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番外1917 獣人達と植物園

 フォレスタニア城に滞在するために部屋に案内する。特に、元候補者の面々は後学のために、歓待の後に少しフォレスタニアに留まって外の事を学んでいく予定だからな。しばらく滞在するということもあって、滞在する客室も気になっていたようだったが、案内すると割と気に入ってもらえたようだ。


「明るくて、広々としていて良い雰囲気の部屋ですね。窓からの眺めも素敵なので気に入りました。それに……精霊達にとっては良い環境のようで、私達エルフにとってもかなり心地良い場所だな、と」


 というのがフォリムの感想である。ティエーラもドルイドが訪問してくるというのは知っているので、その内顔を合わせたりもする機会もあるだろう。精霊達が活性化している理由もその辺、納得してもらえると思う。


 部屋の案内が終わった後は、城の内部もみんなで少し見て回った。

 水路のある中庭。画廊や模型部屋、アクアリウム、テラリウム――ならぬ月面環境を再現したルナリウム。マギアペンギン達の集まる船着き場等々……フォレスタニア城内も割と見所が多くなってきている。


 物珍しいものが多いので、元候補者の面々も興味津々といった様子だ。水槽の中から手を振る掃除用ミニゴーレムと共に触手を振るイソギンチャクに、ケルネも目を細めながら手を振り返したりしていた。深みの魚人族に貰ったイソギンチャクではあるが……微小ながらも魔力や魔石を宿した種で、厳密には魔物に分類される。感知能力や学習能力も案外高いようで。


 ルナリウムで寛いでいるシルバーリザードのルージェントもだな。手を振れば尻尾を振って挨拶し返してくれる。


 そんな光景に和んで表情を緩めたり、画廊や模型部屋を熱心に細部まで見てくれたりと、元候補者の面々は中々案内しがいがある。


「写実的だが……描いた者が好ましく思っている部分も出ている……ようにも思う。芸術を論じられる程詳しいわけではないが、好みだな」


 シグリッタの描いた絵を見て、感想を口にするシュヴァレフである。そんな高評価にシオンとマルセスカはうんうんと頷き、シグリッタはサムズアップしたりしているが。


 模型部屋は模型部屋で、職人達の手遊(てすさ)びでもあるので作りが精巧且つ本格的で見事だ。そのあたりは見るものが見ればわかるので、外の技術を学びにきたという側面もある元候補者達にとっては気になるものなのだろう。


「見事ですね……。見た目も楽しいですが、この大きさでこの精密ぶり……。職人の腕が分かるというものです」

「ブライトウェルト工房の職人の方々が作ったものなので、見学に行った際に会えると思いますよ」

「それは楽しみです」


 アシュレイがそう答えるとケルネも笑顔を見せた。


 そんな風にしてフォレスタニア城見学をし、船着き場で獏のホルンやマギアペンギン達と交流したりといった時間を過ごさせてもらった。




 街中に出かけたのはそれからしばらくしてだ。植物園の見学をしてから火精温泉に行き、入浴してから夕食。その後、境界劇場でイルムヒルト達のステージを見る、というスケジュールを組んで出かけた。


 植物園に関しては、一番喜んだのはやはりフォリムだ。花妖精やフローリアに会って、自身の契約しているドライアドも召喚して仲良くなっていた。

 植えられている各種植物も、大森林に住まう面々だけあって皆興味津々だ。薬草以外では南国の植物が多いということもあり、元候補者達にとっては初見のものが殆どだ。


「これらの果実は食事の席で用意していますので楽しみにしていてください」

「おお……」


 と、期待感を込めた声を漏らしているレグノスだ。リザードマンは魚も好きだが果実の類も好みだからな。期待に添えるのなら何よりなのだが。そして……温室の技術もエインフェウス的にはかなり魅力的に感じるもののようである。


 温室で大規模栽培とまでは中々いかないが、ハルバロニスはそれでも長年作り上げて一つの街を地下水田で賄える体制を構築した。そこまでいかなくとも作物を作れる季節が広がる可能性があるとか、作れる種類が増えるかも知れないともなれば。

 興味を示すのはエインフェウスの面々に限らずとも、といったところだろう。


 地下水田にノーブルリーフ農法……と、興味を惹くであろう情報も多く、エインフェウスの面々は真剣な表情で説明に耳を傾け、相槌を打っていた。


「ノーブルリーフか。イビルウィード――品種改良されていない野生種はかなり北の方にもいるが、あれは南方からすると亜種ということになるのだろうな」


 と、シュヴァレフ。イビルウィードは……寒冷地や荒れ地でも結構たくましく生きているな。


「シルヴァトリアの野生種も寒冷に強いのよね。温暖な場所とは見た目からして少し違うわ」


 アドリアーナ姫がそんな風に解説してくれる。北方の植物だから小さめになる……と思いきや極地の魔物は強いので寧ろ大型化するというのが魔物種らしい。

 それから……歯の色が変わる。イビルウィードは所謂頭の部分があり、この部分は緑で色が変わらない。口内には歯が生えているが……これは亜種によって色がまちまちだ。


 どうも細かい構造や亜種の変化を見ると……歯の部分が花弁に相当しているようなのだ。だから、頭部に見える部分全体は花弁ではなく花托、ということになるのか。それとも全体で花弁なのか。


 歯の色は基本的に白。そこまで大きくは色合いも変わらないが、寒冷地のそれは少し青みがかった白。火山地帯だとやや赤っぽく、荒れ地だと少しくすんだ灰色になって……それに加えて平均的な大きさも変わるようだ。


 ちなみに受粉は仲間内で完結したやり取りもできる。微弱な風魔法を使って口から花粉を飛ばし、仲間達の間でやり取りしているところを確認した、というのがミシェルの報告書から上がってきていた。


「――とまあ、彼らは色々面白い生態をしています。色んな土地に馴染んだり、こうして人との関わり方を変えたり、適応力が高いのでしょうね」


 解説をしながら浮遊植木鉢で近くへと漂ってきたノーブルリーフに軽く手を伸ばすと、握手するように葉で応じてくる。うむ。


 そんな光景に表情を綻ばせたフォリムやドライアドがノーブルリーフ達に握手を求めたりしていたが。


 ともあれ注意点としてはノーブルリーフ達の立場としてはあくまで協力関係で、粗末に扱うようなことをするとそっぽを向かれる、という点だ。出来上がった作物の安全性も確認されているから、ノーブルリーフへの理解等々、体制が整えば広めていけるな。




 そんなわけで、植物園の内部をあちこち見て回ってから火精温泉へと向かった。まずは入浴からということで、元候補者の面々と共に大浴場へと向かった。


「温まるな……」

「ああ……。最高だ。水の質も……魔力が豊富で良いな」


 シュヴァレフとレグノスはそんな風に漏らしていた。それぞれ北国と沼地で暮らしているので、温泉は大好きなのだそうな。他の候補者達も湯舟に浸かったり、打たせ湯やサウナを満喫したり、思い思いに楽しんでいるようである。イングウェイ王とイグナード公も、何度か温泉を訪れているというのもあって、そんな反応に頷きつつも湯舟で心地良さそうにしているな。


 女性陣は女性陣で、女湯でのんびりと寛いでいる事だろう。


 そうして風呂から上がったら、休憩所で食事だ。植物園から収穫できたパイナップルやココナッツもあるので楽しんでもらえたら良いな。特に、レグノスは果物を楽しみにしていたようだし。他にもノーブルリーフ農法で収穫した米や迷宮産の食材等々を使った料理を用意してあるのだ。


 レグノスは泳ぐのも好きという事で、遊泳場にも興味を示していた。まあ、満喫してもらえるのは良い事だな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 地下水田にノーブルリーフ農法と獣の蚤駆除センサーと、興味を惹くであろう情報も多くある
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