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番外1645 天幕設営

いつも応援ありがとうございます。


孤児院の同行の描写が抜けていたため、『番外1630 野営計画』から少しずつ加筆修正をしております。

話の大きな流れに変わりはありません。不手際失礼しました。



 花畑を一通り見せてもらってから、今日の野営予定地にも案内してもらった。花畑が一望できるなだらかな丘の上側になる。花畑の中心から少し離れているので花の香りは控えめではあるが、眺めは見事なものだ。


「ここは、眺めが良くてお気に入りですの。将来的には斜面からそのあたりまで花で覆いたいと思っているから、今は土地を休ませている場所ですの」


 ヴェリーツィオがそんな風に教えてくれる。将来的には丘の斜面も花で覆って、丘の下側から見た時にも立体的に花を見せる事ができたら良いのではと……そんな構想をエルフや獣人達と練っているのだとヴェリーツィオは話をしてくれた。


「良いですね。完成したら素敵だと思います」

「うふふふふ」


 俺の返答にヴェリーツィオが楽しそうに笑う。というわけで、この丘の上側で野営をしてはどうかとの提案をしてくれた。花畑の逆側――背後に森があり、風はそちらで止まるので吹き抜けにもなっていないので強風に晒される事もなく、天幕設営に向いているとのことだ。


「見晴らしも良いし広さも十分ですね。良い場所なので大事に使わせてもらいます」


 そう答えるとヴェリーツィオはにこにこしながらこくんと頷く。天幕の設営にも良い頃合いだな。

 アルファもシリウス号をゆっくりと丘側へと動かしてきてくれる。


「では、皆と準備を進めていくとしよう。見通しも良いから周辺の警戒もしやすいのは良いな」


 テスディロスが言う。周辺の危険な魔物は少ないとのことだが、全くの無警戒で良い、というわけではないしな。特に子供達も多いので、花畑側はともかく森側はしっかりと見ておきたい。


「ふむ。火の精霊達だけでなく風の精霊達にも外から魔物が来たら知らせてもらえるように頼んでおくか」

「よろしくね。設営の時は強い風も吹かないようにしてくれると嬉しいわ」


 アウリアとクレーネが精霊達に向かって魔力を渡して指示……というよりはお願いを伝えると、サラマンダーやシルフが笑顔でこくこくと頷いていた。

 コルリスとアンバー、リンドブルムやティアーズも地上と空中から周囲の警戒をしてくれている。子供達一人一人にアピラシアの働き蜂も担当としてついて、迷子防止の魔道具も所持。警備体制は万全と言えよう。


 というわけで外周に引率側のテント。内側や花畑側に子供達のテントを配置する形になるな。

 テント同士の間隔は若干広めにとっている。調理台もそれぞれの班ごと簡易の物を用意するからな。

 中央部に広場を設け、そこで夕食時に焚火を囲んだりもできるようにする、と。配置に関してはこんなところか。

 焚火を行う場所には簡易ではあるが焚火台も設営して、土地に影響が残らないようにしておきたい。この辺も後々花畑にする予定だというのなら、こちらとしても綺麗に使わせてもらおう。


「よし。これなら大丈夫かな。天幕同士の間隔はこのぐらい開けておけば問題ないから、場所は班の代表で話し合って決めていいよ」


 子供達同士で班分けや事前の設営方法の説明等はしているので、改めて注意点を伝えつつ天幕設営の開始だ。

 俺の言葉を受けて子供達も頷くと早速場所決めから始める事にしたようだ。

 班分けも子供達の自主性に任せている部分はあるが……年長と年少をバランスよく組み込んで、別の出身や所属同士でも交流できるようにと、色々考えて分かれているという印象だ。


 年長組がきちんと年少組の面倒を見ようとしてくれているわけだ。よく出来たお子さんたちというか、氏族達の合理性と暮らし方がその辺を育んだと言えるだろう。

 迷宮村や孤児院の子供達もその辺はしっかりとクラウディアや大人達、サンドラ院長達に教えられているというわけだ。


 場所に関してはくじ引きで決める事にしたようだ。くじを引いて一喜一憂している子供達である。間隔も取っているという事もあって、花畑側は見通せて眺めも良好、場所によっての良し悪しはそこまで出ないとは思うが。


「それじゃ、俺達も設営していこうか」

「小さな子供達の事はしっかり見てるね!」


 俺の言葉にセラフィナが言うとみんなも笑って頷く。というわけで船倉に積み込んだテントを全員で手分けして船から降ろして設営だ。


 騎士団用の天幕なので作りもしっかりしている。普段の手入れもきっちりなされているから天幕の状態も良いな。

 氏族の子供達、迷宮村の子供達共に空が飛べたり力が強かったりするので、設営に関しても概ね問題はなさそうに見えるな。必要ならティアーズや働き蜂達も手伝ってくれる。

 まだ小さくて力が足りずに難しい工程があっても、やり方さえ覚えておけば大人になってからできるようになるという寸法だ。


 天幕の作りとしてはヴェルドガル王国騎士団のものと同じであり、木の骨組みを建てて数種類の布や革を被せる形だが――迅速な設営と陣地構築ができるように結構効率化がなされている。


 中央に支柱。周囲の壁を支えるのは木で作られた格子状のフェンス。屋根を支えるのは放射状に組まれた棒だ。それらが骨組みとなる。

 飛行班や年長組が建てた骨組みを年少組の子供達が倒れないように力を合わせて支え、その間に次の作業を進めていくという形だ。子供達が怪我をしないよう、フォローに働き蜂達も回ってくれているな。支柱とフェンスに屋根の骨組みが乗ると力が上から分散し、屋根もフェンス部分も互いに安定するという仕組みで、ヴェルドガルの天幕も流石によく出来ている。


 これが遊牧民の天幕だったりすると普段の生活の場なので、一番内側に壁紙代わりに綺麗な布が張られたり、天井部分で採光できるようになっていたりするのだが……これは騎士団用なので美観よりも実用性重視だ。

 一番内側から防寒、防水、耐火の機能に特化した順に布が被せられる。採光部分もないし夜襲への備えという事で耐火部分が重視されている。今回は用意していないが矢を通さない金属の網もあったりする。


「防寒用の布は暖かい時期と寒い時期で布地の厚さが違うんだ。今は初夏だから薄めの布だね。冬はその分重くて厚い布になったりするから、季節によって使うもの、準備するものが違うっていうのは覚えておいてね」

「そうね。防寒は生死に関わる重要な部分だから、野営をするなら準備を疎かにしないように」


 俺やステファニアの声を風魔法も併用して届けると天幕設営をしている子供達はこくこくと頷いていた。


 布を被せたら固定用のバンドをぐるりと一周させて布がズレたり風で飛んだりしないよう固定する。屋根側から伸びている綱を地面に引っ張り、杭に引っ掛けて地面に打ち込む事で外側は完成だ。

 この工程は結構力が必要なので、ティアーズ達がマニピュレーターで固定用のバンドを引っ張って手伝ったりもしていた。


 そうやって壁や天井ができたら内側だ。地面に木材を敷いて、その上から敷布を重ねていく。地面からの湿気と冷気を防ぐためだな。


 手古摺っている班もあったが、ティアーズ達にも工程を教えている。上手くいっていたらマニピュレーターでサムズアップしてくれるし、危険な部分があれば魔力文字を出して指摘したりもする。設営が順調な班が手を貸したりアドバイスもしたりして全体的には順調に工程も前に進んでいる、と言えよう。

 俺達については少し大型の天幕だったりするが、みんなで手分けしてあっさりと設営ができた。


「天幕の設営は王侯貴族の嗜みでもありますからね」


 というのはエレナの言葉だ。ステファニアやローズマリー、マルレーンにアシュレイ。それにアルバートもそうだが……騎士団や兵士達を指揮する際に設営ぐらいの知識や経験がないと示しが付かないし、現場で適当な事をされた場合に指導すらできないというのはある。


 武官任せでも現場は回るとは思うが……貴族教育がしっかりしていれば必修項目ではあるのだ。冒険者達は日常で必要になるので、言わずもがなだな。迷宮専門の冒険者でさえ中間の安全地帯等で設営する事があるからな。


 そんな調子で手分けし、助け合っての和やかな雰囲気の中で、着々と天幕の設営が進んでいくのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 補助する人員をつけるとはいえ子供がメインのテント設営に、備えよ常にの言葉が思い浮かびましたw
[良い点] 獣の天幕はステンドクリスタルな為に月見酒も中で出来るらしい(たぶん奪われる)
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