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番外1978 天文官の分析は

 さて。宴会や滞在中の交流を経て、鳥人族との仲も結構深まったように思う。

 避難訓練も実際に進めてみたが、空からの眺めが良いので彼らにとってのストレスになるということもなく、訓練中は積極的且つ真面目に協力してシリウス号や浮遊城に乗り込んでくれた。

 訓練が終われば空からの周遊もしているが、その時は大人も子供達も楽しそうだしな。


「本当に、ありがとうございます」


 そうやって避難訓練を終えて空を周遊していると、ポルケーがそんな風に伝えてきた。


「いえ。僕達としても皆さんが避難訓練に協力してくれているので助かっていますよ。普段の生活と違うことをしなければならない分、負担もあるでしょうにありがとうございます」

「ふふ。私達は気軽な島暮らしですからな。こうした事に時間を使えるというのもあります。テオドール公がゴーレムで日々の仕事を手伝って下さるというのもありますし」


 そうだな……。果樹園というわけではないが、鳥人族達は夕陽の実の収穫量を上げるために世話もしているし、芋や果実の収穫もしている。

 ジャム等の保存食作りも大事な仕事だ。その辺の日常の仕事についてはゴーレムで手伝っていて、他の事に時間を使わなければいけない分を穴埋めしているわけだ。


 手伝いのゴーレム達が格好いいと鳥人族達にも評判だ。雛達を肩車すると嬉しそうに声を上げたりしていて、割合楽しんでもらえている様子だった。


 そうしたことを鳥人族の大人達も喜んでくれているのだと、ポルケーは話して聞かせてくれる。


「隕石への対応だけでなく、そうしたところまで気を遣って頂けることに、皆感謝しているのですよ」

「それは何よりです。まあ……隕石への対策というのは将来に目を向けるならば他人事ではないというのもありますからね。僕達にとっても実際に対策を取る必要のある場というのは大事だと思いますし、協力もしてもらっているわけですから」


 というわけで、こちらとしても利点は大きいのだ。そんな俺の返答にポルケーは頷きつつも機嫌が良さそうにステップを踏んでいたが。


 そんな島の滞在の中にあって、隕石の追跡調査も進められている。

 月の天文官達とも連絡を取り合っているのだが、今日も周遊から戻ってくると、ログハウスの対策本部に設置した水晶板に、月からの連絡が入った。


『軌道に関しては変わらず。大きな隕石の後を追うように小さな隕石が続く形で進んできております』

『落ちる予測範囲も更に絞れておりますが、凡そのところは前と変わりませんね』

「やはり主島に落ちるわけですね」

『はい。大小どちらも、その予測ですね。小さい方は一日遅れでの飛来となりますか』

「大きな隕石の方は局地的とはいえ……そのまま島に落ちた場合は大きな被害が出てしまいますな」


 天文官達とハウゼルは、俺の言葉にそう返答してくれる。

 そうだな。落下地点は鳥人族の集落中心から外れてはいるものの、森は芋や夕陽の実といった食材が確保できる大事な場所だ。それらの植物に打撃があるという事は、その後の食料確保に影響が出る。衝撃波も近隣ではかなりのものになるようで、全く察知できず対策がない状態でその日を迎えた場合、人命にも影響が出ていただろう。


『隕石自体の成分解析も始まりました。陽光の反射の仕方等から推測をするので、表面部分の成分という形になってしまいますが』


 スペクトル分析と言う奴か。確か……景久の記憶でも惑星の成分分析等にはそういう手法が使われているというのを聞いたことがあるな。


『ですが、既存のルーンガルドの情報と一致するものがなく……。現時点ではどのような性質を持った隕石なのか、不明ということしか言えません。お役に立てず、申し訳ない』

「いえいえ。不明というそれ自体が非常に大切な情報と言えます。未知の物質なのかそれ以外の要因でそうなっているのかは分かりませんが、警戒すべき理由と言えますね」


 内部の状態も分からないから、飛散防止の策はいずれにせよ取る必要がある。

 呪法による保護を行う事で大きな飛散の防止をするわけだが、これは広い範囲には拡散させないだけで、割れても狭い範囲内に収まるように閉じ込めるという方向で作戦を立てた。


 砕けたとしても、それはそれで個々の破壊力は減るわけだし、より燃え尽きやすくなるからだ。同時に、広範囲には飛散させず限定させた空間に閉じ込めるということは、隕石に何かしらの生き物がいたとしてもそれが広範囲にばら撒かれるのを避ける事ができる。


 そして、大気圏に突入した際の断熱圧縮によって生じる熱からも、選択的に保護しない。落ちてくるまでにできるだけ燃え尽きてくれた方が、こちらとしても受け止めやすくなるからな。


 表層に細菌等の微生物がいたとしても大気圏突入時の熱で燃え尽きるだろうし、後は隕石自体を隔離してやれば表面の浄化と検疫にはなるだろう。


「ん。保護のための呪法を使う瞬間は何時?」

「それも重要だね。呪法を発動させる引き金にしたいから……距離や重力の影響からかな」


 隕石が飛来するのは、察知された距離からしてルーンガルドの重力に捕まったから……というわけではないようだ。軌道上の問題で偶々飛来し、その途上にルーンガルドがあるから重力に捕まって落ちてくるのだろう。


 呪いを発動させる方法として、何らかの条件に抵触したから、というものがある。だから隕石の飛来に合わせて一定の領域に入って落下が確実になったことをトリガーに呪法を発動させる、というわけだ。


 発動条件の告知や事前の警告等ができると呪法をより強力にできるのだが、対象は隕石だからな……。使用するのも防御呪法の応用で攻撃用の呪法ではないし、呪法を使って落下を受け止めるというわけでもないから、発動条件はこれでも問題はないだろう。


「そうですね……。そうした条件付けでも目的に堪えうる出力を確保できると思います」


 エレナが思案しながら太鼓判を押してくれた。


「そういう発動条件なら、落下前に分裂したとしても対象になりそうね」

「そういう意図もあるね。結果として予定されている落下地点に欠片を残さず誘導する事に繋がる、と」


 イルムヒルトが微笑み、その言葉に頷く。


 後は……そうだな。


「それから……隕石を収納、隔離する容器でも作っておこう。刻印術式で浄化の術式を用いたり陰圧を保つことで、外に成分を漏らさないようにする、と」


 その上で安全な結界内部で回収した隕石の解析作業を行っていくのがいいのではないだろうか。


 早速土魔法で必要なだけの大きさの容器を構築しておく。構造強化を施し、各種刻印術式を用いる。破損対策に自動修復としてゴーレムメダルを組み込む、と。程無くして容器も完成した。


 出来上がった容器はシリウス号の甲板に固定しておけばいいだろう。これで一先ず現時点でできる対策はほぼほぼ、というところか。


 後は……保存食をシリウス号や浮遊城に移したり、飛べない鳥人族と避難訓練や交流をしながら本番に備える事になるな。まあ、それも状況や情報に予想外の変化が生じなければ、の話だ。

 現時点でも隕石の成分は不明だし、いざ衝突阻止を迎えるに当たって予想外の事態というのは有り得る。今後も話し合いを重ねて、色々な可能性や事態を想定しておく。心構えをしておくというのは大事なことだろう。隕石自体は俺が受け止めるというのは変わらず。みんなには鳥人族達を守ってもらう方向で動くとしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] これはもしかして敵性生命体が宇宙からくる流れ??
[良い点] 宴会や滞在中の交流を経て、超人族との仲も結構深まったように思う、コルリスが石版に描いた三つの絵を渡すとマッスル(青田)・昇も恐縮して受け取っていた
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