表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2774/2811

番外1983 元素術式

 人数も多いので思念体達を浮遊城に案内し、広間を会議室代わりにして作戦会議をすることとなった。

 こちらなら広々としているので思念体達が話して火花が散っても安心だ。


『シリウス号……もそうだったが、身体のある者達はこのように周囲の物体にも工夫を凝らし、見た目も変えていくというわけか』

『新しい発見が多い』


 思念体達は明滅しながらシリウス号や浮遊城内部の様子に感想を口にしていた。


 思念体達は浮遊しているし魂の周囲に濃密な魔力を纏っているという感じだからな。器を持たないし仲間達の姿も基本的には変わらない。だから、見た目はあまり気にする文化がない、ということなのだろう。


 追跡者とどんな戦いをしてきたのかも聞いてみたが、基本は射撃戦が多い。

 思念体達は隕石を主に使用しているが何かの物体の中に宿ったまま戦うことができる。しかし、宿った物体――隕石を割られた後、追跡者に直接接触されたらある程度の抵抗はできても終わりということだ。

 だから、隕石を操作しながら飛行して各種射撃攻撃や遠隔攻撃を行うというのが基本的な戦い方だったらしい。


 追跡者がどうやって捕食しているのか探るためにも、体外循環錬気で思念体達の特性を見せてもらうが……。


「外からの干渉を受けやすい……ように思います」

『そうだな。あれと遭遇する前の我らは、本当に外部からの攻撃に対して無力だった。抵抗できる術を後から手に入れたが、それも捕獲されてしまえば魔力が尽きるまでのこと。時間の問題ではある』


 思念体達は何も備えていない状態での防御面が脆い種族と言えそうだ。

 俺達の身体の場合、例えば外部からの魔法による干渉にはある程度抵抗力が備わっている。


 例えば水の温度を温める術式、というのがあったとして。その術に巻き込まれても普通は体温が上昇するようなことはない。

 そこを突破してしまうのは治癒魔法やその裏。石化や精神作用の術。転移や転送。内部から作用する魔法薬。封印術や条件を満たすことがトリガーになる呪法等であるが……それらは最初から相手が受け入れる気構えをしていたり、肉体に作用させることを前提にした術式であったり、魔法自体の出力を上げる事で魔法抵抗を無理やり突破しているからだ。


 翻って思念体達の話から判断するに、追跡者の魔法的な捕食に対する抵抗は可能、という事になる。少なくとも魔力がある限りは戦いの中でいきなり取り込まれて食われるということもなさそうだ。

 とはいえ……肉体を物理的に食う場合であれば話は変わってくる。それについては噛みつきと変わらないから普通の攻撃の範疇ではあるな。


 ともあれ、痛がっている素振りが分かりにくいためにどのぐらいの効果があるのかは不明だが、熱線による攻撃はあまり受けようとせず回避していたとのことだ。

 逆に効果が薄いと思われるのは岩石弾などの物理的な攻撃で、お構いなしに弾幕の中に突っ込んでこられたこともあるそうな。


「不定形で変身能力を持っている相手に、確かに岩石というのは効果が薄そうですね」

「内部に核らしきものを見ているわけだから、そこまで衝撃が届けば或いは、かな……」


 アシュレイの言葉に頷きながらも思案を巡らせて言う。

 爆圧なら核に十分な衝撃を届かせられるか? ルーンガルドにはいない存在だし伝聞だからな。その核のような部分が弱点なのかそうでないのかまでは分からない。高熱は……一定の効果もあるのかな。それで捕食をぎりぎりで逃れることができた者もいるということだから、ブラフで避けていたという事はないだろう。


 但し、向こうも対策するらしく、形態によっては熱線も効果が薄くなって、その度に攻撃手段を考えるか、威力そのものを上げる必要があった、とのことだ。


『ただ、我々もあれとの戦いは長いが、妨害による足止めや逃亡に重きを置いていたからな……』

『その真価を引き出すことができていたかというと、自信はない』

『そうだ。奴を仕留めるために戦いを挑んだ者達は誰も帰って来なかった』


 逃げながら後方にトラップやデコイを撒いて攪乱したり、小惑星帯に潜んで足止めをしての戦いを挑んだりといった具合だ。

 その中で彼らの中で何人かの者が、逃亡生活に終止符を打つために良い条件が整った際に勝負を仕掛けたり、或いは仲間達を逃すために殿を務めたりということがあった。


 だが、その者達は帰ってこなかった。未だに追跡者が追ってきているということを考えれば、倒すには至らなかったのだろう。


 今回も、距離にして約一日分。そこまで詰められた中で、ルーンガルドへの降下を決めたわけだが……。

 これは再度の勝負を挑むか、資源を回収し誰かを殿として足止めしてもらうことで望みを繋ぎつつ回収した資源の利用法を研究するの選択を迫られていた場面でもある。

 魔力の補給と足止めが出来れば恒星の重力圏からの脱出も考えることはできた、という話なので。


「なるほど……。いくつかお願いしたい事があるのですが」

『なんだろうか?』

「まず、現在追跡者との戦闘に使っている術を見せていただきたいというのと……元素が必要という事なので必要なものを教えて欲しい、ということです。物によってはこちらで用意できるかも知れません」


 彼らの中にも既に実戦で使用している信頼性のある術というのはあるだろうしな。それに、資源が必要というなら提供できるものは提供しよう。

 転送魔法陣で必要な資源を用意するというわけだ。まあ……迷宮でも供給できないもの、という可能性はあるし、オリハルコンに関しては流石に提供できないが。


『それは助かる』

『確かに、新しい資源に可能性を見出すより、実績のあるものがあれば我らも十全に戦えるだろう』

『実績もだが、ここまでの研究と研鑽で可能性を見出しているものも欲しいな』

『そうだな。分体との戦闘を想定しているとはいえ、今まで奴に見せていないものは用意しておきたい』


 そう言って思念体達は身体を明滅させる。喜んでいるというか、戦意が高まっているというか。早速手持ちが少なくなっている資源を見せてもらい、その中で必要と思われるものを特定してリストアップしていった。手持ちの資源については隕石の中に保持されていたり、それぞれの思念体が光球の内部に保持しているらしい。


 彼らの使う魔法は元素術式と言うべきか。物体を性質的に利用する他に、色々な力を引き出したりできるという話だ。種族的な能力ではあるが、中々……面白そうな術式だな。時間があれば彼らも新しい元素術式を色々開発できたと思うのだが。


「これなら大体のものはすぐ用意できそうね」

「うん。知らないものが少なくて良かった」

「こちらでも在庫のあるものは提供しよう」


 ローズマリーがリストを見て頷くとデメトリオ王が言う。オーレリア女王やお祖父さん達も同意する。月とシルヴァトリアからも資源の供給をしてくれる、と。

 後は……転送魔法陣でアルバート達に資源を送ってもらうという事はできるだろう。早速水晶板で連絡を取るとジョサイア王も支援を約束してくれて、工房からもアルバートが『そういうことならすぐに用意するよ』と笑顔で応じてくれた。


 みんなの対応に、思念体達も『こんなに良くしてもらえるとは……』と明滅して感動している様子だ。


 資源供給に関しては問題ないな。では、彼らの元素術式も見せてもらって、それを作戦に組み込んだ上で色々と作戦も練っていこう。まだ戦いになると決まったわけではないが、そういうのも備えあってのものだからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 思念体達は明滅しながらぎゃれおん号やくろがねの城とぱいるだー内部の様子に感想を口にしていた
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ