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番外1815 守護者会議

 一日一日と過ぎていき、魔界水路レースの日も近付いてくる。

 境界門までの区画を守るアルクスや、深層のガーディアンであるサティレス、ラストガーディアンのヴィンクルとユイといった面々も当日は迷宮内の警備担当として動くことになる。


 その為フォレスタニア城の一室を会議室として使い、警備計画を話し合ったり、抜けや漏れがないかチェックしたりといった守護者会議を行う時間を設けさせてもらった。


 出席する面々は俺達やメギアストラ女王といった迷宮管理者代行。境界門管理者としてパルテニアラ。ユイ達、ガーディアンの面々。それに加えて……。


「私達はあまり人の世には関われないけれど……こういう席に顔を出しているのは割と楽しいものだわ」

「そうですね。創意工夫をしているところを見るのはいつだって楽しいものです」


 ジオグランタとティエーラが笑みを向け合い、コルティエーラも同じ気持ちなのだろう。こくんと頷いて腕に抱えた宝珠を明滅させる。ジオグランタに関してはルーンガルド側で活動するためのスレイブユニットだが、迷宮管理者ということで、共に会議に出席している。


 居並ぶ面々を見ればそうそうたる顔ぶれではあるが……まあやる事は普通の打ち合わせだ。侵入者に対処するというわけではないのでそこまで緊迫した空気ではない。

 ただ、会議自体は真面目なものだ。特にユイ達にとってはガーディアンとしての存在意義に関わる内容だし、ティエーラ達も同席しているということもあってやる気が満ち満ちている様子が見て取れる。


 当日は国内外からレース見学にVIPが沢山来るからな。アルクス、ユイとオウギとしても移動に使う区画を担当する立場として気合が入ってしまうのだろう。


 実際、ルーンガルドと魔界の移動に使われるのはどこも重要な区画なのだ。要塞や連絡通路を新設しているので、迷宮核のある方へは直接移動できるわけではない。しかしそれでも迷宮中枢部に近い区画だし、境界門それ自体も絶対に守らなければならない重要設備である。

 ヴィンクル、ユイやアルクスといった面々が気合を入れて警戒態勢となるのは致し方ない。

 だからこうして間違いのないように話し合いの時間を立てて、警備計画を含めてしっかりと進めているわけだしな。


 そうして、ヴィンクルが声を上げる。言霊の術式で「始めよう」という意思を伝えてきているな。みんなも真剣な表情で頷いた。


 とりあえずは……今回俺からはあまり口出ししない方針だ。基本的なところでの防衛体制は出来上がっているので、後はケースに合わせた運用をしていけばいい。懸念があればその都度対策を施していくといった具合だな。


 将来俺がいなくなったとしてもティエーラも迷宮も氏族も、ずっと在り続けるし、そうでなくては困る。

 特に境界門に関しては今後も利用の機会があるだろう。ヴィンクルやユイ達を中心として警備や防衛の計画を立てて運用するという経験を積んでおくに越したことはない。

 だから、会議を見せてもらって、穴がありそうならその都度忠告なりなんなり、監督する役回りに回らせてもらっている。


 メギアストラ女王やパルテニアラもこういう警備計画を立てるのには慣れているから、俺と同じく見守る側だな。


「では、僭越ながら……私めが司会を務めさせていただきます。国内外からお越しの方々を名簿として纏めてありますので、資料をご覧ください」


 と、みんなの目線の高さに浮遊するオウギが一礼してから机の上の資料を示してくる。

 オウギは交渉やメッセンジャーとしてユイの補佐をするという役回りだからな。司会進行も適任だろう。

 俺達のところにも資料は配られているので目を通す。会議が終わったら資料は回収する、という旨の注意書きがあるな。情報漏洩を防ぐ必要があるから持ち出させない、ということだろう。


 名簿はしっかりとどこの国から誰が来るのか、護衛まで含めてきっちりと網羅されている。

 それに対してどこにどのぐらいの人員を配備するのか。何かあった時の対応策はどうするのかといった話し合いだ。


「テスディロスさん達も護衛役なんだね」

「魔界のことは氏族としても完全に無関係じゃないからね。とはいえ、魔界に到着してから強力な魔物が突然出てこないかという方向での護衛としての役回りだから」


 ユイの言葉に答える。ジオヴェルムからクシュガナへの移動も、短いながらも陸路を使うしな。魔王都周辺で安全ではあるがリスクがゼロというわけではない。

 とはいえ、今回の議題からするとやや別件だ。俺と行動を共にして魔界に到着してからの警備担当ということになる。


 その辺の事も補足するとユイも微笑んで頷いていた。




「――当日の警備体制に関しては……とりあえずこの形で問題なさそうですね」

「一先ず、迷宮に不慣れな者が脇道に迷い込むようなことはなくなるはずです。契約魔法や呪法での保険もテオドール様が施してくださっていますし」


 アルクスとサティレスがそう言って。ヴィンクルが頷きながら声を上げた。


 迷い込むことは勿論、故意に他の区画に紛れ込めないようにと、ヴィンクル達は色々と工夫している。魔界側との連絡通路を使う際は色々と制約がついているから、それを前提にしつつ、制約を破ろうとした者が実際に表れた場合の対処についても話し合いの議題に上った。


 まず個々人に改造ティアーズが一体ずつ担当として着いて、護衛と案内人、監視役を務める。これは誰であっても例外はない。


 実際、迷宮中枢部の防衛部隊から侵入者と見做されれば、比喩でも何でもなく排除されるから安全のためでもあるしな。

 中枢部の防衛部隊は、俺達が手を加えた改造ティアーズとは違う。セントールナイト達や流体騎士団といった強力な戦力だし、相手を見て手加減してくれるわけでもない。


 だから、本当に何らかの手違いで紛れ込んでしまった場合であれ、悪意を以って乗り込んできた場合であれ対応できるように、ヴィンクルとユイはそれぞれ迷宮核周辺の警護に移る。魔界に向かう面々が迷宮内部を移動している間だけの話ではあるが、こうすることで中枢部への侵入は感知できるし、手違いだった場合は防衛部隊が排除に動く前に救助できる、というわけだ。


 だから相対位置感知の魔道具を所持してもらい、みんなからはぐれた時点で動かないように、という注意をしてから迷宮内部を移動することとなる。身の安全を守る意味合いもあるし、腹に一物ある場合の判別にもなるからだ。


「連絡通路や境界門自体も、使用に当たっては悪用させないための契約術式が組み込まれております。その効力をより強固なものにするために事前の説明も行う予定ですな」


 オウギが言うと一同頷いていた。うん。それも問題ない。事前にできる手立てとしてはこんなところだろうか。


「これならきっと……っていうのは油断になるかな。当日は頑張ろうね」

「そうですね。私達本来のお仕事です。ティエーラ様やジオグランタ様。迷宮や境界門をしっかり守っていきましょう」


 ユイの言葉に、ヴィンクルが声を上げ、サティレスも決意の籠った眼差しで力強く頷く。アルファやべリウスも元深層のガーディアン、準ガーディアンとして、そんなやり取りにうんうんと頷いたりしていた。


「ふふ。頼もしいことね」

「うん……。みんな、頑張ってくれてる」


 ジオグランタがガーディアン達を見て微笑み、コルティエーラも宝珠を明滅させながら応じた。ティエーラもそんな二人のやりとりに微笑ましそうにしているな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 会議の終わりで危うくフラグを立てそうになるユイ嬢w 油断してはいけませんw
[良い点] 連絡通路や境界門自体も、使用に当たっては悪用させないための対獣用契約術式が組み込まれております
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