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番外1848 仮想街始動に向けて

 魔界との交流には各国の面々ということで結構な人数が集まる予定だ。信用の置ける顔触れでないと紹介できないということで、参加というか選考には一定のラインを設けているらしいが、それでも条件を満たす希望者は結構な数に上るということで。学者なら学者、芸術家なら芸術家、職人なら職人と日程を分けて交流が行われる予定だ。


 迷宮商会の店主であるミリアムも、交易に関する話に造詣が深いということでアドバイザーとしての参加が決定しているな。


 魔界側は一国からの参加なので参加人数的な余裕はあるが、その分ファンゴノイド族が全て記録に残したいと張り切っているようだ。


「賢者アルボスのアバターを共通の特徴を持ったものにすることで、日替わりで私達が参加することが可能というわけですな」


 と、フォレスタニア城の中庭にて、ボルケオールがファンゴノイド族の方針について教えてくれる。


「知恵の樹に余すところなく記録を残すというわけですね」

「そうですな。集落の皆もまた後世への宝物が増えると随分と喜んでいるようです」


 ボルケオールは上機嫌な様子だ。知識や記憶がファンゴノイド達にとっての宝か。確かにそうだ。文化に、技術。ファンゴノイド達に限らず、皆にとっての遺産だと思う。


 それにしてもアバターで共通したものを構築して中身が日替わりで入れ替わるというのは……別個体でも記憶を共有できるファンゴノイド族ならではだな。それぞれ別人格であっても話に齟齬が出にくいし、一貫した方針で動くことができる。


 アルボスのアバターに関しては鍔広の帽子を被った老魔術師といった風情だ。

 キノコの傘を誤魔化せるのとルーンガルドへのリスペクトということで、こっちの人間の姿を取るのはファンゴノイド族としても楽しいらしい。


 上機嫌なのはパペティア族も言わずもがなというか。カーラは傍目からでも浮かれているのが分かるというか、日々身体パーツに改造や装飾を施しているようだ。


「うふふふ……。良い感じの色合いになってきました」


 自身の腕を見てにこにことしているカーラである。スケルトンというか……透ける指先が腕の付け根に向かうに従って濃い色合いのグラデーションになっている腕部パーツを作ってきて、これをお披露目するのだと気合を入れている様子だった。紫水晶のような色合いで時折魔力の煌めきが内側に走っているのが見える。


 指先から肩に至るまで精巧に作ってあって、美術品というのが相応しい仕上がりというか。


「宝石のようで綺麗ですね」


 打ち合わせでやってきているミリアムが感想を口にするとカーラが微笑む。


「ルーンガルドの素材や技法を利用して作りました。二つの世界での交流の結果としてと言いますか」

「素材の交易も捗りそうなお話ですね」

「そうですね。交易の一助を目指したところがあります」


 エレナが言うと、ミリアムもうんうんと頷いて応じていた。


「ビオラさんもゴドロフ親方もそうですが、ドワーフの方々は皆凄いですね。技術力が高く多彩な技法を持っているので私達としても学ぶところが多いかと」


 カーラが言う。工房の仕事が休みの日にはビオラの伝手でドワーフ職人のところに見学に行ったりしているようだからな。自主的に技術交流しているわけである。


 ちなみにルーンガルドからの魔界との交流に参加する職人としては、アルバート、ビオラ、エルハーム姫といった工房組を始め、ゴドロフ親方を筆頭にドワーフ達も多数参加する予定だ。

 魔界の技術面に関してはカーラが周知しているのでドワーフ達からも期待度が高いというのはビオラの弁である。


 学者関係に関してはヴェルドガル王国からペレスフォード学舎の面々も参加予定だ。治癒術の専門ということでロゼッタにも声がかかっている。


「ロゼッタ先生とルシール先生も楽しみにしていると仰っていました。特に、魔界の薬草には期待しているそうですよ」

「ああ。それは確かに。研究や実験の必要はあるとは思うけど、治療の幅も広がると思うからね」


 魔王国の場合は多数の種族がいる分、薬も魔法薬も各種族に合わせて色々とあるだろう。加えて……魔界には昔から変異点が点在しているから未知数な部分が多い。

 その点から言うとロゼッタとルシールには血析鏡もあるし、実験以前の段階として迷宮核で解析し、シミュレーションする分にも問題はないからな。安全性を確保した上で臨床試験を進めることもできるはずだ。


「ルーンガルドと魔界の薬草や魔法薬の製法を合わせれば、更に可能性が広がるわね。わたくしとしても期待してしまうわ」


 ローズマリーも……羽扇で表情を隠しているものの、楽しそうにしているな。ああして言ってはいるが、実は植物自体を鑑賞したり世話をしたりするのも好きなローズマリーである。


 当人は薬草集めや魔法薬作り等が趣味だからと、実用性を重視している体を出しているので殊更好きだとは言わないが、割と小まめにハーベスタの様子を気にかけて水をやったりもしているし、植物園でも表情を隠しつつも薬草が咲かせる花を機嫌良さそうに鑑賞していたりするのだ。フローリアや花妖精、ノーブルリーフ達にもそういう部分は伝わるようで、ローズマリーに好意的だしな。


 そんなわけで学者、研究者層には医療も含まれるというわけだ。


 芸術関係と言えば……俺達の中ではイルムヒルトやユスティア、ドミニク、シグリッタといった顔触れだろう。目利きという意味ではミリアムもか。

 魔王国側はカーラを始めとしたパペティア族が芸術関係の筆頭ということになるだろうが他の種族もそれぞれ感性が違うし、歌や演奏、舞踊といった面ではパペティア族よりも他の種族が代表的だったりするらしい。


 特にインセクタス族は音楽関連の才に優れているし、ディアボロス族も武術、魔法問わず鍛錬が好きなので舞踏、舞踊といった方面では一家言あるそうなのだ。


 まあ、そんな調子で俺の身の回りもそうだが各国から聞こえてくる話では皆交流をかなり楽しみにしているようだ。ロゼッタの話によるとペレスフォード学舎の同僚達も大分浮かれているのだとか。


 水路レースの訓練もそうだし、いずれは武官達も合同訓練という話もあるから騎士達もその方面でも期待を高めてくれている。そうやって各方面好意的に注目してくれているというのは有難い事だな。




 そうして仮想街での交流準備、来訪者の歓迎準備も着々と進められていった。


 セイレーンやハーピー達からも代表団がやってきて、合同で歌と演奏を披露するとのことで。フォレスタニアで練習場を提供しているが、みんなかなり気合が入っている様子だ。


 ちなみに知り合いのハーピーの少女……リリーであるが、まだまだ雛鳥といった見た目ではあるが歌は相当上達しているらしく、将来有望な呪歌の使い手になるだろうと一族には見られているとのことだ。


 何でもドミニクが無事だったことが分かり、境界劇場の公演を見たことで自分もあんな風に歌を歌ってみたいと、かなり触発されて積極的に歌の練習に取り組んでいたらしい。

 好きこそ物の上手なれという言葉もあるが、ハーピー達から一目置かれるということもあり、今回の交流でも歌を披露してくれる予定だな。


 まあ、諸々リリーにも楽しんでもらえるようにしたいところだ。

 食事は仮想街ではあまり意味がないしできないようにしているので、その点は現実空間でしっかりと用意しておく必要がある。各国からも料理人がやってきて、エントランスタワーのフードコートで色々な料理を食べられるようにしているな。


 コウギョクもホウ国の料理を食べられるよう、助っ人に来てくれるとのことで。中々賑やかなことになりそうで結構な事である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 獣も水晶義手二対着け完璧モグラバスター出来ると大はしゃぎ
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