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番外1616 ブレスジェムと湖と

「お会いできて光栄です。地の底、ドルトエルム王国より我らが主君、ドルトリウス陛下の名代として参りました、ナヴェルと申します」

「同じく、トルビットと申します」


 やがて王城へとやってきたナヴェルとトルビット、フォロスがそれぞれメルヴィン王とジョサイア王子に挨拶をする。丁寧に一礼するナヴェル達と、縦に軽く伸び縮みしてお辞儀をしているような仕草を見せるフォロスだ。


「ようこそ、ヴェルドガル王国へ。この国を預かる王として、そなた達の来訪とこれからの交流を歓迎しよう」

「一緒に食事を、というわけにはいかないようだが、ささやかながら歓迎の催しを用意している。是非楽しんでいってほしい」


 と、メルヴィン王とジョサイア王子が笑顔で応じる。


「レアンドル王やボニファーツ殿達も是非楽しんでいって欲しい。地底での歓待や休息があったにしても、しばらく休んでも文句の出ない激戦であったようだからな」

「それはありがたい」


 メルヴィン王の言葉に、一緒にやってきたレアンドル王も頷き、ボニファーツ老も一礼する。ボニファーツ老はドラフデニア王国の宮廷魔術師だ。

 ペトラの言っていたようににこにこと上機嫌な様子である。是非地底に向かいたいという事で、今回タームウィルズへの同行を申し出てきた、という事だな。レアンドル王も国交の一環として許可したという。


「いやはや、不在でお力になれず……此度は申し訳ありませんでした」


 ボニファーツ老は俺にも丁寧に挨拶をしてきた。


「いえ。突発的な事件でもありましたし、詮方のない事です。此度はよろしくお願いしますね」

「こちらこそよろしくお願いいたしますぞ」


 今現在最速でドルトエルム王国に向かうならば、転送魔法陣を使う事だしな。地底でレアンドル王からの使者として交流しつつ、ドルトリウス王が落ち着き次第一緒に戻ってくるという事になる。


 信憑性が薄いとしてあまり広く知られていなかったものの、大空洞の奥底に独自文明があるという説もあったそうで。物証というわけではないが奇妙な出土品も実際ボニファーツ老は若い頃に目にしているそうだ。


 それらが完全に眉唾なのか、それともある程度真実を下敷きにしていたのかという事も検証してみたいと、そんな風に語ってくれた。

 ペトラからの情報では師であるボニファーツ老は大空洞に詳しいと語っていたが……仮に最初から同行していたら、また事前に得られる情報が違っていたかも知れない。


 ともあれ、迎賓館前の広場では騎士団達が催し物の準備を進めているな。ドラフデニア王国からの面々も一緒に来ているという事もあり、飲み物や食事も運ばれてきた。

 軽く食事をとりつつ、貴賓室のバルコニーからそれらを見せてもらうとしよう。




 王城の催し物は騎士団、魔術師隊、軍楽隊と楽師達が一体となって行うもので、相変わらず凝っていて見事なものだ。

 光と共に空で曲芸じみた編隊飛行を見せる竜騎士隊。軍楽隊、楽師達も、騎士達の動きにタイミングを合わせた楽曲を演奏していて、混然一体となった催し物は前よりもレベルアップしている事が伺える。それらを見て、ナヴェル達が喝采を送り、フォロスやブレスジェム達が縦に飛び跳ねたり音楽に合わせて身体を左右に揺らしたりしていた。


「これはまた……大したものですね」

「催し物は共同で行うということもあってね、各々訓練にもなるし色々と良い事が多い。魔法と音楽を演出として融合させるというのは、テオドール公の影響があってね」


 そんな風にジョサイア王子が伝えると、ナヴェル達や中継を見ているドルトリウス王も感心したように頷いていた。自分達も検討してみようとのことであるが。


「恐縮です。王城の催し物は日に日に練度が上がっているのが見えますね」

「それを聞けば皆も喜ぶだろう」


 笑って答えると、ジョサイア王子がそう応じてくれる。

 以前は少し溝のあった騎士団と魔術師隊の仲もかなり改善しているという話だしな。そういう意味でもこの催し物は有意義だと聞いている。交流や相手を理解する場面も増えていけば、催し物に限らず王城の防衛や危険な魔物の討伐等でも連携を取りやすくもなるだろうし結構な事だ。


 さて。そうやって催し物も進んでいき、見学している面々もかなり楽しんでいたようであったが――やがてそれらも終わり一段落する。


 この後ナヴェル達は王城にて国交に関する話をしていくことになるな。セオレムに一日滞在し、話し合いを行ってからフォレスタニアに移動してくるという事になる。


 同盟各国の面々も水晶板を交えて話をし、ドルトリウス王は地底の状況が落ち着き次第こちらに転移してくる形になるだろう。


 ブレスジェム達は国交に関わる立場ではないので、このまま俺達と共にフォレスタニアへ。レアンドル王も同盟各国での話なのでこのまま王城に残るが、ボニファーツ老はレアンドル王から地底に向かうようにと言われているのでフォレスタニアから転送魔法陣で移動する予定だな。


 では、諸々動いていくとしよう。といっても俺のする事はボニファーツ老を案内して転送魔法陣を起動し、ブレスジェム達にフォレスタニアの居心地を確かめてもらうぐらいのものだが。




 というわけでボニファーツ老、ペトラ、ブレスジェム達を連れて、俺もフォレスタニアへと移動していく。

 馬車に乗って迷宮前広場まで行き、そこから月神殿、迷宮入り口へと移動していくわけだ。


「師匠は迷宮にも潜った事があると仰っていましたね」

「若い頃にの。見分を広めようと諸国を旅していた時期もある。この螺旋階段も懐かしいものよ」


 ペトラの言葉に笑って答えるボニファーツ老である。


 弾みながら階段を下りていくブレスジェム達は結構周囲からの注目を集めているようではあるが、俺が一緒という事もあるからか、何やら納得したような反応を見せている冒険者達である。うむ。

 そうして俺達は石碑からフォレスタニアへと飛んだ。


「水晶板で見てはおりましたが、実際に目にすると違うものですな」

『おお……。これがフォレスタニア……』

『湖が鏡のようですね。城が映り込んで綺麗なものです』


 ボニファーツ老と共に中継映像を見ていたドルトリウス王達が声を漏らす。

 鏡のような湖面はドルトエルムの面々にも好評のようで何よりだ。ブレスジェム達も各々弾んでテンションを上げている。


「フォロス達は……どうかな? 環境魔力や温度に関しては」


 そう尋ねるとフォロスは少し周囲の空気を感じ取り、自分達の状態を確認していたようだが、やがて居心地がいい、環境魔力で活動を維持できると、音を鳴らして翻訳の魔道具を通す事で意思を伝えてきてくれる。


 ブレスジェム達にとっては、俺が解呪に関わっているという事もあってその辺で影響を与えているようだからな。俺が領主として預かっている土地という事で、ブレスジェム達にとって相性が良いというのは予想されていたことだ。精霊に近しい存在というのも、ティエーラ達に絡んで良い影響がありそうだしな。


「それは何よりだね。これなら新区画の整備をしなくても大丈夫そうだ」


 そう言うとフォロス達は身体を変形させて頷くような仕草を見せていた。

 入口の塔から降りると、フォレスタニア城からもゲオルグ達が護衛と迎えに来ていた。


「お待ちしておりました」

「ありがとう、ゲオルグ」


 というわけでオープンタイプの馬車に乗って城まで移動していく形だな。徒歩であれ何であれ、ブレスジェム達が俺と一緒にいる姿はフォレスタニアの人達にも見せておきたいし。

 城に到着したらみんなにフォロス達も紹介していくとしよう。

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[良い点] 命からがら蘇生した獣は畜ペンにKストーンリペアを差しだし感謝をしている
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