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番外1624 大空洞の現状は

 光が収まり、目を開くとそこは既にドルトエルム王国であった。


「おお、テオドール殿。よくぞ来てくれた」

「今日はよろしくお願いします、陛下」


 嬉しそうに迎えてくれるドルトリウス王に一礼する。


 さて。今現在はドルトエルムの武官達が資材を運び出して、転移門建設の準備をしているところだ。


 この部屋ではなく、近くの部屋に転移門を作ることになる。ドルトエルム王城の転送魔法陣については人の移動や後片付けもあるのでそっちの方が効率的でもあるしな。


 まずは転送魔法陣でみんなにこちらへ来てもらおう。みんなも転移門建造に慣れているので手伝ってくれるのは有難い。


「それでは始めましょうか」


 魔法陣を起動させるとグレイス達がやってくる。そんなわけで作業開始だ。城の一角に移動し、魔石や魔石粉、ミスリル銀線を使って基礎部分から結界や契約魔法を組み込んでいく。


 アシュレイやクラウディア、ローズマリーが魔法陣に魔石粉で線を引くのを手伝ってくれる。シーラやステファニア、エレナが描かれた魔法陣に間違いがないかチェックするといった具合の分担作業だ。

 必要な資材はラヴィーネやコルリス、アンバーが運んできてくれるので、効率よく作業が進められる。


 みんなも転移門建造は慣れているからな。そんなに時間もかからずに完成まで持っていけるだろう。


「私達は――そうですね。作業が終わった後に備えておきます」


 グレイスの言葉に、マルレーンも手伝うと言うようににっこりと笑った。作業が終わった後に備えてお茶と焼き菓子の準備を進めてくれるとの事である。


 子供達については魔法建築なので家で留守番中だ。


『子供達の事は心配しないでね』

『うん。私達が守るから』

『任せておいてね』


 母さんやセラフィナ、それにユイもそんな風に言って気合を入れている様子だ。テスディロス達も水晶板の向こうで頷いたりしているな。


 転移港でもお祖父さんを中心に七家の長老達が作業を進めてくれている。護衛はフォルカやエギール、グスタフといったシルヴァトリアの魔法騎士達だ。タームウィルズやフォレスタニアに関しては心配いらないだろう。


 そうして転移門のための石柱を立てていく。柱に刻まれる意匠についてだが……記録に残っている始祖の姿を元にしたドルトエルム王国の祖が集積所の前で目覚めた瞬間を片方に。もう片方の石柱にはドルトリウス王達とフォロス達を刻んでみる事にした。


「こんな意匠はどうでしょうか」


 と、土魔法で簡易模型を作ってドルトリウス王達にも完成予想図を見てもらう。


「ドルトエルムの始まりと今、というわけか。これは……良いな。転移門が造られる今の事が、未来にも伝わるという事でもある。気に入った」


 ドルトリウス王が言うとフォロス達も弾むようにして応じる。様々な姿をしたドルトエルムの民と、ブレスジェム達も一緒にいるからな。現在側の意匠に喜んでいる様子だ。

 水晶やカッティングされた宝石もデザインとして調和するように組み込んだりして見た目を調整し、納得がいったところで実物の石柱にも反映していく。


 諸々の作業が終わったところで、タームウィルズの状況を確認すると、転移港でも作業は終了していた。この辺は流石というか七家の長老達は転移門建造の数をこなしているからな。作業も早くて正確だ。

 というわけでドルトリウス王と契約魔法を結んで転移門を起動させれば一先ず機能確保までは持っていける。クラウディアに契約魔法の仲立ちをしてもらい、みんなにはその立ち合い人になってもらう、という形だ。これによって転移門そのものやそれを守る結界自体も強固なものにできる。


「流石に複数回建造されているだけあって契約魔法も様々な状況を想定しておるのだな」

「悪用すると被害が大きくなってしまうものだものね。それを防ぐために事細かな部分まで詰めてあるわ」


 契約魔法の内容を書面で読み込みながら、ドルトリウス王が感心したように言って、それに対して目を閉じて答えるクラウディアである。


 これは転移港のあるヴェルドガル側も同様だな。正当な理由なく転移港の利用を制限できない等、転移港の利用条件には幾つか契約魔法での縛りがあるのだ。港を預かるヴェルドガル側だからこそそういった配慮も必要というわけだな。


 もしもの事を考えた場合、の話であるが……例えば転移門のある建造物が破壊されたり、保全する者が立ち入れなくなるような事態が発生してしまったとしても結界と設備機能は無事だろう。それに、管理が及ばなくなってしまった場合でも悪用防止の機能は維持されるという寸法だ。


 契約魔法の内容に疑問や質問があればそれに答えるという形を取りながらも諸々の内容を説明していく。そうして説明が終わったところでドルトリウス王達も納得してくれたようだ。

 クラウディアがマジックサークルを展開。契約魔法の内容を認めるかを尋ねる。


「ドルトエルム王国を預かる王の名において、この契約を了承する」


 ドルトリウス王の返答と共に、契約魔法が力を持つ。続いて転移門を起動させて――ゴーレムにあちら側に転移してもらう事で機能テストを行っていく。

 ゴーレムが転移門を潜れば、ヴェルドガル側に出現し、お祖父さん達と共にこちらに向かって軽く手を振ってくる。


「良いようだな」

「はい。問題はなさそうです」


 では――諸々大空洞や入口に残してきたものの後始末をしていくとしよう。

 再びドルトエルム王城の転送魔法陣へと移動し、最奥まで移動しているシーカーとメダルゴーレムのユニットや、中継地点の転送魔法陣、大空洞入口に残してきた品々の回収を行っていく。


「――というわけで、そっちに後片付け用のゴーレムを送るから、驚かないで欲しい」

『分かりました。ルトガー先生や皆には説明しておきます』


 大空洞入口からの中継映像で、バイロンが頷いて早速通達に動いてくれる。

 中継地点と入り口にゴーレムを送って魔法陣を消したりしてから物資を回収。然る後に派遣したメダルゴーレムにそれらの物資を持たせた上で、召喚術式でまとめて手元に戻すといった手順となるわけだ。


 通達が終わったところで、一通りの挙動と術式を組み込んだメダルゴーレム達を現地に送り込む。ジェーラ女王の宝珠の力を借りた上で中継映像もあるので、遠隔でも臨機応変に動かすことができるようになっているな。


 早速現地の物資をゴーレム達が回収していく。箱型の胴体にマニピュレーターで収納していくゴーレム達。転送魔法陣も固着を解除して使用した魔石粉ごと回収する形になるな。


 平行して奥地に行っているシーカー達を呼び戻していく。戻ってきたシーカーを「おかえり」と迎えると、こくんと頷いていた。


「そっちにいるシーカーと水晶板は引き続き、ルトガーさん達に預かっていてもらえればと思います。大空洞の危険はもう少なくなっていますが、ある程度様子も見られるようにしておいた方が安心ですので」

『ありがとうございます』


 水晶板の向こうでルトガーも笑う。


 大空洞については冒険者ギルドも専門家を呼んで安全確認を進めているそうだ。崩落した部分、崩落しそうな部分等を調べて、適宜補強や修繕を行っている最中だとルトガーが現状について教えてくれた。


『私達も野営していますし夜間の護衛はできますね。訓練を兼ねて安全確認がなされた経路の魔物の排除も進めていますよ』


 と、ルトガー。バイロンもそこに参加しているそうで、もうゴブリン相手に何度か戦っているとのことだ。やる気に満ちた表情で頷いているバイロンである。

 ルトガーと一緒に訓練している面々はベテランが多いしな。余ったポーションも渡してあるので怪我等にも対処できるだろう。いずれにせよ大空洞の安全が戻ってきているというのは良い話だ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も獣は柱に手形を付けている
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