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番外1675 医療魔道具の構築

 ロゼッタとルシールに贈る魔道具を分類するなら、分析器と状態を示すモニターが一体化したもの、と言える。患者の状態を判別して状態を知らせてくれるというもので、操作盤と、結果を表示する水晶板。立体的な幻影を投影するための結晶体、採血するための皿と消毒用の機能、採血後の簡易な治療といった機能が一体になる予定だ。


 まず……医療器具という事を考えると基調とする色は白、ということになった。

 この辺は白衣と同じだな。


「付着した色が目立つというのは清潔さを保つには重要よね」


 ステファニアが言う。衛生状態の維持もそうだし、時には……例えば血液の色合い等も判断材料になる事もある。ましてや、採血を前提とした医療器具なのだし清潔さは保ちやすいようにした方が良い。


「形状も……どこかに引っ掛けたりしてしまうようなものだと治療の邪魔になってしまうかも知れませんね。緊急時に使う事もあると思いますし」


 そんなアシュレイの言葉に皆も頷いていた。もっともな話だな。必要以上の凹凸や溝等があると清潔さを維持しにくいというのもある。


 そういう面から言うと装飾も少なくするのが実用的なのだろうが……かと言って、あまり装飾を排して簡素というのも味気ない。特にロゼッタは講師でもあるし、ルシールは典医なので使う道具に気を遣う部分もあるだろう。


 そうやって様々な要素を加味して考えていき……表面に銀やミスリルの装飾を施す事で高級感と清潔感、実用性やメンテナンス性も確保するという事でみんなの話も纏まる。

 具体的な装飾はどういったものが良いのか、方向性に沿うようにみんなが話し合って決めていく。


 植物の蔦や葉、花をモチーフにした装飾が、治療や解析作業の邪魔にならないような場所に刻まれるといった感じだ。白地に銀とミスリルで箔を押したような装飾を刻むので清潔感もあるな。


「こういう装飾の形なら、刻印術式にも応用できそうね」

「裏面や底面に実用的な刻印術式を施すのが良いかもね。全体的な調和に影響を出さずに強度を上げたりできるから」


 イルムヒルトの言葉に答える。


 そうしていると魔石へのアンブラムの属性付与も終わり、続いてエリオットが呼ばれて水属性の属性付与作業に移った。


「また後でね」

「ええ。いってらっしゃい」


 カミラとヴェルナーに見送られてエリオットは工房の中へと向かった。


「それじゃあ、魔石も出来たし僕も仕事をしてくるよ」

「はい。コルネリウスや皆様とお待ちしておりますわ」


 アルバートもオフィーリアとコルネリウスに笑顔で軽く手を振って、術式を刻む作業に移る。


 術式も一通り渡してあるし、魔道具の外観も概ね纏まったからな。土魔法で模型を作ると、ビオラ達もそれを受け取り、魔道具の外装部分を構築する作業を始める。


 工房のみんなは作業に移った。残った俺の仕事としては出来上がった外装部分に装飾を施したりといった仕上げと組み上げ、実際に出来上がった魔道具のテストぐらいだな。銀やミスリルの装飾等々、光球の術式で表面の接合部等を極力減らし、滑らかに仕上げる予定だ。


 予定としてはそんなところだ。現時点では仕上がってくるのを待つだけなので今日のところはみんなと茶を飲みつつのんびりとさせてもらう。


 初夏という事もあって、陽射しも明るく工房の庭は爽やかなものだ。ラヴィーネやコルリス、アンバー、ティールといった面々も工房の中庭で心地良さそうに日向ぼっこをしていた。地底で暮らしているベリルモールが陽当たりの良い場所で寛いでいるとか、スノーウルフやマギアペンギンが初夏の日差しを満喫しているというのも冷静に考えると不思議なものではあるが。


 そんな動物組をシャルロッテがブラッシングをして、やり方をサティレスにレクチャーしている。サティレスは真面目な表情でふんふんと頷いて、ラヴィーネのブラッシングを実践したりしていた。そんな和やかな光景にみんなも表情を綻ばせつつ、ロゼッタとルシールの近況について話題が移る。


「ロゼッタさんやルシール先生は、オルトランド伯爵領への往診にも行ったと伺っていますが」

「はい。特に魔道具については気付いた様子もないようですよ」


 カミラが二人の様子について答えてくれる。サプライズに拘っているというわけではないが、お礼の品を送って驚かせる事はできそうだな。


 ちなみに往診に関してはいつもの通りだ。最近の状況も落ち着いているのでやや往診の頻度自体は調整して減っているけれど、相変わらず丁寧で親切に母子の状態を診てくれる。グレイス達、カミラとオフィーリア。それに子供達と、みんな体調も経過も順調といったところだ。


 ロゼッタとルシールについては元々学舎の講師と王城の典医だからな。母子の経過が順調で状況も落ち着いてきたから、段々往診の頻度も減ってそちらの仕事に戻っていく事になるわけだが……その前に魔道具を渡す事もできるはずだ。二人には魔道具を喜んでもらえると良いのだが。




 そうして数日が過ぎて。魔石部分と外装が仕上がったという事で再び工房へ向かう。残りの工程についてもしっかりと仕事をしないといけないからな。


「先日の模型通りに仕上がりました……!」

「曲面が滑らかで結構可愛らしい印象になりましたね」

「装飾が施されればもう少し優雅な見た目になるかなと思います」


 出来上がってきた魔道具の外装を机の上に置いてコマチが明るい笑顔で言うと、ビオラとエルハーム姫もそんな風に言う。

 白地の金属はホワイトメタル。軽量でありながら中々に頑強な素材だ。白地でイメージも良いという事もあってあちこちの騎士団で防具に採用されたりもする金属だな。


「ん。少しシリウス号にも似てる」

「ああ。それは確かに」


 シーラの言葉に頷くとマルレーンもこくんと首を縦に振って同意する。

 モニターとなる水晶板がはめ込まれた本体は曲面で構成され、全体的には丸っこくて滑らかな仕上がりだ。上部に立体映像を投影する水晶、モニターの手前、下側に操作盤が迫り出すような形でくっ付いている。白くて曲面で構成されたそれは、確かにシリウス号に親和性があるかも知れないな。


 ブラウン管だったか。古いモニター付きのPCのような見た目になっているが……横にアームのようなパーツがついているのが特徴だ。これはティアーズのマニピュレーターに近いパーツだ。採血をしたり必要な魔法を発動したりと多目的に使う事ができる。


 背面に持ち運びがしやすいように持ち手もついているな。元々軽量でレビテーションを使えば取り回しも良い。それほど大きくないので大抵の現場に簡単に持ち込めるというのはあるな。その分盗難防止の措置も必要だと思って対策している。盗難や正当な理由なく分解して解析等をした場合に矢印の呪法が発動するというもので、これは必要な魔石も小さくて済むのが利点だな。


 さて。装飾用の銀とミスリルといった素材も用意されている。まずは外装からという事で早速外装部分に光球の術式を使って装飾を施していく。


 銀とミスリル銀とで箔押しをするようにして、植物を模した装飾や刻印術式を施していくわけだ。モニターの下や側面。操作盤の縁取りをするように装飾が施されていく。

 花や果実の部分を少し青みがかったミスリル銀で箔押ししてアクセントにしてある。こうした作業を始めて見るサティレスは熱心な目で装飾が出来上がっていく光景を眺めていた。


 見えている部分に装飾が施せたらひっくり返して底面に強度の向上を目的とした刻印術式を刻む。ついでに水晶球や水晶部分の接合部を可能な限り滑らかにして最後の仕上げだ。


「中々気品があって良いと思うわ」

「そうね。落ち着いていて私も好みよ」


 クラウディアやステファニアが仕上がりを見て相好を崩す。そうだな。エルハーム姫も言っていたが中々優雅な見た目になったのではないだろうか。実用面を重視しているから装飾は華美過ぎず主張しすぎず、上品な印象だと思う。


 後は内部。魔石の配置やミスリル銀線での接合といった作業を進めていけば一先ず組み上げまでは完了だ。


 ロゼッタの分とルシールの分、それぞれに用意しているがまずは片方を完成させ、試運転を行って動作確認をしてからもう一つも組み上げる、という手順で進めていこう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 獣、次いでとばかりに大量の着ぐるみを干していた
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