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番外1945 病院建築現場にて

「情報の交換ができる場を作るなんて言うのも良いかも知れませんね」


 食後の歓談の時間にて、アシュレイからそんなアイデアが出る。義肢を受け取った者同士で情報を交換する場を設けるという案だ。


「それは良いですね。同じ立場の者にしか実感として分からない事というのはあると思いますし、相談もしやすいのではないかと」


 アシュレイの提案にデニースが同意する。ホレスや他の協力者達も確かに、と頷いていた。


「ん。外に誰か、気軽に相談できるような相手がいるというのは良いこと」


 と、腕組みしつつ頷くシーラである。以前のシーラの場合は盗賊ギルドがそれに当たるだろうか。イザベラを通して盗賊ギルドから技能訓練を受けたりもしているしな。孤児院を出てからの事を考えるにあたり、色々と心強かった部分はあるだろう。


「良いね。ちょっとした問題も利用者同士の情報共有で解決するなんてこともあるし。交流用の集会所があれば色々と便利かな」

「最初は人数もまだ大していないだろうから、伝言板なんかも良いかも知れないね。自由な時に質問や返答ができると、利用者としても便利だしそんなに気を遣わなくていい」


 アルバートが同意してくれる。集会所に伝言板ね。確かにそれは良いな。魔道具化して集会所に設置等しておくか。規模から言えば何も魔道具でなくとも黒板やノートのようなものでも十分に機能するはずだ。


「集会所で魔石への魔力補給もできるようにしておくというのはどうでしょうか? 自前の魔力に乏しい人でも義肢を扱う負担が減ります」

「いいね。フォレスタニア側に構築すれば魔力補給の設備自体をいじる手間は省けるかな」

「そうなると、ますますフォレスタニア側に新居を構える理由が増えますね。例えば、工房に行く前に集会所に寄って伝言を見ておくなんてできますし」


 そんな調子で、タルコットやシンディー、協力者の面々も交えてアイデアを出し合ったり、二人の結婚の準備に関連した話もする。


「ふふ。楽しみですね。どんな結婚式になるのか」


 結婚式の話になり、グレイスが楽しそうに笑う。

 タルコットは公的な立場のある人物というわけではないからな。俺やジョサイア王の結婚式の時のようにシリウス号を使って街中を巡ったりなどという事はしないが……それでも工房の面々はかなり乗り気だ。魔道具を使って色々演出をしたいなんて話にはなっていたりするし、俺としても盛り上げるならば協力はしたい。


 やはりアルバートやビオラ達としても同僚の結婚式であるからか、華を添えてやりたいと思っているわけだ。


 列席者も結構多くなりそうだしな。この場にいない面々でも、ロゼッタはタルコットと共闘したこともあるから割と印象が良いようだし、病院関係で今後は神殿や孤児院との繋がりも増えるからペネロープや孤児院のサンドラ院長、職員や子供達も招待する事になるだろう。




 そうして、タルコットとシンディーは無事合格証を貰い、婚約もすることとなった。

 合格祝いの宴も盛り上がりを見せたしな。タルコット達も工房の仕事をしながらも結婚式を迎えるために色々と準備を進めていく、と。


 そんなわけで俺は病院の建設に移っていくこととなる。まずは病院周辺の外壁土台。それから病院敷地部分の土台から作っていくことになるな。


 外壁の構築は俺の仕事ではないが、土台部分に魔石粉やミスリル銀線を埋め込んで結界線を構築しておくための作業というのは必要だからな。この結界線については通常の機能の他に、外壁周辺の空気を浄化する機能を持たせておく。

 これによって通院の際の感染リスクも下げられるというわけだ。発熱外来や症状に応じた搬送口は変えるけれど、通院者に自覚やそうした認識があるとは限らないからな。


 途中、工房に寄ってアルバートと合流し、南門前の建築現場へと向かう。


「お待ちしておりました」


 現場に積んである建築資材を警備している騎士と兵士達に一礼して迎えられる。


「寒い中、警備ありがとうございます」

「勿体ないお言葉です。皆境界公の魔法建築を見られると楽しみにしている者が多いのですよ」

「先だっての戦いでは、北街道沿いの砦で戦った者が志願しておりますから。あの戦いではテオドール公やアルバート様の備えによって命を助けられたと感じておりますよ」

「今度の建物も、人々を怪我や病から守るためのものと聞き及んでおります」


 そう言って笑う警備の面々である。ヴァルロスがベリオンドーラで攻めてきた時の話だな。その時に砦で戦った者達が周辺警備に多く志願しているそうで。モチベーションも高くて有難いことだ。周囲の雪掻きまでしてくれていて、資材と建設予定地周辺は綺麗なものである。


 見物人も魔法建築が行われるという事で割と集まっているようで。この寒いのに少し離れたところで、携帯食どころかテントまで用意している見物人までいるな……。


「ん。人気がある」

「まあ、期待してくれているようだし、始めて行こうか」


 シーラの言葉に苦笑しつつ仕事に取り掛かる。

 周辺の確認をして安全を確認。問題はなさそうだ。


 まずは外壁部分の土台からだな。地面に手をついて魔力を浸透させ、クレイゴーレムにして土砂を動かしていく――というのは今まで通りではあるが。ジェーラ女王の宝珠も使って、より広範囲に魔力を広げていく。

 十分に魔力が行き渡ったところでウロボロスの石突を突き立て、マジックサークルを展開する。


「起きろ」


 ゴーレム達が端から順に起き上がっていく。外壁の土台部分に沿って逆ドミノというか、円周上に沿って観客がウェーブするような動きで起き上がる。起き上がった分だけ土砂が除けられ、一時的に堀のように深くなる。

 堀の底で形成されたゴーレム達が腕を組んで足場を作り、上部へと昇ってから、更なる下の面々の為に上から手を伸ばして引き上げるといった動作を見せる。


 統制のとれた動きで見る見る深くなっていく堀と整列していくゴーレムに、見物人達から歓声と拍手が巻き起こっていた。

 隊列を組ませて離れたところに体育座りで待機させていく。


 十分な深さに達したところで、今度は穴の内側から石化の魔法と構造強化、刻印術式によって固めていく。魔力ソナーを用いて強度がしっかりしたものになったかを確認したら、今度はゴーレム達に穴に戻ってもらう形で埋めていった。

 後は底の方から段階的に埋めつつ、魔石粉とミスリル銀線を敷設して結界線や術式を施していく、というわけだ。


 こちらはみんなや改造ティアーズと手分けして作業を行っていく。みんながそちらの作業を進めている間に、病院の建つ部分の土台も外壁と同様にゴーレムにして掘り、固めるという作業を行った。


 こちらもミスリル銀線と魔石粉を使ったり、下水道に繋げる準備をしたりといった仕込みもしていくので、土台を固めて終わりというわけではないな。


「今度は何の建物なんだい?」

「何でも病院、だとか。病や怪我の治療をしたり、その方法を研究する設備だって聞いたぞ」

「ほうほう。そりゃありがてえな」

「当然治療代だとかは必要だって話だが……まあ、その他にも炊き出しなんかもやるんだとか」

「魔道具型の義手や義足も取り扱うとお聞きしていますよ。魔道具ではありますが、境界公としてはできるなら多くの方に普及させたいのだとか」


 魔法建築が始まったのを聞きつけたのか、街道沿いに見物に来ている人数も増えてきている。病院のことや義肢の事も話題になっている、というか、警備の騎士や兵士達が周知してくれているようだ。それを聞かされた面々も概ね好意的な反応で、ありがたいことだな。

 それほど時間を掛けずに病棟部分の建築まで進めるだろうから、見物人も色々見ていって、それで病院に関しての認知度が上がってくれたら嬉しいな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ん。コルリスにも誰か、気軽にアフガン航空相撲できるような相手がいるというのは良いこと
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