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番外1670 守護者達の戦い

 海上付近におけるトビウオ達。上空から迫ってくるエレメントフェイク達の集団。本来なら形は少し異なるが別方向からの立体的な挟撃、となるところだったのだろう。トビウオ達は機動力に優れるから遊撃して注意を引くには適している。


 だが、ユイ達の攻撃力が図抜けているという事もあって、先行したトビウオ達が既に壊滅しつつあった。


『このまま上空の敵を迎え撃って、勝ったら素材の確保をしてから進もう!』

『よかろう!』

『異存ありません!』


 状況を確認してから言うユイの言葉に、ルベレンシアやヘルヴォルテが答える。ヴィンクル達も賛成という事なのか、声を上げたり、音を鳴らしたりして各々応じ、そのまま戦闘を続行する。


 浮遊岩群ルートと違って空中での足場も遮蔽物もないから途中で一休みとはいかない。攻め上るか島の下部で一旦休憩するかの二択となるから妥当なところだ。ユイ達ならば勢いも余力も十分だから一気に攻め上る事も可能だろうが、素材の確保もあるしな。


 浮遊島の裏側へと攻め上るにしても索敵能力に優れるカストルムを中心に移動するというのは変わらない。途中で姿を隠した伏兵が襲撃してくる可能性はこの区画なら十分にあるからだ。

 全員で一旦カストルムを中心として周囲を固めるように動けば、撃退されつつあるトビウオ達や降下してくるエレメントフェイク達もそちらを目指して突き進んでくる。


 数を減らしたものの、分散してしまったトビウオ達だ。再度結集させて残党を殲滅しやすくするというわけだ。エレメントフェイク達の出方は……分からない。このまま一方向より戦力を結集させたまま攻めてくるか、数を頼みに薄く包囲するか。いずれにしてもユイ達も集まっていれば、敵が包囲するような動きを見せた場合でも一点突破であれ防衛しながらの迎撃であれ、対応の選択肢が増える。


 俺は静観して状況の推移を見せてもらっているが、指揮や対応の訓練も兼ねているから迷宮魔物達との間に戦力差があっても力押しせず、しっかり手順を踏んで動いているのは良い判断と言える。


 ユイ達がカストルムの周囲に戻ってくると、エレメントフェイク達は包囲のために分散するような動きを見せた。


『一点突破で包囲を破ってから殲滅戦かな。能力を使って合図を送るね!』

『殿は私が』


 トビウオ達に薙刀を振るいながら方針を伝えるユイに一同が頷き、ヘルヴォルテが答える。転移魔法で状況に応じた合流や撤退が容易なヘルヴォルテが最後尾だ。べリウスが支援すると言うように一声上げてそんなヘルヴォルテに応じていた。


 エレメントフェイク達が風の渦を弾幕として放つ。魔力を帯びた旋風は軌道が読みにくい。一旦大きく広がって弧を描き、唸りを上げて四方八方から迫るが――ユイが大きく腕を振るえばカバーするように全方位に鬼門が開かれ、それらの弾幕をまとめて飲み込んだ。

 次の瞬間、鬼門に飲み込まれた無数の旋風がトビウオ達に浴びせられるように方向を変えて射出される。鬼門が閉じると同時に、一斉に動きを見せた。


 渦に巻き込まれたトビウオ達目掛け、咆哮を上げたヴィンクルが巨大な爪撃を放つ。闘気による爪撃だ。眩い闘気に飲み込まれたその顛末を見届けるより先に、全員が猛烈な速度で空中に飛び出し、エレメントフェイク達目掛けて突撃を仕掛けていた。


 僅かに残ったトビウオ達の戦意は微塵も衰えていない。ユイ達を追いかけるように空中に舞い上がり――ヘルヴォルテが背後から現れて瞬くように槍を振るって残党を貫いていく。


 エレメントフェイク達がユイ達の接近を阻むように射撃するが、カストルムが両腕を射出する。攻撃を目的としたものではない。光壁を纏ったまま突き進むそれは、突撃のための道を切り開くことを目的としたものだ。


 最短距離を最高の速度で突き進み、あっという間に両者は接敵した。風のエレメントフェイク達は機動力に優れていて空中戦が得意だが、機動力という点でもユイ達が上回っている。


 今回は他の属性との混成ではないから簡易のグラインドダストのような真似はしてこないが、風単体でもフェイク達が放つ風弾は中々に厄介だ。軌道が読みにくい事もあるし、マジックシールドで防御してもその場で旋風が渦を巻いて行動を阻害されるので、空中戦においては通常、妨害として有用である。


 あくまで、普通の相手ならば。


 攻撃力も機動力も、尋常ではない面々が多い。鋭角軌道を描いて旋風を置き去りにしながらも、エレメントフェイク達に肉薄する。

 すれ違いざまに振るわれたルベレンシアの尾がフェイクを粉砕する。フェイクは攻撃を受けながらも自身の身体に纏っていた風の鎧を炸裂させて行動阻害に出るが、ルベレンシアに攻撃しようとしたフェイク達を狙撃するようにユイが薙刀を高速で伸縮させ、本来届くはずのない距離から刺突を繰り出し、流れるような薙ぎ払いを見舞っていた。


 オウギもそれを見ながらもモニターの向こうでうんうんと頷いているな。従者役であるオウギとしては、ユイの活躍が喜ばしいようだ。


 一瞬で複数体のフェイク達が切り払われ、ルベレンシアが翼をはためかせて横合いに飛びながらも巨大な魔力の爪撃を見舞う。

 回避が間に合う個体もいたが――そこにさながら砲弾のように突っ込んできたのがヴィンクルだ。文字通りの鎧袖一触。身体や翼に纏った魔力での体当たりは何の抵抗もなくフェイク達をぶち抜いていった。強固な鱗を纏う身体に当たったものは砕け散り、翼に当たったものは両断されるほどの突撃の威力。やっている事はトビウオ達と似たようなものだが、次元そのものが違う。


 楽しげな咆哮を上げながらも白銀の彗星のように空中に光の軌道を残し、ヴィンクルがジグザグの軌道を描くと次の標的を狙う。分散して被害を減らそうとしたそこに、不意に姿を見せたべリウスの三連火線が容赦なく放たれていた。放たれていた風弾もフェイクも、諸共に焼き切るような破壊力を見せる。


 カストルムが前に出る。元々装甲、重量も十分なカストルムは防壁まで展開できるのだ。少々の風弾や突撃を物ともしない。射出した腕も本体も、空中に移動できる橋頭保のようなものであり、移動できる砲台でもある。


 索敵役、盾役に加えて遠近両対応が可能というあたり、味方のサポートをしながらかなり臨機応変な立ち回りができるな。


 トビウオ達の残存兵力を撃退したヘルヴォルテが近くに転移してくると、カストルムの近くにいたアルファがにやりと笑って再び片方の腕に憑依。ヘルヴォルテと共に突撃していく。そうしてフェイク達が次々と撃墜されていく光景が水晶板の向こうで展開されるのであった。




「ユイさん達は危なげがないですね」

「深層の守護者達や近い実力を持つ顔触れだものね」


 アシュレイが微笑むと、クラウディアが答える。サティレスやアルクス達は寧ろ納得というように頷いていた。区画の魔物に後れを取るようでは守護者足りえない、というのは道理かも知れないな。アルクスに関しては……まあ、本体は魔界の門を守る任についているしスレイブユニットは非戦闘員なので今回は不参加であるが、当人が望むなら一時的に防衛の任を入れ替えて訓練というのも良いかも知れないな。


 ともあれ、ユイ達は姿を見せた風のエレメントフェイク部隊も撃退し、今は撃墜した相手の回収を行っている。ユイがローズマリーから魔法の鞄を借りており、鞄に入れておいた保存箱に各種素材を収納して持ち帰るというわけだ。

 倒した迷宮魔物達は浅瀬に浮かんだり沈んだりしているが……みんなで手分けして回収している。カストルムが探知して大きな手を飛ばして器用につまんで回収したりもしてくれているな。


 ヤシガニやウミヘビといった迷宮魔物も少し出てきたが散発的で、それらも撃退されて素材として回収されている。


 さてさて。回収が終われば浮遊島まで移動していく事となるか。エレメントフェイクは結構な規模の部隊だったから道中の敵はもういないかかなり数を減らしているとは思うが……。浮遊島の裏側はどうなっているかは敢えてサティレスには伏せてもらっているが、果たしてどうなっている事やら。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 先行したトビウオ達が既に獣によって刺身や醬油漬けにされていた 一部は干物にしたいらしく干してある
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