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番外1690 式典前の王城は

 みんなと共にフォレスタニアからタームウィルズへと向かう。結婚式のお披露目では東区も巡るため、タームウィルズ側の別邸も活用して見物してもらう予定だ。


「では、私達は東区に向かいます」

「ああ。それじゃあまた後で。別邸にもティアーズを配置しているし、みんなも仕事が終わったら見物の方に回っていいからね」

「ありがとうございます」


 フォレストバードのロビンが笑顔で応じて、東区へと向かった。

 迷宮村や氏族の面々、城で働いている者達は迷宮入り口前の広場で一旦分かれる。

 フォレスタニア城には子供達も多くいるが、人出が多いから街中は混むという事もあって、前日に事前に移動してもらっている。フォレストバード達が移動の際は警護に当たってくれるという事で、この辺は安心だ。俺達も街中を移動し、予定通り造船所へと向かった。


 街中はまだ早めの時間だが……やはり人出が多いな。晴れの日という事もあって盛況という印象だ。みんな明るい色合いの服を着て街中も飾り付けられ……かなり賑やかな雰囲気になっている。

 屋台や行商人も指定された場所にかなり出店しているな。


「いやあ、めでたいね。ジョサイア殿下は聡明なお方でいらっしゃるから、次代の治世も楽しみだ」

「メルヴィン陛下も素晴らしいお方でしたからな。フラヴィア様もお美しい方と聞いておりますよ」

「街中をお披露目で巡るという事ですから、お二方の晴れ姿を是非近くで見たいものですなあ」


 と、客や商人達が世間話で盛り上がっている様子だ。ジョサイア王子やフラヴィア嬢に関する評判も上々といったところか。ジョサイア王子に関しては少し前のステファニアのように直轄地を持っているからな。そこが良く治められているということはヴェルドガル王国の人間には知られている。

 そうして実地で統治の教育と実績作りに使われていた直轄地は、戴冠後は国王の直轄地、或いは王家の所領という扱いになるわけだ。


「やあ、テオ君。良い日になりそうだね」


 やがて俺達を乗せた馬車は造船所に到着する。アルバート達が既に来て、準備をして待っていた。シリウス号にもお披露目に向けて色々と仕込みや準備がしてあるから、先に造船所に来てその辺をチェックしてくれていたわけだ。


「そうだね。いい天気になった」


 少し暑くなりそうだけど対策はしているしな。

 街中にはあちこち給水所や休憩所、案内所が作られて、人員が配置されている。熱中症を始めとした体調不良や迷子、トラブルの対策だな。この辺もジョサイア王子の指揮と指導によるものだ。

 オフィーリアやコルネリウス、ビオラ達工房の面々も一緒にいるな。朝の挨拶をしつつ、確認すべきことを確認していく。


「魔道具類は特に問題ないね。動作の確認も終えてるよ」

「ん。ありがとう。それじゃあ最終確認をしてからこのまま乗り込んで王城に向かおうか」


 甲板の上に姿を見せたアルファも俺の言葉にこくんと頷いていた。メモを見ながら一つ一つ設備や準備を確認していき、問題がないというのを諸々確かめたところでみんなと共にシリウス号に乗り込み、そのまま王城へと向かった。

 俺達は演出周りの裏方という事もあり、早めに動いている。各国の賓客や国内の領主達の到着はこれからという事になるだろう。出迎えについては騎士団が動いて転移港に行っているはずだ。


 王城に到着したところで船を練兵所に停泊させる。


「打ち合わせがあるから、俺とアルはメルヴィン陛下とジョサイア殿下に顔を見せてくるね」

「はい。私達は迎賓館でお待ちしています」


 というわけでグレイス達は迎賓館で時間が来るまで待機だな。

 女官に案内と取次をしてもらい、アルバートと共に主城の上階へと移動する。王族の生活空間だな。案内されてサロンへと向かうとそこに今日の主役となる顔触れがそろっていた。


「おお、二人とも。待っておったぞ」

「やあ、おはよう」

「おはようございます」


 メルヴィン王とジョサイア王子だ。二人とも正装で俺とアルバートを迎えてくれた。


「本日はおめでとうございます」

「おめでとうございます、兄上」

「ありがとう。私としても嬉しく思っている」

「余も肩の荷が下りるというものよ」


 ジョサイア王子とメルヴィン王がそう言って応じる。


「フラヴィアに関しては、今は席を外している。準備が忙しくてね」

「結婚式も控えていますからね。分かります」


 俺の言葉に自分の時のことを思い出したのか、アルバートもうんうんと頷く。

 王妃ともなればウェディングドレスを始め準備も色々大変だろう。ちなみにアルケニーのみんなやオリエ、子蜘蛛達にはヴェルドガル王家が依頼を出し、そこからドレスを織る糸を提供してもらっていたりする。

 そんなわけで今日の予定の打ち合わせを行っていく。王城側も俺達も準備は滞りなく進んでおり、特に問題はなさそうだ。

 戴冠式と新王の聖域での契約更新。それが終わったら結婚式とお披露目、街中を巡ってからの宴といった流れになる。幻影劇についてはまあ、集まった面々に対する余興の一環という形での上映会になるかな。


「余としては、先代魔王の話というのは頃合いが良く感じるところではあるな」

「私もこれから王位を継承するにあたり、見習うべき先達の話に触れられるというのは有難い」

「確かに――頃合いが良かったかも知れませんね」


 王位を継承するというタイミングで魔界の先王の話だからな。二人ともタイムリーに感じている部分があるのかも知れない。実際、セリア女王からメギアストラ女王へ王位が継承されたという情報も作中で触れられているから尚更だろう。当人であるメギアストラ女王も、今回の戴冠式に顔を出す予定だしな。


「うむ。楽しみにしておるぞ」


 そう言って笑うメルヴィン王と、頷くジョサイア王子である。後程という事で一旦話を切り上げて、俺も迎賓館へと戻ることとなった。戴冠式は主城で行われるから、今回迎賓館は賓客の時間までの待機場所という扱いだ。

 頃合いを見てまた主城まで移動し、それから戴冠式に列席という形になるな。


 そんなわけで迎賓館に戻ってくると、既にエベルバート王やアドリアーナ姫、エリオット達が姿を見せていた。


「オルトランド伯爵も息災なようで何よりだ。妻子についても健やかで喜ばしい事であるな」

「ありがとうございます。陛下の恩情を始め、様々な方に支えていただいた事で、今があると思っております」


 と、エベルバート王はエリオットと挨拶をしているところであるらしかった。ヴェルナーを腕に抱かせてもらって、表情を緩めているエベルバート王である。


「おお、テオドールか」


 エベルバート王は俺の姿も認めると、こちらにも笑みを向けてくる。こちらも一礼して朝の挨拶を返した。


「ふむ。余の方が先に退位すると思っていたのだが、メルヴィンの奴の方が先になるとは分からないものだ。余の方は最近、とみに調子が良くてな」

「それは何よりです」


 エベルバート王から感じる魔力はかなり充実しているのが分かる。循環錬気は理由として分かりやすいところだが、何となく……ベリスティオ自身の呪いが解けた事と関係があるような気がする。ベリスティオは神格も宿しているから、関わりの深かったエベルバート王には加護や祝福が届いていてもおかしくはない。ベリスティオは――今となっては人と氏族の関係改善というか共存を望んでくれているしな。


 そのあたりの見解を伝えると、エベルバート王は感じ入るかのように目を閉じて頷くのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 獣は由緒正しき腰蓑を身に付けてファイアリンボーに備え集中していた
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