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番外1582 地底との繋がりは

「お話は――わかりました」

「そうだな。余はやはり国交を持って共に歩んでいく道を選びたい。確かに、段階的に状況を前に進める必要はあるだろうが……今の話を聞いてその想いは強くなった」

「僕の場合は、この話への解答は本国に伝える事の許可を頂いてからとなりますが……心情としてはレアンドル陛下と同じものということをお伝えしておきます」


 レアンドル王と俺の言葉に、ドルトリウス王は目を閉じるようにして頷く。


「理解を示してもらえるのは喜ばしい事だ」

「テオドール公は、近しい出来事にも色々と心当たりがありそうではあるな」

「そうですね。身の回りで親しくしてくれている魔法生物もおりますが……カストルムや東国の付喪神といった面々は特にこの国の方々に近しい性質や成り立ちの経緯を持っているかと」


 俺との対話で自意識を構築した魔法生物もいるが、カストルムは自然発生的な部分があるし。付喪神はナヴェルやドルトリウス王達よりももっと精霊に近い存在ではある。


 いずれも自分達で増えるということはないけれど、パペティア族は印象や同族の増やし方としてはかなり近いものがあるな。魔界による変質によって生まれた人形系の魔物種族という意味では、やはり地底王国の住人と経緯も似ているかも知れない。


「それは是非話をしてみたいものだ」

「水晶板で中継することはできますよ。信用のおける方達なので情報拡散の制御も問題ありません」


 そう伝えるとドルトリウス王は「ほほう」と興味深そうにしていた。


「今は各国で連携が取れている状態ですからね。地上の状況や僕達の事を説明するという意味でも良いのかも知れません。状況や時間が許すのであればの話ですが」

「現状は……前線からの報告待ちではあるな。ナヴェルが帰ってきた事で懸念していたことの一つは消えたが」

「異変に際してはナヴェル殿が殿となって、部隊を無事に撤退させましたからな。」


 なるほど。対応に動いてはいるようだ。ならばもう少し話をする猶予もありそうだ。


「その後で私達の助力までして下さったのですね。本当に、頭が下がります」


 ルトガーが一礼するとドルトリウス王達も同感というようにその言葉を首肯していた。


「個人的には……今の話で気になる点がありました。かつての集積所の場所等は分かっているのでしょうか? あるいはこの都自体がそうだという事もありそうですが――」

「いや。地脈の位置や溶岩溜まりの利便性を考えて選ばれている。始祖の集積所は……もっと西にあったと言われているな」


 西……西か。


「何か、集積所の位置に気になる点でも?」

「そうですね。気になっているのは、場所もですが、集積所を作った人物達に興味があるからです。彼らは戻ってこなかったということですが……集積所も消えた、と仰っていましたね」


 ナヴェルにそう答えると、ドルトリウス王が頷く。


「そうさな。伝承にある通りに伝えたつもりだ。消えた集積所を見た、という者は残ってはおらぬが。子を成せる代わりというように、我らには寿命も生まれたからな」


 なるほど、な。一長一短ではないが、単体では増えることはできないし寿命もある、と。魔法生物の反乱への懸念の一つとして、制御できない状態で無限に増殖してしまうというものもあるが、そういった性質にはならなかったわけだ。


 ともあれ、集積所についての話を続けていこう。


「そうした出来事に、少しだけ心当たりがあって……その事との関係を疑っているのです。僕達の方でも関係者に聞いてみないと打ち明けられない事情もあるので、双方の許可を得てからという事になりますが」


 今地底で起きている事件と関係があるかわからないが、仮にその辺の部分で繋がりがあるのなら重要な情報になる、かも知れない。

 逆に事件と関係がないのなら、今になってその辺が明らかになったとしても、地底王国にとって大きな違いはないとは思うが。


「気になる話だ。関係者というのは信頼のおける人物達なのかな?」

「はい。かなり身近で親しくしている人達でもあります」


 そう答えるとドルトリウス王は少しの間思案しているようだったが、やがて「こちらは許可しよう」と頷くのであった。




 ドルトリウス王の許可をもらったところで、こちらの経緯を伝えつつ、水晶板で連絡を取る。当事者である面々はすぐに応じてくれた。


『確かに、関連性を考えてしまうところはありますね』


 と、そう答えたのはエレナだ。中継映像ではガブリエラやクェンティンもいる。

 そう。関連があるのでは、と考えたのはベシュメルクだ。ドラフデニアの西に集積所が存在していたこと。そうなると魔法生物ではなく呪法生物という位置づけになるが……高い技術があり、組織だった規模でそうした資源を必要としていたであろうこと等々……関連していたとしても不思議はない。


 そしてベシュメルクや魔界に関係する話をするという事は、月や迷宮に関する話もしなくてはならない。クラウディアやオーレリア女王、メギアストラ女王も水晶板の向こうで話に耳を傾けていた。


『地下資源の採掘計画については……そうだな。当時は一介の王女でしかなく、実権を持っていなかった故、計画の具体的な部分までは知らぬが……聞き覚えはある』


 そう言ったのはパルテニアラだ。やはり。パルテニアラが王女だったのは……ベシュメルク建国前の、かつての呪法王国時代の話だ。


「立地的にベシュメルクとの関連は我らも考えてはいたが……あの国は近年不穏な空気があって距離を取っていたからな」


 ドルトリウス王はパルテニアラの言葉に答える。


『先王……ザナエルクはもう倒れています』


 エレナ達が魔界の門との関連も踏まえてベシュメルクでの経緯を説明してくれる。


 月の民と呪法王国の対立。魔力嵐と魔界の成立に……代々の姫巫女とパルテニアラによる門の管理。ザナエルクの台頭とエレナの出奔と封印。

 そして俺達との出会い。ザナエルクとの戦い。そうした話をするとドルトリウス王達は真剣にそうした話に聞き入っていた。魔界の様子についてもいくつか質問をされてそれに答えると……やがてドルトリウス王は天を仰いで目を閉じる。


「まさか……始祖以前の話に裏付けや根拠を持った話が出てくるとは。何という因縁か」


 ドルトリウス王はしばらくそうしていたが、視線を戻すとやがて言葉をつづけた。


「今の話には我らにも心当たりがある。集積所の一部は消えていたというが調査では抉られたようになくなっていたというのが分かっているからな。それに……我が気になったのは、魔界の海の話だ」


 魔界の海、か。ルーンガルドから魔界へ。飲み込まれた部分の影響という事でその辺に関しても話が出たわけだが……ベシュメルクの土地の中にはかつての地殻変動の中で閉じ込められた古代の魔物がいた。

 それらが魔界での変質を経て魔界の海が危険地帯となってしまったわけだが……。


「閉じ込められた海とそこに住まう特殊な魔物。古い地層から出土する化石であるとか、そういったものは我らも確認している。それらは……この近辺特有というわけではないのかも知れぬが、今起こっている問題も実はこれらの事情や我らの身体にも絡んだ事でな。そなた達にも聞いてもらい、意見を聞かせてもらいたい」


 なるほど、な。それはこちらとしても気になっていたところだ。ベシュメルクや呪法、魔界の海の情報が地下王国の現在に繋がる、か。


 ではドルトリウス王の話を聞かせてもらい、その上でどうすべきかの方針を練っていくとしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] パペティア族とは似て非なる感じなんでしょうか。 実際に対面して会話できるようになれば面白そうですw
[良い点] やがてドルトリウス王は天を仰いで目を閉じる、獣はムーンウォークを天井でしている
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