りになるとも言えるが、彼らが望んでそうなったわけではない。種族特性的に決して戦いに向いているとも言えないということを考えると、少々複雑だな。


「コルゴティオ族は――戦いを受け入れていて気負いしていないという印象だが……」


 テスディロスも同じ感想を抱いたのか、そんな風に言って眉根を寄せる。


「そうだね。逃亡と迎撃に慣れてしまったから、だと思う」

「日常的に戦いに身を置くような実戦経験の多い者達はそうなる傾向があるが、騎士や兵士、冒険者でない者がそうだというのは、気の毒なことじゃな」

「頼りにはできますが……安心して過ごせる環境を作ってやりたいところですね」


 俺の言葉をお祖父さんやオーレリア女王が静かに言った。


「ん。戦いになると決まったわけじゃないけど、明日は頑張る」

「そうね。そういう状態に置かれてしまった普通の人達を見るのは、忍びないわ」


 シーラが闘気を揺らがせると、ステファニアも決然とした表情で頷いていた。王族や貴族の生まれ故と言うべきか。そんなステファニアの言に、クラウディアやローズマリー、マルレーン、アシュレイも真剣な表情で頷いていた。




 さて。そんなわけで雑談も程々のところで切り上げ、小隕石の監視は天文官や連絡役のティアーズ達に任せつつ、早めに休ませてもらうこととなった。


 浮遊城には貴賓室に広々とした浴場も作られていて、シリウス号の風呂場よりもゆったりとした空間で寛げるようになっている。みんなと共にゆっくりと湯舟に浸かり、静かに寄り添って手を繋いで循環錬気を行うなどして過ごさせてもらう。


 程よく温かい湯に浸かりながらも循環錬気を行えば、身体の内側からも温かな感覚が広がってくる。湯の中に溶けて混ざっていくような感覚で、何とも心地の良いものだった。


「明日は、テオもお気をつけて」

「うん。未知の相手だからね。戦いになった場合は封印や撤退の選択肢も視野に入れてる。でもまあ、気合は入れていこうと思うよ」


 グレイスの言葉にそう答えると、みんなと共に微笑みを向けてくれる。


「コルゴティオ族の皆さんも、真面目で穏やかな性格をしていますからね。力になってあげたいです」

「そうだね。みんなは――外の結界の維持とその護衛っていう形にはなるけれど」


 俺の構築する変換結界の外に、もう一つ結界を作ってもらい、戦闘になった場合、その内部で行うという想定だ。その為、外の結界を維持するのがクラウディア、ステファニア、ローズマリー、マルレーン、エレナが結界の維持を行い、それぞれをグレイス、シーラ、イルムヒルト、イグニス、コルリスにアンバー、デュラハンを始めとしたマルレーンの召喚獣達、ベリウスといった面々に守ってもらう、と。アシュレイはラヴィーネやティールを護衛にしつつ、シリウス号甲板で待機し、怪我人の治療に当たる。


 テスディロス達、氏族は守りや後方からの援護に向く面々以外は前衛という事になるかな。戦闘になった場合、分体との空中機動戦が予想されるから、頼りになるだろう。

 

 撤退する場合は魔道具に連動させた転送術式を用いて一気に、という形になる。

 呪法で繋がりを作って避難用の転移発動をトリガーに、同時転移の巻き添えにするという名目で実質上の転移魔法補強を行うという術式開発もしているのだ。

 迷宮の範囲外でも集団転移による避難が容易になったから、まあ、もしもの場合、今回場に集まっているみんなの身を守ることができるはずだ。


 ともあれ、今日はこのまま風呂から上がったらみんなと循環錬気を続けて魔力の状態を活性化させておこう。明日に備えて万全を期したいからな。

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[良い点] 獣・宇宙帝王ふりーざポットがええよ 球体べんりやでww
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