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番外1839 二つの迷宮核にて

 みんなと共に仮想街の風景を確認しながら迷宮核での作業を続けていき、作り上げた仮想空間のデータとシステムを統合、迷宮核内部で実際に動作確認をしながらも、問題がないか、セキュリティは万全か等の確認作業を進めていった。


 過去に迷宮核への呪術工作も食らっているからな。迷宮核や仮想空間の端末に限らず、今度は対呪法等への防御手段もしっかり講じている。


 勿論、仮想空間を利用している最中の身の安全もだ。

 契約魔法や結界防御だけでなく、利用中のポッドに誰かが近付いた時の感知、空腹や体調の異常を知らせるバイタルアラート等々……景久の記憶にあるVR機器に搭載されていた防犯や事故防止の機能も盛り込み、防犯や事故対策は万全な状態にしてある。


「では――まず魔界迷宮の方の迷宮核に移動し、指定されていた一角に施設を生成していきたいと思います」

『うむ。特に問題なければ施設で落ち合うとしよう』


 メギアストラ女王に連絡を取るとそうした返答があった。

 まずは魔王城の一角に仮想訓練施設と同じ端末を生やし、フォレスタニア城の仮想訓練施設と同期させる。それから実際に施設を同時に使うことで動作確認を行うという寸法だな。


 俺とカドケウスが魔王国側、フォレスタニア側をそれぞれ担当してログインし、同期しているかを確認すれば一先ずは問題ないはずだ。


 そんなわけで、みんなと共に連絡通路を通り、ユイとオウギが魔界迷宮の迷宮核まで案内してもらう。

 魔界迷宮の深層に向かうとそこには流体騎士団と共にメギアストラ女王とジオグランタが俺達を待っていてくれた。


「おお。待っていたぞ」

「こんにちは、みんな」


 と、笑みを見せる二人である。挨拶を返すと、ジオグランタが静かに頷いて微笑む。


「先日の水路レースは中々楽しかったわ。現地の様子を知りながら沢山の子達の活性化する魔力を感じる事ができたから、臨場感もあって心地の良いものだった。これから先の楽しみが増えたわね」

「ん。それは何より。映像中継で沢山の人が通して見る事ができたから、例年より盛り上がったみたいだしね」

「ええ。それもあるでしょうね」


 ジオグランタとしてはあまり人前に出ないが、ああいう活気のあるものは好きなのだそうな。魔王都の普段の賑わいも感じていて心地が良いとのことで……始原の精霊としては沢山の命の活性化というのは心地の良いものなのだろう。特に、ジオグランタの場合は分離しているティエーラ、コルティエーラよりも荒々しい力を保っている部分があるし。


 ともあれ、中継はジオグランタとしても歓迎とのことである。


 そんなわけで魔界迷宮の迷宮核へと移動し、管理代行の権限で魔王城の一角に設備を構築していく作業に移る。

 なるべく外からの来客も利用しやすい場所を選んだとのことで。

 現地からの中継映像も入っている。ブルムウッド達が警備線を張っていて、工事中に人が立ち入れないようにしてくれているな。


「お待たせしました。警備ありがとうございます」

『お安い御用です。人が立ち入っていないのは確認していますよ』


 バロールで迷宮核外の様子を確認しつつ幻影を構築。水晶板越しに挨拶をすると、ブルムウッドが笑って応じる。念のためということで現地に送り込んでおいたハイダーをブルムウッドが肩に乗せて、区画内の様子も映して見せてくれるが……確かに問題はなさそうだ。


「兵舎からも近く警備もしやすく、城の外縁部なので外から来た者も案内しやすい。取り回しの良さから物置として活用していたが……まあ仮想訓練施設の性質を考えれば中々良い場所と言えよう」


 なるほど。立地としても良さそうだ。割り当てられた区画も十分な広さで、ここを使えば結構な人数が同時に使うことのできる施設となるだろう。


 というわけで改築作業を開始する。例によってまず現地に、ここからここまで工事を行うという予告線を展開する。光のフレームが構築され……内部に人がいないのを最終的に確認したところで、処理を開始した。


 地下を掘り下げ、補強しながら改築を進めていく。広々とした部屋に間仕切りとポッドが並べられていく。

 完全な個室にしないのは、利用者の安全上の問題だな。急に体調が悪くなった時の為に外から把握したり救助しやすいようにしておく。契約魔法と小規模結界によって窃盗や傷害といった犯罪を防ぎつつ、その他火災や崩落といった事故からも防護、救出、避難といった行動がしやすいようにしておく必要があるからだ。


 魔界には色々な種族がいるからな。仮想空間にダイブするためのポッド一つとってみても、仕様を考える必要があるのだ。


 ポッドは個人用だ。防犯やプライバシー、個人データを用いるといった観点から、どうしても集団で使うには適さない性質を持つものだからだ。


 地下階と2階、3階部分まで構築し、地下階を海の民用、1階部分をギガス族用とする。これは、海の民用のポッドから水が漏れても排水しやすいように、という想定だな。

 体格の大きなギガス族のポッドが一階部分に配置されるのは、利便性を良くするためでもある。

 2階、3階部分をそれ以外の種族を想定したポッドを配置していく。有翼種とそれ以外、といったざっくりとした区分けであるが。


『なるほど。有翼種が使っても翼を痛めない構造になっているわけか。よく考えられている』


 構築されていく設備を見て、メギアストラ女王が頷く。


『この辺はヘルヴォルテやドミニクに意見を聞いて、実際に使ってもらって調整したものね』


 クラウディアがそう説明する。

 やや斜めに身体を横たえ、背骨に沿って首までを支えるという支柱型の構造にすることで、翼が背もたれに身体と背もたれに挟まれず、体重が翼にかからないようにしている、というわけだ。


「なるほど。確かに使いやすそうだ」


 ポッド自体は個人用の結界で守り、防犯用の各種の備えで自衛も可能にしておく。

 建物やポッドの強度も……迷宮産なので十分なものになるはずだ。


 施設が構築出来たらシステムを組み込み、双方を疑似的な五感リンクで連動させる。これは迷宮核を直接経由させない事による防犯だな。ここからのハッキングや呪法攻撃ではどうやっても迷宮核まで影響を及ぼすことはできない。その分、仮想空間の構築や個人用のデータ管理等の容量等々に割く力は大きめになったが……魔力の供給と消費バランスを見れば問題はあるまい。


 相応の素材は必要になるが、疑似五感リンクによるものなので地方都市等への拡張性もある。


『こちらはいつでも大丈夫ですよ』

「それじゃあ一緒に進めようか」

『では――』


 こちらからの合図に応じてティエーラも少し楽しそうに微笑むと、ルーンガルド側の迷宮核に向かって手を翳す。俺も魔界の迷宮核に実行命令を下した。

 事前に準備しておいた仮想空間用の統合システムをルーンガルドと魔界の双方で起動させることで、統合型の仮想訓練設備を完成させていく。

 中継映像からは施設内に光の輝きが走り、魔力が宿っていくのが見えた。


「いいね。ありがとう」

『ふふ。テオドールと作業をするのは中々新鮮で楽しいものですね』


 ティエーラとそんな言葉を交わしつつ、システムが正常に動作しているかを確認していった。


「問題なさそうだね。では、迷宮核から訓練設備へと向かいます」

『私はコルティエーラと共にフォレスタニア城にいますね。何かあれば声をかけて下さい』

「うん。ありがとうティエーラ」


 さてさて。仮想訓練設備も一先ず出来上がりだ。ここまで作れば後は拡張するだけなので、タームウィルズやクシュガナに端末を増やす形でもそれほど手間はない。後はカドケウスと共に実際に中に入ってみて、きちんと動作するか確かめていくとしよう。

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[良い点] 獣ファンネルポットを複数パクり護衛衛星化を謀っている
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