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番外1967 後進の成長と共に

「治癒術の才能が見られる者に関しては、かなりの伸びを見せておりますな。元々残された氏族というのは攻撃的な性質が少ない者達が多くなっておりましたし、逆にそちらへの適性が優れていたのかも知れません」

「迷宮村の子達も、ユスティアやドミニクに教わって、治癒術の補強を頑張っているわね。前々から顔を合わせていて気心が知れているから、ユスティアとドミニクや氏族達とも良い連携をとれているようね」


 と、オズグリーヴとクラウディアがジョサイア王とフラヴィア王妃に、氏族と迷宮村の面々の現状を伝える。


 氏族の面々は元々魔力の扱いに慣れていて、魔術師系の才能に優れている傾向があるようだ。非戦闘員の顔触れが多くなっていた氏族達ではあるが、その分各種属性術師や魔法技師等の才に優れている者が何人かいたりするのだ。比率から見た場合、特殊な術師の才に恵まれている人数は破格な割合と言っても良いだろう。


「氏族に関しては、治癒術師の才に恵まれた者が3名、魔法技師に向いている精密性を持った者が2名、錬金術師、召喚術師と呪術師向きがそれぞれ1名……ですね。みんな適性を活かしたいと病院と工房の手伝いを希望して、見習いとして働いていますよ。植物や農作系に向いた者も3名いて、こちらは植物園や農業関係の仕事を希望しています。その分、武官向きの魔術師の才を持った面々というのは比較的少ないのですが」

「何というか……凄まじいな」


 俺の伝えた内訳を聞いて、ジョサイア王が苦笑する。まあ、武官向きが少ないと言っても、魔力弾等が使えるということを考えると特化していないだけとも言えるのだが、戦いという面で言うとテスディロス達がいるからな。


「アルバートもこの調子で行くと工房お抱えの魔法技師がまた増えて大所帯になりそうだなんて言っていたものね」


 ステファニアが笑顔でそんな風に言う。そうだな。タルコットとシンディーの後輩にもなるから、もう少し余裕が出てきたら二人からの指導というのも有りかも知れない。義肢作りに関われるようになれば増産もできるし。


 ともあれ、治癒術師ならアシュレイやロゼッタ。魔法技師ならアルバート、タルコット、シンディー。錬金術師ならベアトリス。召喚術師ならマルレーンとライブラ。呪術師ならエレナ。農業系に詳しい面々ならローズマリー、アシュレイ、ミシェル、フローリア、フォルセトと……指導や助言できる顔触れが多いということもあり、後進の育成については順調と言える。


 更に、迷宮村の住民達も、ユスティアとドミニクと共に、呪歌、呪曲による治癒術の補強で病院に携わっている。こうした呪曲系の技能は患者の精神安定にも繋がっている。レクリエーションルームで演奏を聞かせるということも行っているからだ。普通の音楽でも効果があるが、沈静や高揚等、患者がその時々で必要とする呪曲を奏でられるということもあって、かなりの助けになっている。


 病院で働くことを希望している面々は、病院で人を癒す手助けをしたいという方向で意欲が発揮されているからな。医術や薬草に関する知識についても学んでいて、この調子でいくと、結構なエキスパートに成長してくれそうだ。


 仮想空間での学習や、病院で起こり得る状況のシミュレーションも行っているしな。この調子で成長していってくれればというところだ。


 ともあれ、氏族も迷宮村の面々も、街の人達に親しまれ、信頼される方向に進んでいて、俺としては喜ばしい。この調子で進んで行ってくれたら良いな。


 そんな調子でジョサイア王やフラヴィア王妃と病院の近況について情報共有を行った。まあ、病院についてもスタッフも段々慣れてきて軌道に乗ってきているようなので、俺達としてもジョサイア王としても安心できた部分はあるな。




 そうして病院が開院し、日々は過ぎていった。最初の内は慌ただしく。段々と落ち着いていったが、まあ、日々の治療と共に情報集積や研究も進んでいるため、概ね計画していた通りと言えそうだ。


 やがて夏も本番という季節になっていく。

 子供達については暑さで体調を崩すこともなく、元気に過ごしているな。夏服で少し涼しげな服装になり日除けの帽子も少し意匠を変えつつも揃いのものを被って、今日もにこにこしているな。ヴィオレーネは帽子から猫耳だけ出るようになっている仕様だ。


 喃語ではなく単語を発する機会やその種類も増え、身長も体重も順調に増えている。みんな立って歩けるようになり、行動範囲も広がっているのでその分大変ではあるが、セラフィナや使い魔達、魔法生物達が手伝ってくれているので負担もそこまででもなく日々を過ごさせてもらっている。


 特筆すべきは、子供達の魔力の強さだろうか。こちらも順調に育っているようで……みんな結構な魔力を秘めているのが分かる。


「ふふ。将来はみんな有望ね」

「ん。魔力は父親譲り」


 ステファニアの言葉にシーラがうんうんと頷く。


「みんな魔力資質が違っていて個性的だね」


 そう言って笑う。基本的には母親譲りな魔力資質といった印象だな。ヴィオレーネは特定の属性に寄っているのではなく、身体強化に特化しているタイプの資質だと思うが。


「オリヴィアは……んー。行動範囲も広がっているし、そろそろ封印術も必要になってくるかな」


 今のところは少し力が強いかなぐらいの印象だが、まだ小さくてその辺の自覚が持てない時期だから早めに封印術を施すのが正解だと思う。


 封印術自体は成長を阻害するものではないというのは迷宮核のシミュレートで分かっているしな。安全性が高いなら装着してもらって様子を見ていくのが良い。

 その辺も含めて今後の事を話すと、グレイスと母さんが揃って頷く。


「そうですね。私も指輪をして普段過ごしていましたが、外した時の力が弱まってしまう印象はありませんでした。成長に従って相応に育った延長上にあった……と言いますか」

「私もそうね。シルヴァトリアで過去に使用した場合の記録でもそうだと思うわ」


 実体験や過去の事例が伴っているというのは心強いな。


「指輪はまだまだ成長で大きさが変わってくるからね。ある程度調整しやすい腕輪にするのが良いかな」

「もし良かったら、私が手掛けてもいいかしら?」


 母さんがそう尋ねてくる。


「うん。問題ないというか、母さんが本来の専門だし」

「私も異存ありません」

「うふふ。孫に贈り物ができるわね。折角なら揃いで何か贈りたいところではあるけれど」


 そう言って楽しそうにしている母さんである。みんなもそんな母さんの言葉に頷いていたりして、和気藹々とした様子である。


「見た目だけ同じ腕輪を作るとか。大変かな」

「型を取ればいいだけだから術式付与をしないなら手間ではないわ」


 という話が出るとそれならみんなの分もということで話が纏まる。母さんも「それじゃあ早めに渡せるようにするわ」と、張り切っていた。

 作業についてはフォレスタニア城内にある設備と材料を使って製作作業に入るとのことだ。まあ、母さんの家から引き上げてきた仕事道具はしっかりと手入れされているので、母さんにそのまま使って貰えば良いだろう。使い慣れた道具なら安心だろうしな。


 そんなわけで、オリヴィアの使う封印術の腕輪は母さんが作ってくれるということになった。母さんも張り切っているし、出来上がりも楽しみだな。グレイスも自分の封印の指輪をオリヴィアに見せたりしてにこにこしている。


 オリヴィアも指輪に触れてキャッキャと声を上げたりしていて、ほのぼのとした光景であった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 俺の伝えた内訳を聞いて、ジョサイア王が苦笑する 獣は北斗治療の後継者を勝手に選んでいる
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] >母さんがそう尋ねてくる。 パトリシア以外一同「髑髏の意匠は欠片も入れないでください」 パトリシア「ええっ!そんなぁ!」ガックリ リサママ「まあ、そうなるわね…
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