表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2721/2811

番外1930 提出物作成に向けて

いつも応援ありがとうございます!


お待たせ致ししました。

体調等々も問題ありませんので今日から平常通りの投稿に戻っていきたいと思います。

 タルコットに声をかけ、色々お膳立てして心を砕いてきたのはアルバートの方だ。そんな風に一緒に語られる程の事はしていない、と思うのだが、タルコットとしては結構深く感謝してくれているらしい。

 基礎の重要性についてだとか、何のために力を使うのかということも考える良い切っ掛けをもらったと、そんな風に言っていた。


 タルコットは武門の生まれでもあるしな。何のために力を付けるのかということを考えた場合、研鑽する理由、戦う理由という部分に立ち返るのは大事なことだろう。それが義肢作りに意義を感じる理由にも繋がっているのだとは思う。


 さて。そんなわけでタルコットとシンディーはそれぞれ義肢作りで腕前を見せ、正式な魔法技師を目指すという事になったわけだが……それに対して盛り上がりを見せたのはビオラ、エルハーム姫、コマチ、カーラといった工房の職人面々だ。


「お二人が上手くいくよう、私達としても助力しますよ」

「試験の評価項目はあくまで魔法技師の刻んだ術式部分という事ですが……それはそれとして外装や通常の機能もしっかりしていた方が好印象になるでしょうからね」

「折角ならお二人で違う設計思想というのも良いですね……!」

「機能美と造形美の追求ですね」


 と、気合を入れつつも楽しそうな職人面々である。二人が上手くいくように、というのは魔法技師関連の事だけでなく私生活面でも、という意味が込められているような気がする。

 まあ、工房で顔を合わせているだけにみんな仲が良いからな。ビオラ達としても二人を積極的に応援したいのだろう。


「そんなに気合を入れられると、こちらの腕の方が見合わない……ような気がしますが」

「確かに……。皆さんの腕に釣り合うかどうか」


 タルコットがそんな風に言ってシンディーも苦笑するが、ビオラ達は首を横に振った。


「いやいや。お二方とも見事な腕前だと思っていますよ」

「他所の魔法技師の腕前を見る機会も何度かありましたが、丁寧なお仕事ぶりで中々見ない水準ですね」

「そうでなければアルバート様が推薦するような事もないかと」


 というのが職人面々の二人の魔法技師としての腕前への評価だ。アルバートについてもそうだな。自身が魔法技師として国の役に立つことで貢献したいというのがあるので、その辺りは妥協しない。


 そんなアルバートが指導していたということもあって、さらっと一線級の技量に育て上げているわけだが。


「まあ、ちょっとずつ必要な部分、足りてない部分を補えるような仕事を任せていたからね」


 笑って応じるアルバートである。タルコットとシンディーが自身の技量に無自覚なところからして、アルバートとしてはとりあえず二人の腕前を見つつ自然にステップアップさせていったのだろう。その上で期待に応えてくれた辺りは当人達の努力の結果に間違いないが。


 そんなわけで、職人面々は二人に提出する際はどんな義肢にするのが良いかと意見を聞いていた。


「実用品としての利便性は欲しいですね」

「ああ。それは確かに。提出用ではあるが、日常で使えなければ意味がない」


 シンディーの意見にタルコットが同意する。その意見には職人面々も同感なのか、うんうんと頷いていた。


 そうして話し合いの結果、タルコットは野外でも使える頑丈なもの。シンディーは細かな作業に向いたものを、それぞれのコンセプトにするということで纏まった。


 コンセプトに合わせたチューニングは術式側で施すというわけだ。勿論、外装や構造部分等と連動していなければならない。

 職人側と魔法技師側の腕の見せ所であり、両者の十分な話し合いと信頼、連携があってこそのものだ。この辺は職人達との関係性も見えてくる部分だから魔法技師としての評価にも関わってくるな。


 当然、術式側でチューニングするというのは中々大変な事ではあるが、上手くいけば高い評価に繋がるだろう。

「見習いの卒業試験か……。多少難しい方が乗り越える価値もあるというものだ」

「ふふ。やる気十分ね、タルコット」


 一段階難易度が上がるだろうという見込みにも――タルコットとシンディーは寧ろやる気に燃えているようだ。アルバートもそんな二人を見守るように、穏やかな表情で目を細めていた。きっと乗り越えられると見込んでいるのだろう。


「義肢を提出するとなると、誰かしら装着してくれる協力者を求めないといけないね。デニースとホレスに声をかけるのもありだけど――」

「お二人は既に義肢をお持ちですから、やはり新たに誰かを募り、その方達に合わせたものにするか、或いは誰でもある程度扱いやすいよう汎用性を高めたものにするか、でしょうか」


 アルバートが言うと、タルコットが思案しながら答える。


「それじゃあ、僕からは協力者の手配だけ進めておこう。早めに紹介できる方が良いよね」

「ありがとうございます」


 アルバートとしては自分からの手助けは最小限にして、二人に色々と任せるつもりのようだ。そんなアルバートに礼を言いつつ、更に話し合いを進めていくタルコット達である。


「提出という事を考えると、汎用性を高めたものの方が良いような気もします」

「確かに。義肢の種類だけ決めたら、寸法はある程度調整できるようにするとか……」

「それでしたら、良い案がありますよ。費用も安く抑えられるはずです」


 シンディーや職人面々と意見を出し合い、魔道具の完成形をブラッシュアップしていく。ある程度アイデアが纏まってきたところでマルレーンがランタンを用いてくれて、更に完成形のイメージを明確にしていった。


 職業とそれに想定される用途に応じて耐久性を高めたり精密動作性を高めたり、或いは追加機能を付与したりと……二人の考えるコンセプトに沿って具体的な案も出ている。

 動力は装着者が直接魔力供給を行う方式と、魔石への魔力充填や交換によって補う方式の複合型。これにより装着者の魔力が乏しい場合でも対応可能になるな。


「皆さん楽しそうで良いですね」


 エレナが盛り上がっている工房の面々を見て微笑みを浮かべる。


「元々物作りの好きな人達だからね。そこに工房の仲間の将来にも関わるってなったら、やっぱりやる気も出るんじゃないかな」

「ん。良い事」


 と、俺の言葉にシーラもマルレーンと共にうんうんと頷いて。そうして工房の面々との時間が過ぎていくのであった。




 そんなわけで、明くる日からタルコットとシンディーの魔道具作りも精力的に進められていった。アルバートの手配も迅速だ。

 協力者も工房にやってきて、タルコットやシンディー、職人面々との挨拶をしていた。


 協力者は二名。タルコットとシンディーそれぞれのコンセプトに合わせて一人ずつだな。片方は元冒険者。もう片方は元職人ということで、二人とも義手を希望している。

 タルコットが耐久性重視の義手。シンディーが精密性等を重視した義手を考えているという事で、術式による調整の対比がしやすくなっているというわけだ。


 アルバートはアウリアと、西区ドワーフ職人……ゴドラフ親方の伝手を頼ったという事だ。仕事の早い事である。


「義肢の技術は色々な方面から注目されているからね。実用化と普及を待っている人が沢山いるんだ。ギルド長も親方も、義肢の事は知っているから声をかける相手にも心当たりがあったみたいでね」

「なるほどね。だから話も早く進んだと」


 アルバートの説明に納得してそう応じる。アウリアもゴドラフも、義肢には期待している部分があったのだろう。怪我をして引退を余儀なくされた知り合いや伝手がいるから、そうした面々を紹介したと。


 工房の面々と挨拶をした二人は、タルコットとシンディーの提出の話も快く了承し、協力してくれるとのことだ。アルバートが腕前に太鼓判を押したというのもそうだが、職人面々のモチベーションが上がっていることも後押ししているのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 獣と葉っぱはそれぞれ義肢作りで腕前を見せ、阿修羅腕とケンタウロス下半身を創っていた
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] >義肢と職人と医師 汎用性と共に肉体の変化への対応が求められていきますね。 医師との協力関係を結ぶ仕組みを作っておくと後が楽かな? 戦闘「循環練気ほどでなくて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ