表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2404/2811

番外1617 フォレスタニアの環境は

 街中を通り、軽くフォレスタニアの案内をしながら馬車が進む。

 居城に到着すると、門の前に迎えが出てきていた。迷宮村や氏族の面々……主に使用人として働いている顔ぶれである。各々の所属を代表してブレスジェム達に歓迎の意向を伝えようというわけだ。


「お帰りなさいませ、旦那様」

「皆様も、ようこそおいで下さいました」


 挨拶共に歓迎の言葉を伝えてくれる。ティールやマギアペンギン達も声を上げて迎えてくれているな。

 というわけで城の内部へと案内する。ブレスジェム達の滞在方法に関しては色々と考えてしまうな。滞在用の部屋を割り当てるか、それとも中庭で過ごす方が居心地も良いのか。当人達の意見を聞いて考えるというのが良いだろう。


 その辺の事も尋ねてみると、建物の内外は今まで気にした事がないのでよく分からない、というのがブレスジェム達の意見だった。まあ、今までの記憶からするとそうなのだろうな。解呪によって感性も変わっていると思うので、両方見てもらって居心地の良い方を選んでもらおう。

 水晶板の向こうにいるドルトリウス王達も含めて、城内を案内していく。客室等の作りはドルトエルムの面々にとっては中々興味深いもののようだ。実際今後は地上の面々を地底に迎える機会も増えるとなれば、参考になるだろう。


 ドルトエルムの家具は机や椅子、書棚ならぬ石板棚はあったな。地上をリサーチしていたこともあって作り自体は共通した部分も多い。もっとも、休息用として寝台はあっても寝具は必要としていないなど、あくまでドルトエルムの民に合わせた独特の生活様式であったりするのだが。


 客室の作り等について中継映像を見ているドルトエルムの面々から質問を受け、それに解答していく形になる。ブレスジェム達への解説にもなって丁度良いな。


「フォロス達はどうかな?」


 尋ねてみると、ブレスジェム達は部屋の中をあちこち移動していた。やがて棚や収納を見やり、フォロスが俺に伝えてくる。


 寝台よりもぴったりした部分に収まる方が落ち着くかも知れない、との事であるが……ふむ。

 実際に試してみたらどうかと伝えると、書棚やクローゼットに入って満足そうにしていた。これはこれでありなのかも知れない。

 じっとしていると、休んでいるというより丸いインテリアが置かれているといった風情ではあるが、明るい色合いでカラフルなので見た目にも良いな。


「そうなると、専用の休憩棚みたいなものを用意するのが良いのかな」

 

 そう言うと喜びを露わにするブレスジェム達である。これについては素材や作りなどを後で検討しよう。

 そうやって客室の案内や解説をしたら続いて中庭に。水路や東屋、植え込みや芝生のある中庭を見て、ボニファーツ老も「見事なものです」と頷き、ドルトエルムの面々も声を上げる。ブレスジェム達もテンションを上げてぴょんぴょんと跳ねながら中庭に飛び出していった。


 建築様式や庭園のデザイン、意匠の細かさ等、文化が違っても伝わる部分はある。異文化だからこそ刺激になるというか。

 ウィズの分析で分かっていたことではあるが、水路についても問題なさそうだ。ブレスジェムは鉱物のような側面があるので水溶性のスライムというわけではないしな。水路に浸かっても水に溶け出す事もなければ水質を変えてしまう事もない。


 比重は水より重いので沈んでしまう……が、術式を使えば空を飛ぶのも問題ないからな。水に浮くこと、泳ぐこともできるようだ。ただ、土属性の気質が強いので水の中では魔力補給が遅くなってしまうようではある。


 フォレスタニアの環境魔力でそうなる以上は水中で活動していると消耗の方が勝る、というのは間違いない。

 ともあれ水は取り立てて得意ではない、といったところか。


『うむ。訪問が楽しみだな』


 ドルトリウス王も頷く。みんなも中庭を気に入ってくれたようで何よりだな。

 そのまま中庭でみんなと共に腰を落ち着けて、まずは城の面々を紹介していく。


「これだけ人が多いと名前を覚えるのも大変そうですね」

『ふっふ。我らに関して言うならば、幸い種族特性上、記憶力も良い方なので問題はないぞ』


 エレナが苦笑すると、ドルトリウス王が応じる。フォロス達も自分達も記憶力は良い方、と音を鳴らしつつ頷いていた。

 城で留守番していた面々とも早速仲良くなっているブレスジェム達である。にこにこと微笑むユイとお辞儀をし合ったり、カーバンクル達を身体に乗せたり、マギアペンギン達に抱えられたりしているな。


 マギアペンギンやカーバンクル達からは感触が心地良いと評判だったりするな。付け加えて言うなら、どうもマギアペンギン達にとってブレスジェム達は「卵みたいな形で可愛い」という感性になるようで。ティールが声を上げてそんな風に教えてくれた。


 フォロス達がこうやって受け入れられているのは喜ばしい事だな。




 さてさて。中庭で自己紹介を行い、交流を深めた後でボニファーツ老を転送魔法陣でドルトエルム王国へと送る、という事になった。初めて地底に向かうという事で、弟子のペトラも一旦同行するとのことである。


「地底の環境は過酷なので、魔道具の影響範囲外はお気をつけ下さい」

「必要な設備は向こうに残してあります。念のため、ナヴェルさんの使っていた保護術式に近い術式を施しておきますね」

「おお。感謝いたしますぞ」


 ボニファーツ老は上機嫌そうににこにことしながらペトラや俺の説明を受けていた。

 術式を施した上で……後はお守り代わりに身代わりの護符を持っていってもらえば万一の事があってもセーフティーとして働いてくれるだろう。保護のための術式もなるべく簡単で単純な構成にしたので、ボニファーツ老やペトラ自身でかけ直しもできるはずだ。


「東国の符術も興味深いものですな。設備共々、ありがたく使わせていただきます」


 ボニファーツ老は大事そうに護符を受け取る。というわけで準備も出来たのでボニファーツ老とペトラをドルトエルム王国へと転送する。

 光に包まれて二人は地底へと移動していった。水晶板では向こうに到着した姿が見える。ボニファーツ老がにこにことしながらドルトエルム王国の面々と挨拶をしているな。


 そうこうしていると、ベシュメルクからも連絡が入る。


『私達ももうすぐそちらへ向かいますね』


 笑顔を見せるのはユーフェミア達だ。ナヴェルやトルビット達に合わせてこちらに合流してきて、問題がなさそうなら状態の推移を見守っていく、というわけだ。観測は継続的に比較してのものなので早く始めた方が良い、というのは間違いない。


「うんっ。待ってるね」

「みんながこっちに来るのは嬉しい」


 カルセドネとシトリアも微笑みながら言った。控えめではあるものの、日に日に感情表現が豊かになってきている二人である。


「では、転移港まで迎えに行って参ります」

「うん。よろしくね」


 ゲオルグは一礼して退出していく。

 フォレスタニアから転移港まで迎えに行ってくれるので、俺達はこちらで待っていればいい。というより、迎えに行こうかと提案はしたのだが、地底から帰ったばかりなのでゆっくりしていて欲しいとユーフェミア達が遠慮したのだ。スティーヴンやイーリス達はガブリエラの護衛役でもあるので、ガブリエラも一緒にこっちに来ることになっている。イーリス達は十分腕が立つが、ベシュメルクの要人であるガブリエラがこちらに来るのならば、俺達としても護衛を出さないわけにもいくまい。なのでゲオルグが迎えにいってくるというわけである。


 エレナやパルテニアラも到着が楽しみなのか、にこにことしているな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 棚や収納で落ち着くとはw キャットタワーも喜ばれそうな気がしますw
[良い点] 畜ペン達はライン北斗水鳥拳ダンスで出迎えた
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] >マギアペンギン達に抱えられたりしているな。 同じ色を4つ並べようとするのを止めるティール。 同様に4つ並べようとする封印の巫女を止める土竜。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ