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番外1849 交流会のその日に

 そうやって各所と連絡を取りつつ準備や調整、日々の執務を進めていき、タームウィルズや魔王都にも更に端末を増設、整備を行っていった。

 更に外部から仮想街にリンクするための魔道具作りにも着手した。


 疑似五感リンクを組み込み、寝台に横になって魔道具を使用するだけで使える仕様だが、機能、安全面は本体にリンクしているだけに同等の性能を持つ。

 各施設ごとにバイタルデータもリンクして現地で表示させたりする機能であるとか、そういった端末とは別口の追加設備も必要にはなるが、それを加味にしてももう少し開発を進めれば運用できるところまでいくだろう。


「身体の状態を仮想街の本体に同期させて調べるっていうのは、何か他にも利用できそうだよね」


 と、アルバートはそんな風に感想を口にしていたが。


「ああ。それは確かに。医者や治癒術師がいないところでも、現地に行かなくても診断しつつ応急処置を……なんてこともできるかも知れない」


 口頭や映像で説明する程度ではなく、実際に指導することで技能を身に着けさせることができる、というのが仮想街だと大きい。仮想の訓練によって医術、治癒術の場数を踏むことも可能で……実際フルダイブ型のVRだと医者がVR空間で手術の経験、場数を踏むために活用しているという話も聞いている。まあ、こちらは専門性が高いものだけに医療関係者だけで一般人が使うようなものではなかったはずだが。


 同じような傾向のVR活用法としては……一部の免許の取得にも運用がされているな。こちらは一般でもお世話になることが多い活用例なのだろう。


 まあ、そんな調子で、役立てようと思うなら幅も案外広いのがVRだ。ルーンガルドや魔界でも、地方都市に配置すれば現地からの連絡や指示が密にできて、随分と楽になったりするだろうな。


 応用法について工房でもみんなと話をして盛り上がりながらも日々は過ぎていき……そうして仮想街での交流会当日がやってきた。


 初日は賓客を含む学者や研究者、魔術師といった面々に加えて演奏を行う楽士役達ということになる。仮想街の中心である学園の性質、理念が反映された形と言えるだろう。


 ジョサイア王、フラヴィア王妃、メルヴィン公夫妻も参加予定で、仮想街の始動祝いに駆けつけてくれる。まあ、日にちを分けたのは落成祝いで関係者が呼ばれ、護衛等も増えているからというのもある。

 これで更に端末が増えてくれば、仮想街で大きな催しを行っても日程を分ける必要もなくなってくるだろう。

 まあ……仮想街が一般開放されて盛況になってくれば賓客の貸し切りといった形にはなったりするのだろうけれど。


 というわけで各国からの面々を転移港に迎えに行き、タームウィルズの端末とフォレスタニアの端末それぞれに案内をしていく。


 それぞれの会場を俺とバロールで対応し、カドケウスを連絡役にしているので安全面に関してのバックアップも万全だ。


 エントランスタワーに案内すると、ジョサイア王は楽しそうに相好を崩していた。


「ああ、楽しみだ。新婚旅行から帰ってすべきことも山積していたから、見学会は見送ってしまったからね」

「ふふ。どんな街なのか見るまで楽しみにしていると、具体的な報告も遠ざけていらっしゃいましたからね」


 ジョサイア王の言葉に、フラヴィア王妃が微笑んで答える。

 そこまで楽しみにしてくれていたとなれば、こちらとしても作った甲斐があるというか。歓迎のし甲斐もあるというものだ。


「確かに、楽しみですなあ」

「陛下と共に魔界との交流会に参加できるとは。光栄なことです」


 ペレスフォード学舎の講師達もそんな会話をしながらもにこにことしている。

 その一方で久しぶりに直接顔を合わせた面々も随分と盛り上がっている。


「リリー、大きくなったね……! もう少ししたら羽毛も生え変わるかも」

「うんっ。どんな翼になるか楽しみにしてるの」


 ドミニクに抱き着くリリーは、再会を喜んでいるな。そんな光景に周囲も表情を綻ばせていた。

 ハーピー達の翼の色合いには個人差がある。やはりというか祖父母や両親の特徴を受け継いで似てくるものらしいが、雛の内はまだその特徴も出てこない。

 目立たない色合いになっているというのは理に適っているな。その分雛達の羽毛は暖かくて柔らかそうなもので、リリー達と顔を合わせるとシャルロッテが少しそわそわとしたりするのだが。


「ユスティアも元気そうで安心したわ」

「き、昨日も水晶板越しに顔を見せたじゃない」

「うふふ。やっぱり直接だと違うものなのよー」


 ユスティアもマリオン達、セイレーンの仲間達と顔を合わせての再会を喜び合っている。マリオンにハグされて少し照れたりしているようだが拒む様子もなく、少し顔を赤らめつつも姉の抱擁にされるがままになっていた。


 ハーピー達、セイレーン達も仲は良好なようで。今日の仮想街での演奏も楽しみにしているということで、こちらはこちらで相当期待も高まっている様子だ。


「みなさん楽しみにしていらしたのですね」

「そうねえ。私も浮かれていたもの」


 アシュレイの言葉にロゼッタが応じる。ハーピーとセイレーン達は合同で練習もしているからな。

 というわけで期待感の高さも相当なものなので、エントランスホールにてタームウィルズ側の設備と合わせて端末の使い方や注意事項を説明し、早速仮想街への出発である。


 仮想街側のエントランスで少し待っていると、アバターの設定を終えた者から続々と広間に出てくる。


 アバターの設定は……ハーピーとセイレーン達は衣装やアクセサリーを揃いのドレスにしてきているな。

 というのも折角合同で演奏するのだし、揃いの衣装にしたいと打診を受けていたのだ。デザインはマルレーンのランタンを借りて作り、それをアバターの専用アイテムとして仮想街に取り込んだ、というわけである。


 グラデーションのかかった鮮やかな色合いのドレスだが……色は各々違いがあるのに全体としては統一感があるから、誰がどの色にする等は打ち合わせてきているのだろう。

 使用できるのはハーピーとセイレーン限定となっている専用アバターパーツだな。見た目にも華やかなものだ。


 その他、学者達も思い思いのアバターで出てきて、楽しんでくれているようだ。

 ジョサイア王とフラヴィア王妃は今回アバターを設定していないが、これは挨拶があるからだろう。

 当人達としては、普段使いとしてお忍びに使えるものを設定したい、と言っていた。二人揃って冒険者風や町人風にできれば普段はできないこともできて楽しそうだ、とのことであるが……。その点、メルヴィン公は隠居していてジョサイア王の統治に対して影響を与えないように気を付けているから、公爵夫人と共にアバターの設定をして目立たないようにしているようだ。


 メルヴィン公は魔術師風だろうか。フード付きのローブを纏っているが顔立ちは少し変えているようだ。ミレーネ夫人、グラディス夫人もメルヴィン公に揃えるように落ち着いた佇まいのローブやケープを纏っているが……まあ、アバターではあるが如何にも貴人のお忍びといった雰囲気だ。


 当人達の所作故というところがあるが、これなら姿を変えていても無礼を働くような輩もいないだろう。

 一応、アバターの中身は貴人である可能性もあるから礼を失することのないようにという注意もナビゲーターであるヴィーアがしてくれるしな。


 魔王国側も合流してきて……ジョサイア王とフラヴィア王妃もメギアストラ女王と挨拶を交わしていた。メギアストラ女王も挨拶があるので今回はアバターを設定していないな。


 そんなわけで人も揃ったところで、仮想街の街並みを眺めながら学園へと向かうのであった。

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[良い点] 獣ハーピーに連行され空中遊泳
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