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番外1671 素材の使い道を

 素材の回収が終わって移動を再開したユイ達であるが――案の定というか、浮遊島の裏側に至るまで魔物は出てこずに、あっさりと島の裏側に降り立つ事ができた。


 島に近付くと釣り合って無重力になるポイントがある。そこを抜ければ島の裏側に向かって落ちる。


『あははっ』


 その一連の感覚が新鮮だったのか、楽しそうに笑っているユイやヴィンクル達だ。笑い声を上げながら浮遊島の裏側の端の方に着地して周囲の状況を確認する。


『どうですか、カストルム』


 ヘルヴォルテが周囲の状況を尋ねるも、カストルムは音を鳴らしてすぐ近くに探知に引っかかる魔物はいないようだとみんなに伝える。


『裏側は暗いが、星空の反射は見事なものよな』


 ルベレンシアが周囲や頭上に広がる海面を見て頷く。浮遊島の裏側は俺達が下から見た通り、岩肌が剥き出しのごつごつとした岩石地帯だ。鏡面の海には星空が映り込んでいるようで、それを見て感動したような声を上げる。

 区画自体が昼ならば、水面からの反射でもう少し明るかったとは思うが……月や星空の明かりだけでは暗い場所だ。それだけに水面の輝きもよく見えるのだろう。


『うん。それじゃあ予定通り周囲を調査して、もう少し島の中心に移動してから引き揚げようね』


 少しそれらを眺めていたが、頃合いを見てユイが方針を伝えると一同頷く。ユイが照明の光球を浮かべると、ちらほらと岩肌の中に反射光が見えた。


『あれは――?』


 反射しているものを近くで見るとあちこち鉱石が露出しているようだ。鉱石の正体までは水晶板の映像からは分からないが……何かに使えるかも知れないという事で、ユイ達はそれらをいくつか採取していた。もし面白い素材で、必要になったらまた取りに来ても良いな。


 そうしてユイ達は採取を終えると島の裏側を移動していく。


 と、少し移動したところでカストルムが警告音を鳴らした。一同の動きが止まる。魔物の姿は見えないが、カストルムは指から魔力弾を放つ。


 露出している鉱石かと思われたそれは、魔力弾を受けると動きを見せた。石のような質感の身体を持つ巨大アリジゴクと言えば良いのか。大顎の先端や頭部の突起が、周囲の鉱石によく似ている。

 所在を暴かれたそれは、弾かれるような速度で大顎を開いて突撃してくる。


『私が!』


 ユイがそう言って応じるように跳躍し、薙刀を振るって迎撃。すれ違うと振り抜いた格好のユイの背後で、アリジゴクが斜めに両断されて地面に転がる。

 中々剣呑な魔物だな。区画にある鉱石に紛れているというのは。採取しようとすると攻撃を受けてしまう可能性がある。


『擬態や待ち伏せはこの区画の魔物達の特徴よな』

『うん。気を付けていこう』


 ルベレンシアとユイの言葉に一同気を引き締め直した様子である。実力的に勝っているが訓練を兼ねているからな。ああして真面目に取り組むというのは良い事だ。

 アリジゴクを素材として回収すると調査を再開する。


 島の裏側は――独自の素材や魔物がいるがあまり変化には富んでいない。風、土、闇属性型のエレメントフェイクに加えてアリジゴクの魔物が主な防衛戦力か。


 中空から突然現れる風属性、岩に擬態している土属性、暗がりに潜んでいる闇属性型という事で島の上部や海とは出現するフェイク達の比率が違うという印象だ。

 ともあれ、カストルムの探知をすり抜けられる魔物はいないようなので、ユイ達は散発的に襲ってくる迷宮魔物を撃退しつつ順調に調査を進め――そうして中心部に到達したところで戻ってきたのであった。




 魔石、牙や爪、大顎やハサミ、外殻と、色々な素材も確保できた。サティレスとの出会いもあったし、擬態型が多いので警戒しながら進む訓練にもなって得るものの多い新区画探索になったと言えよう。


 そんなわけで俺達は連絡を入れてフォレスタニアへと戻ってきたのであった。サティレスにとっては生まれて初めて見るものばかりという事で、フォレスタニア城の内装や城で働く人々を興味深そうに眺めている。サティレスは割と落ち着いた物腰だが、妖精らしく明るい性格なのもあって目がキラキラとしているといった様子だな。


 魔石や新しい素材が確保できたという事で、アルバートとオフィーリア、それに工房の面々もフォレスタニア城に顔を出してくれている。

 通信室でのんびり茶でも飲んで新区画調査の疲れを取りながら、サティレスの紹介や新区画の軽い報告もしていきたいところだな。


「ん。ただいま」

「ただいま帰りました。子供達も良い子にしていたようで何よりです」

「ふふ。お帰りなさい」


 俺達がそう言ってフロートポッドの中に寝かされている子供達の顔を覗き込んで言うと、アイオルトをあやしてくれていた母さんが笑って応じてくれる。


「おかえりテオ君。みんな怪我がなさそうで良かった」

「それどころか、人数が増えておりますわね」


 アルバートの言葉にオフィーリアが笑って「はじめまして」と、挨拶をする。


「紹介するよ。新区画――星海群島の守護者、サティレスっていうんだ」

「初めまして。テオドール様からお名前を頂きました、サティレスと申します。種族としては妖精という事になりますね」


 俺の言葉に合わせ、サティレスもドレスの裾を詰まんで挨拶する。工房の面々や城にいる顔ぶれ、水晶板越しに顔を出した面々もサティレスに挨拶や自己紹介をしていた。


 サティレスとしては妖精族らしく動物や植物が好きなようで、動物組やハーベスタ、アピラシアといった面々の挨拶には特ににこにこと上機嫌そうにしているな。


 城の面々だけでなく、ロヴィーサ、ボルケオールといった海底や魔界の者達。ナヴェルやフォロスといった地底組と、色んな顔触れが滞在中で挨拶をしてくるから、サティレスとしては顔と名前を覚えるのは大変だとは思う。いずれにしてもお互い好印象なようで何よりだ。


 お互いの紹介も一段落だ。星海群島の様子は話しても良いが、サティレスの具体的な能力等は深層の守護者だから触れ回る理由がないので伏せておく。紹介にしても種族と名前ぐらいではあるが、サティレスの能力は判明していない方がアドバンテージも大きくなるのは確かだからな。


「というわけで星海群島は割と固有の特徴が多くて高難易度の区画だけれど、深層以外とは接続していないし、サティレスも一緒に来た事から分かる通り、危険はなさそうだ」

「私としても居心地の良さそうな場所で良かったと思っています」


 俺やティエーラの言葉に、アルバート達も笑顔を見せる。

 というわけで早速星海群島の話をしつつ、戦利品のお披露目といこう。


 魔法の鞄に収納した魔石や保存箱を取り出して並べて、質や素材を一つ一つ確認していく。


「まず当初の目的の一つでもあった魔石だけど……これは問題なく丁度良さそうな品質のものを確保できた」


 擬態獣の魔石が求めていた魔石の品質に近しいランクだ。それを確認してアルバートは納得したように頷いた。


「良いね。これを中核に据えてロゼッタさんやルシールさんへのお礼の品を作るわけだね」

「そうだね。ちなみに、この魔石の魔物についてはこんな感じだった」


 笑顔でランタンを貸してくれるマルレーンに笑みを返し、擬態獣の姿を映し出す。

 樹木に見せかけておいて完全に獣というその姿を見て、水晶板で見ていなかった面々は結構驚いている様子であった。擬態獣の葉刃は素材として拾ってきている。それも併せて見て感心したような声を上げているな。


 エレメントフェイクは属性付き魔石なので使い道は特化してくるが、ヤシガニ、ウミヘビ、アリジゴクと、他にも普通の魔石も確保できている。素材等々含めてアルバートと相談していくとしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] お礼の品を作るだけでは終わりそうにない収穫でしたw アル氏はまたしても夜なべをすることになりそうな予感がするのですがw
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] >反射しているものを近くで見るとあちこち鉱石が露出しているようだ。 シーラからタオルを1枚貰って涎を拭っている土竜。 >得るものの多い新区画探索になったと言え…
[良い点] 漢獣擬態と判っていても取り敢えず口の中へ入れる習性からは逃れられない
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