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番外1968 腕輪と子供達

「ふふ。どんな腕輪にしようかしらね。気合が入ってしまうわ」


 と、母さんは腕捲り等しつつそんな風に言う。

 魔道具を作る為の材料はしっかり揃っているが、封印の魔道具を作るという話が持ち上がったことで、お祖父さん達とヴァレンティナ……七家の面々も素材を提供してくれるということになった。

 子供達への魔道具の贈り物ということで……何というか機会があれば張り切っているという印象がある七家である。うん。ありがたいことではあるな。


 オリヴィアに特性封印の魔道具を作るのがそもそもの目的ではあるが、どうせなら子供達みんなに魔道具を作りたいという話になっている。


「とはいえ、必需品という点では色々揃っているから中々難しいところね。お守り的な魔道具が良いのかななんて、七家の人達とは話をしているわ」


 母さんが思案しながら言う。


「お守りというと……破邪や解呪、自動防御や身代わりといった魔道具でしょうか?」

「そうなるわね。大きさを調整できるようにしておけば、長く使えると思うし」


 エレナの言葉に、にっこりと笑う母さんである。


「俺としては、母さん達の好きなように作ってくれればと思うよ」

「そう? それじゃあお言葉に甘えて。自動防御でも使い捨てにしない方が良いわね。魔石の交換で何度でも使えるように組んでみたいと思うわ」


 そんな話をしていると、七家の面々がフォレスタニア城に姿を見せる。


「ふっふ。パトリシアと共に魔道具作りできるというのも喜ばしい事だが、作る物が子供達の身を守るためのものというのがまた素晴らしいのう」

「いやはや全く。張り切ってしまいますな」


 そんな風に言って気合の入っている七家の面々である。実際に使う使わないはさて置き、色々素材も持ってきたようで。

 まあ……七家としてもオリヴィア達は後継に繋がる子達でもあるからな。身内という括りを飛び越えて色々大事に思っているという部分もあるだろうから、その身を守るための魔道具ともなれば本気も出すか。


 そんなわけで七家の長老達やヴァレンティナ、シャルロッテも、母さんと共に錬金部屋へと向かっていった。

 シャルロッテも長老達の技術や知識を学ぶいい機会だからな。


 サイズ調整を含めた上でデザインや、素材をどうするか考えたり、決める事は色々あるのだろうが、その辺も含めて楽しそうだな。俺達も出来上がりを楽しみにしておこう。




 それから一週間程して。

 母さん達はしっかりと腕輪の完成品を仕上げてきてくれた。専用の収納箱まで作っているあたり本気度が高いな。

 小さな宝箱風にしていて華美過ぎず地味過ぎず、インテリアや小物入れとしても良さそうな感じだ。開けてみるまでの楽しみもあって、中々いい演出である。


「それじゃ、みんなも一緒に見ていこうか」


 子供達を腕に抱いて、みんなで小箱を囲んで魔道具を見せてもらう。

 実際に小箱を開けば――そこに銀色の腕輪が鎮座していた。ミスリル銀で作られていて、花の意匠が施されている。

 オリヴィアならオリーブだし、ルフィナならルピナスといった具合だ。エーデルワイスはそのままエーデルワイスだし、ヴィオレーネはヴィオラ、ロメリアはアルストロメリアだな。

 アイオルトの場合は……名前の由来は鉱石なのだがスミレの意味合いを持つのでスミレがあしらってある。


 名前由来なので誰が誰のものなのかも分かりやすいな。


「名前の由来と一致したお守りか。将来子供達が見ても喜んでもらえそうだね」

「ふふ。そうね。喜んでもらえたら嬉しいわ」

「花々の意匠も細かくて可愛らしいわね」


 俺の言葉に母さんが微笑み、クラウディアが頷く。自動防御の機能はオリヴィアのものにも組み込んであるそうだ。みんなの腕輪に特性封印の機能を持たせたのがオリヴィアの腕輪、ということらしい。


「それじゃ早速みんなに着けてもらおう」

「きっと似合うと思います」


 というわけで、一人一人装着していってもらう。構造的にはブレスレットといった感じだが、怪我をしたり、擦れたりしないよう尖った部分や細い部分、荒い部分を排しているし、誤飲がおきないように気を遣ってあるのが見て取れる。


 かといって無骨にはならず、装飾は細やかな印象だ。

 サイズ調整は魔法によるもので、ズレてもきつく締め付ずに広がり、手首の部分に引っかかって脱落しない程度に狭まる、といった感じだ。キマイラコートと同じような調整機能があるわけだな。


「かなり高度な素材と技術を使っているような……」

「はっは。少々張り切り過ぎてしまいましたな」

「封印の魔道具にしてもお守りにしても、長く使ってもらうものだものね」

「良いものならば長く使えるからのう」


 笑って応じるエミールと苦笑している母さんやお祖父さんである。


「ん。ありがたい」

「心強いのは間違いないわね」


 確かに。使われている素材にしても魔法技術にしても装飾にしても、気合が入っている。


 グレイスがそっとオリヴィアの腕に腕輪を装着させると、程よいサイズになって手首のところに収まった。


「それじゃあ……最初の魔道具の起動はテオが」

「ん。それなら今回は俺が」


 笑って応じ、グレイスの腕に抱かれたオリヴィアの手首のブレスレットに軽く口付けをすると、魔道具が起動してオリヴィアのダンピーラとしての特性を封印する。


 封印術の状態や体調も母さんと共に確認するが……うん。問題なさそうだ。オリヴィアも少し不思議そうな表情をしていたが、今はにこにことしているな。


「私個人の話ですが……封印の指輪を起動させると気分も落ち着きますから、オリヴィアもそうなのかも知れませんね」


 その様子を見てグレイスが言う。ダンピーラの特性としてはそうなのかも知れないな。


「オリヴィアも気に入ってくれたみたいだからね」


 腕輪を起動させた時の感覚に問題はなさそうで良かったと思う。


 その調子で、ルフィナとアイオルト、エーデルワイス、ヴィオレーネ、ロメリアに、それぞれ腕輪を装着してもらう。機能的にはやはり自動防御。装着者に危険が迫ると防壁を自動展開するというものだ。使い捨てになりがちだが、魔石を交換する事で何度も使用可能な仕様である。


 子供達を腕に抱いてもらい、そこに腕輪を装着させていく。きらきらとしているのが気に入ったのか、キャッキャと声を上げたりして。


「そうね。きらきらしていて綺麗ね」


 ローズマリーがそう言うと、エーデルワイスは少し不思議そうに「きぁき……?」と舌足らずにその言葉を繰り返す。


「きらきらね」


 ローズマリーが微笑ましそうに目を細めてそう言葉を繰り返すと、語感が気に入ったのか、エーデルワイスは「きぁきぁ!」と声を上げて嬉しそうにしていた。ローズマリーもそんな反応に満足そうに頷く。うん。平和な光景だ。


「どうですかな」

「ん。丁度良い感じ。よく出来てる」


 長老の1人――アンドレアスに尋ねられてシーラが満足そうに耳と尻尾を反応させながら答える。

 ヴィオレーネの腕輪も装着は簡単で、しっかりサイズ対応している。手の被毛にも絡まらないように工夫されているな。

 不思議そうに腕輪を眺めたり、機嫌が良さそうににこにことしていたりと、反応はそれぞれだが装着感は悪くないようで。


「ふふ。みんな気に入ってくれたみたいで安心したわ」


 ヴァレンティナが微笑み、母さんとうんうんと頷く。


「本当。子供達が嫌がったらどうしようかって思っていたから」

「軽いし綺麗だし、よく出来てると思うよ」

「ふふ。ありがとう」


 そんな調子で母さん達の作った腕輪や、それを身に着けた子供達の反応で、ほのぼのとしながらも盛り上がったのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ふぉふぉ。どんなまわしにしようかいな。気合が入ってまうわ 北斗伝承者の衣装にまわしを選ぶ獣
[一言] >サイズ調整を含めた上でデザインや、素材をどうするか考えたり、決める事は色々あるのだろうが 七家の長老達「「まずは髑髏は禁止じゃな」」 ヴァレンティナ「トゲトゲもね」 リサ「……」
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] >そんな話をしていると、七家の面々がフォレスタニア城に姿を見せる。 髑髏の意匠を入れないよう監視するわけですね。 パトリシア「待って!そんなに信用ないの!?」…
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