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番外1723 彩雲の上のでの作戦会議

ヨウキ帝の待つ人里へ、テスディロス達と共に移動する。魔力のボードを構築し、バロールを推進力に森の上を飛んでいく。


 村人が目を丸くしていたが笑って手を振っておくと、向こうも戸惑いつつ一礼で返してくれた。


「流石にテオドール公の移動速度は速いな。では彩雲を使って移動していくとしよう」


 ヨウキ帝が符を広げ、俺達が乗る事の出来る程度の大きさに彩雲を広げていく。彩雲での移動は結構目立つが、まあ、そこは俺が隠蔽フィールドを展開すればいいだろう。彩雲そのものが式神であり、簡易の魔法生物でもあるので呪法型にアレンジして隠蔽してやれば術式の維持も簡単だ。


「お気をつけて。我ら一同、皆様のお帰りをお待ちしておりますぞ」

「うむ。約束しよう」


 ヨウキ帝は村長の言葉に笑って応じ、そうして同行する面々と共に彩雲に乗り込んだ。

 早速俺達が乗りやすいようにヨウキ帝が日除け等を作ってくれて、そのまま俺達は移動していく。


「そうさな。まずは位置関係がはっきりしている場所を一直線で目指し、そこからユキノの先導で隠れ里に向かって移動していくとしよう」

「この場合は、ユキノ殿が船に乗った町でござるな」

「では、到着してからの道案内はお任せください」


 という事である。地図を広げてしっかりと方位を確認すると彩雲が高度を上げ、村人達に見送られる形で俺達を乗せて移動していく。


「皆さん! ありがとうございました! 助けていただいた事! 取り次いでいただけた事! 絶対に忘れません! 必ずまたお礼に来ます……!」


 ユキノが声を上げて礼を言うと、村人達もまた笑顔で大きく手を振ってそれに応じていた。

 見送ってくれる村人達の姿が遠ざかって、やがて村周囲の木々に埋もれるように見えなくなったところで、俺も隠蔽フィールドを展開して彩雲を外から見えないようにした。

 彩雲もそれに合わせるように、速度を上げて真っ直ぐに移動していく。イチエモンが再度地図と方位を確認し、それからみんなの休んでいる雲の東屋の中に戻ってきた。


「このまま真っ直ぐ進めば問題なく到着でござる」

「よかろう」


 イチエモンの言葉に頷くヨウキ帝。彩雲は式神なので決められた通りに動くのは得意分野という事らしい。

 そんなわけで雲の上に作られた東屋に腰を落ち着けて、現地に到着してからの事を話し合う。


「船着き場のある場所にも宿を取るか。後方拠点の役割は持たせられるだろう」

「そうですな。いざという時に撤退できる場所があれば安心でござる」


 確かに。宿の周り、町の周りに隠形等の防御的な備えをしておけば時間稼ぎもできるしな。


「後は……直接の情報収集が難しいならシーカーやハイダーを送り込むという事もできますね」

『村の年寄り、有力者、集会所、行方不明者を出した家……。そういったところに絞って送り込めば良いというわけだな』


 ジョサイア王が言う。


「そうなります。到着してから迅速に動けるように村の構造や周辺地形について把握しておきましょうか」


 マルレーンから借りてきているランタンを取り出し、地図と見比べ、ユキノに意見を聞きながら村の構造を幻影上に再現していく事にする。

 体外循環錬気で魔力を貸して、ユキノに村の風景を映し出してもらう形でもいいかな。そこから土魔法で立体図を構築していけば良いのだし。


「まずは記憶を辿って風景を思い浮かべていくだけでも大丈夫ですよ。」

「そうですね。ええと……村の入り口がこうなって……」


 と、ユキノが幻影を映し出し、村の入り口付近の風景から構築していく。村の薬師という事であちこち訪問する必要もあるからか、ユキノは村内の事にも詳しいようだ。


 必要とする情報を持つ人物がそれぞれどこに住んでいるのかという情報も得て、それらを土魔法の模型に目印として表示させる事で見取り図を確定させていく。


 村は……山間の隠れ里というイメージにそぐうもので、こじんまりとしているが映し出される幻影自体にはそれほど暗いイメージはない。森を切り拓いて造られた村落といった風情だ。騒動がなければ普通の村なのだろうとは思う。暮らしぶりが豊かかどうかはまた別の話だし、木々に紛れるようにして樹上に物見用の足場が組まれているなど、それなりの外敵への備えもあるようだ。


「ヒタカノクニの村落の備えとしてはどうなのでしょうか?」

「冬場に備えて杉の木を使い、監視したい方向に合わせて隠れるようにしているなど……中々合理的で監視しやすいように見えるでござる。しかし……一般的な範囲を逸脱するものではないように見えるでござるな」


 イチエモンが答えてくれる。ふむ。その辺も殊更特別ではない、か。理に適っているという分には別に不自然というわけでもない。使っていく上で改善点が見えれば洗練されていくのは当然だし。あまり外と交流を持っていないという事で閉鎖的なイメージはあるが、その辺は村落そのものの成り立ちや今日に至るまでの経緯も関係しているし、開かれていないのが悪いというわけでもあるまい。


 ともあれイチエモンはヒタカの諜報活動専門家でもあるのだし、この辺の見解に間違いはないだろう。


 村の構造を眺めて見取り図を作ってから、今度はその周囲に範囲を広げていく。近くに谷があり、そこから水を汲み上げたりもしているようだ。


「一般的ではないと思えるのは……やはり立地だな。ここまで山奥に隠れるように住まうというのは……。――そうだな。来歴がどこかから落ち延びた武家の子孫というのは有り得るか」


 ヨウキ帝が顎に手をやって言う。なるほど。そういうケースは日本の歴史でもあった事ではあるかな。村の暮らしは狩猟に採取。畑で生計を立てているそうだ。


「山の恵み自体は豊富ですね。私達が入っている例の森もそうですが。それらを職業ごとに分けて、町に持って行って得たお金で必要なものを買ってきたりもします」

「薬師の仕事で外に出るのもそういう一環ですか」

「はい。薬は独自の物が多いので村の収入としてはそれなりに比重の大きなものですね」


 ユキノの説明にオズグリーヴも頷く。


「隠れ住まうにしても外との接点が必要な時というのはありますからな。我らの場合は偽装が目的で、人の身とは違ったというのはありますから、我らよりも、その辺は必要に駆られてという部分が多いでしょう」


 そうだな。オズグリーヴの隠れ里も外との物品のやりとりというのは多少行っていた。魔人達の集団よりは必要不可欠な場面というのがあるか。


 ユキノは周辺の地形に続いて森の様子を映し出してくれるが……確かに明るい雰囲気の森だ。鬱蒼としているわけではないし山菜やキノコも多く、鹿等も多く生息していて、村の自給に大きな役割を果たしているとのことである。


 実際神隠しが起きるまでは子供達だけでも浅い部分なら入っていいというぐらいの場所だったようだしな……。


「森の奥の石碑はユキノさんも実際に見たことが?」

「いいえ。みだりに立ち入ってはならない場所と言われていますので、石碑のある場所の入り口付近を遠目にならありますが……」


 という事は、位置自体は分かっているわけだ。

 ユキノの映し出した幻影については――。そうだな。森の小道を進んでいくと、灯篭があり……奥に石段が続いていて、確かに入り口といった印象である。

 場所が分かっているなら調査もできるな。多分、今回の本命ではあると思うのだが。


 そうして周辺地形や石碑の場所等、位置関係も土魔法の立体図に構築しながら進んでいくと……やがてユキノが船に乗った宿場町が見えてきたのであった。

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[良い点] 觔斗雲に無視され芭蕉扇対を前足で扇ぎ追随してる獣
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