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番外1890 第二回戦に向けて

「木の精霊を降ろす事による生命力の向上と、そこから来る身体能力、闘気、魔力の向上……それと持久力や回復力の向上……でしょうか。この持久力、回復力の増強という部分は戦いにおいては相当強力ですね」


 疲労しない、というわけではないのだろうが、しにくいというだけでも相手よりハイペースで飛ばせるからな。上乗せされた戦闘能力向上部分を更に一段引き上げるもの、と考えて間違いない。


「降ろす精霊一つとってもよく考えられているな」


 イグナード王の言葉にマルレーンもこくこくと真剣な表情で首肯する。


「中位精霊をしっかりと降ろせるというのもね。ドルイドとしての実力が確かな証拠だわ。契約している精霊との絆の方かしら」


 クラウディアが感心したように微笑む。そうだな……。降ろせる精霊の格もそうだが、降ろすにしても、どの程度のシンクロが可能になるのかという基準もある。

 所謂口寄せによって情報をもらうだけだとか、一部の力を借りるだけというのが軽いところ。


 一体化することで外見にも変化が生じるというのは、かなりの技量、実力を備えているからこそだ。この実力が足りないと主導権を精霊に握られてしまったり、相性が悪いと弾かれてしまったりするので、精霊の憑依というのは結構リスクもあるが、しっかり制御できている、というのが窺える。


「総合しての完成度の高さを見るに、他の精霊を試合の手札として切ってくるというのは考えにくいかも知れませんね」


 エレナは顎に手をやりつつ分析している様子であった。


「そうだね。契約精霊とは相性や絆の部分も問われるから……他の精霊ともああして一体化する戦法を取れるかどうかとなると難しいかも知れない」


 フォリムと特に仲の良い、絆を育んだ中位精霊、と考えた方が自然だ。

 高位精霊の場合は……常識的に考えるならば相手の事を良く知る等した上で、目的が一致しているなら憑依させて力を借りられるかもというところで、ああして術者側が主体になって戦う、というのは難しいだろうな。


 高位精霊側としては……自分が主体になって一体化して戦うことで、及ぼす影響の範囲を小さくできる、等のメリットはあるか。

 まあ肉体に縛られるよりも本体の方が強力なのが高位精霊ではあるが。例えばテフラ本体が本気で戦うと連動してテフラ山が噴火したりしてしまう。


 そういう意味では……コルティエーラの宿っていたラストガーディアンもそうだったかな。器があった上に半身だったから影響が小さかったとはいえ、それでもイシュトルムによる干渉で世界規模の共振を起こしたのだから、こちらは文字通りに桁が違う。


 そんなラストガーディアンの生まれ変わりとも言うべきヴィンクルは――フォリムを好意的に見ているようで、少し微笑みながら舞台上を見ていた。


 フォリムは一体化していた木の精霊と分離して、ラーズネルと挨拶を交わしている。


「届かなかったな。賭けには出たのだが……」

「最後の一撃は凄い気迫で、こちらとしても対応するための技の発動に緊張しました」


 苦笑するラーズネルに、そう静かに応じるフォリム。フォリムの隣には、小さな背丈の木の精霊が顕現しているな。フローリアと同じく、ドライアドかその近縁の精霊だろう。フォリムの隣で裾を掴んでにこにことしていて見た目の年齢はかなり幼い印象だが……まあ見た目の年齢と実年齢、精神年齢がそぐわないのが精霊ではある。


 先程フォリムの髪に咲いた花と同じ花が精霊の髪にも咲いているな。緑色の髪なのも共通している。一体化すると精霊の特徴も外見に出るというわけだ。そうやって精霊と仲の良さそうな様子に、マルレーンやヴィンクルも機嫌がいい。


 そうして再び一礼してフォリムとドライアド、ラーズネルは王城へと戻っていったのであった。




 フォリムの次が第一回戦の最終戦となる。第一回戦最終戦は象氏族の獣人が勝ち残り……これで後半戦でも全ての候補者が自身の技量を皆の前で披露した、ということになるな。


 この後は昼食と、食後の少しの休憩を挟んで第二試合に移行していく。そこから決勝。獣王との直接対決となるわけだ。


 試合間隔が短いというのは通常、参加者にとっては負担やリスクもあるが……魔法による回復が行われるということを考えれば、一試合ごとに臨めるコンディションについては問題あるまい。集中力や適度な緊張の維持、という点までケアされているわけではないが、それは当人次第というか、候補者として試されている部分でもあるだろう。


「第二試合も最初はイングウェイさんからですね」

「楽しみ。対戦相手も中々底が見えない」


 グレイスが微笑みを見せるとシーラが言う。イングウェイの対戦相手はイェルダだ。

 第一回戦の内容に関して言うなら翼を凍り付かせる事で相手の機動力を阻害しての場外勝ちだからな。


「能力の種類や脚力という武器は見せたけど、確かにまだ力の底を見せていなさそうっていうのはあるね」


 氷の技は他にも色々あるだろう。イングウェイとの戦いではその辺りも見られるだろうか。

 イングウェイやイェルダを含め、注目していた5人はいずれも勝ち上がってきたわけだが……。このままこの5人が勝ち進むとするならば、イングウェイとイェルダのどちらかとレグノス。シュヴァレフとフォリムがそれぞれ3回戦で戦う、ということになるだろうか。


 他の候補者に関して言うならば……十分な技量は備えているとは思うが、やはりこの5人相手ということ。2回戦での組み合わせと相性を考えるなら、中々厳しい戦いになりそうだ。番狂わせをするためには速攻を仕掛けて勢いで押し切るだとか、何かしら意表をついて大技を当てるだとか、工夫が必要になってくるだろう。


 そうして第一回戦の内容をみんなで振り返りつつ、運ばれてくる料理と奏でられる音楽や歌姫の歌声を楽しませてもらう。

 獣王継承戦はエインフェウスにとっての祭典。昼食時ということもあり、会場周辺の観客達も食事を楽しんでいるようだ。エインフェウス側からも食事が饗されるということで、兵士達が料理を配給して回ったりもしていた。

 継承戦が終わった後ならば酒も振舞われるということだ。流石に継承戦を観戦しながらの飲酒は政にも関わってくる部分があるので許可されていないということであるが。


「まあ、単純に盛り上がり過ぎるというのもあるな。触発されての喧嘩や乱闘も予想される」


 というのが飲酒に対するイグナード王の見解ではあるが。


「実際、継承戦が終わった後の夜間は見回りも必要ですからな。野試合も多いのですが」


 そう言って苦笑するのはウラシールだ。何度も継承戦を見て色々と事情を知っているというのはエルフならではだな。


 さてさて。運ばれてきた料理については……この日の為に大森林で狩猟された魔物料理とのことだ。大きな鹿の魔物が獲れたということで、森の素材の香辛料もたっぷり使った肉料理である。


 一応、果実や菓子、飲み物も用意されていたが昼食も出るということでみんなも軽く摘まむ程度に留めていたからな。

 継承戦で饗される料理ということで手も込んでいて美味だ。香草の香りが肉の旨味を引き立てていて……この辺、肉料理も野菜料理も獣王国では研究が盛んという話である。


 肉食獣と草食獣の形質を持つ獣人族が多いからな……。どちらの研究も盛んなのはわかる。草食系の氏族がいる故に香草の使い方等にも習熟しているのだろうし。


 さてさて。第二回戦はイングウェイ対イェルダという注目の組み合わせからだ。観客達もそれでかなり盛り上がっている様子だし、俺としてもこのまま楽しませてもらうとしよう。

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[良い点] 獣、禁断のきのこ・たけのこの精霊に手を出そうとしていた
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