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番外1910 交流の後に

 その後もしばらくみんなと共にイングウェイ王、イグナード公や氏族長、候補者達と談笑の時間を取らせてもらった。武術や技術的な話にもなったりして、格闘術に関する話は勿論、武器、防具、魔道具といった点にも話が及ぶ。


 自前の爪がある獣人達もいるが、そうでない獣人達――シーラやレギーナ、イェルダのように獣の形質が薄い者も多いし、通常の攻撃や闘気だけでは効果が薄い魔物もいるから、魔物退治などではそうした部分を補うためにもサブウェポンが必要になるケースもある。


 イェルダ辺りは自前で氷爪を用意することができるが。物理的な破壊力を持ちながらも魔力を宿したものだから、対応幅が広いというのはあるな。それでも魔力を消費するし、低温が相性の悪い魔物、というのはいるし、イェルダでもサブウェポンが役に立たない、というわけではないだろう。


 ともあれ、闘気術で補っているとはいえ武器も防具も必要になる。魔道具に至っては言わずもがなというわけだ。


 エインフェウスに関して言うなら、ドワーフも国内に多くいるので冶金技術は中々高めだが、魔法技術に関してはヴェルドガルやシルヴァトリアには後れを取っているというのは否めない。というより、その二国やベシュメルク、月の民関連の魔法技術が頭一つ抜けている。


 その代わり、エルフ達が多く住んでいる事から、精霊の力を借りて治山治水、森林資源の管理を行うといった方向では高水準だ。種族的に獣人達が多いから格闘術や武術も高水準というのは言わずもがなか。


 今後は開かれていくという事で、外からは魔法や魔道具の技術。エインフェウスからは武術や闘気術、精霊術が広まるものと予想される。


 そんな将来の展望には期するものがあるのだろう。


「防寒や水上での行動を補助する小型の魔道具というのは良いですな」

「北方や大沼地でも活用できますな」


 氏族長達の話に、イェルダやレグノスも外の技術には期待するものがあるのか、うんうんと頷いているな。


「元候補者が、その辺りのことをフォレスタニア訪問で学んで帰ってきて下さると安泰ですな」

「我らが今から変えていくというのは中々に難しいものがありますが……フォリム殿達ならば外とも良い関係を築き、今後も上手くやってくれるものと期待しておりますよ」


 氏族長達がそう言って笑う。氏族長達にも色々柵はあるだろうからな。その辺りを変えられるのはフォリム達……元候補者の面々という事になるか。


 フォレスタニア訪問については、元候補者達にとっての最初の仕事ということになりそうである。




 さてさて。そうして祝宴も夜遅くまで行われ……のんびり談笑や交流をさせてもらって一夜が明けたのであった。


 森都は一夜が明けてもまだ興奮さめやらぬといった様子で、朝から人通りも多く、お祝いムードが続いているようである。


 イェルダも孤児院の面々に森都を見て回って楽しんで行って欲しいということで、朝から出かけて行った。

 フォリムやケルネ、レギーナにオルディアも一緒にそれに付き添い、楽しそうに森都観光をしている様子だ。


 子供達が多いので引率をするならそれぐらいの面々がいた方が安心ではという、イングウェイ王やイグナード公の言葉を受けてのものだな。オルディアも――色々と情勢や立場が変わったからな。自身の身を自分で守ることもできるようになり、こうしてエインフェウスを出歩くこともできるようになった。


 一行はみんな乗り気で、街中の中継映像でも時々姿を捉えているが、孤児達と楽しそうに話をしながらの案内をしているようだった。特にケルネも子供達との再会という事で耳と尻尾を反応させながら上機嫌そうな様子だ。


「ふふ。向こうも楽しそうで良いですね」


 エーデルワイスを腕に抱いてあやしながら、微笑むアシュレイである。


「うん。中継映像で見る限り、仲が良さそうで良い事だね」


 元候補者達が一緒にいるということで注目されたり手を振られたりはしているが、流石に直接接触しに行ったりちょっかいを出しにいったりするような輩はいない。

 元候補者という立場や人望もそうだが、この国の有数の使い手であるというのは昨日見せたばかりだしな。


 俺達も俺達で、そんな街中の様子を見ながらものんびりとした時間を過ごさせてもらった。子供達も獣人の女官達に人気だな。可愛がってあやしたりしてくれるので、オリヴィア達も上機嫌であった。




 そんな調子でエインフェウスの森都に数日滞在し、都内の色々な施設や近郊の見学をさせてもらったり……観光させてもらったが、エルフ達の精霊殿やドワーフ達の工房もあって中々見所が多い。


 大森林の環境を守る為に、ドワーフ達の工房は森都から少し離れたところに結集させるように作られているわけだな。

 ドルイドが結界を張り、空気や水、土壌を浄化し、自然環境を守りつつ工房も発展させる、と。多民族を抱えるエインフェウスらしい方針の施設である。


 エインフェウスの技術を見せてもらったり、元候補者の面々と交流して仲良くなったりもして、有意義な時間であったと思う。


 獣人同士。孤児院出身という事でイェルダとシーラやイルムヒルトも仲良くなったりしていたな。


 さて。イングウェイ王は引き継ぎという事で氏族長と色々やることがあるそうだが、イグナード公は以前から継承戦と退位に関して準備を進めていたということもあり、引退後にしなければならない事は少ないということだ。


「前任者があまり影響力を残すのも考えものであるしな。前獣王の立場として相談に乗るというのなら、それもいつでもできる話ではあるし」


 というのがイグナード公の弁だ。その為、俺達が帰るのに合わせて一緒にシリウス号でフォレスタニアに向かう、という話になっている。オルディアやレギーナもイグナード公と気軽に会える機会が増えるということで嬉しそうにしていた。


 そうして――俺達もヴェルドガルへ帰る日がやってくる。


 イングウェイ王、元候補者の面々、氏族長達に案内役のマウラを始め、滞在中お世話になった城の面々も見送りに来てくれた。元候補者の関係者ということで、孤児院の顔ぶれも呼ばれているな。


「ヴェルドガルでの休養が充実したものになることを祈っている」

「ふふ。そうさな。継承戦の準備や引き継ぎで忙しかった分、しばらくは気軽な立場でのんびりとさせてもらうとしよう」


 イングウェイ王に笑って応じるイグナード公である。継承戦の準備というのは……大会の実務的なところではなく、挑戦者を迎えるに当たって実力を底上げし、大会に合わせてコンディションを万全な状態に保つ、という部分だろう。


 実務や運営の補佐は氏族長達もしているので、後は獣王としての執務と引き継ぎに備えての準備が今日までにイグナード公のしていた事というわけだ。そんなわけで後顧の憂いもなく、肩の荷を降ろしてヴェルドガルに向かう事のできるイグナード公は、かなり機嫌が良さそうである。


「そなたの、王としての道行に幸あらんことを」


 イグナード公の言葉を受けて、イングウェイ王も静かに目を閉じて頷く。幸、という部分がイングウェイ王への信頼を表していると言えるな。他の部分での心配はいらないだろうと見ているわけだ。


「では、道中お気をつけて」

「はい。皆さんの来訪も楽しみにしています」


 フォリムの言葉にそう応じる。イングウェイ王がアドリアーナ姫に挨拶をしたり、みんなと共に元候補者や氏族長、城でお世話になった面々と言葉を交わしたりしている。


「ん。今度こっちに遊びに来るときは、孤児院の子供達も是非一緒に連れて来るといい」

「楽しみにしているわ」

「ありがとう。是非そうさせてもらうわ」


 イェルダと孤児院の子達、シーラとイルムヒルトも和やかな雰囲気だな。

 そうして……エインフェウスの面々に見送られ、イグナード公と共にシリウス号に乗り込むのであった。

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[良い点] 自前の爪がある獣人達もいるが、そうでない獣人達の為に獣は水晶聖衣を88組差し出した
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